なだめること

しずかさではなくてただ静謐さがほしかったのだと思う。音がないのは寂しくなってしまう。距離のあるほど鼓動が小さくなっていくのは、神様のいじわるだと僕も思うよ。あなたは音がほしいねといった、なにも差し出せなかったね。自分に溶けている汚れた感情が束になっているのを目撃して、そのたびに必死で隠していた。そればっかりに。通話は切れて、少しの間があって、そうか、元には戻れないんだって、胸が軋むくらいにはっきりとわかった。

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