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ジャージー・ボーイズ【2014年クリント・イーストウッド監督作品】家族への愛

C.イーストウッドは、ジャズなど音楽の造詣も深いが、これは、エルビス前、どこか折り目正しい甘いラヴソングを紡いだコーラスグループ『フォー・シーズンズ』の伝記的映画。同名の著名ミュージカルの映画化作品でもある。また、メインヴォーカルのフランキー・ヴァリは、イタリア系の移民であり、マフィアとの繋がりがはしばしに現れ、彼らのファミリー愛が感じられる。

ニュージャージーの田舎町に住むトミー(ヴィンセント・ピアッツァ)やニック(マイケル・ロメンダ)は、ケチな犯罪でしょっちゅう警察の世話にもなっている。一方で、バンドを組み、床屋で働くフランキー(ジョン・ロイド・ヤング)のボーカルの才能に惹かれていた。その小柄な身体から出されるやや甲高い甘い歌声は、マフィアのボス、デカルノ(クリストファー・ウォーケン。好演)の心をつかみ、一生の庇護を得る。

トミーの友人ジョーの紹介で、作曲もできるボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)が加入し、フォー・シーズンズを名乗ることとし、レコード会社と契約に漕ぎ着ける。しかし、世に出れず、レコードを出す条件として、ヒットするに値する楽曲と、3500ドルを要求される。
ボブが、『シェリー』を書き上げた頃、トミーは、裏の勢力から金を借り、3500ドルを調達する。
シェリーに続き、連続3曲がヒットチャートの1位を獲得し、ジャージー・ボーイズは、一躍スターになる。
フランキーは、よくミュージシャンにありがちなゲイの性癖はなく、早々と結婚し、三人の娘がいる。ドラッグもやらないし、酒も嗜む程度。しかし、運命は暗転する。
エド・サリヴァン・ショーに出演したときに、金貸しのノーマンが現れる。トミーによると15万ドルの借金があると言う。デカルノが仲介に入り、デカルノの私邸に、メンバーやノーマンが集められる。フランキーは、全員で借金を返すという。また、トミーがグループの資金に手をつけ、別途、50万ドルの借金があることが分かる。これも完済を約束するが、ノーマンは、トミーは、ラスベガスに留め置き、監視すると
言う。ニックも、トミーとの確執をぶちまけ、グループを脱退する。ボブも作曲に専念することとし、代わりのメンバーを迎え、ジャージー・ボーイズは再出発する。
一方、家庭では、ツアーでフランキーが不在がちのため、妻メアリーは、情緒不安定。酒と薬物に溺れている模様。遂には、二人は離婚する。娘は、メアリーが引き取る。
ある時、メアリーから電話で、長女フランシーンが家を出て、二日も帰ってこないと打ち明けられる。元の家に、フランキーは戻り、フランシーンからの電話を受ける。ニューヨークにいるようだ。フランキーは、ニューヨークに飛び、闇の力で、フランシーンの居所を突き止め、カフェで対面する。タバコを吸おうとする娘に、歌手になるなら喉をいたわれとアドバイスする。
借金の完済が見えた頃、フランキーの元に、フランシーンが薬物で命を絶ったとの連絡が入る。
落ち込むフランキーに、ボブは、『君の瞳に恋してる』の原曲を渡し、目を通すよう促す。やっと立ち直ったフランキーは、ボブに自分のアイデアを伝え、曲は完成する。披露すると、空前のヒットとなる。

1990年、フォー・シーズンズは、ロックの殿堂入りし、オリジナルメンバーが25年振りに集った。
ミュージカル風のエンディングも、なかなか気が利いている。

C.イーストウッドは、自ら主演することが多いが、本作では、登場人物の再現性にこだわり、よく似た役者を起用したと思われる。25年振りの再会も、記録映像に差し替えることなく、役者に演じさせている。実は、本人は、ボブが一人で観ているテレビに、ガンマン役でカメオ出演している。結果、本作は、骨太な佳作となった。
また、イーストウッドは、古き良きアメリカへの憧憬の念が強く、本作でも支配的なテーマとなっている。

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