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一人勝手に回顧シリーズ#ヴィム・ヴェンダース編(16)#アメリカ、家族のいる風景/寄り添う家族

【映画のプロット】
▶︎ユタへ
岩山と砂の乾いた土地。一人のカウボーイ(サム・シェパード)が通り過ぎる。
映画のロケのキャラバンでは、ハワードがトレーラーから失踪し、撮影スタッフは、イライラしている。ハワードのトレーラーに踏み込むと、若い女が二人出て来る。
ハワードは、野営して、"なぜ、死ななかった"と問い掛ける。
ハワードは、うらぶれた集落で、馬を🐴降りる。呼び掛けるが、誰も答えない。ハワードは、一軒の家で眠る男の耳元で、拍車を鳴らし、起こす。
男のシャツとベストと引き換えに、拍車、ジャケット、シャツ、オーバーズボンを与えると交渉する。去勢馬だが、馬も付けるという。
ハワードは、レンタカーを探すが、近くにはないようだ。列車も、"たまに来る"らしい。ハワードは、線路の上を歩く。
ロケのキャラバンに、ヘリコプターが着陸する。出資会社の偉いさんで、ハワードのトレーラーを見せろと言う。
男は、酒瓶や飲み掛けのグラスで散らかるテーブルを見て、ハワードの性格は、放蕩で無責任と、何かに吹き込む。
ハワードと服を交換した男は、道路を馬で行く。パトカーに、IDを見せるよう、制止されるが、構わず行く。
車に乗ったハワードは、ユタ州とネバダ州の州境近くと言って、母親に、2、3日、厄介になる旨を告げる。
バーのステージで、シンガーが、孤独な男の歌を歌っている。
ハワードは、ショッピングセンターで、金を下ろす。バスの待合所で、多数あるカードを裁断して、捨てる。携帯電話も、迷った末に、"アディオス"と言って、壁に叩きつける。
ハワードは、バスに乗る。シャツや靴下を、新しいものに取り替える。
若い女スカイが、母親の骨壷を受け取る。
ロケの現場。若い女優が"行かないで"と言いながら、ハワードの代役ではダメだと、監督に噛み付く。女優は、トレーラーに帰って、事務所に電話すると言う。
バスは、目的地に着く。
ハワードは、花を抱えた母親(エヴァ・マリー・セイント)と再会する。牧場の家は、父親が死んだ時に売ったと言う。
スカイは、助手席に骨壷を置いて、骨壷に語りかける。母が大好きだった土地に向かう。
ハワードと母親は、墓地を通る。お父さんの墓がいつも見つからないと言いながら、花を供える。
ロケ地では、緊急会議が持たれる。ハワードは、昔からこういうことがあったが、完全にいなくなったことは、ないと言う。出資会社の男(ティム・ロス)は、必ず見つけると言う。
ハワードたちは、ファミリーレストランに立ち寄る。母親は、"何かあったのか"と聞く。30年間も家を開けた男が、突然帰ってくるなんて。ハワードは、帰りたくなっただけとしか、答えない。スロットをしている男を、"人のこと、見るな"と怒鳴りつける。
二人は、家に着く。
地下に、ハワードの寝室が用意されている。ハワードは、しばらく眠り、スクラップブックを手にする。スクラップブックには、スキャンダル記事も切り抜かれている。酒、ドラッグ、女、逮捕。
ハワードは、母親に断って、外に出る。近所のカジノに入る。レストランにいた男が、ハワードに気づく。ティーンの女たちが、"映画俳優?"と尋ねる。ハワードは、ルーレットの席に着く。ふと、レストランにいた男を認め、両手で、男の身体を押さえ、問いただす。男は、高校の同級生だと名乗るが、ハワードは、認めない。乱暴に、手を離す。
▶︎モンタナへ
出資会社の男は、ハワードの消息につき、電話で秘書と話す。身寄りは、ネバダ州に住む母親のみ。リオ・グランデのバス停で、ハワードが借りた車を見つける。
心が荒んだハワードは、ゲームセンターに入る。ボクシング🥊のゲームで、パンチを繰り出す。興奮して暴れるハワードは、警察に取り押さえられ、署まで連行される。
翌朝、ハワードは、家まで警察に送られる。
母親に、ギャンブル、女の子、酒かと、問われ、ハワードは、違うと答える。
母親は、"家族の写真を持っていないのか?"と尋ねる。昔、モンタナでロケを終えた後、ハワードの子を身ごもったという女から、電話を📞受けたという。ハワードに、心当たりがない。
出資会社の男が、家を訪ねて来る。母親は、30年間、息子と会っていないと、白を切る。
スクラップブックを繰ったハワードは、ホテルのような建物と女と写った写真を手元に置く。
ハワードは、亡き父の車に乗って、家を去る。
出資会社の男は、レストランのウエイトレスに、ハワードの写真を見せ、心当たりがないか、聞く。ウエイトレスは、昨日、見たと、答える。
ハワードは、ホテルに部屋を取る。フロントフロアは、赤い服をまとった女性たちで、混雑している。
ハワードは、母親に電話をかけ、モンタナに、子どもをもうけたかも知れぬ女性を探しに行くと、告げる。心当たりある女性は、ドリーン。ウエイトレスをやっていた。
その頃、出資会社の男サターは、母親の家を訪ねる。クッキーいかがと、家に上げる。サターは、昨日は、ウソをついたとなじる。母親は、生涯、ウソはついたことがないと言い切る。
ハワードは、ベッドメイクに起こされる。慌てて、ベッドで寝ている4人の女を、出て行かせる。ベッドメイクは断り、昨夜の乱痴気騒ぎを"また、やってしまった"と、振り返る。
ハワードは、写真の街並みの街に着く。バーレストランに入る。ハワード・スペンサーの映画のポスターが貼ってある。スカイがカウンターに座り、ハワードをちらちら見る。
ハワードは、注文したコーヒーが来る前に、店を出て、立ち去る。スカイは、歩道で見送る。
ハワードは、ホテルに部屋を取る。スカイが、通りから見ている。
スカイは、バーに入り、当地でロケされたハワード主演の映画の展示を眺め入る。
ハワードは、ホテルの部屋で、持ち出したドリーンと一緒の写真を手に取る。赤い服の女がパブに入るのを見て、ハワードは、パブに入る。バンドがステージで演奏している。カウンターに座る女に近づくと、ドリーン(ジェシカ・ラング)の方から、"遅かったわね、どこへ行ってた"と尋ねる。母にも電話したと言うドリーンに、ずっと会っていないと、ウソをつく。ドリーンは、息子を探しているのなら、目の前のシンガーアールがそうだと、言う。そして、ドリーンは、店を出る。
パブの裏側で、休憩を取ったアールが、女と抱き合っている。車を出そうとするハワードに、アールが首をつかみ、"つけているのか"とすごむ。ハワードは、"お前の父親だ"と言い、車を出す。スカイが、一部始終を見ている。ハワードは、いったんは、街を離れるが、車をUターンさせ、パブの駐車場に止め、一夜を明かす。
アールは、家で、タバコに火をつける。窓に石が当たる音がして、下を見ると、スカイが、降りて来てと言っている。要件を聞くと、あなたの父親のことだと言う。アールは、中指を立てて、窓を閉める。
ハワードは、ドリーンが、店を任されているレストランに行く。
ドリーンを席に座らせ、話をする。
"母親から、息子がいると聞いて、それだけで、やって来た。"
"息子のアールと話をしたか"と聞かれる。
"自分と似ているし、何かつらい、向こうもそう感じた"と言う。
アールは、女と別れ、道をどんどん歩く。女がすがる。
サターは、荒野に車を止め、髭を当たる。スクラップブックを手に、考えを巡らす。荒野で、"ハロー"と呼び掛ける。
骨壷の女は、ドリーンの店で、PCに、ハワードと母親の画像を呼び出す。
アールが店にやって来て、話があると、ドリーンを呼び出す。
アールは、問いただす。"ハワードが、父親なのか、なぜ突然現れた"と。ドリーンは、ハワード・スペンサーは俳優で、お前に会いたくなったのだろう"と言う。"お前には、似てない"とも。アールは、"知りたくなかった"と言い残して、去る。
スカイは、ハワード・スペンサー、ロケ地から失踪の記事を呼び出し、微笑む。
アールは、家に帰り、家具を窓から放り出す。
ドリーンは、起きてしまったことは、仕方ないといった素振り。
スカイが、ハワードのホテルの部屋を訪ねる。"M&M"で、ハワードを見ていた女だ。ハワードは、プライベートの部屋から立ち去るように、警告し、スカイは、住所を記した紙を残して、立ち去る。
アールは、まだ窓から物を放っている。ハワードは、家の下に立ち、"話がある"と呼び掛ける。降りて来たアールは、けんか腰で、ハワードにつかみかかる。ハワードは、"母親から聞いた"と言い、アールに気持ち悪いと、言われる。ハワードは、"実は"と言いかけて、口籠る。アールは、お前なんか、これまでもこれからも父親ではないと言って、部屋に戻る。
ハワードは、放り出されたソファに腰を下ろし、ひとしきり嘆いた後、腰を据える。夜になり、ハワードは、ソファで横になる。
スカイが現れ、"彼は、飛び降りたか"と聞く。
スカイも、ソファに🛋腰を下ろし、二人は話す。アールは、取り合ってくれない。女に対してもだ。スカイは、自分との血の🩸つながりを恐れているのだろうと言う。ハワードは、俺は望んだが、気づくのに時間がかかったと言う。スカイは、この町ビュートに住むことを提案する。家は必要だと。
スカイは、ソファにとどまるよう、言って、腰を上げる。
スカイは、街を見下ろす高台に立って、骨壷から灰を取り出し、撒く。
ハワードは、目を覚まし、立ち去る。
朝早い街を歩く、ハワードとドリーンは、街角で出会う。
息子との進展を聞かれたハワードは、"さっぱりだ"と言う。ハワードは、"わかったんだが、君に会いに来た、結婚して、一緒に住むべきだった"と言う。ドリーンは、怒り出し、アールの人生に変化をもたらした、逃げ隠れて、女の同情を買うハワードは、卑怯だとなじる。口付けを交わして、ドリーンは、一人行く。ハワードも追わない。
サターは、高台から、ビュートの街を双眼鏡で見る。
アールは、落ち着きを取り戻し、女と、放り出した物を漁る。アンプとギターを拾い上げたアールは、その場で演奏を始める。女は、ソファの上で踊り、少しは、ハワードの言うことを聞いてどうかと、言う。
サターは、ドリーンの店で、三種のポテト料理の違いを聞いたうえ、水一杯を頼む。
ハワードは、ホテルを出る。
スカイが、アールに、ハワードはどこと、聞く。アールは答えず、連れの女に聞く。アールは、ハワードがいなくなったという歌を、即興で披露する。
ハワードは、駐車場で、浮浪者に50ドルをせびられる。1ドルしかないと追い払うが、浮浪者は、タイヤを銃で撃つ。ハワードは、金を取り出す。
アールと女は、家具を部屋に戻そうと、奮闘する。スカイも手伝う。アールが、"あの男は、父親ではないと、言う。スカイは、いや、父親だと言う。アールは、昔、父を思い、ぽっかり穴が開いたようで、落ち込んだ、またああなりたくはないと、話す。
ハワードは、パンクした車を走らせ、立ち往生し、車の中で休む。
そこへ、サターが現れて、カリフォルニアの裁判所のロケに戻れとの命令書を手渡す。サターは、ハワードに手錠をかけ、ハワードは、家族がいると、抵抗する。
ハワードは、サターをアールの家まで連れて来る。
ハワードが来たと言って、アールの女は、挨拶をしに降りて行く。しかし、ハワードを見て、アールに似てないと言う。アールも"父親じゃない"と言う。スカイは、ハワードに言葉をかける。会いたいとずっと思っていた。写真で、自分と似た特徴を探した。そのハワードが目の前にいると。
去るハワードに、アールは声をかける。ハワードは、じいさんの車だと言って、キーを投げて渡す。
ハワードは、サターの車で、ロケ地を目指す。
スケジュールはびっしり。ハワードは、運転を代わろうかと言う。
ハワードが運転し、サターは、クロスワードを解く。サターは、"外の世界は嫌だ"と言う。
スカイ、アールらは、パンクしたタイヤを取り替える。
ハワードが、恋人に別れを告げ、馬で立ち去る映画のシーンが流れる。
アールらは、ハワードがどこかへ行ったの歌を歌いながら、ドライブする。
【感想】
映画俳優が、仕事か、生活かにうんで、ロケ地から失踪する。安らぎを求めたのは、肉親。彼の唯一の家族。
しかし、男には、家族を築けなかった妻と子どもが、複数いた。いまさら、家族になろうにも、20年の不在は長かった。男は、あきらめて、かつ満足はして、生活に戻って行く。人生という旅路のロードムーヴィー。

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