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六絃ストーリー「クリスマス。」

2022年クリスマス。それはコロナ禍の混乱がひと段落しつつあった頃。
私の勤務するショッピングセンターでも、クリスマス気分を高める施策を、ようやく取り組めることになり。3年ぶりのサンタクロースが子供たちの前に姿を現した日だった。

12月25日をイベント日にした日本人は、イエス様のストーリーを一遍も読むことなく、経済活動を続けてきた。たまたま高校でプロテスタント系キリスト教の学校に入学した私は、3年間聖書と親しむ時間を持てた。「父」に感謝はするが、クリスマス礼拝に行くことは、今はもう無い。

そんなクリスマスの日。早めに仕事を終えた私は、近くの駅ビルに行くことを思い立つ。帰宅してもケーキもなく、子供も返ってきていないことは分っていた。しかしクリスマスだからと言って、自分に何かプレゼントするような状況でもない。

駅ビルには「楽器店」がある。いつも”立ち寄る”程度で、店員さんとも世間話をしたり、たまに試奏させていただいたり。その程度の楽器店であった。
クリスマスの店内はがらんとしていて、コロナ禍の影響をいまだ感じる。

そんな楽器店の壁に、見慣れないギターがかかっていた。正確にいえばカタログで見ただけで、実物を見るのは新品でも中古でも初めての個体だった。
ブランドはアイバニーズ。

そのギターは私に語り掛けた。「お疲れ様、クリスマスでも仕事だったんですね。気分転換に”私”を弾いてみませんか?」

私は店員さんに「すみません、試奏良いですか?」と声をかけ、実は40年以上のアマチュアギタリスト歴でも、あまり記憶にない「セミアコ」を抱えた。

イバニーズというブランドは、還暦ギタリストにとって、大いに馴染みのある名前だが、私は所有したことがなかったし、しかもハードロック系を自負する私は、セミアコは「眼中に無い」感じだったが、年齢もあり「軽さは正義」である昨今、335やシンラインをはじめ、興味深い種類ではあった。

そのギターは、ほとんど新品状態だった。店員さんは「弾かないから、私たちの手元に中古として出てくるんです。弾いてあげないと、ですね。」と言った。クリスマス・・・偶然に初めてみた個体。
買えないわけではない「金額」。(これが一番危ない)

私は店員さんに「取り置きってできますか?少し考えたいので。」と言い、もちろん可能なわけで「予約表」というピンクの薄い紙を渡された。

実は10年以上探しているギターというのがあって、ずっとデジマートを見たり店頭探したりしているのだが、コレ!といった個体に出会えていなかった。このセミアコ、そのスペックとは真逆な「欲しかったギター」ではないのだけれど、”出会ってしまった”感がとても強かったのです。その理由は・・・「クリスマスだったから。」

ゼブラウッドと言います。

予想通り、3日後の12月28日。
楽器店に電話をかける「今から行きます。」

そしてインドネシア製のセミアコは、私の4本目のエレキギターとなった。
早速ライブハウスのブルースセッションに持参すると、みなさんから「ちょっと見せて!何コレ?」と大好評で、店長からも「良い音してますね!あたりでしたね」と褒められたので安心した。

「弾かないギターは手放す」というのは、正解である。コレクターという方もいらっしゃるだろうが、私は弾いていたい、と思う。もちろん4本同時には弾けないが、曲によって、ジャンルによって、ギターをかえることは、わかる人にしかわからない優越感でもある。

※そしてこの後…10年間探していたスペックのギターに出会ってしまいます。






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