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一人勝手に回顧シリーズ#フランシス・F.コッポラ編(8)友よ、風に抱かれて/ベトナム戦争の影

【映画のプロット】
▶︎ウィロー
"護衛隊。"
"礼報隊。"
"気を付け。"
"軍葬の礼です。ご起立を。"
"礼報隊。3連射。"
"息を吸って、備えよ。"
"用意。狙え。撃て。"
礼報は、3回続く。
白い墓標の並ぶ墓場。
棺を覆った国旗が、畳まれる。
"米大統領に代わり、ご主人の勲功を讃え、国旗を贈ります。"
"陸軍参謀長並びにアーリントン婦人会から、お悔やみを申し上げます。"
バグパイプが演奏される。
"軍曹殿。これが、最後の手紙かも。そんな気がします。今日、3名の部下を失いました。先に死ぬのは、優秀な奴。家族にどう言えば?Would you tell my wife? なぜか、ここは、懐かしい感じがする。僕は、昔から、兵士だったみたいだ。子どもの頃から。でも、ここは、考えていたのとは、違う。勿論、流血や犠牲者が出る事は、覚悟していた。でも、こんなとは。
あなたは、伝えようとしてくれた。この現実を。でも、僕は、若く。"
1968年、バージニア州フォートマイヤー。
"自信に満ちていた。でも、もう自信はなく、疑念ばかりだ。" 
ウィロー(D.B.スウィーニー)が、第3歩兵隊にやって来る。
"ジャック・ウィローです。"
"ピーター・デヴェバーだ。"
" Nice to meet you. "
" Nice to meet you, too. 皆は、dropに。"
" Drop? "
"アーリントンに埋葬。ベトナムで、大忙しだ。日に15件ある。君は、午前中は、休んでいていい、俺が、上手くやるよ。"
"悪いな。"
"俺は、親切なんだ。"
"先任曹長の机?"
"スラッシャー・ウィリアムズ。"
"スラッシャー?"
"ボクシングをやっていた。ところで、今夜の歩哨を、探しているんだが。"
"いいよ。僕がやる。"
"きっと、曹長を好きになる。そりが合う。"
"先任曹長。"
"おい、何者だ。"
"彼が、今夜の歩哨を。"
"歩哨は、この中隊で、一番きつい任務だ。それに、今夜の担当は、もう決まっている。そこの役立たずだ。"
"僕が、自分で志願したんです。"
"俺の隊で、志願だと。どこまで、おめでたい野郎だ。貴様は、俺のクソリストの1位だ。会って、たったの13秒でな。"
"この坊やが何か?"
"いや、別に。上級曹長。"
"怒鳴り声が、便所まで聞こえた。彼が君のペットでも、犯したか?"
ハザード曹長(ジェームズ・カーン)が、やって来る。
"様子を見に来た。"
"いい恥さらしだ。"
"戦わない兵士が、歩兵紀章を許されている。本物の歩兵連隊が、ベトナムで、田圃を這い回り、苦しんでいるのに。それを言うと、ここでは嫌がられるが。"
"ハザード軍曹。"
" Sir. 何の話だ?"
"上級曹長に、話していたのですが、私にできるのは、戦地に行く新兵をいかに教育し。"
"クレル。君の転属は、私が、取り下げた。"
"彼は、ここでは、1番の兵士、ネルソン上級曹長と、並んでな。" 
"なぜ、ここに配属?"
"2度、ベトナムへ行った。"
"大尉。新入りです。"
" Standing. Com'in. 話そう。"
"後で、俺の所へ。うすのろ。"
"ウィローです。Com'on, mistake. "
"今夜は、女と遊ぶか?それとも、ほかで?"
"気分がさえない。付き合ってくれ。"
"曹長、軍曹。"
廊下で、道を譲る。
"少尉どの。"
ウィロー。
" Sit down. よく来た。うすのろ特技兵。"
"ウィロー特技兵です。"
"おおそうか。本籍は、ムアチュカ駐屯地。軍人家族か。"
"はい、父は、曹長でした。Retired now. "
"そうか。大学では、バスケット部。スタメンか。結構。Outstanding. 白人のいい選手を待っていたんだ。父上を見習い、頑張って、下士官になれ。"
"実は、もっと上を、狙っています。幹部候補生になり、ベトナムの全線に出たいんです。Sir. "
"この隊に、入る事も、大変な名誉だぞ。我々は、大統領の護衛も務める陸軍機動部隊だ。Listen me. ベトナムへは、いつでも行ける。ここで、頑張り、君に士官の素質があれば、私が、後押しする。陸軍には、熱意ある若い士官が必要だ。"
" Yes sir. "
"以上だ。"
ウィローは、部屋を出る。
"じゃあ。"
" See you next. "
"やあ。"
別の兵士が来る。
ハザードが、メッセージカードをしたためる。
"卒業生おめでとう。マッキーへ。父より。"
写真立てを手に取り、息子の写真を眺める。
ウィローが、話し掛ける。
"軍曹。この靴は、中底に、金属の板が、張ってあります。"
" Yes. That's right. かかとを合わせると、いい音がする。ショービジネスさ。"
"軍曹にお会いできて、光栄です。"
" Why? "
"お互い、ここを出たがっています。"
"出て。Where? "
"ベトナムの前線へ。"
"ベトナムには、前線はない。あれば、戦争とは言えん。勝利がないんだ。"
"では、なぜ戻ると?"
"戻らんさ。あそこには、何もない。ベトナムの部隊が、カードを作った。人殺しが、我らの仕事と書いてある。The bury is our business. よっぽどいい。死に急ぐ事はない。仕事につけ。"
ハザードは、歩み去る。
"父をご存知で?シェルビー・ウィロー。"
"ああ。Korea. 共に苦しみ、戦った仲だ。Friends. 相変わらずか?"
"心臓発作を2度。今は、退役して、ケンタッキーにいます。よろしくと。父のベトナム観は、あなたのとは違います。Conventional guy. では、じき葬儀の訓練なので。"
"お父さんに、よろしく伝えておいてくれ。Carry on. "
ハザードは、トランプ占いで、並べられたカードの上に、足を乗せる。
"君の頭の切れには、感心する。"
"別に、ズルなどしないぞ。"
"例の青年だが、お陰で、このD中隊に入れたよ。"
"儀仗兵の中隊に回る筈だったが、妙な連中に任すより、君の下がいいと思ってな。Who's kid anyway? "
"シェルビー・ウィロー。朝鮮で、共に助け合った仲だ。"
" I remenber. "
"その彼から、手紙が来てな。親愛なるクレル。奥さんの病気のこと、それに、俺の離婚を残念がり、息子のマッキーに会えないのは、苦しかろうと、Anyway 最後に、こうある。くれぐれも、私の息子をよろしく頼む。シェルビーとな。これは、ジャックだろ?"
" Orient cardだ。"
" Orient card? "
ハザードは、買い物して、帰宅する。サマンサ(アンジェリカ・ヒューストン)が、両手に、紙袋を抱えて、エレベーターを待っている。
" Hi. 陽は沈んだな。持とうか?"
" No, I'm fine thank you. "
"エレベーターは、待つぞ。"
少し、紙袋を受け取る。
"どうも。名は?サラ?スー?S.デーヴィスのSは、男に対する防衛手段?"
"通じない相手もいるわ。"
ようやく、エレベーターが来る。
"ステファニー?"
"サムよ。サマンサ。"
" Nice car. コルベア、出入りするのを、見てた。突然、話し掛けたりして、悪かったな。女性は、普通、気に入らない男とは、口も聞かない。"
"女は、皆んな、そうよ。"
"その点、君は、礼儀をわきまえている。"
"どうも。"
"今夜、友人が、彼女と食事に来るんだが、君も来ないか?"
"折角だけど、連絡待ちなの。"
" What time? "
"シコ。Tonight. シコ。"
猫を抱き上げる。
"きっと、今夜の電話は、かかって来ないさ。是非、君に来て貰いたい。"
"ありがたいけど。What time? "
"え?"
" What time? "
"夕食は、19時30分。7時半だ。"
" OK. "
"7時半だよ。"
電話が鳴る。
"曹長だ。"
"今夜、ベティと、夕食に来てくれ。"
"今夜は無理だ。書類の整理が、残っている。"
"俺一人じゃ、彼女が、来てくれない。"
"よく聞け。無理なものは、無理だ。"
"俺の切実な話だ。1962年に、ベトナムで、命懸けで、君を救ったのは、誰だったかな?"
"汚い手だ。そんなにいい女か?"
"無駄口きかずに、さっさと仕事を終え、あの時の借りを返せ。"
"行けば、二度と、昔の恩を口にしないと、約束するか?"
"約束する。"
" What time? "
"うちへ19時30分。"
"分かった。ベティと、その女のケツを拝みに行く。"
" Watch your mouce. "
"了解。"
ハザードが扉を開ける。ドレス姿のサマンサが立っている。
" Hi. "
" Hi. "
"入って。友人は、少し遅れる。白ワインでいい?"
"ええ。頂くわ。"
ハザードが、ワイングラスを運ぶ。
" Thank you.   Good. "
"特別に、上等なのを、用意した。"
" What are you doing? "
"ワシントンポストの記者。以前は、ノースカロライナのオブザーヴァー紙に。"
"ちょっと、失礼。"
サマンサは、蔵書や家具を、舐めるように、見る。
"これ、ペルシャ絨毯?"
"ペルシャだ。これは、イスティハン。そっちは、シラズ。色褪せた赤が、タリム。この後ろのは、クジクスタンで購入。"
"本の数も、凄いわね。記者の習性で、何でも覗きたがるの。どれも、面白そうね。興味深いわ。"
"持ち主が、俺みたいな男たちだから?"
"女性は、普通、兵隊さんに冷たい?"
"共産主義の温床で、よく働けるわね。あの手の新聞は、皆、そう。"
"ポトマックのプラウダ紙。"
ネルソン夫妻もやって来て、4人で会食。
"アーヴィン上院議員の所で働くのも、似たようなものよ。"
"言ってくれるわね。Sugar. 彼は、誰よりも右だと自負しているわ。彼の母親には、負けるけど。ナチス突撃隊員のこの2人にもね。"
"じゃ、お2人は、右翼思想?"
ハザードは、困ったような顔をする。
"軍では、どんな仕事を?"
"何だ。まだ、話してなかったのか。我々は、陸軍第3歩兵隊。撃てない銃を持ったおもちゃの兵隊だ。突けない銃剣を持ったプロの軍隊の歌舞伎役者さ。軍神マールスの膝元で遊ぶ道化と同じさ。"
"グッディ・ネルソン、そんな言い方は、やめて。その口振り、クレルに似て来たわ。辛辣で、皮肉たっぷり。軍の上官になるのは、優秀な人材だけ。私は、名誉毀損だと思うわ。この2人が、今の部署に配属された事はね。"
"望んでなった訳じゃなく、命令されたのさ。グッディも俺も、歩兵学校の教官を希望した。"
"兵士が、生きて帰る手助けをしたかった。毎日、棺を埋める仕事より、いいさ。"
"2人とも、話す事まで、一緒ね。ねえ、美味しい料理は、もう終わり?Wonderful meal. "
"これは、失礼。"
男2人が、席を立つ。
"グッディとは?"
" One day 議員室を訪れた地元有権者が、軍事施設をみたがって、私がお供を。"
ネルソンとハザード。
"なあ、相棒。君の趣味の良さには驚いた。かなりの上玉だな。彼女なら、俺の股間も。" 
"下品な口は聞くなと、言ったろ。"
"分かった。早く戻って、色目を使うとしよう。"
2人は、料理を運ぶ。
"その時、私が彼に、一目惚れ。育ちの良い南部の娘らしくね。"
" Ah, beautiful. "
"どかして。" 
"道を開けろ。"
"軍隊式ね。"
"2人とも、お似合いだわ。"
"我々とその仲間に。"
"今は、減ったがな。"
"皆、死んだ。"
"私が、取り分けるわ。"
"願ってもない。"
会食が終わり、ハザードは、ヴェラを部屋まで送る。
"彼、いつも。"
" No, no, no. 相手を気に入った時だけ。君を気に入ったのさ。" 
"軍の上官って、皆、お2人みたい?"
"いいや。"
" Shame. "
"今夜は、楽しかったわ。久しぶりに、いい時間を過ごせた。Thank you. "
"こっちこそ。"
" Call me. "
"お休み。"

"さあ、朝だぞ。全員、シャキッと起きろ。ウォルターズ、起床だ。さっさとしろ。Com'on. Let's go. 起きろ。ワイルドマン。だらだらするな。目を覚ませ。"
"エロ本は、片付けろ。没収されるぞ。トレイ、腕立て10回。"
"終えました。"
"よし。しっかりやれ。ズボンを上げろ。俺の髪型に、文句でもあるのか?"
"いえ。"
"ワイルドマン、睨まれてるぞ。"
ジャグリングをして、怒られる。
"この馬鹿タレ、起立しろ?休めの姿勢だ。我々は、米陸軍第3歩兵隊だ。サーカスじゃないぞ。この靴は、チョコレートで、磨いたのか?軍の指揮系統を頭に叩き込め。簡単だ。よく聞け。少尉が、ハザード軍曹を怒鳴り、ハザード軍曹は、俺を。俺は、貴様だ。これが、指揮系統だ。クソは、下に落ちる。簡単な原理だ。Understand. "
兵士が、間に割って入る。
"休めだ。お手をわずらわせなくても、私が、彼の面倒を。"
"いい心がけだ。勝手に手伝え。"
" Yes, sir. "
"俺は、暇じゃない。"
上官は立ち去る。
"テイラー、寝床を整えろ。"
"靴を。しまっとけ。教えてやるよ。"
"無駄口聞くな。"
"役立たずが。"
"唾で磨いているのか?艶が出るからな。冷水と綿を使う。唾は?Like this. 小さな円を描き、まず、下地を作る。ゆっくりとな。Give me show. "
"若き勇者諸君、よく聞くんだ。9時58分まで、靴を履かず、靴下のままでいろ。"
"準備は?"
"整ってます。優秀な男だと。引き留めよう。"
"査察が始まれば、ゴドウィン大佐は、お前らに話し掛けてくる。とても気さくにだ。"
先輩兵士が、テイラーに帽子を被せる。
"似合うぞ。"
"くだらん返事はするな。命令だ。一言、お前らのつまらん出身地を口にし、軍隊は好きですと言ったら、黙れ。"
士官らも、曹長の前に、整列する。
"水筒によだれが付いていたら、自分で飲め。"
"道を開けろ。ほらよ。"
空の水筒を投げる。
"大佐に、軍隊が好きだと言ったな。Where you from? "
"オハイオです。"
"お前みたいなのが、多いのか?"
"分かりません。"
"オハイオに、姉妹はいるか?"
" Just one sister. "
" Sexyか?"
"そう言われましても。妹は、まだ13歳です。"
"残念だ。早く鍛えれば、早くモノになるぞ。" 
"道を開けろ。"
" What's your name? "
"ウィローです。"
"軍隊は好きか?"
"はい、曹長。"
"学校で、生物学を?"
"学びました。"
"ミミズの交尾は?"
"しません。無性生殖です。"
"面白い。では、聞く。セックスなしの生殖など、誰が考え出した。"
"奥様では?"
ハザードは、嬉しそうな顔をする。
"いいだろ。この小隊は、問題なし。ワイルドマン。これはうまそうだと、腹ペコ熊は言った。まずは、じっくり拝見。やれやれ、祈れ。誰が、子守を雇えと?無性生殖殿か?見つけたぞ。"
ネルソンは、2段ベッドのマットレスをめくる。エログラビアを手に取る。 
"こいつが、こんなものを見るとはな。ハザード軍曹。"

戸外での吹奏。また棺が、しずしずと、運ばれる。
"休め。止まれ。Ready up. Ready step. "
"灰は、灰に。塵は、塵に。"
"さっさと終えたいぜ。"
"静かに。"
" Down. "
"気を付け。"
"旗手。整列。棺を固定。"
"旗手、気を付け。"
"護衛隊。楽隊。右向け右。"
"担えつつ。"
"旗手。並足行進。前へ。進め。"

ネルソンとハザードは、酒場にいる。
ウィローが、おずおずと、尋ねる。
"上級曹長、一等軍曹、私にご用ですか?"
" What? "
"私にご用と。"
"用などないさ。一杯奢ろう。"
"こっちに、ビール3杯。"
"曹長も、君の父上とは、朝鮮戦争以来の仲間だ。"
" Now then. この間の査察の結果だが、聖書曰く、熊に食われる時もあるが、食う時もある。"
"査察は合格。ワイルドマンもな。"
"立派だったぞ。誰よりも、堂々してた。そこの儀仗兵どもよりな。Congratulations. "
" Thank you, sir. "
"このウィローは、ベトナムへ行きたいらしい。歩兵の居場所は、前線だと思い込んでいる。"
"ベトナムには、前線はない。"
"軍曹も、同じ事を。"
" Yeah. "
"妙な戦争だ。事態は、昔と違う。" 
"どんな風に?"
"ベトナムの平和を愛する人民は。"
"平和を愛するだって?反吐が出るぜ。あんなに好戦的な民族はいない。戦い慣れてる。"
"そのとおり。"
"俺は、ベトナムなんて、どうだっていい。どこが、支配しようと、知ったことじゃないさ。それが、アメリカ政府だろうが、関係ない。"
"何にも興味がないと?" 
"あるとも。合衆国軍隊にな。That's my family. だが、面倒は好まん。"
"どういう意味です?我々は、ヒトラーも倒した。皆、打ち負かした。アジアの農民に、負ける筈がない。" 
"ただの農民じゃないぞ。空腹のまま、100キロ以上も、ジャングルを歩き、仲間や赤ん坊まで殺す。正に兵士だ。"
"我々には、銃も弾薬もある。連中が、弓矢で応戦している写真を見ました。ハイテクのヘリに、弓矢で勝てるとでも。"
"弓矢の敵に、ヘリで、どう戦う?"
"いずれにせよ、こんな所にいたら、敵と戦えない。"
"何のつもりだ。よせよ。"
ウィローは、下から2人を睨む。
"文句があるなら、外へ出ろ。"
"望むところだ。"
"儀仗兵か。喧嘩だ。" 
"我々とその仲間に。" 
ネルソンとハザードは、グラスを合わせる。
"今は、減ったがな。"
喧嘩は続く。
"あいつ、殺されるぞ。殺せ、やっちまえ。道を開けろ。どきやがれ。"
"♪白いシーツをかけられたカウボーイ
 シーツをかけられ 土のように冷たくなって
 服装からカウボーイと知れるその若者
ネルソンとハザードが、足腰が立たないウィローに肩を貸し、兵営に戻って来る。
"待ってくれ。よう、ピーター。出迎えか。"
"帰りを待っていた。大尉がお呼びだ。軍服を着ろ。顔は、大丈夫か?"
"ただ今、参上しました。お呼びだと。"
" Sit down. 父上が、心臓発作で倒れ、8時に。あっという間の事で、苦しまれなかったそうだ。"
ウィローは、悲しみにくれる。
" I'm sorry. しばらく1人にしよう。"
"ウィロー。"
"うすのろですよ。皆、間違える。"
"父上は、曹長だった。休暇は、1週間。延びる時は、知らせろ。"

"私の記憶では、君の父上は、銀星章は、持っていなかった。よければ、父上の墓に、一緒に埋めてくれ。"
"何と言えば。考えたのですが、父を、ここに埋めていただく事は?"
"できるさ。グッディが手筈を。"
"造成中の草木も生えていない一画でも、いいんです。是非、アーリントンに墓を。"
"分かった。"
ウィローは、バスに乗り込む。

"前へ進め。"
"第3歩兵隊の歴史は、我が国の成長と発展の歴史。1922年、陸軍省は、再び、銃剣の装着を認めました。"
一般公開。サマンサも来ている。
"では、ドラムに合わせ、銃剣を取り付けます。"  
ドラムロールが響き、1発ずつ砲弾が撃たれる中、歩兵は、銃剣を取り付ける。
"式典。休め。"
"独立戦争以来、軍旗は、重要な役割を果たして来ました。兵士は、軍旗によって、隊列を組みます。隊列中央で、国旗を手にするのは、我が国が誇る第3歩兵隊大陸会議軍の軍旗衛兵です。次に続くのは、D中隊。指揮官は、トーマス大尉。それに続くのは、儀仗兵の E中隊。指揮官は、ハリソン大尉です。"
"右向け右。"
"最後に、楽隊の制服で登場するのは、第3歩兵鼓笛隊です。独立戦争当時、ワシントンは、軍隊に赤い軍服を着せ、戦いの最中でも、見分けがつくようにしたのです。鼓笛隊を率いるのは、フィップス少佐。"
ハウザーとサマンサは、車の中。
"ベティを問い詰めて、聞き出したの。"
"俺の事?秘密をばらした?"
"結婚して、3年前に離婚したって。"
" Yes, true. "
"息子がいるって。"
"ああ。2度目の出動の時、妻が俺の元を去って依頼、息子とは、会っていない。それ以前も、息子との接触は、少なかったが。"
''キミも結婚していたと。子どもは?"
"できない体なの。ご家族も、気の毒ね。"
"仕事優先だった。俺の仕事は、女に優しくしてやれない。"
サマンサの部屋の前で。
"独り身じゃ、隊の指揮に影響するわ。"
2人は、抱き合い、熱いキスを交わす。
"中へ入ってからよ。"
2人は、部屋に入る。

ウィロー。 
"入れ。" 
"曹長殿、軍曹殿、お呼びですか?"
" Yeah. その格好じゃ、ダメだ。"
"そうですか?"
"そうとも。こいつを付けないと、正式とは言えん。半年で、3等軍曹だ。"
右肩に、ワッペンを貼り付ける。
"こいつは、あの晩、フラナガン軍曹が、酔って喧嘩し、酒場を壊したお陰だ。奴は、1階級食われた。" 
"熊にな。"
"俺たちは、樽底を探して、ようやくカスを、すくい上げた。恒例の儀式を受けるまでは、正式ではない。つまり、こう言う事さ。"
ハザードは、ウィローの右肩を殴る。
"俺の役目は、先輩に譲る。ネルソン曹長にな。"
ネルソンは、ウィローに、後ろを向かせる。
"痛いぞ。"
ネルソンは、大きくためを作るが、ウィローのワッペンの辺りに、軽く触れる。
"おい、彼を見ろ。待ちかねて、体が震えている。任せたぞ。うすのろ。"
1人で、カードで遊んでいた男が、おずおずと立ち上がる。
"志願だとほざくより、もっと気に食わねえのは、新米のクソ軍曹だ。"
ウィローの右肩を殴る。
"しまった。当て損ねた。"
"1人1発の決まりだ。"
"まだ殴ってない。殴らせろ。"

サマンサが、ウィローを出迎える。
"またお会いできて、光栄です。"
"クレルは、仕事で遅れるの。だから、今夜は、私が料理を。期待しないで。どうぞ。"
" Thank you. "
"飲み物は?"
"できればコーラを。"
"どうぞ。"
" Thanks. Can I help? "
" Sure. あなたの話は、よく聞くわ。お父様の話もね。クレルと戦友でしょ。"
" Yeah, Korea. 共に戦うと、気心も知れるんです。"
" Sit down. "
" Oh, thanks. 父が、最も誇りにした勲章は、CIB戦闘歩兵記章です。月桂樹の冠と青のエナメル板に、ケンタッキー銃。戦争が起こっている限り、兵士が居るべき場所は、ただ一つです。クレル軍曹は、賛同しませんが。記者として、彼と同じ見解を?"
" Hardly, クレルは、ベトナム戦争を、全面的失敗と見るけど、あれは、ジェノサイドよ。" 

"君は、なぜくだらん意見を振りまく?他の中隊長の耳に届いているぞ。"
ハザードは、上官に難詰される。
"意見を言うのは、規則違反だと?"
"たわけた事を抜かすな。軍隊で、意見を言うのは、規則違反に決まっている。軍隊は、意見など、興味ない。私にどうさせたいんだ?君は、立派な兵士だが、ここに赴任して以来、迷惑のかけっぱなし。今では、私の恥さらしだ。私の友人は、君を反戦軍曹と呼んでいる。"
"私は、反戦家じゃない。この戦争に、賛成できないだけです。戦うには、正当な理由が要る。"
"考えるのは自由だが、口には出すな。"
"私を、ここに置いておくのが、間違いでは?私の転属を認めれば、済む事です。"
"いや、ダメだ。フォート・ベニングには行かさん。どこへも行かさんぞ。ここで、立派に務め、私の鼻を高くしろ。"

ハザードは、サマンサをオフィスに訪ねる。
"トム。"
"時間どおりに頼むぞ。"
"渋滞に捕まるなよ。"
"全文が必要だろ。"
"原稿を見てくれ。"
"是非、一緒に来て貰いたい。"
"今夜の歓迎式は?"
"明日の晩、7時半にここに。ドレスアップして、8時に大使館へ。" 
" OK. "
" OK. "
"軍曹と、ペルシャ絨毯の隠し場所へ。"
"取り込み中では?"
"いいの。歓迎式の打ち合わせ。" 
"大使館では、記者もおめかしを?" 
"時にはね。"
"素敵な贈り物だな。"
"さあ、早く行きましょう。"
"愛を込めて"のメッセージを添えた小さなブーケ。
サマンサとハザード。ペルシャ絨毯を見繕う。
"悩みがあるなら、話して。なぜ、今の隊を離れたいの?" 
"ただのおもちゃの兵隊さ。"
"転属すれば、若者を戦地へ送る手助けをするんでしょ?"
"自分が求められている場所で、働くべきなんだ。彼らを黙って見送るなんて、俺にはできない。あまりに無力だ。"
"そんな事ないわ。"  
"軍の連中は、俺にとっては、家族も同然だ。家が燃え、我が子を全員、助けられなくても、全力は尽くす。そして、後で泣く。君には、これがいい。ウーシャフだ。"  
"綺麗ね。"

ネルソンとハザード。
"少しは、じっとしてろよ。"
"グッディ、考えたんだが、今年の演習は、うちの隊が、敵軍部隊をやらないか?"
"敵軍を?米軍に惨めに降参する敵の役をやれと?"
"そうだ。"
"自ら、損な役回りを?"
"買って出るのさ。"   
"本気か?"
"連中は、いずれベトナムに送られる。2週間あれば、何か教えられるさ。"
" OK. Tell me the real reason. "
"本当も、クソもない。どうだ?"
"表向きは、ノーだ。"
"ありがとよ。"

白い墓標、一つ一つに、小さな国旗が立てられる。
ウィローは、レイチェルに手紙を書く。
"1968年5月30日、愛するレイチェル。君から返事がない。僕を忘れると言ったが、僕は、君を想い続ける。先週は、墓地の仕事が、やたら忙しかった。1日で、20の遺体を埋葬。20の葬儀を行った。ハザード軍曹は、いつになく、不機嫌で、遺体の数から察して、勝ち目はないと言った。僕は、敵の遺体は、もっとあると反論。ベトナムの話になると、いつも衝突する。軍曹の彼女は、先月、反戦デモに出て、捕まった。いい人だが、軍曹は、お冠だ。彼は、戦争以上に、反戦家を嫌う。僕の手紙は、届いている?返事が欲しい。愛してる。ジャッキーより。"
墓地の入り口。
"ジャッキー、振り向くな。凄い美人が、君を見つめている。6時の方向だ。ゆっくり振り向け。俺好みだ。"
ウィローは、振り向く。
"消えた。本当にいたんだ。"
"上着を正せ。"
"衛兵。休め。"
"命令伝達。位置について、指示どおり待機。" 
ウィローは、レイチェルを探す。レイチェルは、回廊に、1人佇んでいるのを、ウィローに見つけられる。
"レイチェル。"
"ジャッキー。"
"何しに来た?"
"ケネディ大統領のお墓を見に来ただけ。"
"なぜ、ワシントンに?"
"両親が引っ越したの。父は、国防総省へ。"
" You, too? "
" No. 私は、ドイツの学校にいるの。実家に寄っただけ。立派ね。" 
"今夜、食事でも、どう?"
"デートの約束が。"
" Break it. "
"それは、無理よ。"
"断ってくれ。"
" All right. ジョージタウン2218番地に8時よ。"
" Check. "
ハザードが、やって来る。
"市民の手助けはいいが、誘拐は許されんぞ。ウィロー軍曹。魅力的な女性でもな。"
"ハザード軍曹。彼女は、レイチェル。昔からの友人です。"
"よろしく。"
"初めまして。もう行くわ。 See you later. " 
"2218番地だね。"
" Yeah. "
"やったな。" 
"50ドル貸してください。Pay back pay day. "
ハザードは、金を貸す。
"ついでに、車のキーも。"
"とんだ所に出くわした。" 

ガーデンパーティー。
"アメリカ国民は、これ以上、軍と政治家に、勝手な真似を許す訳には..."
"君は、素敵だ。"
"ありがとう。"
ハザードは、男と談笑するサマンサのそばに来る。
"失礼。" 
"こちらは、友人のクレル・ハザード軍曹。"
"ドン・ブルレイカーよ。" 
" Nice to see you. 是非、今度の戦争について、お聞きしたい。我々は、本当に、ベトナム戦争に勝てるのかね。"
"ドンは、反戦弁護士会の会長なの。" 
"戦死者の比率は、10対1。これで満足か?" 
" Happy? No. No. 真に納得の行く勝利でなくてはね。How are you doing? "
"皆、特に、何もしてるようには、見えんがな。酒とお喋りばかりだ。"
"我々は、罪なき者まで、虐殺している。あちこちでな。"
"ただの意見など、クソの穴と同じだ。"
ハザードは、一歩、ドンの前に踏み出る。
"1人1個は、持ってる。"
ハザードは、サマンサと歩み去る。
"ひどいわ。"
"偉そうに。"
"意見を言う権利はあるわ。"
ドンが、怒る。
"なぜ、そこまで失礼な態度を?" 
"そうだったか?だったら、早く消え失せろ。"
ドンは、ハザードの肩に手を掛ける。
"私は、君の部下でも、何でもない。相手になろうか?"
"お互い気に食わんと分かっただけで、十分だ。"
"喧嘩を売る言葉は?腰抜け野郎か?"
"やっちまえ。"
ハザードは、殴りかかるドンを叩きのめす。
"クレル。"
ハザードは、ドンをテーブルに叩きつけ、倒れたドンに、足を掛ける。
"やめて。"
"よせ。"
サマンサが、ドンを助け上げる。
"救急車を、呼んでやれ。"
" Facist. "
"救急車だ。"
ハザードは、会場を後にする。
" Pig. "

ハザードは、帰宅する。サマンサが、やって来る。
"クレル。"
" Hi サム。"
"ドンの見舞いに行って来たわ。彼、顎が折れて、メモに、こう記してた。酔って、馬鹿な事をしたって。治療費の請求も、告訴もしないわ。"
"なぜだ?" 
"彼には、良識があるからよ。まともな人間は、遅かれ早かれ、自分の間違いに気付くわ。"
"中に入ってくれ。 Sorry. 君が説得したんだろ?"
"顎を折られたのよ。説得なんか聞かないわ。"
サマンサは、ハザードに抱き付く。
" I love you so mutch. I worry about you. "

ウィローは、レイチェルを実家に訪ねる。
母親が出迎える。
"ジャッキー。"
"また会えて、嬉しいです。"
"元気だった?"
"はい。"
父親も出て来る。
" Hello ジャック。"
"大佐。"
"まあ、中に入ってくれ。Come in. "
" Thank you, sir. "
"娘が、君に会って、驚いていたよ。"
"僕も、びっくりしました。"
"そりゃ、そうだろう。久しぶりで、会ったからな。"
" No, sir. "
"君は、軍曹だと? "
" Yes, sir. "
"マイヤー第3歩兵隊に所属か?"
" It's correct. "
"立派な部隊だ。歩兵部隊としてはな。" 
" Yes, sir. ワシントンでも、電子関係の仕事を?"
"軍の主要な研究開発の指揮を執っている。勿論、内容は、機密だけどね。"
" I see. "
"我々の研究開発も、この戦争の恩恵を受けている。" 
"でしょうね。"
身支度を整えたレイチェルが、2階から下りて来る。
"ピーターソンとデートじゃなかったのか?押しが強いから、断るのに、苦労したろ?" 
"平気よ。"
"お待たせ。"
" Surgent. "
"失礼しました。"
2人は、出掛ける。
"相変わらずだな。"
"ええ、憎まれ口ばっかり。How is your father?"
"先月、心臓発作で、他界した。"
" Oh  God. 大好きだったのに。"
"父も、君の事が、好きだった。心からね。"
レイチェルは、車に乗り込む。
レストラン。
"カベルネ?"
"そうです。"
"それで、軍隊は、あなたの期待どおり?"
"ああ、ほとんどね。幹部候補生学校とベトナムへも必ず、行く。"
"ベトナムへ?"
"時と場所を得た兵士は、世界を変える。"
"まだその考えを、捨て切れないのね。"
"何を言う。"
"もっとほかの話をしましょう。"
"ヨーロッパの話なんか、ごめんだ。君の友達の話も、最近読んだ本にも、興味がない。"
"無難な話よ。"
"まだ僕の事が、好きか?" 
"兵士をやめたら、聞いて。"
"今、知りたい。"
"あなたとの結婚を潰したのは、父よ。自分の肩書きのため。士官学校の話も、結婚を延期させる口実。曹長の息子と大佐の娘だからよ。あなたは、父を信じ、騙された。だから、私たち、broken up. あなたは、馬鹿よ。とても愛していたのに。自分の選択を貫いた。"
"なあ、ここを出よう。" 
" Yeah. "
" Yeah, yeah. Thanks the choice. "
" No ploblem. "
ウィローは、ハザードに電話をかける。
"やあ。"
"ウィロー。"
"君か。今度は何だ。金も車も貸した筈だ。次は、ペニスでも貸せとでも?"
"酷い言葉まで、グッディ曹長に似て来た。"
"で、用件は、何だ?"
"頼みがあるんです。あなたか、彼女の部屋を貸してください。"
"俺の部屋を貸す。鍵は、ドアマットの下に。"
"このご恩は忘れません。"
"部屋を確保。話すだけさ。"
"分かってるわ。"
ハザードの家に着く。
"いたんですか。"
"ああ。2分前に警戒体制が発令された。恐らく、大演習に入る。悪いな。"
"今夜は、ダメです。今朝も、夜中の3時起きで、くたくたに疲れています。"
"文句なら、演習が済んでから、牧師に言え。こいつは、グッディの考えだ。"
"何事。"
"野外演習さ。レイチェルと話を。"
"5分だぞ。入れ。5分だからな。"
" I told you. 結婚しようって。"
"初めて、聞いたわ。"
"毎回、手紙に書いたさ。"
"忘れようと、思って。"
"軍隊をやめてもいい。できる事なら、何でもする。"
"今朝、あなたに会うなんて。これで、終わりなの?" 
"時間だ。出て来い。"
"レイチェル。I love you. "
キスをする。

"レッドマン4。大隊司令部に戻れ。すぐに大隊司令部に。聞こえているのか?レッドマン4。"
地上では、兵士が、行軍する。
"今から、お前たちは、ベトコンだ。森の中を、忍び足で進め。地形に逆らわず、肌で感じろ。ジャングルは敵ではない。味方につけろ。愛せば、愛し返してくれる。いつか本物の敵に遭い、その時、この訓練の事を思い出したら。助かるかもな。"
歩兵は、浅い沼を渡る。野営地のキャンプのそばを通る。物資を奪う。テントの中の兵士が、異変に気づく。
"あれ、どうなってんだ。"
"ベトコンだ。盗まれたぞ。"
"ここは、どけなんだ。方位磁石で、分かるかな?北は?"
動物に出くわす。
"何だ?何が出た?"
銃を突きつけられる。
"ワイルドマン。脳みそが、地面に飛び散ったぞ。その方が、幸せかな?お前、これまでの人生で、腹を据えて、何かやった事があるのか?上官に逆らうとか。" 
"いえ、ありません。それじゃあ、real man じゃないと?"
"性別は、男だが、男には、自信が必要だ。来い。"
" Over there. "
銃撃戦が始まる。模擬の地雷を踏み、火柱が上がる。
"見事だ。ジャッキー。"
"奴は、除隊が狙いか? 大隊は、いい面の皮だ。視察団が、我々のヘマをみてるんだぞ。そりゃ、私のせいじゃないが、降格もんだ。"
ネルソンは、椅子に座る。
"我々は、中間管理職。実際、この国の中核。車輪をうまく回す役だ。前にも、後ろにも、目を配る。とても難しい仕事だ。クレルは、分かっていない。ちゃんと教えなければ。"
"根性を叩き直すのが、先だ。問題は、奴の居場所が掴めん事だ。"
ハザードが、沼のほとりで休んでいると、ネルソンに、ナイフで、襲われる。
"何の真似だ。お前、頭がいかれたか。軍法会議もんだぞ。訓練の神様の積もりか?ベニングにいる教官の立場がないだろ。"
"できる事をしてやりたかった。"
"なら、ベトナムで先頭に立ち、連中の最期をみとったら、いいだろ。どう見ても、お前は、正気じゃない。"
"グッディ、グッディ。待て。鼻垂れ小僧だった連中が、今じゃ、あの成長ぶりだ。後、24時間くれ。そしたら、自分から、本部へ行く。I promise. "  
"大尉。君の隊は、空爆を要請する筈だが。" 
"敵軍35名と、西部劇ごっこをやり、挙げ句にやられている。ヘリを呼び、空爆を要請しろ。分かったな。"
ベトコンが、空のテントに入り、寝ているウェーバー中尉を拘束する。
"こんばんわ。どうぞ、お静かに。"
ウェーバーは、塹壕のハザードの元に連れていかれ、拘束を解かれる。
"どけ。楽しいか?まったく笑わせる。私の負けって訳か。貴様らは、降格ものだ。転属させるか、そこで、君は、ベニングへの転属を申し出る。 Ready? そうは、いかん。私は、絶対に、負け犬にはなれんのだ。こう報告してやる。君は、最高の兵士だとな。君の協力により、たった4日で、時代遅れの訓練を改善したとな。Think about it. 時間は、十分ある。貴様は、一生、私の周りを行進するんだ。英雄には、行進がお似合いだ。"
翌朝。
"軍曹。お話が。"
"説教なら、グッディから、たっぷり食らったところだ。"
"グッディ曹長なんて、クソだ。"
"立派なクソだ。"
"あなたは、信念を貫いた。皆、頭が古いんだ。でも、なぜ、ベニングなんです?いくら鍛えても、訓練は訓練。実戦になった時、必要なのは、軍曹、あなたなんです。"
" You know. 有難いご指摘に、感謝すべきだな。"
"なぜ、逃げるんです?"
"一体、俺から、どんな話が聞きたい?息子のように可愛がった部下の話か?そう言えば、こんな若者がいた。俺に、すがって来たんだ。 Stop the pain. はみ出した内臓を、体に戻してくれとな。そして、死に際、オハイオの彼の娘に言伝を頼まれた。踊りの発表会を楽しみにしてたとな。金髪の娘で、まだ5歳だった。衣装を身につけたその子は、so beautiful だった。"
"でも、部下を救った話もあるのでは?"
ハザードは、車に乗り込む。
"そんなのは、慰めに過ぎん。"
"慰めでもいい。自分を偽るよりは。"
ウィローの襟元をつかむ。 
" Listen. 俺が、お前ほど、人生について悟っていれば、偉くなってたさ。Just like you, son. "
ハザードは、車で去って行く。

レイチェルとウィローは、夜の歩道を歩く。レイチェルが、左手のリングをかざす。レイチェルの家に着く。 
"南方60地点で、第1機甲部隊は、沿岸にヘリによ上陸を敢行。"
母親は、リングに気付く。 
"上陸した瞬間から、激しい戦闘が始まり、この襲撃は、マッシャー作戦と呼ばれ、敵陣のランソン近くの..."
レイチェルは、テレビの前に立つ。父親は、ソファで横になっている。
"結婚するわ。"
"悪いが、それは、できん。認められないな。"
"私の年なら、親の承諾は、要らないわ。"
バッグを投げ捨てる。
"出世しか、頭にないんでしょ?"
"父親に、何て口を。"
"言わせて貰うわ。大佐。"
2人は、結婚式を挙げる。仲間に祝福される。
"晴れて、軍人の妻だ。"
パーティー会場。
"写真を撮らせて。"
ハザードとサマンサは、踊る。次は、レイチェルと踊る。
"恥ずかしいわ。軍の記事に載るわ。" 
サマンサとウィローが、躍る。 
"ダンスが上手なのね。"
" Thank you. 戦地で覚えた。"
"笑って。"
新郎新婦が、写真を撮られる。
"乾杯の音頭を。"
ハザードが、立ち上がる。
"新郎新婦に乾杯を。Long happy life together. "
"お幸せに。"
" A new son. "
"我々と、その仲間に。"
"今は、減ったが。"
" Oh my  God. "
"実に結構。"
新郎新婦は、会場内を歩く。 
"おめでとう。"
"しっかりな。"
レイチェルの母は、浮かない様子。離れて座る夫を見やる。
" Smile. "
レイチェルは、サマンサにブーケを渡す。
"ありがとう。"
ウィローに、ウェーバーが、話し掛ける。
"今夜は、寝タバコは、よせ。"
"ご忠告、どうも。"
ハザードとネルソンが、ウィローを挟む。
" Drink? "
"受け取れ。"
小箱を渡す。中には、銀のカフスが入っている。
"しっかりやれば、2週間で、幹部候補生学校へ行けるぞ。"
"グッディと私とで、トーマス大尉の所へ行き、説得したのさ。"
"熊を食った。"
"そういう事。"
"なぜ、皆、幹部候補生学校へ行き、少尉になりたがる?"
"最悪さ。"
ウェーバーは、葉巻をくゆらす。

▶︎ベトナム行き志願
ベトナムでの空爆シーン。粗い画像。逃げ惑う子どもたち。
"低い姿勢を保て。"
"了解。"
運ばれる負傷兵。
"負傷者が、2人いる。"
"早くヘリに乗せろ。"
"了解。"
"負傷者だけだぞ。それ以外の者は、乗せるな。"
石の墓標の列。
1969年。
"軍曹殿。
ひと月ほどで、幹部候補生学校を卒業です。皆、ベトナムの話に明け暮れ、ここで見聞きするのも、デモばかり。この戦争は、国中を、引き裂いているようです。あなたとサムも、相変わらず口論を?彼女は、一般市民です。誰よりも、戦争を憎んでいるのは、戦う軍人だと知る由もない。ジャッキーより。"
"ローニー、ワイルドマン。ベトナム行きだ。ワイルドマン。"
"お気の毒に。"
"フラナガン。お前も、ベトナムだ。ウォルターズ。"
"こいつと一緒じゃ、俺たちも、お仕舞いだ。"
"馬鹿にされて、黙っているな。"

ウィローらが、ハザードを訪ねる。
"少尉さん。おめでとう。"
"敬礼。"
ネルソンとハザードが、敬礼する。
"返礼するんじゃないの?"
"そうでした。"
"本物の兵隊さんね。"
"やりましたよ。どうも、軍曹。"
" How are you? "
"ジャッキー。Congratuations. 階級記章がご立派。"
"シャンパンを。"
"報告があります。"
"どうぞ、主役はあなた。"
"出動します。2週間後に、クアンティンに。"
"それは、おめでとう。時と場所を得たな。"
"どうも、曹長。"
"どうしました?"
"いや、一緒に行けなくて、残念だ。戦地では、優れた少尉は、少ない。君なら、軍曹も心強いだろう。生まれついての軍人だ。"
"我々とその仲間に。"
"今は、減ったが。"  
"さあ、パーティーを始めましょう。2人を祝ってね。"
戦地の模様。
"2名負傷だ。1人は、胸に2発受けている。後1人は、右腕に1発受けている。"
"了解。デスバーへの到着は、何時だ。"
"こちらは、コール51だが、この周辺を調べる。FS小隊。そっちは、確保したのか?"
"了解。大丈夫だ。2部隊が来る。"
"最近の軍報を読んだか?ベトナムでの功労で、名誉勲章を受けた者がいる。"
"誰だ?"
"仲間を救ったそうだ。敵に、たった1人で立ち向かった。"
"一体、誰だよ。"
"ワイルドマン。"
"南ベトナム警察署長が、拳銃所持の男を射殺。その男は、ベトコン将校の疑いが、強かったため、頭を撃ち抜かれたのです。署長は、今も現職です。カオランの街では、激しい銃撃戦が続き、人々は、うろたえ、逃げ惑っています。"
レイチェルに、サマンサが声を掛ける。
"随分、浮かない顔ね。もっと嬉しそうにして。もうじきよ。彼は、後3週間で戻るわ。"
"ボニーのご主人は、人が変わっていた。別人みたいにね。彼女には、優しい手紙を送りながら、母親には、離婚したいと、書いていたの。2歳の娘がいるのによ。皆、どこか、変になる。心が、打ち砕かれて。でも、ジャッキーは、違う。そうよ。だから、私は平気。"
"レイチェルは、料理が上手ね。"
"最高。" 
"下のレストランに、電話して、料理だけ届けて貰ったのさ。"
"褒めた積もりね。"
"冗談さ。美味しかったよ。"
" Thank you. "
"ジャッキーから手紙は?"
"来たよ。読むか?"
"あなたが、読んで。"
"軍曹殿
まだたった1年なのに、人生の10倍も、ここにいるみたいです。じきに皆に会える。なのに、皆がこの世にいる事が、信じ難い。レイチェルすら、彼女の愛も、この世に愛がある事すら、信じられない。彼女の手紙を読み、彼女を強く、この手に抱き締め、元の自分になれると信じたい。多くを学びました。自分の部下も守れない事を、それが、自分の役目なのに。軍曹に話したい事が、山ほどあります。僕の人生は、軍隊だと思っていたのに。何も分からなくなりました。腰を据えて、ゆっくり話したい。そして、教わりたい。"
"入れ。"
"曹長。ハザード軍曹が。"
ネルソンは、慌てて部屋を出る。ハザードが、部屋を壊している。
"戦死 ジャック・ウィロー"
"サム。"
"ウィローが。
"グッディが電話を。"
"彼の望みは、CIB。戦闘歩兵記章を、何よりも欲しがっていた。あの年の若者は、社長の肩書きに憧れ、ステレオ完備の独身部屋とか、スポーツカーを欲しがるのに、彼の場合は、CIB。彼を制した積もりだ。慌てて戦地へ、行く必要はないとな。グッディと一緒に、忠告したが、無駄だった。"
"自分を責めないで。"
"何か教えられると思っていた。ベニングでなく、今の部署でもな。これでも、俺は、ハザード軍曹。歴戦の兵士だ。"
"やめて。"
"生き残る術を教えてやれたのに。俺は、何て情けない男だ。"
"自分を責めては、駄目。"
"責めずにいられない。俺は思った。If 全員を救えられないなら、せめて1人、1人だけでも、救いたいと。たった1人でもな。そのジャッキーが。"
"どこなら、やれるの?ここも、ベニングも駄目なら、どこで?あそこ?"
"どこだ。"
"私に言わせないで。"
"うってつけの場所がある。そこなら、確かだ。"
"ここにいてほしい。でも、決めるのはあなたよ。"
"俺たちは、どうなる。俺が、もし、戦地へ行ったら、君は、ドンと日暮れのデートか?"
"私は、誰とも、どこへも行かない。1人でここに座り、怯えながら待っている。"
"君の戦争に対する考えに反するだろ?"
"反戦の気持ちは、変わりないわ。戦争をやめさせる努力もするし。プラカードを持ち、デモ行進にも加わる。あなたへの裏切りと思われてもいい。あなた同様、私は私の道を行くわ。"
"もう1つ質問がある。俺が、戦地へ行くなら、君は、その前に、俺と結婚してくれるか?"
"ええ。いいわ。"
"本当か。" 
"ええ。"
" I love you. "
" Love you, too. "

ハザードは、教会に行き、ウィローの棺に、戦闘歩兵記章を供える。ウィローの葬儀が執り行われる。
"灰は灰に。塵は塵に。"
"さっさと終えたいぜ。"
"黙れ。何を見てる?"
"旗手。気を付け。"
"休め。気を付け。"
"整列。"
"ここは、無名戦士の墓だ。その墓碑銘には、栄光に包まれ眠りし者。その米兵の名は、神のみぞ知ると。ベトナムでは、無名戦士は、いないそうだ。なぜなら、戦死者の遺体は、数えられるからだ。それに、身元も分かる。だが、彼らの心まで、分かるだろうか?" 
"栄光に包まれ、この地に眠る米兵。彼の功績を知る者は、少ないが、私は、彼を知っている。そして、忘れない。"
"旗手。気を付け。護衛隊。気を付け。"
"軍葬の礼です。ご起立を。"
"ささげ銃。"
"礼報隊。3連射。用意。息を吸って。用意。狙え。撃て。"
"ご着席を。"
"立て、銃。" 
"整列。"
"米大統領に代わり、ご主人の勲功を讃え、国旗を贈ります。"
墓地でラッパを吹く。
【感想】
ベトナム戦争の最中、陸軍に志願したウィローは、軍人となった以上は、戦地に赴きたいと強く望む。希望の叶ったウィローは、ベトナムに赴くが、戦死を遂げる。ウィローと上官のハザードらとは、厳しい上下関係はなく、ウィローが、戦友の子息ということもあって、ウィローは、青臭い持論を振りかざし、上官も親身になって、何かと世話を焼く。ウィローの死は、予感され、そこに向かって、物語は、進むが、派手なイベントもなく、盛り上がるものがない。

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