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一人勝手に回顧シリーズ#ポール・バーホーヴェン編(6)#ブラックブック/女性スパイの物語

【映画のプロット】
▶︎イスラエル
1956年10月、イスラエル。
聖地巡りのツアーバスは、"キブツ“に到着する。ロニーは、夫婦でツアーに参加している。遠景をカメラに収め、敷地内の学校の授業風景を収めると、女性教師に、撮影禁止と告げられる。降ろされるブラインドの隙間から、ロニーは、"エリス?"と声をかける。エリス(カリス・ファン・ハウテン)とロニーは、オランダで面識があった。
ツアーバスは、出発する。ロニーとエリスは、手紙や写真のやり取りを約して、別れる。エリスは、結婚して"ラヘル・シュタイン"になったと伝える。
ラヘルは、湖畔に座り、昔を思い出す。 
▶︎戦時中のオランダ
1944年9月、オランダ。
ラヘルは、大家族の家の隠し部屋で寝起きする。朝食の準備中。"ラヘル"と呼びかけた子どもが、一家の主人に、"本名を呼ぶな"とたしなめられる。ラヘルは、かゆに、十字にソースをかけ、ぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
ラヘルは、湖畔に寝そべり、英語の音楽を聴いている。
湖をヨット⛵️で渡る青年が、"英語の歌は禁止だ"とからかう。ラヘルは、ヨット⛵️に乗り込もうとするが、上空を爆撃機が飛び、大家族の家が、爆撃される。ドイツ兵の🇩🇪一団がやって来る。ラヘルは、ヨット⛵️に逃れる。
ラヘルは、ヨットの男の家に、匿われ、料理を作る。聴いているレコードが、本人のレコードだと分かる。戦前まで歌手だった。ラヘルは、男にライターをプレゼントする。
すると、車が近づき、小屋に入り、二人に呼び掛ける。レジスタンスらしく、姿を現した二人に逃亡を勧める。ラヘルは、走り去ろうとする男に、隠れ家の提供を要求し、明日、2時に落ち合うこととする。
二人は、自転車で街へ出る。ラヘルは、公証人スマールを訪ねる。手持ちの写真と、スマールが所持する写真が照合される。ラヘルは、一年分の生活費を要求する。スマールは、金庫から紙幣とダイヤの粒を💎取り出し、受け取りを書かせる。札を数えないラヘルに、スマールは、"人を信用するな"と警告する。
ラヘルらは、レジスタンスの男が運転する護送車で、検問を通過する。集落に着き、車から降ろされるが、ラヘルは、家族と再会する。そこからは、船に乗り換え、ユダヤ人の一団は、南を目指す。
しかし、ドイツ🇩🇪兵が乗った船が現れ、乗客・乗員を掃射する。ロブも銃弾に倒れる。ラヘルは、額に銃弾を受けるが、川に飛び込み、逃げる。
ラヘルは、川の中から、金目の物をはぎ取るドイツ兵を🇩🇪見る。
検問を牧師2名が運転する霊柩車が通る。伝染病の患者だと告げるが、ドイツ兵は棺を開けさせる。顔や手に斑点を散らしたラヘルが横たわっている。ドイツ兵は、棺を閉じさせる。
霊柩車は、街に入り、屋内のガレージに引っ込む。棺の中からラヘルが起き上がる。化粧を落とすラヘルに、男は、"髪を染めろ"と言う。
ラヘルは、レジスタンスのティムの父親ヘルベンに会う。"ここにいてもいいが、働いてもらわないと"と言われる。ラヘルは、髪を金髪に染めている。ラヘルは、炊き出しの調理をすることになる。
5か月後、調理をしているラヘルは、ヘルベンに、脱落した仲間の後任を打診される。車で、郊外の農場に行き、相棒のハンスを紹介される。ラヘルは、ハンスの婚約者として振る舞えと指示される。
ハンスらは、屋外で、空に向け、ライトを照らす。軍用機が頭上を通り、何か物資を投下する。中身は、武器や食料。明日、運び出すのだと言う。そこへ、ドイツの🇩🇪軍用車が、壁を壊し、突入する。銃撃を浴びるが、ハンスは、それをかわして、5名の兵士を射殺する。
ハンスとラヘルは、機関車に乗り、"荷物"を運ぶ。混み合う車内、ドイツ兵🇩🇪が、検札に来る。ハンスは、銃を取り出し、相手を撃つので、逃げて、非常ブレーキを引けと、指示するが、ラヘルは、機転を利かし、ハンスの頬をはたき、"変態“と言って、"荷物"を持って、移動する。
ドイツの🇩🇪将校のいるコンパートメントに、潜む。将校は、ムンツェと名乗り、切手の収集帳を眺めている。ラヘルも覗き込む。検札が来るが、ムンツェが追い払う。
無事、駅に着き、ハンスと合流する。ムンツェのことを話すと、ハンスは、"諜報部の幹部で、銃殺してやりたい"と、言う。
炊き出し所で、子どもたちが食料をあさる。入場してきたトラック🚚が、子どもをよけて、小屋に突っ込む。子どもたちは、野菜を奪うが、積荷の中に、銃が見える。係員が、ドイツ🇩🇪兵を呼ぶ。トラック🚚を運転していたティムらは、警棒で殴りつけられ、連行されていく。ヘルベンは、拳銃を取り出すが、ハンスらに引き止められる。ヘルベンは、炊き出し所の閉鎖を宣言する。そして、ヘルベンは、ラヘルに、ムンツェに取り入れるかと、聞く。ラヘルは、"ムンツェの思いのままに"と、答える。
ハンスが投下された荷物を探している。ラヘルは、アンダーヘアの処理中。ラヘルが、ハンスの荷物を示す。ハンスは、荷を解き、ため息をつく。インスリンが、投下で、ビンが割れている。下がヒリヒリするラヘルは、ハンスに体を許す。
ラヘルは、スマールに、また会う。家族が、突然現れたドイツ🇩🇪兵に殺されたこと、ドイツの🇩🇪将校に近づき、寝なければならないことなどを伝える。ラヘルは、"いただきたいものがある"と言う。
ラヘルは、ナチ本部に、ムンツェを訪ねる。ムンツェが欲しがっていた東インドネシア🇮🇩領の切手を持参する。ムンツェは、喜び、ラヘルに、遠慮なくチョコレート🍫を食べろと言う。
投下された荷物にあったのと同じチョコレート🍫。
ムンツェは、パーティーに出向く。ラヘルもパーティーに誘われる。
ラヘルは、ムンツェの車に同乗し、パーティー会場へ行く。ピアノの伴奏で、党歌を斉唱する。ふと、伴奏者が、船を襲ったドイツ🇩🇪兵の一団のリーダーと気づき、ラヘルは、トイレに駆け込み、吐く。復帰したラヘルは、歌声を披露する。ラヘルは、ムンツェのコレクションが見たいと、ねだる。
ラヘルは、ムンツェの屋敷に行く。資本主義者から奪った屋敷だと言う。ムンツェは、ラヘルの服をはぐ。腰掛けたムンツェは、ラヘルが、髪を染めているのに気づく。"ユダヤ人で生きる手段か?"と勘繰る。ラヘルの下が取られて、アンダーヘアも金髪であることが、分かる。ラヘルは、ムンツェに抱かれる。
ラヘルは、トイレで、ギュンターの愛人と一緒になる。ラヘルは、ムンツェの下で働きたいと言う。裸のギュンターがトイレに入って来る。ムンツェの下で働くには、"身体検査が必要だ"と言う。
ムンツェの写真立てに、妻と子どもが映る。"結婚しているの?"と尋ねると、"結婚していたが、英国軍の🇬🇧爆撃で、ハンブルクで死んだ"と言う。
ティムが、ギュンターの拷問を受ける。
ラヘルは、ムンツェの下で働く。原稿を読み、タイピストが打つ。抵抗するティムが無理矢理連れて行かれるのを見る。ふと、オフィスで、スマールに遭遇する。"平和のための話し合い"に、ムンツェを訪ねて来たと言う。盗聴器のマイクを託される。
ロビーに、総統の誕生日を祝う飾り付けをする。
ギュンターが、ティムら3名の処刑の承認を、ムンツェに求めるが、ムンツェは、拒否する。
ラヘルは、飾り付けを持って、無人のムンツェの執務室に行き、壁の肖像画を外し、裏に盗聴マイクを仕込む。
ラヘルは、アジトに帰る。レジスタンスたちは、ギュンターと女のやり取りを聞いて、爆笑している。二人は、"行為"の真っ最中。その場には、ソマールもいる。
音声が、ギュンターと男のやり取りに変わる。金庫を開ける音がし、男は、リストを受け取る。
ラヘルが、男の声に、思い当たる。ラヘルの逃亡を手引きしたオランダ🇳🇱警察をかたるファンだ。裕福なユダヤ人を集め、逃亡をあっ旋したが、裏でギュンターと、つながっていた。
ラヘルは、ギュンターの暗殺を提案するが、報復でユダヤ人が殺される懸念から、否決される。
ムンツェの下に帰るラヘルに、ハンスは、ファンを誘拐することを持ちかける。
ファンが、ナチ本部から出て来る。ラヘル、ハンス、テオは、ファンをつける。別働隊は、タクシーを装い、ファンを挟み打ちにする。ハンスが、ラヘルのマフラーに薬品を染ませて、ファンの顔を覆い、ファンは、気を失うかに見えたが、反撃し、振り切って逃げる。ハンスの銃が、ファンの足を撃つ。ハンスは、ファンに待ち伏せされ、押さえつけられる。ラヘルも駆けつける。テオに、ファンを撃てと言うが、撃てない。ハンスを助けるファンをラヘルが襲うのを見て、ようやくテオは、銃を放つ。ファンは、水路に落ち、なおテオは、執拗にファンを撃つ。
ハンスが、肩を撃たれたカールの銃弾を摘出する。ハンスは、ヒトラーの真似をして、配下を殺害されたことを嘆いてみせ、皆んなは笑うが、テオは、罪の意識に苛まれる。ティムの父がやって来て、ハンスを、"軽率な行動で、40人のユダヤ人が殺される"と非難する。ハンスら、ファンの殺害に加わった者は、警察に👮‍♀️出頭することとする。
ラヘルは、ムンツェの下に帰る。裸のムンツェの腰の辺りが膨らんでいる。ラヘルが、シーツを剥ぐと、銃口がラヘルに向けられている。
ムンツェは、ラヘルに、列車で一緒になったときからファンが殺されるまでの経緯が、偶然とは思われないと、語り、ロニーに引き渡されるか、すべてを話すの、どちらかを選択せよと、迫られる。
ギュンターは、ラヘルらに、ユダヤ人40人のリストを渡し、集めるよう、指示する。そこに、ムンツェが、大将を伴い、現れる。ギュンターに、略奪品をくすねた嫌疑があるとして、金庫を開けさせる。金庫には、書類のほか、開戦記念のシャンパン🍾しか入っていない。逆に、ギュンターは、ムンツェが抵抗分子と交渉したと暴露する。大将は、ムンツェに、国家反逆罪による死刑を宣言する。 
▶︎ナチ本部の開放
ハンスらは、40人のユダヤ人を助けるため、ドイツ🇩🇪兵に変装する準備をしている。ヘルベンがやって来て、同行しようとするが、ハンスに止められる。ラヘルが帰って来て、"ムンツェを助けて、そうしないと私は、抜ける"と、言う。
ヘルベンは、ムンツェの救出を命じる。
ラヘルとロニーは、パーティー前に、化粧を整える。ラヘルは、英国🇬🇧軍が、ムンツェを解放すると、希望を捨てない。ロニーは、ラヘルがスパイかと、鎌をかける。ラヘルは、ロニーを先に行かせ、自身はボイラー室に行き、通気口を確認する。
ハンスらは、護送車で、ナチ本部に侵入する。
ラヘルは、トイレに入り、石炭で汚れた足を洗い流す。
ハンスらは、建物の内部に忍ぶ。持参のバーナーで、鉄の扉を焼き切る。 
楽団が入ったダンスパーティー。ラヘルは歌声を披露する。ギュンターが、口笛で伴奏する。
ハンスらは、建物の見取り図を手に、牢獄へ行き、ティムらを救う。
ラヘルは、歌い終わり、ギュンターとダンスを踊る。ギュンターの掛け声で、全員で歌を合唱する。
地下牢の扉を🚪開けると、待ち構えたドイツ🇩🇪兵に、銃撃される。それをきっかけに、銃撃戦が始まる。
パーティー会場にも、銃撃の音が伝わり、参加者は、浮き足立つ。
ハンスらは、激しい銃撃を浴び、仲間を次々と失う。助け出されたティムも、銃弾を受ける。
ハンスは、テオが待つ護送車に飛び乗り、バリケードを壊して、逃げる。
ギュンターは、ラヘルを呼び、報告書を作成させる。
▶︎ギュンターの処刑
レジスタンスのアジトに、ハンスとテオが、戻って来る。ハンスは、"罠だった"と言う。
盗聴電話で、ラヘルが、ギュンターへ、総統への忠誠を誓っている。カネに釣られたユダヤ人女性と、皆んなは誤解している。
ラヘルは、ギュンターに、連れられ、レジスタンスを地下牢に導いた功績を讃えられる。しかし、肖像画を下され、裏側に仕込んだ盗聴器を、ギュンターに破壊される。ギュンターは、明日、ムンツェと共に、処刑すると、伝える。
ヘルベンは、ユダヤ人なのに、ドイツ🇩🇪に寝返ったラヘルを捕まえろと、指示する。
ラヘルは、独房に入れられる。拷問を受ける囚人の悲鳴が聞こえる。
ロニーは、男たちに囲まれ、テーブルの上で、酒を浴びる。一人のドイツ🇩🇪兵に目配せし、ドイツ🇩🇪兵は、ボイラー室に忍び、見張りを倒し、カギを奪う。
寝ていたラヘルは、ムンツェに起こされる。先程のドイツ🇩🇪兵の導きで、二人は、車で脱出する。
二人は、川べりに寝床を作り、一夜を明かす。
ラジオで、ドイツ🇩🇪軍の投降を聞く。
ギュンターは、兵士🪖1名を伴い、船でハンブルクを目指す。快調に飛ばしていた船が、急に停止する。機関室に降りたギュンターを、隠れていたハンスが、銃で撃つ。
オランダは、解放に沸く。英国軍が、パレードし、新しい恋人ができたロニーは、ジープの上から手を振る。ナチへの協力者は、さらされる。女は、髪を刈られる。
▶︎解放
ラヘルとムンツェは、ソマールの下を訪ねる。
ムンツェは、銃を突きつけ、ソマールを部屋に追いやり、救出作戦をギュンターにばらしたと非難する。すべては、カナダ🇨🇦治安部隊の下で、明らかにすると言う。迎えが来て、ソマールが出るが、帰って来ない、妻が様子を窺うと、胸から血を🩸噴く。ソマールは、頭を割られて、絶命している。ムンツェは、ヘルメット🪖を被った兵士が逃げるのを見て、後を追う。しかし、人混みで見失う。逆に、ジープからムンツェと、言われ拘束される。窓から覗いていたラヘルも捕まる。
ムンツェは、解放軍の司令官の前に出る。寝返った将軍が、解放軍に、協力している。将軍は、ムンツェが、共産主義者と通じていたと暴露し、ドイツ軍の法廷で、死刑が宣告されていると言う。司令官は、ドイツ軍の決定は、無効と言うが、将軍に、反論される。ムンツェは、将軍の首を絞め、憲兵に連れていかれる。
銃殺の刑場に、ムンツェは、引きずり出される。銃を渡された兵士たちが、ムンツェを撃つ。
ラヘルらは、牢屋を追い立てられ、集められた部屋で、讃美歌を聞く。なだれ込む野次馬が、服を脱げと、はやす。ラヘルも無理矢理上を取られ、ドイツ🇩🇪兵に歌っていたとして、歌を強要される。連れ出され、棒で叩かれるラヘルに、野次馬が汚物タンクの中身をぶちまける。
ハンスが現れ、係員を入れ替え、野次馬を諌める。
ラヘルは、牢獄を出る。ハンスとジープで街を行くと、沿道の歓声に迎えられる。ラヘルは、チョコレートを🍫手渡す。ハンスは、"アッカーマンス診療所"に入る。ハンスは、ギュンターがくすねたカネ、貴金属の山を見せる。ムンツェは、どうなったと尋ねるとラヘルに、ハンスは、カナダ🇨🇦軍が許可し、死刑が執行されたと、伝える。嗚咽を上げるラヘルに、ハンスは致死量のインスリンを注射する。朦朧としながら、ラヘルは、カバンからチョコレート🍫を取り出し、むさぼる。
ハンスは、バルコニーに出て、歓声を浴びる。
ラヘルは、観衆の中に飛び降りる。かつがれ、あらぬ方向へ行くハンスは、"あの女を捕まえろ"と、叫ぶ。
ユダヤ人犠牲者の遺体が掘り返され、検分される。
ヘルベンに、ラヘルが面会に来る。はやるヘルベンは、周りに諌められる。
ラヘルは、スマールの手帳を示し、1942年からハンスが、ユダヤ人の逃亡を手助けし、スマールにつながった記録があると、示す。しかし、逃亡し終えた者は、いない。皆んな、船に乗せられ、ドイツ🇩🇪兵に処刑されたと。ハンスは、ギュンターと通じていた、去年、逮捕された時に、接点が出来た。ハンスの所在は知れないと、言う。
ラヘルが、ガレージでハンスのジープを発見する。トランクの中は、空っぽ。ハンスは、死者を装い、霊柩車で逃げたと思われる。ラヘルと、ヘルベンは、ジープに同乗して、霊柩車を追う。霊柩車の前に回り、霊柩車を止めた二人は、運転手を殴り、銃を奪う。中で、ハンスがわめくが、棺のネジをきつく締める。
二人は、沼の前で止まる。
二人は、沼のほとりに座る。
棺の中の悲鳴が止む。
ラヘルは、沼に小石を投げ入れる。
イスラエルの湖のほとりにしゃがむ現代のラヘルに、画面が切り替わる。ラヘルの家族が、迎えに来る。
【感想】
家族を失い、スパイに身を投じるエリス。その別れは、唐突に訪れるが、身を捧げたムンツェも、不意の英国軍の空爆で、家族を失っている。権勢を振るったムンツェも、最後は皆に見放され、銃弾に倒れ、部下のギュンターも、レジスタンスの報復を受ける。
変わり身の早いロニーは、神父と結婚し、エリスと再会を果たす。
ラヘルも新しい家族を築き、映画の最後には希望がある。

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