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必要十分な答案を作成するには?Part3(同値変形による式や条件の処理の仕方)

 前回は同値変形についての概論的なことを述べたが、今回は実戦的に同値変形による式や条件の処理の仕方について学んでいこう!

大まかな手順

まず、抽象的な話についての手順としては

ステップ1.すべての式と条件を書き出す

ステップ2.独立変数従属変数に分けて同値変形で整理する

これに関連して、高校数学の軌跡の問題では逆像法(もしくは逆手流)と呼ばれているものは、求めたい変数の範囲を従属変数として値域を求めるのではなくて、独立変数になるように同値変形して定義域を求めることである。

この独立変数従属変数はいきなり聞いて分かりにくいかもしれないが、

y=f(x) (a≦x≦b) と書かれていたら、x のことは a≦x≦b で自由に動いてよい独立変数で、y はその x によって自動的に決まる従属変数ということ。

そのように、何を独立変数にして従属変数にして同値変形で整理していくか?ということであるが、次に具体的な例題を通して説明する。いきなり院試の問題では説明しづらいので高校生でもわかる範囲で説明する。


例題1

縦と横の長さの和が10である長方形の面積の最大値を求めよ。

これは、数Ⅰの二次関数の基本的な問題ではあるが、実は基本中の基本である。

縦の長さをx、横の長さをyとして

x+y=10 で、面積は xy=x(10-x)=-(x-5)²+25 

それで y>0 だから 10-x>0 で、0<x<10 、、、

というように、なんとなくの思いつきで解いていたら、今回の問題では良くても、東大京大のようなややこしい問題では通用しなくなる。院試ならなおさらそうである。

これをきちんと機械的に整理できるようにならなければならない。

まず、【ステップ1.すべての式と条件を書き出す】から、

x+y=10、x>0、y>0

と全部書く。

次に、【ステップ2.独立変数と従属変数に分けて同値変形で整理する】から、x を独立変数と考える。(yにしてもよい)

だから、y を x で表して、条件もすべて x に置き換える。

x+y=10、x>0、y>0

⇔ y=10-x、x>0、y>0

⇔ y=10-x、x>0、10-x>0

⇔ y=10-x、0<x<10

これで、x は 0<x<10 で自由に動いてよくて(独立変数)、y はその x に対して自動的に決まる(従属変数)。

これで、面積 xy は

xy=x(10-x)

=-x²+10x

=-(x-5)²+25 

で、x=5 のとき、最大値25 であることがわかる。

このように、きちんと全て式と条件を書いて、何を独立変数にして、何を従属変数にするかを決めて、すべての従属変数の文字と条件を独立変数に置き換えていくような機械的に同値変形していくことが大切である。

そしたら、さらに複雑な例題を出す

例題2

a=b+2t、a+3b=t²-3、0<t、b<0 のとき、a+5b の最小値を求めよ。

この問題は、すべての式と条件は元から書かれているが、きっちり何を独立変数にするかを決めてやらないと、ぐちゃぐちゃになる。

ここでは、t を独立変数と考えて同値変形する。

文字や条件をすべて t で表す。

すると、文字は

a=(t²+6t-3)/4

b=(t²-2t-3)/4

で、0<t、b<0 も t の条件に置き換えて

0<t<3

これで、t は 0<t<3 で自由に動いてよく、a,b は t によって自動的に値が決まる。

このように整理すると、

a+5b={3(t-1/3)²-28/3}/2

だから、t=1/3 のときに、最小値-14/3 を取ることがわかる。

おまけ演習問題

Q1. p+q-3pq=0、p+q=a、pq=b で、p,q がすべての正の実数を動くときの(a,b) の領域を求めよ。(東大京大東工大ではかなりよく出る)

Q2. a+b+c+d=0、a²=b-c、d≧0 のとき、b-a²-a の最大値を求めよ。(ヒント:a と c を独立変数に同値変形するとよい)

(解答解説は後日に公開)

さっきから、学部入試ばかりではと思うかもしれないが、院試でもその基礎がないと複雑な式変形や条件の処理がしにくくなる。そして、この記事を数学に自信を持つ高校生向けにも発信できたらとそのために扱っている。ちなみに、私はこうした基礎の積み重ねが京大の院試を受けたときに役に立った。

次回は等号について扱う。



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