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一人勝手に回顧シリーズ#マーティン・スコセッシ編(7)#グッドフェローズ/スコセッシのマフィア映画ここに始まる

【映画のプロット】
"この映画は、実話に基づいている。"
▶︎ヘンリー・ヒル
NY1970年
夜道を走る1台の車。運転席にヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)。
"あの音は、何だい?ジミー。"
"ぶつけたのか?"
"パンクか?"
"違うな。止めて、調べよう。"
ヘンリー、ジミー(ロバート・デ・ニーロ)、トミー(ジョー・ペシ)は、車のトランクを前に、身構える。トミーは、剣を抜く。ヘンリーが、恐る恐る、トランクを開ける。血塗れの男が、身を起こす。
"まだ生きてやがる。死ね。"
トミーが、何度も剣を突き立てる。
"くたばれ。クソ野郎。"
ジミーが、銃弾を見舞う。
"昔から、ギャングになりたかった。俺にとって、ギャングは、大統領より、憧れだった。"
ブルックリン1955年
"タクシー会社で、バイトを始める前から、決めていた。暗黒街こそ、俺の世界だ。カスどもばかりの街で、でかい顔ができる。何だって、やりたい放題だ。消火栓の前に駐車しても、サツは知らん顔。夜通しカードをしても、誰もたれこまない。"
通りの向かいの店の前に、車が止まる。男たちが、降り立つ。
"ダディー・シセロだ。ダディーは、タクシーとピザ屋と店を数軒を仕切っている。ボスは、兄貴のポーリーで、界隈の顔役。腹の座った奴だ。何事も、自分からは、手をくださない。"
"お前が悪い。"
"悪いのは、お前だ。"
"俺が、向かいでバイトを始めて、親は、喜んだ。アイルランド系の親父は、11歳で奉公に。アメリカのガキは、怠け者だというのが、口癖だった。"
"行くね。弁当だ。じゃあね。"
ヘンリーは、学校へ行く。
"車に注意おし。帰りにミルクを買って。"
"シセロが、お袋と同じ、シチリアの出身と知り、お袋は、願ったりとばかりに、大喜び。俺は、得意だった。どこへでも行けて。何でもやれたし、皆が、俺を知っていた。"
ヘンリーは、学校へ行かず、バイト先に入り浸る。
"客が着くと、キーを渡され、キャデラックを駐車。ハンドルを握るのがやっとのガキが、車を預かる。でも、やがて親が、俺のバイトを喜ばなくなって来た。"
店員が、警官に賄賂の酒、タバコを渡す。
"俺には、バイトどころか、立派な本業だった。真剣勝負だった。親父のような人間には、理解できっこない。俺は、大人として、扱われていた。毎日、少しずつだが、稼ぎを上げていった。夢心地だった。"
"学校は、どうだ?"
"親父は、不機嫌だった。自分の稼ぎの悪さや、弟のマイケルの足が悪い事、狭い家に7人も暮らしていることに。"
"どうなっている?学校から、手紙が来た。無断欠席だと。何か月も。"
父親は、ヘンリーを激しく殴る。母親は、悲鳴を上げる。
"チンピラの真似しおって。ろくでなしめ。"
倒れたヘンリーを、殴り続ける。
"それ以来、俺の仕事を、信じなくなった。裏の商売に気付き、俺を殴るようになった。初めは、平気だった。どんな奴だって、たまには殴られる。"

"手を引く。"
"何でだ?配達に穴が開く。"
"親父に殺されるよ。"
"来い。"
"あいつか?"
" No. "
"奴か?"
"あいつだ。"
手下が、郵便配達員を呼び止める。
" Excuse me. クソ野郎。"
車に押し込む。店へ連れ帰る。
"知り合いか?こいつの家に、郵便物を届けているな。今後、学校からの手紙はこっちに回せ。いいな?"
" Yeah. "
"もし、こいつの家に届けてみろ。火にぶち込んでやる。"
"その日から、手紙は、学校からだけでなく、どこからも来なくなった。お袋は、郵便局に苦情を、言いに行った。学校に行き、国旗に誓って、勉強なんて、馬鹿らしい。ポーリーは、電話が嫌いで、家にもなかった。"
"電話が来たけど。" 
"かけてくれ。"
"連絡は、手下にさせ、自分は、公衆電話を使った。"
"小銭は?電話しろ。" 
"一日中、電話番だけをする係までいた。出掛けても、滅多に人と口を利かない。組合やナンバー賭博の揉め事は、トップの奴らとだけ、会って話す。いつも1対1。協議は嫌いだった。話合いの内容を、ほかの連中に聞かせないためだ。大勢の面倒を見て、上がりを納めさせる。詰まり、イタリア式の感謝の証だ。シマを狙われたら、ポーリーに守って貰う。この関係は、FBIには、理解できない。マフィアは、サツに行けない連中を保護する。言ってみれば、ワイズガイどもの警察だ。"
夜。
ヘンリーは、駐車場の車の窓を、割って回る。
"誰もが、俺に、一目、置くようになった。日曜の朝、パン屋に並ぶ必要もなくなった。主人が、店先に出て来て、何人、客がいようと、俺の注文を聞いた。家の前に、車を止める者も、いなくなった。13歳で、俺は、近所の大人より、稼いでいた。使い切れないくらいの大金を。"
駐車場の車が、一斉に爆発する。
"ある日、近くのガキが、お袋の買い物を運んだ。なぜかって?敬意の表れだ。"
"ママ。どうだい?"
ダブルのスーツ姿を披露する。
"いい靴だろ?"
"呆れた。ギャングみたい。"

シャツに血が染みた男が、逃げる。
"助けてくれ。"
ヘンリーは、男を助けに、店を出る。
"ヘンリー。ドアを締めろ。"
"撃たれた奴を、初めて見た。"
"入れるなよ。"
"ああ。"
"手に負えんぞ。"
ヘンリーは、布巾を傷口に当て、介抱する。
"そいつには、気の毒だが、ダディが正しいのだ。ポーリーは、店で、人が死ぬのを嫌う。
"エプロンが、8枚もパァだ。このガキ、まだ甘っちょろいぜ。"

店は、男たちの溜まり場。ヘンリーは、給仕する。
"栄光の時代だった。『ワイズガイ』が、溢れていた。アパレーチーン会議やクレージー・ジョーが、抗争を始める前だ。俺は、世間を知り、ジミー・コンウェーを知った。当時、彼は、29歳そこそこで、もう伝説的な存在。彼が、店に現れると、従業員は、興奮した。ドアマンにチップの100ドル。ディーラーたちにも、100ドル札をばらまき、バーテンにまで100ドル。
"アイルランド人が勝つぞ。"
賭博に金を賭ける。
"飲むか?"
"7&7"
"ジミー。こいつは、ヘンリーだ。"
"やあ。"
チップを、ポケットに押し込む。
" Thank you. "
"とっとけ。"
"ジミーは、街で、一番、恐れられた男。11歳でムショに入り、16歳で殺しを請け負った。ジミーにとって、殺しはビジネス。でも、彼が本当に好きだったのは、盗みだった。心から楽しんでいた。映画でも、悪役の肩を持つタイプだ。"
ジミーたちが、犯行後、落ち合う。
"財布を。"
"俺たちを甘く見るなよ。"
財布から、紙幣を抜き取る。
"ハイジャックは、凄腕。酒、タバコ、剃刀、小海老、ロブスター。海老類は、すぐさばける。面白いほど簡単に、ブツが手に入った。『紳士ジミー』。運転手どもが、いいブツの情報を流してくれた。"
"どうも、残りは、後で。"
"またな。"
"ヘンリー。"
ジミーが呼ぶ。
"トミーだ。お前たち、一緒に組め。OK? "
"ジミー。何かあるかい?"
"彼を、取っ捕まえる筈のサツまでが、味方だった。"
タバコの箱に、金を突っ込んで、渡す。
"適当にやんな。"

"1カートンね。次は?"
"ラッキーズ2つ。"
タバコを売る。
"毎度。次は?1カートン。"
"何をやっている?違法だぞ。"
2人組が、声を掛ける。
"いくつ欲しい?"
"何の真似だ?"
"しょっぴけ。"
"ちょっと待って。誤解だよ。"
"つべこべ言うな。店仕舞いだ。"
トミーは、その場から立ち去る。店に駆け込む。
"パクられた。"
"どこで?"
"工場の横で。"

"ヘンリー・ヒルに対するニューヨーク市からの告訴、訴訟第704162号。"
"俺です。"
"ヘンリー。こっちへ。ここに。立ってて。"
"弁護人、どうぞ。"
閉廷。
ジミーが、声を掛ける。
"よくやった。お前に、卒業祝いだ。"
ポケットに、金を入れる。
" パクられた。"
"だが、奴らに、一言もばらさなかった。"
"怒るかと。"
"いいや、お前が誇りだ。男らしいぞ。大切な事を、2つ学んだ訳だ。いいか。仲間を売るな。決して、口を割るな。"
法廷を出ると、ダディたちが、出迎える。
"来たぞ。お前も、男になった。"
皆、拍手で、ヘンリーを迎える。
"よくやったぞ。ヘンリー。"

▶︎ギャングの日々
アイドルワイルド空港1963年
ヘンリーとトニーが、車の前に立つ。
"当時、年間300億ドルもの貨物が、空港を通過。そいつを残らず、かっさらう。空港は、地元で、ポーリーの縄張りだった。仲間や身内が働いていて、ブツの動きについて、情報を流していた。輸送会社と揉め事が起きれば、組合を使い、ストで脅すと、言いなりになった。ナンバー賭博より、金になり、ジミーが仕切った。金が要る時は、空港を襲う。銀行よりいいヤマだ。"
ヘンリーとトニーは、ドライバーが離れたトラックに乗り込む。
トラック運転手が、代金を払い、ダイナーを出るが、すぐに戻って来る。
" Com'on. 電話はどこだ?"
" Over there. "
"黒人2人が、俺のトラックを盗みやがった。"

夜のクラブ。
"顔触れは、ジミー、トミー、俺と、そしてアンソニー。カーボーン、モーの弟ファット・アンディー、子分のフランキー、鼻なしフレディー、サリー・ボールの弟殺し屋ピート、ニッキー・アイズ、マイキー、何でも2度言う、鸚鵡ジニー"
"新聞を。新聞を。"
バックヤード。  
"コートは、要らねえよ。スーツが、欲しいんだ。"
"木曜に入る。" 
"真夏に、毛皮をどうすんだ?"
"ならいい。"
"待ってくれ。貰っとくよ。冷凍庫に、肉と吊るす。" 

"まともな稼業は、nutsだ。詰まらない仕事で、ケチな金を貰い、毎日、地下鉄で通う奴らは、クソ喰らえだ。タマも付いてねえ腑抜けだ。欲しい物は、奪い取る。文句を垂れる奴は、叩きのめせば、黙る。余計な事は、考えない。"
"フランキー。528は、469じゃないんだ。呆れるぜ。528と469は、丸っ切り、違うってのに。"
大柄な男がやって来て、ヘンリーは、慌てて、席を立って、迎える。
"ヘンリー。楽なヤマだ。警報器も心配ない。まずキーだ。" 
"ジミーに。" 
"任しとけ。"  
ジミーが加わる。
"話してやれよ。"
"凄いぜ。"
"エールフランスが、大金を積んで、到着する。米国人が、フランに替えた金を送り返して来る。"
"落ち着け。"
"よく聞け。絶対に、足のつかない金だ。"
"問題は、キーの入手だが、俺とフランチーでやる。" 
"きっと50万ドルにはなるぞ。現ナマでだ。"
"狙うなら、土曜の夜だな。"
ジミーは、うなずきながら聞いている。
"月曜は、ユダヤの祭日だ。火曜まで、バレないぞ。"
"警備は?"
"この俺さ。朝の8時まで夜勤だ。勝手に持っていくがいいぜ。"
"完璧だ。"
"チョロいもんだ。"
"決行だ。"
トニーが、場を盛り上げる。
"セコーカスの銀行をやった時は、お笑いだ。草むらに伏せていると、デカが来た。『何している?』、『寝ている。公園だぜ。寝てちゃ悪いってのかよ。』。しょっ引かれて質問攻め。『正直に白状するんだ。』、『言う事はねえよ、てめえなんかに。』、『喋った方が、身のためだ。』、『お袋とやって来な。』。"
一同、笑う。
"派手に、ぶん殴られたぜ。やっと正気に戻ると、目の前に、また奴がいた。『洗いざらい、喋っちまいな。』、『言ったろ。お袋とやれ。』。"
また笑う。
"怒ったぜ。俺も、体がデカけりゃな。"
"傑作だぜ。堪らないほど、可笑しいよ。"
"何が可笑しい?"
"今の話さ。笑っちまう。お前は、愉快な奴だ。"
"俺の話し方がか?"
"可笑しいんだよ。何て言うか。話し方も。何もかも。"
" Funny how? どこがだ?"
ヘンリーに絡む。
"トミー。落ち着け。"
"口を出すな。奴に聞いている。どう、可笑しいか言え。"
"詰まり、可笑しいんだよ。"
"分かるように言え。俺には、さっぱりだ。Funny like a clown? 俺は、間抜けだってのか?俺は、どう可笑しい?"
"詰まり、お前の話し方がさ。そうだろ?"
" No. No. てめえが言ったんだ。俺が、可笑しいって。一体、俺のどこが、可笑しいんだ。Tell me. 言ってみろ。"
"よせよ。トミー。"
"こいつ、すっかり騙された。縮み上がっていた。震えてやがったぜ。あれじゃ、サツの尋問に、いちころだ。そばへ寄るな。デカかと思ったぜ。ハゲタカみたいな顔して、何の用だ?"
"彼が、勘定を渡せないと言うんだ。こいつを頼む。"
"いいとも。つけといてくれ。"
"まだほかにもある。7,000ドル払ってくれ。俺に、借りがあるだろ。7,000ドルは、でかい。面倒は、御免だ。"
"御免だと?よく言うぜ。ソニー。皆んなの前で、恥をかかせやがって。お前は、カス野郎だ。"
"そんな風に言うな。"
"何だと。"
グラスの中身を、顔にぶっ掛ける。
"聞いたか?これこそ、お笑いだぜ。何を見てやがる。馬鹿野郎。俺に勘定が渡せないだと。"
若い男に、グラスを投げつける。
"ふざけやがって。お前も締め上げろ。"
" Funny guy. "
トミーは、拳銃を取り出し、撃つ真似をする。
"殺すぞ。ヘンリー。あいつのガキを名付けてやった。礼に、7,000払わせた。" 
"お前は、傑作だ。"   
トミーは、ヘンリーに飛びつく。

"不安だよ。悪い噂ばかり聞く。"
額に傷を負ったソニーが言う。
"俺をホモ呼ばわり。もう沢山だ。奴から、遠くへ逃げたい。これじゃ、外へも出られない。" 
ダディが答える。 
"あいつら、何度言っても、聞かない。"
"俺に、行方不明で、くたばれってのか?草むらで、死体で発見か?トミーを知ってるだろ?とんでもない悪だ。毎朝、家を出てから、何度も振り返る。生きた心地がしない。あんたが頼りだ。どうしたら、いい?"
"俺にできりゃ、やっている。助けてやりたいんだ。"
ヘンリーが、割って入る。
"ソニー。さっきの話を。"
"ポーリー。俺と組んで、店をやらないか?"
"何の話だ。レストランか?" 
"そうさ。悪くないだろ?あんたも、承知の筈だ。トミーの手に渡すのは、豚に真珠ってもんさ。怒るなよ。君らが、仲間なのは、知っている。どうだい?"
"どうしたらいい。見当もつかんよ。レストランなんて、分からん。座って、注文するだけ。経営は、知らん。"
"何て事ない。シェフは、一流だし、ショーもいい。売春婦も集まる。" 
"俺に、どうしろってんだ。トミーは悪党だから、撃ち殺せと?"
"それも悪くない。済まん。本気じゃない。奴が怖い。あんたの力が必要だ。助けてくれ。頼む。"
"お前、レストランは?"
"彼なら分かる。24時間、何が起きようと、いつだって店にいるんだ。"
"この俺に、相棒になれってのか?"
"決まってるだろ。ポーリー、頼むよ。"
"うまくない。断る。" 
"なぜだ。"
"店は、お前がやれ。俺も、手を貸してやる。"
"済まん。感謝する。恩に着るよ。"
"これで、事あるごとに、ポーリーに泣きつく。勘定の取立て、デカ、配達、トミー。揉め事は、ポーリーに。見返りに、毎週、何があろうと、金を渡す。経営難?金を払え。火事に遭った?金を払え。落雷にやられた?金を払え。ポーリーは、店のつけで、物を買い漁る。どうせ金は、誰も払わない。表に荷物が届けば、裏から出して、安く捌く。1ケース200ドルの酒を、100ドルで。全額、丸儲けだ。そして、物を残らず捌き、借金も買う気もなくなれば、マッチを点け、店を燃やす。"
"手が届くか?"
レストランの天井の発火剤を仕込む。
"クリスマス・ツリーの飾り付けじゃねえ。
装飾の枯葉に、火を点ける。
店の外の車の中。ヘンリーとトミー。
"ユダヤ人だ。"
"誰が?"
"ダイアンさ。中で、話したろ。1か月も狙っているが、いつも誰かと一緒だ。"
"断る。"
"何をだ?"
" No. "
"まだ何も頼んでいない。まず、話を聞け。"
" What? "
"いいか。彼女は、イタリア男を、警戒しているんだ。偏見だ。信じられるか?現代の世の中でだぞ。ユダヤ女は、イタリア男を誤解しているぜ。いつも女友達が、付いて来る。その女を連れ出せ。" 
"そう来ると、思ったぜ。I know. I know. "
"一体、どこがいけない?明日だ。"
"タディーと会う。"
"なら、早く来て、早く帰れ。断る気か。俺が、こんなに頼んでいるんだぜ。少しは、力になれよ。あの女とやらてえんだ。お前って奴が、分からねえ。すげえ美人だし、家も、金持ちらしい。ユダヤのスケは、金がある。お前も、上玉をものにしろ。"
"うるせえ。黙っていろ。"
店から、黒煙が上がる。車を出す。

"11時に、タディーと会うまで、トミーの助っ人だ。"
"十分、食ったか?" 
"美味しかった。太っちゃうわ。"
トミーの目当てとの食事に、ヘンリーが同席。
"奴らが、肉を食っている時、俺はデザート。コーヒーの時、勘定を。俺は、仕事だ。"
"コーヒー飲めば。目が覚める。"
"ジョー。勘定を頼む。"
"一体、どこへ?"
"仕事がある。"
"待ってろ。一緒に出よう。1人でふらふらするな。"
"我慢できないわ。不愉快な奴。せっかちで、落ち着きがない。"
"それやめてよ。イライラする。"
ライターを弄ぶのを、咎める。
"アニゼットだ。美味いだろ。ユダヤ・ワインにしても良かったな。"
ヘンリーが、トミーを促す。
" Ready? "
"着いたばかりだぜ。焦るな。"
"無理矢理、車に乗せられ、黙って降ろされた。馬鹿みたい。でも、また金曜に、出掛ける約束をさせられた。承知したくせに、彼は、私をすっぽかした。"
"奴は、どこ行ったのかな。君を好きだと、言っていたぜ。"
"惨めに、3人で、ダブルデート。"
"深刻になる事ない。"
"トミーに頼んで、彼を探した。"
トミーと女が、店に、車を乗りつける。店の前にいたヘンリーたちは、驚いて飛び退く。
"何だよ。トミー。"
"よくもすっぽかしたわね。一体、何様の積もりよ。フランキー・ヴァリだっての?"
"忘れていた。来週かと思った。"
"今週の金曜よ。約束したのに、嘘つき。"
"話せば分かる。"
"話ですって?恥をかかされたのよ。話す事ないわ。"
"君だって、この前の時、退屈そうにしていただろ?仲直りだ。カレン。"
"考えておく。"
"道端で怒鳴りまくる姿は、魅力的だった。"
" I think about. "
"素敵な目だ。リズ・テイラーみたいだ。"

ヘンリーは、カレンを、家に訪ねる。
" Hello ヘンリー。"
" You ready? "
" Yeah. Wait a minute. 十字架を隠さないと、ママが。"
"カレン。"
" Mam ヘンリー・ヒルよ。"
" How do you do? ユダヤの血が入っているとか。"
"いい血だけがね。"
2人は、ショーパブに行く。
"なぜ、車を置いていくの?"
"預からせる。駐車場で待たされるより、この方が早いんだ。並んで待たずに入る。"
"やあ、ジーノ。"
"いつもお前たちが、いる。仕事しないのか?"
通路、厨房を抜けて、客席に至る。
" Excuse me. "
"ヘンリー、よく来た。君もね。前の方に頼む。楽しんで行ってくれ。"
新しくテーブルが設けられる。
"ありがとう。"
"チップを20ドルも。"
"トニーさんからです。あちらに。"
"トニー。悪いね。"
"仕事は?"
" What? "
" What did you do? "
"建設業だ。" 
"そうは見えないわ。"
"組合の幹部だ。"
" Ladies & gentlemen コパカバーナが、自信を持ってお送りするギャグの王者ヘニー・ヤングマン。"
" How are you. 女房を引き取ってくれ。捨てても、戻って来ちまう。"

ヘンリーとトミー。空港を歩く。 
"『記念日、どこ行くか?』、『いつも行かないとこへ』、『じゃ、台所だ。』。"
"医者が、患者に半年の命と宣告。『金が払えん?じゃもう、半年。』。"
拍手
"客筋がいい。"
ヘンリーは、警備員から、キーを受け取る。
立入禁止区域に入る。 
"エールフランスは、大成功。鍵も使わずに、42万ドルいただきだ。最高のヤマだ。ポーリーにも納めた。"
"6万だ。"
"いい夏だぜ。"
"よくやった、若僧にとっちゃ大金だ。人には、ベガスで当てたと言え。All right? "

"お勘定です。"
ヘンリーは、札を数える。
" No, no, no. サインするのよ。"
"チップは?"
カレンは、首を振る。 
"カレン。"
テニスプレイヤーが、声を掛ける。
" Hi ブルース。元気?ヘンリー。こちらブルースよ。" 
"またな。" 
" You know him? "
" Yeah. 家の向かいに、住んでいるの。"

ショーパブ。2人は、舞台前のテーブルで、生の音楽を聞く。
"ボビー・ヴィントンから、シャンパンが届けられた。何もかも、普通じゃなかった。21歳の青年が、こんな世界に。彼は、素敵だった。優しいし、誰にでも、紹介してくれた。皆んな、愛想がよく、彼も人の扱いを心得ていた。"

TVCM。
"悪いカツラはやめて、モーリーのカツラを。水にも強い。モーリーのカツラなら、風にも耐える。どんな御予算にも応じて作ります。Call me now. あなただけのカツラを。カツラは選びましょう。今すぐお電話を。"
ジミーは、真横の方に、視線を送る。
"モーリー。ジミーが、待っている。"
"お前は、いい奴だが、話が違う。ジミーの要求は、無茶苦茶だぜ。あんな利率、じょうだんじゃねえ。俺を舐めていやがる。"
"彼に金を借りたんだ。払いなよ。"
"約束より、3%も上だ。"
"ジミーと戦う気か?綺麗に払って、型をつけろ。"
"知ったこっちゃねえ。うるせえ。畜生め。何で、この俺が、あんな野郎に。ビタ一文、払わねえ。"
"馬鹿言うな。やめろ。"
ジミーが、ワイヤーで、モーリーの首を締める。 
" CMで、稼いでやがる。なのに、俺に払う金がねえだと?"
"払うよ。"
"ぶっ殺してやる。金を払え。クソ野郎。金をよこせ。"
モーリーに電話を取らせる。
"モーリーだ。誰だ?彼ならいる。"
ヘンリーに電話を渡す。
"済まん。"
"2度と、こんな真似するな。さっさと金を寄越せ。手間かけやがって。金を払え。"
"分かった。払うよ。必ず払う。信じてくれ。"
"カレン。Slow down. Where? すぐ行くから、don't move. "
"カレンが。"
ヘンリーは、店を飛び出す。
"すぐ払え。今日だ。"
"払うよ。必ず払うから。"

ヘンリーは、車で駆けつける。
カレンは泣き出す。
"どうした。何があった。大丈夫かい?誰がやった?"
"向かいに住んでいる奴よ。よく知っているのに。"
"そいつが...何をした?"
"体に触って、抱こうとしたの。言っても、止めてくれない。だから、ぶったら、もの凄く怒って、車から突き落とされた。"
カレンの家に着く。
"本当に大丈夫?"
カレンは、小さくうなずく。
"中に入って、休むといい。体を洗え。"
向かいの家の男は、仲間と車をいじっている。ヘンリーは、拳銃を忍ばせ、車を降りる。
"お前、何か用か?"
無言で、前髪をつかんで、何度も殴る。
"今度、手を出したら命はないぞ。"
仲間に、拳銃を向ける。
" Don't shoot. "
ヘンリーは、踵を返す。
カレンが、窓越しに、一部始終を見ている。
"こいつを隠しておけ。"
拳銃を渡す。
" You all right? Are right? "
" Yes. "
"親友たちの多くは、恋人に、銃を隠せと言われたなら、別れてしまう。私は、違った。正直言って、血が騒いだ。"
2人は、結婚する。
結婚披露宴。
"お前も、早くいい子を見つけるんだよ。"
"ヘンリーも、身を固めて、結婚した。じき、子どもも生まれる。なのに、お前は、まだ女遊びに夢中だ。"
"彼には、家族が、2つ。初めて紹介された時は、頭が混乱した。ポーリーには、男の親類が多く、皆、ピーターかポール。信じられない。ピーターとポールが、何10人も。奥さんは、皆、マリー。娘たちも、皆、マリー。酔っ払ったみたいに、頭がくらくら。"
"ポーリー。こんな。"
ポーリーは、お祝いを渡す。
"幸せと健康を祈る。"
次々とお祝いが、渡される。
"家族の一員ね。日曜は、一緒に、食事を。"
"綺麗だわ。泣きたいほど。"
"カレン。心からの贈り物だ。" 
ヘンリーとカレンは、ダンスを披露する。
"大変、バッグが。"
" What? "
"お金が、全部入っているのよ。"
"心配するな。誰も盗まない。"

"電話、ない?"
"友達と一緒よ。"
"電話もしないなんて。"
"一々、電話する必要ないわ。"
"アパートくらい見つけたら。"
カレンの母が、カレンをなじる。
"やめて、ママが、一緒に住みたがったのよ。"
"結婚して1か月、彼は、全然帰らない。何て連中なの。" 
"どうしろと?"
"彼は、ユダヤ人じゃないのよ。どんな人たちだか、分かっていたの?父さんなら、必ず電話をくれる。"  
"出掛けやしないでしょ。ほっといて。人の気も知らずに。"
" How do you feel now? 彼はどこ?誰と一緒?"
"友達と一緒にいるわ。パパ。"
"パパは、辛いのよ。6週間も、お腹が悪いんだから。" 
カレンたちは、居間で休む。犬が吠える。カレンと母親は、立ち上がる。ヘンリーが帰宅する。 
"電話もせずに、どこへ行っていたの?心配したのよ。こんな事許さない。"
ヘンリーは、少し前庭の方に歩く。
"ママ。"
"まともな人間じゃないよ。" 
"どうした。"
ヘンリーは、引き返す。
"ほんとにイカれている。"
"お前、どうしちまったんだ。何だってんだよ。"
ヘンリーは、車を出す。
"理解できねえ。"

"皆んな、ヤクザの亭主持ち。ミッキーのパーティーで、世界の違いを思い知った。"
" Where are you from? ローレンス?いいとこね。私は、マイアミよ。悪くないけど、ユダヤ人ばっかり。"
"アンジー。駄目よ。"
"殴ってやりたい。"
"あの赤毛の男?"
"ゲートを通る時、触り回るの。言ってやった。触ると、手を切り落とすよ。"
"本気よ。ヴィニーに話したら、どうなるか。"
"もし話したら、きっと彼を殺すわよ。"
"それで、一生ムショは、困るわ。"
"ジニーの子ども、知ってる?カードの喧嘩で、銃を抜いたら、暴発して、1人は死亡、彼は、ムショ送り。お婆さんが、ショックで、死んじゃった。ジニーは、夫と息子が、ブタ箱。母親があの世。"
"彼女は、酒浸り。"
"辛いのね。"
"ただの大酒飲みよ。"
"何かあると、あなたは、すぐに同情するんだから。"
"皆、肌が荒れて、厚化粧。酷い顔だった。くたびれた様子で、着ているものも、安っぽい。パンツスーツとニット。"
"彼女は、年中、寝巻きでいるの。"
"子どもを、箒の柄や革ベルトで殴る話ばかり。でも、子どもは知らん顔。頭が変になりそう。"
"あんな生き方、あたしには無理。あなたが、ムショに入ったら、どうなる?"
"ジニーのご亭主は、なぜムショに入ったと?"
"ジニーから、逃げるためなんだよ。いいか、よく聞け。望まない限り、誰もブチ込まれたりはしない。俺は、何をやるにしても、ちゃんと手を回しているんだ。捕まるのは、黒人の強盗だけ。なぜか分かるか?逃げる途中で、ドジ踏むからさ。俺の事は、心配しなくて、平気だ。"
2人は、ベッドで愛し合う。 
"やがて、すべてが正常で、罪悪感もなくなった。ヘンリーたちは、せっせと細かく稼いで、やっていた。ほかの連中は、座って、施しを待つだけ。私たちの亭主は、ブルーカラーなのだ。余分に稼ぐには、手っ取り早くやるしかない。"

トミーが、脅す。  
"金庫はどこだか、言え。"
運転席から引きずり下ろし、銃で脅す。 
"動くな。いいな。"
トミーは、トラックに乗り込む。 
"やったぜ。うまく行った。アジトに戻って、山分けだ。"
運転手は、拳銃で撃つ。
"つながりは固く、よそ者の入る隙などなかった。仲間うちでは、どんな事も、普通に思えた。"
ヘンリーの家に、警察がやって来る。
"警察だ。家宅捜索させて貰います。令状は、ここに。"
"サインを。" 
" Anywhere? "
"そこへ。長くかかりますよ。"
"コーヒーでも、どう?"
"いや、結構。"
"じゃあ、どうぞ。"
"始めるか。"
"いつもうんざりした。警察は、彼を捜しているのに、私が、令状に署名させられた。でも、結局、わずかな裏金で、連中は目をつぶるのだ。"
カレンは、赤ん坊を抱いて、TVの映画を見る。
"私は、親切に応じるが、ジミーの奥方は、悪態をつき、唾を吐く。自分の家の床を汚して、どうなるの。弁護士を呼ぶ方が、利口だ。"
仲間の子どもの誕生会。
"何をするにも、いつも同じ顔触れだった。記念日、洗礼式は、お互いの家を、訪ね合う。子どもが生まれれば、一番にジミー夫婦が駆けつける。休暇で、どこかへ行く時も、仲間うちだけ。よそ者はいない。それが、普通なのだ。立派な夫を、誇りに思わないと。命を張って、お金を稼いで来るのだから。
"明日の晩は、ママに子守りを頼んだわ。"
"駄目だ。無理だ。仕事があるんだよ。"
"ママは、明日しか頼めないのよ。Please. "
"カレン。無理を言うなよ。"
ヘンリーは、ベルトに挟んだ札束を数える。

"行くぞ。"
" Wait a minute. 買い物に行きたいの。"
" How much do you need? いくらだ?"
"沢山。"
札束を取り出し、半分持たせる。

1970年6月11日 クイーンズ
バー。
"バッツ。"
"お帰り。"
"掛けてくれ。酒を持って来い。アイルランド人どもにも。"
"俺だけだぜ。"
ジミーが、答える。
"今夜は祝いだ。飲め。"
"乾杯。"
"シャバはいい。"
カップルがやって来る。
"ジミーだ。こいつは、ヘンリー。リサだ。"
"トミー、お前か。すっかり一人前だな。"
"忘れていたぞ。奴の出所祝いか。"
"どうした。来いよ。"
"待ってろ。"
"暫くだ。"
"トミー。6年振りなんだぜ。"
"驚いたな。見違えちまう。調子はどうだ?"
"服は、気にすんな。俺を、出し抜いたりするな。"
"俺の邪魔も、よしな。"
"昔の靴磨きに、また戻してやるぜ。あいつの渾名は、『唾磨きのトニー』。大したもんさ、靴は、鏡みたいにピカピカだ。町一番さ、しこたま稼いだぜ。Salut. トミー。"
"やらねえ。靴は、磨かねえんだ。知らなかっただろうが。もう靴は、磨かねえ。"
"カッカすんな。少しからかっただけだ。冗談さ。"
"そうは聞こえなかったぜ。"
"久しぶりのシャバで、浮かれているんだ。軽口くらいで、力むのは、よせ。謝る。本気じゃない。"
"俺も、悪かった。Salut. "
"靴磨きの用意をしな。"
"てめえ、ふざけやがって。クソったれの畜生め。"
トミーは、仲間に制止される。
" Com'on. Com'on. "
"タダじゃおかねえ。くたばり損ない。間抜けの老ぼれ野郎。クソ。奴を逃すな。押さえとけよ。"
トミーは、女と消える。
"強くなった積もりか?"
"済まん。悪く言う気はないんだ。"
"あれでか?You are nuts. 奴に行儀を教えろ。ジミー。俺の言うとおりだろ?"
" All right. All right. "
"旧交を温めていたら、いきなり狂いやがった。" 
"だけど、あんたが侮辱したのが、いけないんだ。"
"侮辱はしていない。酒をくれ。"
"飲めよ。店の奢りだ。"
"俺が払う。"
" No. No. No. 今日は、店の奢りだ。"
"奴のせいで、パーティーが、台無しだ。"
暫くして。
トミーが、バーに現れる。
"刑期を勤めて、やっとシャバに戻った。金が要る。家族を食わせないと。"
バッツは、ジミーと話し込んでいる。トミーが、背後に近づき、振り返ったところを殴る。ジミーも加勢する。ヘンリーは、店の扉を締める。
"汚ねえ口に、弾をぶち込んでやる。"
ジミーは制止される。
"靴が凹んだ。手下が捜し回る。"
"まずいぜ。どう始末する?"
"心配ない。絶対に、バレない場所がある。"
"店を汚したな。"
バッツを、タオルでくるみ、車のトランクに積む。
"トランクを開けろ。"
"シャベルが要る。"
車は、トミーの家に寄る。
"その辺にある。静かに。お袋が起きる。"
電気が点く。
"お前かい。誰かと思った。What happened? "
トミーは、母親にキスする。
"何でもない。ジミーに聞けよ。"
"何かあったの?"
ジミーは、トミーの母親をハグする。
"暫くね。どうしたの?何だか気になるわ。何事なの?皆んなが来てくれて、とても嬉しいわ。Go inside. 食事を作るから。眠れないわ。久しぶりに会えたもの。さあ、中へ入って。"
3人は、食事を摂る。
"うまいが。"
"話して頂戴。どこへ行っていたの?一度も電話をくれないで。"
"夜の仕事だ。今夜も、遅くに田舎道を走っていて、鹿をはねたんだ。それで、血が付いた。さっき言ったろ?ナイフを借りてって、いいかい?"
"後で返してよ。"
"可哀想に、鹿の前足を、車に巻き込んじまった。そいつを叩き切るんだ。ほっとけないだろ?ナイフは、必ず返すよ。"
"凄く美味い。"
" Thank you. いい娘を見つけて。"
"毎晩、見つけている。"
"身を固めて、落ち着くのよ。"
"毎晩、落ち着くけど、朝はまた飛び出す。"
"結婚しろ。"
"ヘンリー。どうしたの?喋らないのね。"
"なぜ黙ってんだ。"
"ほとんど食べていない。I'm just listening. "
"子どもの頃を思い出すわ。ある家に、一晩中、まるで口を利かない男の人がいたの。皆んなが聞いたわ。『どうして黙っているの?』、『だって、女房が、僕の倍も喋るから。』。すると、奥さんが、『うるさい、お喋り。』"
皆、笑う。
"イタリア語だと、もっと笑えるわ。"
"そいつは、間抜けなのさ。阿保なんだ。"
"トミーは、私の絵の話をした?"
" No. "
" Look this. "
男と犬の絵を見せる。
" Beautiful. "
"いい絵だろ。犬が、反対を向いている。"
"東と西を見ているのよ。"
"見ろよ。こいつは、白髪頭だ。犬も凄くいい。"
"誰かに似ている。"
一同笑う。
"そうとも。あいつだ。バッツだ。"
3人は、また車で行く。
"殺しは、当然の事だった。秩序を守る唯一の手段。組織からはみ出た者は、消される。時には、はみ出さなくても、消される。殺しが、癖になるからだ。詰まらない口論で、すぐに誰かが死ぬ。撃ち合いは、日常。人を撃つのは、ごく普通の出来事だ。だが、バッツを殺したのは、厄介な問題だった。奴は、大物で、ガンビーノの組の幹部だった。大物をバラすには、理由が必要だ。皆んなの承認がなければ、自分が始末される。土曜は、女房サービス。金曜の夜は、愛人と遊ぶ。"
ヘンリーは、クラブに遊ぶ。
"先週のサミー・デービスは、最高だったわ。凄いのよ。彼の物真似は、天才的なんだから。素敵よ。白人女だって、彼に恋しちゃうわ。"
" What? "
"私じゃない。例えば、スウェーデン女とか。"
"よくもそんな事。ナット・キング・コールとキスを?"
"私じゃないったら。でも、女は、彼の個性に弱いの。" 
"個性だと?それが何だ。" 
トミー。
"確かに、奴は、才能があるが、言葉に気をつけろ。誤解されると、大変だ。"
"彼の歌は、素敵よ。"
"もう言うな。よく分かった。奴は、才能がある。上手いよ。" 
男性シンガーが歌う。
ヘンリーは、愛人の家に泊まる。
家族で、パーティーに参加する。 
ポーリーが声を掛ける。
"どう思う?"
"何をだ?"
"例の噂さ。Down town. "
"いつかの男の事か?"
" No. ぷっつり姿を消しちまった奴さ。"
" Oh yeah. "
"分かるな?バッツだ。連中は、躍起になって捜している。"
"見当もつかない。あの晩、店を出て、姿を消しちまったんだ。"
"何か分かれば、教えろ。連中がうるさい。"
" OK. Yeah. "
"よし、食事だ。"

バー。ジミーとヘンリー。
"ヤバいぜ。例の埋めた奴。"
"聞いた。"
"掘り起こす。あそこに、マンションが建つらしい。"
"半年前だぞ。"
"構わん。すぐに掘り起こす。"
3人は、掘り返す。ヘンリーは、異臭にむせる。
"ヘンリー。早くやれ。お袋の飯が待っている。"
"おい、腕があったぜ。" 
"やめろよ。" 
"腿だ。"
"手羽だぜ。腿と手羽、どっちがいい?それともモツか?"
"ひでえな。" 
ヘンリーは、車のトランクを洗う。
"何事なの?"
"スカンクをはねたんだ。"
"酷いわ。凄く臭い。"

"ジャニスを、近くに住まわせた。週に、2回くらいは、泊まれる。どうせカレンは、何も尋ねない。" 
"全部、バレンシアよ。これは絹。シャム製よ。次は寝室。頼むわ。"
犬を、トミーに預ける。
"いいとも。食ってやるぞ。"
"クリスタルよ。ここが、一番大切な場所。"
"花模様が素敵ね。"
"ジャニスが、仕事で、嫌な目に遭い、雇い主を脅してやった。"
"彼女の好きなようにさせろ。"
"分かったのか?この次は、俺が相手だ。"
ジミーとトミーとで、半殺しにする。
ベッドでじゃれるジャニスとヘンリー。
"やめなさいよ。"
カレンが変な目で見る。

ジミーたちは、カードに興じる。
"スパイダー。水割りを持って来い。"
他の客の前に置く。
"ふざけるな。俺の酒は、どうした?"
トミーが怒る。
"酒を?" 
"注文したぜ。"
"何も聞こえなかった。"
"うすら馬鹿め。"
"誰かが、スパイダーって呼ぶのは、聞こえた。"
"ぶつくさ言うんじゃねえ。"
"よし、スパイダーって。"
"頭がおかしいのか?"
"あんたが、そう言った。"
"てめえ、いい加減にしろ。一晩中、つべこべほざく気か。"
"酒なら持って来ます。"
"そうとも、早く持って来い。"
周囲は、げらげら笑う。
"もたもたすんな。走れ。もっと素早く動け。さっさと酒をよこせ。ボガードの映画の題は?カウボーイ役の奴。"
"オクラホマ・キッド。"
"俺だ。俺は、キッドだぜ。踊れ、踊れ、馬鹿野郎。"
トミーは、拳銃を振り回し、発砲する。スパイダーの足先に当たる。
"これで、踊れる。"
"どうだ。"
"足に命中だ。"
"足を撃ったから、何なんだ。"
"タオルを。"
"なかなかよかった。"
"ベン・ケーシーを呼べ。はって行けばいい。"
"医者へ連れて行け。"
"骨が、粉々だ。"
"うるせえんだ。一々騒ぐんじゃねえ。俺への当て付けか。Accident. ヘボ芝居め。"
"続けるか?"
"ああ、800だな。"

"2週間も留守よ。今夜は、家にいて。"
"大人気ない事言うな。俺は、出掛ける。"
"キーは、捨てたわ。"
"頭がイカれたのか?"
"そうよ。何もかも変よ。"
"やめろ。いいか。"
" No. 顔を見りゃ分かる。あなた、嘘をついている。"
電灯を放り投げる。
" Get out. 2度と、戻って来ないで。"
"カレン。君の思い過ごしだ。"
"あなたは、最低。"
"異常だ。" 
"お抱え売春婦の所へ行けば?お似合いよ。2度と戻らないで、我慢できない。"
長女が、怪訝そうに見ている。

ヘンリーは、歓喜の叫びを上げる。カード遊び。
足に包帯を巻いたスパイダーが、酒を運ぶ。
"お待たせ。"
" Thank you. スパイダー。"
"頭よりデカい包帯を巻いていやがる。今に、歩行器で、現れるぜ。踊れるんだろ。ステップを踏んで見せてみろ。阿保野郎。全く哀れな姿だぜ。"
"クソ食らえだ。"
"俺の耳を疑うぜ。おい、いいか。お前に乾杯だ。大した野郎だ。肝っ玉がある。もうからかえねえな。足を撃たれて、クソ食らえか。トミー、ほっとく気か。だらしねえぞ。どうした。しっかりしろ。"
トミーは、スパイダーを射殺する。
"どんなもんだい。これでいいだろ?"
"何て事しやがる。何の真似だ。頭は確かか?お前をからかったんだ。気でも狂ったか?"
"からかった?ふざけんな。"
"なぜ、あいつを撃ったんだ。"
"死んでいる。"
"そうさ。腕がいいんだ。"
"至近距離だ。"
"文句あんのか?あんな奴、どうせ腐ったくずだ。"
"馬鹿野郎。信じられん。穴を掘って、始末しろ。俺は、手を貸さん。"
"やりゃいいんだろ。初めてじゃねえんだ。何度も掘っている。シャベルはどこだ?"

カレンが、ヘンリーの愛人宅のベルを鳴らす。
" Hello カレンよ。話があるの。"
子どもを連れている。
"切らないで。話があるのよ。夫に近付かないで。いい?Hello. Open the door. Answer me. 皆んなに言ってやる。あんたは、アバズレだって。"
"管理人さん。教えてあげるわ。2Rの女は、売春婦よ。"
"ジャニス・ロッシ。よくお聞き。ヘンリーは、私の夫よ。自分の男をお探し。"
寝ているヘンリーに、銃口を向ける。
"起きて。"
"カレン。何だよ。狂ったのか?"
"そうよ。2人とも、殺してやる。"
" Take it easy. OK? "
"あの女を愛しているの?そうなの?"
"カレン。I love you. "
"嘘だわ。"
"頼む。気を付けてくれ。落ち着いて。"
"撃てる筈ない。彼と別れる事さえできないのに。どんなに傷ついても、心の奥では、彼に惹かれていた。彼を譲るもんか。あんな女に負けたくない。"
"カレン。そいつを置け。お前を愛している。お前の事だけを。銃を置くんだ。カレン。頼むから。"
怯んだカレンを組み敷く。
"何の真似しやがる。狂ったのか?外で、バラされるかも知れないのに。家に帰って来ても、このザマか。お前を殺してやる。どうだ。どんな気分だ。"
ヘンリーは、部屋を出て行く。
" I'm sorry. "
カレンは、うめくように言う。

ジャニスの家に、ジミーとポーリーがヘンリーを訪ねる。
"ジミー。元気?"
" Hi ポーリー。"
"タバコをくれ。"
"ほかにはいい?"
"いいよ。何か飲むか?ビールか。"
" No. No. "
"中華か?"
"まあ、座れ。"
"カレンが家に来たよ。酷い状態で。何とかしろ。騒がれるとまずい。"
"カッとなったら、何するか、分からん。"
"気性の激しい女だ。気を付けろ。ガキもいる。すぐにとは言わん。よりを戻せ。世間体を考えろ。"
"毎日、泣きつきに来られちゃ、たまらん。うんざりだ。これ以上、面倒見切れない。"
"お前は、自由だ。"
"何を、やったって構わん。それは、皆んなも承知だ。だが、家族の元には、帰るべきだ。Do you understand? OK? 帰ってやれ。シャキッとしろ。Right? "
"カレンと話すよ。俺がまとめてやろう。彼女に言ってやろう。お前は、戻って、やり直す。新婚の頃みたいに。何もかもうまく行く。俺に任せろ。お前は、トミーの代わりに、タンパへ行け。ジミーとな。"
"一緒に来るんだ。OK?"
"数日、のんびりしろ。日光浴して、ゆっくり過ごせ。楽しんで来い。その後、カレンの元へ。離婚はさせない。野蛮人じゃないんだぞ。"
"彼女は、絶対、離婚しない。奴を殺しても。"

フロリダ州タンパ2日後
車の中で、2人がかりで、男の顔を、前のシートに打ち付ける。
"持っていない。"
"払うんだな。" 
"金をよこせ。"
"俺は、持っていない。本当だ。"
" Let's go. "
タンパ市動物園
"ライオンの所へ。"
"ライオン?俺は、御免だ。"
ジミーは、男を、連れて行く。
"投げ込め。"
" No. "
"ライオンは効果的だ。奴は、震え上がった。"
"必ず払うよ。週末は、競馬場で過ごした。帰ったら、偉い事になっていた。俺たちが、新聞記事に。最初、訳が分からなかったが、痛めつけた男の妹が、FBIのタイピストだと判明。とんでもない女だった。全員をたれ込んだ。ジミーも俺も、自分の兄も。陪審は、6時間で有罪判決。ジミーて俺は、10年の刑。"
"10年の刑を申し渡す。身柄は、合衆国検事局に引き渡す。"
バー。
"ヘンリー。よき監獄、よき人生に乾杯。早く出て来い。"
"俺たちが必要な時は、言えよ。" 
カレンは、壁にもたれて、見ている。
トミーとハグする。
"ホモに気をつけな。やり返しちまいな。"
カレンと抱き合う。
"できたら、電話するよ。"
ヘンリーは、車に乗り込む。 
"刑務所へ。"

"ムショでの楽しみは、飯だ。パスタで始まり、肉か魚料理と続く。ポーリーは、法廷侮辱罪で1年の刑。下ごしらえ担当。ニンニクを極薄に切るので、少しのオイルで溶ける。うまいやり方だ。ヴィニーは、トマトソース係。"
"いい香りだ。3種類の肉団子だ。仔牛、ビーフ、ポークさ。ポークが一番だ。
"玉ねぎが多過ぎるが、うまいソースだ。"
"玉ねぎを、入れ過ぎるな。"
"そんなに入れてないぜ。小さいの3っつだ。"
"3っつ?トマトの缶詰は?"
"デカい缶を2つ。"
"肉は、ジョニー・ディオの担当。グリルがないので、フライパン。ムショ中が匂ったが、ステーキは、抜群の味だ。"
"焼き加減は?"
"ミディアム・レア。"
"ミディアム?気取り屋め。"
"刑務所と聞くと、鉄格子の向こうに並ぶ囚人たちを想像する。だが、俺たちの監獄は、悪くない。ジミーだけ、アトランタに収監。"
"ステーキを2枚、頼む。"
"ほかの囚人どもは、豚みたいに辛い日々。俺たちは、ムショの主だった。"
"顔が潰れるほど、2人を叩きのめした。"
"密告する看守もいなかった。"
"昔は、どの家も、ドアは開けっ放しさ。"
"遅れて済まん。看守に手間取った。"  
ヘンリーが、袋の荷物を運び込む。
"痛い目に?"
"もうやったよ。"
"食料は?"
"パンを持って来た。"
ポーリーに、投げてよこす。
"唐辛子、玉葱、サラミ、生ハム、チーズ、酒も。赤ワインも。"
" OK. それじゃ、飯だ。"
"白もある。" 
"よし、食おうぜ。いいぞ、ヴィニー。"
"パンを追加。"
"明日は、サンドイッチで、ダイエットしようぜ。"
ヘンリーは、袋から、薬を取り出し、ポケットに入れる。
"また後でな。"
"公園に散歩に行くのか?"
ヘンリーは、囚人に薬を渡し、金を受け取る。
"まだか?"
見て見ぬふりの看守が尋ねる。
"済んだぞ。いい週末をな。"
面会を求める人々で、ごった返す。カレンも、加わる。
"ここにいなさい。手をつないでいて。"
カレンは、面会記録簿に、ジャニスの名前を見つける。
"何だ?"
"記録に、彼女の名前が。彼女に、涙ながらに、仮釈放を訴えさせたら、どう?"
"俺は、ムショにいるんだぞ。来るなとは、言えない。" 
"食料も、あの女に頼めば、いいわ。看守と対決させなさい。"
カレンは、乱暴に、差入れをテーブルに広げる。
"馬鹿な真似は、よせ。"
"これも、嫌。そうよ。あの女に運ばせて。"
首から、包装された白い粉を取り出す。
"カレン、よさないか。"
"やらせればいいのよ。"
"誰も助けてくれないの。独りぼっちよ。モーリーは、お金がない。レモに、借金を返してと言ったら、酷いの。子どもと警察へ行き、生活保護を受けろと。"
"心配するなったら。"
"ポーリーも、出所してから、会ってくれない。"
"前に言っただろ。誰も頼りにできない。当てにするな。ポーリーも。仮出所中は、何もしてくれない。しっかりするんだ。頼んだ物を届けてくれ。ピッツバーグの奴と組む。来月には、何もかも、うまく行く。"
"怖いわ。ポーリーにバレる。"
"もう、奴は頼れない。食わせちゃくれないだろ?2人で力を合わせるんだ。慎重に、事を運ばないと。"
"2度と、あの女に。"
"会わない。"
▶︎出所。
4年後。
ヘンリーは、出所する。カレンが迎えに来ている。帰宅する。
"寂しかったわ。"
"ずっといて。"
"絵を描いたの。おうちと虹の絵よ。コーラスの発表会があるの。来てくれる?"
"おうち、どこ?"
"荷造りしろ。引っ越す。金の心配はいい。新居を探せ。明日、ピッツバーグで、1万5,000受け取る手筈だ。"
"明日は、出頭する日よ。" 
"心配しなくていい。上手く行くよ。" 
"ポーリーに会うか?"
娘たちは、喜ぶ。
ポーリーたちとの会食。
"何が欲しいの?"
"うまいだろ。ムショとは、違う。"
ポーリーとヘンリー。庭を歩く。
"ここでは、よせ。"
"何を?"
"妙な粉に手を出すな。ムショでの事は言わん。だが、今後は、俺が許さん。"
"俺は何も。"
"惚けるな。絶対によせ。手を出すな。ジミーには、気を付けろ。よく稼ぐが、無茶をする。"
"俺も無茶をすると?"
"トミーも、カッとなると、見境なく人を殺す。"
"気を付けろ。"
"ちゃんと心得ているさ。"
"グリブスの二の舞は、願い下げだ。奴は、70歳だが、ムショでくたばる運命だ。俺は、息子でさえも警戒している。奴は、売人に声を掛けただけで、20年の刑だ。俺は、絶対にご免だ。騒ぎは起こしてくれるな。分かっているな?粉を扱う奴がいたら、言え。誰でもだ。"
" Yeah. Ofcourse. "
"1週間後、ピッツバーグのブツをさばいた。大当たりだ。サンディーの家で混ぜた。彼女は、吸ってばかり。実に、美味い商売だった。2週間で、1万2,000ドル稼いだ。家の頭金も払い、万事好調だった。たまに、サンディーに『愛してる』と言えばいい。何もかも完璧だ。ピッツバーグのブツなら、ポーリーは気づかない。うまく行き過ぎて、人手が足りなくなり、ジミーとトミーを引き入れた。"

保護監察課。
"コンウェー。"
"給与明細を。"

"4か月半もかかったのよ。"
"凄いわ。"
"私がやったの。気に入った?"
"素晴らしいわ。"
"それは、特別に作らせたの。座ってみて。もう最高なんだから。OK? Are you ready? 壁をよく見てて。"
スイッチを入れると、壁が開き、TV台が出て来る。
"これも特注なのよ。"
"これは、輸入品なの。物凄く見事でしょ。"
"ジミーと話をしたか?"
"今、調べている。"
"エールフランスを凌ぐ大きなヤマだ。やるんだろ?"
"まず調べてから、どうするか決める。いいな。"
"分かっているさ。でも、数100万ドルにはなる。2年も手なずけた奴の情報だ。今まで2万も使った。デカく稼いで、引退する。足を洗って、夢を叶える。"
"モーリー。飲もう。"
"ジミーが組んだ面々で、米国史上最大の盗みをやる。ルフトハンザだ。トミーとカーボーンが、守衛を脅し、我々を中へ。フレンチーとジョーが、全員を集め、ジョニーが一人残らず、縛り上げる。スタックスもいた。ギターを弾いて、歌う気のいい奴。彼の役目は、トラックを盗み、用が済んだら、処分すること。モーリーには、閉口した。自分の計画だからと、ジミーに、前払いを迫った。何でも愚痴を言う。そういう奴だ。"
"俺の方は、子守のロイスを引き込んだ。"
"順調か?" 
"ピッツバーグの奴らは、最低。"
"そんな事ない。"
"金になるだろ。"
"先週の赤ん坊と同じ?"
"あれは、妹の子で、これは、友達の子。"
ヘンリーは、ロイスのバッグから、白い粉のパックを取り出す。
"あなたにそっくり。"
"スチュワーデスにも言われた。"
サンディーは、ヤクを決めまくる。
"いい加減にしろ。サンディー。"
"いいでしょ。沢山あるから。"
"やり過ぎだ。それで、やめとけ。"
"ちょっとどこへ?"
"よしてくれ。仕事がある。キーは、どこだ?"
"そこよ。"
"豚小屋みたいに不潔だ。皿くらい洗え。"
"爪が傷むわ。" 
"そんな事知るか。粉だらけだ。パクられると、困る。何すんだ。"
"まだ行っちゃ、駄目。私が、先よ。"

"ケネディ空港ルフトハンザ貨物の強奪は、被害総額が、全く不明。FBIは200万ドル、空港警察は400万ドルと。"
シャワーを浴びるヘンリーは、叫び声を上げる。
"してやったぞ。"
"現場から、中継で、報告します。恐らく、史上最高の強奪と思われます。"
ヘンリーは、また叫ぶ。

ジミーが、両手を広げ、ヘンリーを出迎える。
"どうだい。天才だろ。"
カップルが現れる。
"俺の女房だ。ジミー。来いよ。見せたいものがある。"
駐車している車を見せる。
"豪勢だろ。女房のために買ったんだ。いい車さ。"
"俺の言った事を忘れたか。忠告した筈だ。当分の間、派手に金を使うなってな。"
"新婚の贈り物だよ。お袋の名前で買った。"
"奴と話がある。"
男の妻を制する。
"お前、阿保か。"
"なぜ怒る。"
"デカいヤマをやったんだ。目立つ車なんか、買いやがって。"
"お袋の名義だよ。" 
"誰の名義でも、同じだ。何も買うなと言った筈だ。頭を使ったら、どうだ。"
"なぜだ。"
"足が付けば、俺たち全員が、パクられる。どうした、分からないのか?しっかりしろ。"
"済まない。名義は。"
"何だと?文句でもあるのか?俺は、何て言った?何て言った?何も買うな。分かったな?"
"目立ちやがって。"
また女房連れが現れる。
"一体、何の真似だ。"
" Excuse me.  Excuse me. "
ジミーは、夫人のコートを脱がす。
"そいつを脱げ。早く脱げ。一目につく事はするなと言ったろ。たった2日で、キャデラックやミンクか。返して来い。買った所に、突っ返すんだ。持ってけ。"
2人は出て行く。
トミー。
"スタックスに話がある。色目を使うな。"
"嫉妬深いの。浮気しなくても、殺される。"
"目立った事をするな。普段どおりにしていろ。"
モーリー。
"あちこち探したぞ。元気か?"
"俺に金をくれ。"
"モーリー。そう焦るな。"
"金が要る。金が欲しいんだ。役目は、果たしたろ。俺の取り分をくれ。どいつも、めかし込んでいる。俺だけ、ボロのままだ。話がある。ジミー。"
"50万、貰える筈だ。奴にも、一世一代の大金だ。"
"俺から話す。飲んでいろ。"
ヘンリーが、言いくるめる。
"許せん。許せんぞ。"
"あなた、大丈夫?"
"ジミー。"
" Merry Christmas. お前の分だ。"
札束を渡す。
"やったぜ。" 
ドアをノックする音。
"ジミー。"
"誰だ?ピートか。待て。" 
"派手に、札びら切るな。慎重にやれ。" 
" Yeah. "

"カレン、ジュディー、ルース。一番高価なツリーだぞ。" 
家族で、クリスマスの飾付け。
"ママ、どう?"
"皆、可愛いわ。"
"キラキラの服、好き。"
" Merry Christmas. "
カレンにプレゼントを渡す。
"それと、ハヌカ祭りだ。"
札束を渡す。
"欲しい物を買えよ。"
"ルフトハンザは、極め付き。一生に一度のヤマだ。現ナマで600万。凄い金額だ。"

"スタックス。開けろ。何してやがる。"
"今、開けるよ。"
"スタックス。やっぱり寝てやがったな。"
トミーたちが入って来る。
"コーヒーか?"
"給仕じゃねえぞ。フランキー。淹れてやれ。"
"女と一緒かと思った。"
"いたんだ。どこへ消えた?"
"相変わらず、エロ本や女か。"
"何時だ?" 
"11時半だ。9時に行く予定だったぞ。てめえの葬式にも、遅れて行きな。"
トミーは、背後から、スタックスの頭を撃ち抜く。
"何を見てる。モタモタすんな。行くぞ。本気で、コーヒーを淹れる馬鹿がいるか。"
"スタックスのミスだ。トラックを処分せず、女と酔い潰れ、目を覚ます前に、サツにトラックを発見された。TVでは、ハンドルから指紋が出たと報道。奴の逮捕は、目前だった。"

パブに集うジミーたち。
"話がある。"
ヘンリーが、ジミーに話し掛ける。
"いいから飲め。祝いの酒だ。"
"話があるんだ。"
"スタックスが。"
"心配ない。"
"でも、FBIが。"
"奴らが、どうだってんだ。"
"新聞にも、出ている。"
"だから、何だ?"
"TVや新聞が、かぎ回っている。"
トミーもやって来る。
"心配か?"
"お前、気にし過ぎるぜ。すべて絶好調だ。 話してないのか?"
"まだだ。"
"驚くなよ。こいつを幹部にしてくれる。"
"ポーリーが?トミー。"
"話合いで、ポーリーが、OKした。信じられるか?幹部だ。俺たちのボスになる。"
"凄いよ。おめでとう。"
"牛耳ってやる。"
モーリー。
"ジミー。あちこち捜したぞ。お前に話がある。"
ヘンリーは、モーリーを制する。
"俺が、吹き込んだ。"
"分け前をよこせ。金を貰うまで、帰らん。アイルランドのチンピラめ。クソ。金をよこせ。奴に言え。"
"黙る気になったか?金は、必ずやるから、騒ぎ立てるのは、よせ。俺を見ろ。いいか?心配しなくていい。"
"ヘンリー。"
" What? "
"お前もアイルランド系なんだろ?"
"あんな神経質なジミーは、初めてだ。酷くイラついていた。"
"女房に喋るぞ。"
"モーリーが?"
"モーリーをばらす気だ。そうと決まれば、あっと言う間に、事が運ぶ。"
"奴は、何だって喋る。馬鹿な事ばかり。誰も、相手にしない。本気で、聞きやしないさ。"
"今夜、連れて来い。"
"時間を稼ごうとした。殺しは、やめとけと、ジミーに言うために。だが、表向は、命令どおりに行動した。"
"そいつを押さえつけて、袋叩きだ。カッとして、殺すところだった。店に入ろうとしたが、俺は、後ろを見たくなかった。ジミーが、そいつの頭をつかんで、わめいていた。やっちまえ。"
"どうすりゃいい?俺は、飛びかかって、頭を殴った。めちゃくちゃに殴った。跡形もなく、潰れちまうほどに。血の海だった。俺も血塗れ。"
ジミーが、ヘンリーに言う。
"今夜の事は、なしだ。"
"俺は、ほっとした。奴は、殺されると思っていないし、言っても、信じまい。"
"聞いてくれ。"
"うるせえ奴だ。参ったぜ。"
"俺と話がしたいのか?"
"本当にしつこい奴だ。"
"俺は、お前が好きだぜ。何でもする。"
"なら黙りな。"
"コーヒーを。"
"どこで?" 
"大通りの店へ行こう。"
"どの店だ?"
"24時間営業のがある。"
"持ち帰りも?ベルに、菓子でも買って帰る。"
車に乗り込む。
"ボストンのバスケット試合の八百長の件だが。"
ローリーは、うなじをトミーに、アイスピックで突かれる。
"うるせえ野郎だ。"
"うんざりだ。"
"始末は?"
"切り刻んで、車ごと処分しろ。"
"フランキー。やっちまおう。"
"どこへ行くんだ。馬鹿。"
"切り刻む。"
"チャーリーの所でやるんだよ。"
"何やってる。早く出せ。弾をぶち込むぞ。急げ。"
"エンジンが。"
"そんなの知るか。さっさと車を出せ。"

"ベルよ。開けて。"
ヘンリーが、ドアを開ける。
"モーリーが帰らない。何かあったのよ。"
"落ち着け。"
"何かあったに、違いない。"
"どこかで、酔い潰れている。"
"27年間、電話がないのは初めて。何かあったのよ。"
"着替えして、家まで送るよ。そして、彼を探す。"
"あちこち電話したけど、いない。"
ジミーとヘンリー。
"ベルになんと?"
"何でもいい。女と逃げたとでも言え。"
"FBIだ。構うな。阿保どもめが。"

"懲りない奴らだ。"
ジミーが、車の窓を叩く。
"ドライブに行くぜ。"
"適当にやれ。"
" See you later. "
ジミーの車が発進する。トミーが続く。

ピンクのキャデラック。子どもたちが、近づく。男女の血塗れの死体。

"ジミーは、強奪とのつながりを断とうとした。"
ゴミ収集車から吐き出される死体。
"だが、俺には、クリスマスに金をくれた。俺は、口をつぐんだ。金は、ジミーが握っていたからだ。ポーリーにも、金をやり、黙らせた。彼は、雑魚どもに分け前をやるより、殺す方を選んだ。俺には、関係ない。ピッツバーグのコネで、ジミーも稼いでいたからだ。強奪の後、数か月して、方々で、死体が見つかった。カーボーンの冷凍死体は、解剖するために、2日もかけて、解凍した。ジミーは、子どもみたいに喜んでいた。ピッツバーグは、金になるし、ルフトハンザも静かになった。そして、いよいよトミーが、幹部になる日が来た。ジミーは、我が事のように興奮し、トミーの家に、4度も電話した。『儀式』が済んだかどうか知るために。"
"ママ。どこだい?"
"じゃあ、行って来る。"
"よく見せて。立派だこと。気をつけて。幸運を祈っているわ。"
" I love you. 変な絵は、描くな。"
"神のご加護を。"
"俺たちは、お互いを『グッドフェローズ』と呼んだ。『こいつはいい奴だ、仲間だ』という意味だ。俺たちは、グッドフェローズ・ワイズガイなのだ。ジミーも俺も、幹部にはなれない。アイルランド系だからだ。マフィアの幹部は、生粋のイタリア人だけ。祖国の親類まで、調査されるのだ。選ばれるのは、最高の栄誉。ファミリーになれるのだ。誰にも邪魔されない。そして、幹部でない相手は、潰してもいい。つまり、何でも許されるライセンスだ。"
"ヴィニー。あんたが幹部になったのは?"
"もう、30年も前だ。"
"30年か。思い出も多いだろ?組も、まだ小さかった。"
"トミーの出世は、俺たち全員の誇りだった。身内から、幹部が出たのだ。"
トミーは、部屋に通されるが、背後から、頭を撃ち抜かれる。
ジミーが、公衆電話をかける。
"誰だ?"
"ヴィニー、どうした?"
"まずい事になった。努力はしたが。奴は消された。どうしようもなかった。"
"何の事だ。"
"始末されたんだ。"
ジミーは、受話器を叩き付ける。ジミーは泣く。
"トミーが、バラされた。"
電話ボックスを、突き倒す。
"バッツの仇を取られたのだ。ほかの多くの事も。手出しできなかった。バッツは大物。トミーは違った。黙って見ているだけ。イタリア人同士の揉め事なのだ。葬式で見せられぬよう、顔まで撃たれていた。"
1980年5月11日(日曜日)午前6時15分
ヘンリーは、紙袋に、大量の拳銃を詰めて、家を出る。
"その日は、忙しかった。ジミーの家に、銃を届け、夕食のため、弟を病院へ、迎えに行き、アトランタに運ぶブツを受け取り、ロイスに渡す。"
家を出た時から、上空をヘリが飛ぶ。
"ジミーは、銃の金を払おうとしない。銃が欲しいと言うから、買ってやったのに。"
"駄目だ。サイレンサーに合わん。金は払わないからな。"
"文句を言い、不機嫌にドアを閉めた。"
"ヤクなんかよせ。頭がイカレるぞ。"
午前8時5分
"ピッツバーグの奴らが、銃を欲しがっていた。ブツを受け取る時に、売りつけよう。"
前方で事故。急ブレーキを踏む。 
午前8時45分
"病院に着くと、医者がうるさく聞いた。"
"酷い顔だぞ。"
"たった今、事故を起こしかけて。"
"徹夜で、騒ぎ回っていたとも言った。"
" Com'on. 検査して上げよう。"
"医者は、精神安定剤を10mgくれた。弟を、家に送り届け、カレンを迎えに行く。"
"マイケル。ヘリコプターが見えるだろ?前方だ。朝から尾けている。"
"馬鹿を言うな。" 
"間違いない。ヤバくなる。もう、3度見た。家を出てからずっとだぜ。俺の行く所、張り付いて来る。"
午前11時30分
"料理もやる。筋肉をトマトソースで煮る。マイケルの好物のパスタに、唐辛子を火であぶり、インゲン豆のニンニク炒めと美味いカツレツも用意。オードブル用に、軽く揚げる。家にいたのは、1時間。夕食を早く済ませ、カレンと銃を売り払い、ブツを受け取り、ロイスにアトランタへ運ばせる。空を見ると、ヘリの姿はなかった。"
"ソースを頼む。おじさんを手伝うんだぞ。弟に後を任せ、カレンと出掛ける事にした。"
"どうしよう。まだいるわ。ほら、ついて来る。君のお袋の家に行こう。まずいだろ。"
" OK. 慌てないで。世の終わりじゃないわ。"
カレンの実家のガレージに、車を止める。銃を大きな缶の中に隠す。
"外の物は、何も触るなと言って来い。"
"あなたの母親の家に行けば?"
空にヘリは、いない。
"買い物へ。"
午後12時30分
ヘンリーは、電話する。
"本当だ。朝からマークされている。"
"気のせいだと。ヘリを一目見りゃ、奴も肝を冷やす。中へ入ろう。"
午後1時30分
ヘリはいない。
"お袋の家へ。"
銃をまた抱える。
午後3時30分
銃を売り付ける。
"こいつは、いいぜ。俺が、気のせいと言っただろ。"
" Yeah. "
"ヘリはどこだ。見つけて来てやろう。"
"やめて。もう見たくもない。"
"家に帰り、ロイスに渡すブツを準備する。まず、サンディーの家で、キニーネと混ぜる。サンディーには、手を焼く。家で料理を済ませ、ロイスの用意をする。"
"いつ来るの?"
"1時間後だ。泊まらない。弟が来ている。今はよせ。話は、後にしろ。Good bye. "
" Hello. "
"準備はいいか?"
" Yeah. "
"ソースが焦げないよう、混ぜろ。"
"ソースを焦がすなって。"  
弟に声を掛ける。
"言ったとおりにしろよ。真剣に聞け。重要な事だ。電話する時は、外へ行け。家からはかけるなよ、いいな?"
"何度言うの。そんなの分かっているってば。"
"言ったとおりにするんだ。"
"うるさい。" 
"いいから、ちゃんとやれ。"
" OK. "
" Fuck'in unbelievable. どいつもこいつも、最低の女どもばかりだ。"
" What did he say? "
"別に。"
"結局、ドジを踏んだ。あれほど言ったのに、すべて無視し、家の電話を使いやがった。盗聴されたら、終わり。ブツが家にあり、何時の何便に乗るかもばれる。"
午後6時30分
"家に戻り、すぐ料理だ。ロイスの便まで、数時間。弟に火加減を任す。一日中、ヘリとトマトソースの見張り。サンディーの家でブツを混ぜ、戻ってソースを混ぜる。"
午後8時30分
ヤクを試す。
"あたしとやって、出て行くの?別の所へ行くわけ?"
サンディーを後ろから抱きしめる。
"俺を信じろって。どうだ?信じているか?済んだか?"
" Yeah. "
ヘンリーは、ブツを持って出掛ける。玄関で嘲笑する。
"嘘つき。大嫌い。"
午後10時45分
家で、食事。
"犬に食べさせないで。テーブルで、お皿からなんて、やめて。"
"よしなさい。"
ヘンリーは、席を立つ。
"帰らなきゃ。"
"何を言い出す?ブツを足にテープで張って、出掛けるんだ。"
"帽子を取りに行く。" 
"何だって?You are kidding? 帽子を取りに、戻るってのか?"
"お守りなのよ。あれがないと、嫌だわ。"
"ロイス。Do you understand? 何を運んでいるか。"
" I don't care. 帽子がなくちゃ、嫌。"
"どうしても取りに戻ると言い張るので、ブツを台所に隠し、表へ出た。"
車を出そうとするが、警察に取り囲まれる。銃が突き付けられる。
"警察だ。動くんじゃない。頭をブチ抜くぞ。車を止めろ。"
"バラされると思ったが、奴らはデカだった。デカで、命拾いした。ワイズガイなら、一言も言わず、黙って殺す。"
カレンは、半狂乱となる。
"ドアを閉めて。"
ブツを、トイレに流し、拳銃をパンティに、挟む。

余波
"パクられたのは、いつだ?正直に言え。何も喋らないなら、それでもいい。25年は打ち込まれるんだ。観念するんだな。"
"あのヘリは、ルフトハンザを追っていると、思っていたが、麻薬捜査班だった。1か月も、盗聴や張込みをやっていた。仲間も全員、挙げられた。"
"吐かないなら、一晩中、後悔させてやるぞ。25年、臭い飯だ。頭もイカれちまうぜ。"
"食料の買い出しか?菓子作りか?特別美味い粉でも、入れようってのか?どうだ?"
"あばよ。阿保め。別荘送りだ。"

"ジミーが、お金を用立てるって。どうなっているのか、知りたがっている。"
カレンが面会する。
"ほっとけ。ポーリーと片をつけないと、殺される。"
"ここなら安全よ。"
"ムショだろうと、殺される。俺の口を封じる気だ。ヤバいんだよ。ここから出してくれ。"
"カレンは、母親の家を売って、保釈金を積んだ。ムショを出た途端、俺は殺されると感じた。ポーリーは怒っていたし、ジミーも穏やかではない。ポーリーが、ジミーも、ヤクに関係していたと知れば、俺より先に、ジミーを始末する。This is bad time. 家に着くまで、不安だった。デカに見つからなかったヤクを、売って金にし、片が付くまで、身を潜めようとした。"
"例のブツは、どこへやった?" 
"トイレに流したわ。"
" Why? "
"警察に踏み込まれて。'
"6万ドル分だぞ。あれしか金はないんだ。"
"捜査令状を持っていたのよ。"
"あの金が頼りだったんだ。なぜ、そんな真似を?"
"サツに見つかるからよ。"
"見つかるもんか。"
"絶対に、見つかるわ。見つかったに、決まっている。"
"なぜ流した。なぜだ?なぜやったんだ。Oh my  God. Oh my God. "
2人は、泣きながら抱き合う。銃を手に、ヘンリーは、ベッドに寝そべる。
"ポーリー、済まなかった。"

"何もかも、めちゃくちゃだ。"
"とんだざまだな。"
ポーリーが吐き捨てる。
" I'm all right now. 信用してくれ。誓うよ。ヤクとは、手を切った。"
"お前は、嘘をついた。俺を騙した。恩を仇で、返したんだ。"
"会いに来るのが、辛かった。あんたに合わせる顔がない。I'm shame now. ほかに、行く所がない。あんただけが、頼りだ。助けてくれ。お願いだ。"
" Take this. "
金をやる。
"今後は、他人だ。"
"たった、3,200ドル。それだけよこした。それが、俺の命の値段だ。棺桶代にもならない。"

"逃げよう。"
"嫌よ。どうしろと言うの?何もかも捨て、身を隠すの?そんなの御免だわ。"
"ここにいたら、殺される。お仕舞いだ。"
"深入りし過ぎたのよ。まともじゃないわ。"

ジミーとカレン。 
"奴は、どうしている?"
"元気よ。ヤクとも切れたわ。"
"そいつは、何よりだな。"
"サツに、何を聞かれた?"
" I don't know. それどころじゃないの。お金はないし、娘たちも、read papers. "
" Call me ok? 奴に言ってくれ。大事な話がある。"
"ここに来たのは、内緒なの。怒るから。"
"持ってけ。2,000ある。何とかなる。ディオールのドレスがある。持って行っていいぞ。"
" For mama. "
" Yeah. ここじゃない。この先にある。すぐそこだ。OK?"
"じゃあまたな。"
" Thanks. "
" Don't worry. "
" That's right. "
"忘れずに、連絡くれよ。"
" Over here? "
"その先だ。"
カレンは、歩を進めて、振り返る。
"その先を、曲がった所だ。その先を右。"
男たちが、荷物を降ろしているのを見て、引き返す。
"遠慮するな。入れよ。"
"やめとくわ。急いでいるの。ママに、娘たちを頼んだから。また来るわ。"
カレンは、車に乗り込む。家に着く。ヘンリーが、拳銃片手に、出迎える。
" What happened? カレン。"
"怖かったの。"
"何があった?"
"恐ろしかったの。もう平気。"
" You all right? "
"組織の奴らは、前触れもなしに、相手を殺す。何も言わない。映画みたいに、言い争いなどしない。殺し屋は、親しげに、微笑みながら、現れる。最も、助けが必要な時、力になってくれるべき者が、冷酷に忍び寄る。ジミーとは、客の多い店で会った。予定より15分早く着くと、ジミー was already there. 人の出入りが見える窓際の席に座っていた。尾行されていないか確かめ、緊張し、何も手をつけなかった。表向きは、ごく普通に、俺の裁判について、話した。だが、内心では、俺が密告するのを恐れていた。"
ジミーは、眼鏡をかける。
"何度も言ったが、電話で話をするな。分かっているな?大丈夫さ。裁判には勝てる。お前、いつかのガキの事、覚えているだろ?"
" Yeah. "
"パクられたら、全員を売りやがった。奴の隠れ場所を知っている。始末しとこう。"
"アンソニーとお前じゃ、やれないか?"
"問題ない。"
ジミーは、紙マッチを差し出す。
"口を封じておく。"
"殺しを頼まれたのは、初めてだ。アンソニーと一緒に、フロリダへ行けと言う。詰まり、俺は、生きては帰れない。"

ヘンリーとカレンが、弁護士と打合わせ。
"どこでもいいが、寒い所だけは、絶対、御免だ。"
"選択権はない。"
"どこへ移されようと、寒い土地は、嫌だ。何とか頼む。"
"喘息なの。"
"事実なら、考慮しよう。"
"嘘じゃない。"
"それよりも、両親はどうなるんです?"
"詰まり?"
"会ったり、話したりできますか?連絡はできるんですか?"
" No. "
" Wait a minute. 両親が病気になっても、会いにいけないんですか?"
"方法はあります。もし、最悪の事態にでもなれば。"
"嫌よ。I can't. 親と別れるなんて。"
"前にも言ったろ。君や娘たちが反対なら、証言はよす。君が、嫌だと言うなら、この話はなしだ。"
"必要なのは、彼ね?"
" That's right. 奥さんは、関係ない。だが、証言を支えるため、ご同行を。"
"なぜ、私も?"
"証人保護により、彼の身柄は、安全です。連中は、あなたや子供たちを狙う。そうなると、危険だ。"
" I don't know anything. "
"知らないじゃ、済まされん。あなたも、電話でコカインの話をしている。何回となく、会話が記録されている。"
ジミーは、逮捕される。
"このままでは、彼は、刑務所に入っても、危険だ。逃げ道はない。承知の筈だ。"
"子供の学校は、どうなるんですか?"
マフィアが、次々逮捕される。
"我々に、協力するしか、助かる道はない。生命は保障され、刑務所へも行かずに済む。"

"姿を消す事は、できた。家は、義理の母親の名義。車は女房の名義。社会保障番号も免許証も偽物。投票もせず、税金も払わない。出生証明と逮捕記録のみで、俺は存在する。"
"この法廷にいますか?"
" Yes. "
"では、指し示してください。"
"ジミー・コンウェー被告を示したと記録を。"
"ポール・シセロを知っていますか?" 
" Yes. "
"法廷にいますか?"
" Yes. "
"指し示してください。"
"シセロ被告を示したと記録を。"
"俺は、死にたくなかった。悪くない人生だ。俺たちはスター。望めば、何でも手に入る。女房、母親、子供。誰もがいい思い。台所の紙袋の中に、宝石を隠し、砂糖壺にはコカイン。"
"生き残るためなら、密告もするんですか?"
"異議あり。どういう意味か。"
"分かっている筈だ。"
"異議あり。"
"電話で、何でも手に入る。車は使い放題、町中にある隠れ家。週末に、3万ドルも賭け、派手に勝ち金を使ったり、胴元に払ったり。"
"そんな事、何でもなかった。金がなくなりゃ、盗みに行けばいい。何でもやった。デカを兼ねで買い、弁護士や裁判官も、買収した。誰もが、金で動き、思いどおりになった。Now it's all over. "
"俺には辛い。すべてが変わった。賭博もやらず、行列に並んで、待つ。食い物も酷い。スパゲッティのマリナーラ・ソースは、ただのケチャップ。クソ面白くない。これが、死ぬまで続く。"
トミーが、銃を放つ。
"ヘンリー・ヒルは、今も保護下にある。1987年、麻薬で逮捕。5年の保護観察に。1987年以降は clean. 1987年、ヘンリーとカレンは、25年の結婚生活の末、別居。ポール・シセロは、1988年、刑務所で死亡。死因は、呼吸器疾患。73歳。
ジミー・コンウェーは、殺人罪で、現在も服役中。仮釈放の許可は2004年。彼は、78歳となる。"
【感想】スコセッシは、"ゴッドファーザー"を見て、マフィアは、こんなに格好いいものではないと言ったらしいが、マフィアの生態をまざまざと描き、"ワイズガイ"など彼らのしきたりにも詳しい。マフィアは、航空機の貨物強奪や麻薬で、荒っぽく稼ぐ。内部の抗争で、ジョー・ペシは、あっさりと殺害され、デ・ニーロも、最後は、リオッタに売られる。スコセッシの宗教観に根ざし、マフィアの陰の側面が強調される。ジョー・ペシの無軌道ぶりが際立つ。

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