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一人勝手に回顧シリーズ#ヴィム・ヴェンダース編(14)#ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ/忘れられたミュージシャン

【映画のプロット】
▶︎アムステルダム公演
白い髭が豊かな老人が、写真集を繰る。キューバ危機、カストロのワシントンD.C.訪問、カストロとゲバラのゴルフ。

開演前のホールの様子に、キューバの街を走るオープンカーの映像が重なる。コンパイ・セグンドは、"ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ"があった方を指差す。
道ゆく老人に、場所を聞くが、人が寄って来る。口々に自説を論じる。
ホールでは、メンバーが配置し、コンパイ・セグンドの登場で盛り上がる。
別の男性が、クラブの場所を説明する。コンパイ・セグンドは、二日酔いに効くスープのレシピを伝授している。
コンパイ・セグンドが、トレスを奏で、演奏は始まる。物悲しい金管楽器。コンパイ・セグンドは、旅行きの歌を歌う。ライ・クーダーもギターを弾く。
98年3月、キューバ。歌に乗せて、海岸に打ちつける波、海岸沿いの道を疾走する黒い車。
くたびれた街を、ライ・クーダーは、サイドカーに、息子ヨアキムを乗せて走る。
ライらは、スタジオに着く。イブラヒム・フェレールのボーカルを録音する。
ホールで、イブラヒムは、女性歌手と、優しいラヴソングをデュエットする。
イブラヒムが、カメラに語る。
"私生児として生まれ、12歳で母を亡くした。学校を諦め、一人で生きて行くしかなかった。歌が口をついて出る。『クチナシの花』を口ずさんでいたら、ライに録音されていた。"
イブラヒムは、ホールで『クチナシの花』を歌い上げる。悲恋の歌。
女性ボーカルのオマーラ・ポルトゥオンドの父は、野球選手だった。退屈な昼下がり、よく夫婦でデュエットしたと言う。オマーラは、そうして幼い頃に歌を覚え、長じてからも歌っている。
オマーラは、町を行く人に歌いかけ、共に歌う。
ホールでは、コンパイ・セグンドと歌う。
コンパイ・セグンドは、ギターの胴を爪で弾いて歌う。1907年産まれ。祖母の言いつけで、祖母が死ぬまで、近くで暮らした。5歳の時から、祖母の葉巻に火を点け、つまりは85年間、葉巻を吸っている。
ホールで、ライがコンパイの隣に来て、ライの伴奏で、娘に名前を彫り込まれた木の歌を歌う。
コンパイは、ライと、ギターの音合わせをする。
エリアデス・オチョア・ブスタマンテの母親は、トレスを弾いていた。父親も含めて、音楽一家だった。背丈と同じくらいのギターを抱えて、夜の町で歌い、帽子を回した。そうして稼いだカネを家計の足しにした。
エリアデスは、ホールで歌う。ややアップテンポな曲。
エリアデスは、線路の上を歩きながら歌う。
イブラヒムが、家の二階から、遅いととがめる。
イブラヒムは、自宅に招き入れる。祖父が、地元の顔役で、アフリカの使節団がやって来たときに、一行の一員が、母を好きになり、聖ラサロの杖を贈った。それを今も大事にしている。
家に、祭壇を作り、聖ラサロ像を備えて、供物をしている。 
スタジオで、イブラヒムは、伸びのある声で歌う。
キューバの街並み。テーブルゲームに興じる人たち。ローラースケート🛼で遊ぶ子どもたち。葉巻工場。
レコーディングが終わる。
ルベーン・ゴンザレス・イ・フォンタニリスは、宮殿のような子ども向けのスポーツ教室で、ピアノを弾く。7歳からピアノを習い始めたと言う。
ピアノに合わせるかのように、子どもが運動する。
ホールで、ピアノを弾く。絡み付くようなピアノ。
イブラヒムは、ライに、仕事にあぶれたときは、靴磨きで、しのいだと言う。
ルベーンは、述懐する。サンチアゴからハバナに出て来て、ライバルが沢山いるのに、気後れした。独学で勉強に励み、隣に住んでいた音楽家に、楽団に誘われる。
レオタード姿の少女たちに、ピアノを弾くルベーンは、囲まれる。
イブラヒムは、ライに語る。
タバコはあまり吸わないし、酒もあまり飲まない。妻が目を光らせている。
ルベーンは、過去のミュージシャンの写真を取り出す。伊達男たち。100歳で存命の者もいる。
ライは、ミュージシャンの語る過去のミュージシャンを、書き留め、消息を探れと、スタッフに指示する。
イブラヒムは、"今は、死にたくない"といい、天の神様と妻に、許しを求める。
コンパイ・セグンドは、語る。
"体に血が🩸流れている限り、女性を愛する。"
90歳で、5人の子がいるが、6人目を仕込んでいるところだと、言う。
イブラヒムは、靴磨きをしているところをライに見出された。すぐにスタジオに出向くと、コンパイ・セグンドやルベーンがいた。イブラヒムは、ルベーンのピアノに合わせて、"カンデーラ"を歌った。
ホールで、"カンデーラ"が演奏される。
オルランド・"カチャイート"・ロペスは、ベーシスト。9歳で音楽を始め、11歳で楽団に入った。祖父の代からベーシストで、ヴァイオリンをやりたかったが、ベースを勧められた。
ルベーンとは、前の楽団で知り合ったが、"最高だ"。
ホールで、オルランドの演奏がフィーチャーされる。オルランドは、コントラバスの胴を叩き、熱演する。
アマディード・バルデスは、パーカッション奏者。この道に導いた父に、敬意を表して、同じ名前を名乗る。
パーカッションは、出せる音に限りはあるが、ダンス音楽に彩りを添える。人気のないバーで語る。
マヌエラ・ミラバルは、47年間、トランペットを吹いている。B.V.S.C.の成功で、コンパイ、イブラヒム、ルベーンら忘れられた者に、陽が当たったのが、嬉しい。
ホールでの演奏。マヌエラが吹くトランペットが、エモーションを高める。
バルバリート・A・トーレスは、"ラウー"というアラブの弦楽器を操る。"ラウー"の工房で、試し弾きをする。
ステージで、バルバリートは、"ラウー"を背後に抱え、アクロバット演奏を披露する。
ピオ・レイバとマヌエル・"プンティジータ"・リセアは、ドミノで対戦し、ピオが勝つ。二人は、対戦を中断して、スタジオに入る。
若い太めのラスタヘアの男は、コーディネーター。イブラヒム、ルベーンらが再び脚光を浴びることを喜ぶ。
ライの息子ヨアキムは、語る。"キューバは、音楽に満ちている。"パーカッションの演奏にも、色々な示唆を得た。
ライにとってもいい旅だったろう。
ライは、飛行機✈️に乗る。
ライは、述懐する。
元々は、レコード会社の友人が、キューバの演奏家と西アフリカの演奏家で、音楽を作ろうという企画だった。ライは、70年代に妻と、キューバを🇨🇺訪れている。その時は、キューバの音楽に触れ、なす術もなかった。
その後、西アフリカの演奏家は、空港で足止めをくらい、ライは、キューバの老演奏家を集めさせた。その中には、レコードで聴いたルベーンのピアノやバルバリートの"ラウー"の音色もあった。
忘れられた音楽家には、その消息に関するまことしやかな噂があったが、全部ウソだった。ライにとって、貴重な経験となった。
▶︎カーネギーホール公演
ライは、ロスに戻る。
B.V.S.C.のレコードは売れ、彼らは多忙になった。彼らは、カーネギーホールで公演したい意向だったが、ライは、無理だと思った。しかし、関係者の努力で、それは、実現することとなった。7月1日が、公演の日と決まった。
一行は、アメリカに🇺🇸上陸する。
98年7月1日、B.V.S.C.の最終公演。最高の夜になった。
ピオ(ゲリラ兵)は、N.Y.の高層ビルを見上げ、いい街だと感心する。
ピオらは、ショーウィンドウの大きなガンマン、ジョン・ウェインのポップに驚く。チャップリンらの人形に、感心する。ローレルとハーディ、最高のトランペッター、盲目のピアニスト。
歴代の大統領の人形。名前が思い出せない。
エリアデスとルベーン、ビルの展望階で、飛行機の✈️航路を探る。自由の女神像を探し、小ささに驚く。
ルベーンが、場内に紹介され、ピアノに向かう。少し、緊張感を持って、メロディに絡み付くような演奏。満場の拍手。
イブラヒムは、NYは、初めてだ。前から憧れていたと言う。
イブラヒムは、ステージで、歌う。
歌い終えた赤いジャケットのイブラヒムは、喝采に、戸惑っているかのようだ。イブラヒムが語る。母の形見の杖を58年間、持っている。

旅の歌。ハバナの人々。革命のスローガン。停車している一団のアメリカ車、"カール・マルクス"の看板を掲げる建物。
ステージでは、客席から差し入れられたキューバ🇨🇺国旗を掲げる。メンバー紹介。万雷の拍手。
【感想】
忘れられた音楽家たちが、歌うのは、昔から引き継がれる、庶民目線の恋愛や労働に関する歌で、どこかもの悲しい。孤立する島国で、周囲の文明に毒されることなく、独自のピュアさを保った。
古い音楽家たちは、徐々に、鬼籍に入る。尊い文化が引き継がれるように。

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