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一人勝手に回顧シリーズ#マーティン・スコセッシ編(14)#シャッターアイランド/監獄島の真実

【映画のプロット】
▶︎収容施設
ボストン湾諸島1954年
霧の中から、船が現れる。テディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は、トイレでえづいている。
"しっかりしろ。テディ。しっかりしろ。"
自分を叱咤する。
"ただの水だ。ただの水が、沢山あるだけだ。"
"頑張れ。"
テディは、コートを羽織り、甲板に出る。
"OK boss?"
チャックが声を掛ける。
"ああ、大丈夫。水が、ちょっと苦手でね。君が、partner?"
"That's right."
"ゲロ吐いている姿が、初対面か。"
"『伝説のテディ・ダニエルズ』とは、大違いだ。"
"Legend? ポートランドでの伝説?"
"シアトル。俺は、シアトルから来た。"
"何年、連邦保安官を?"
"4years."
"どこも狭い世界だ。"
"かみさんは。Boss. "
"I was."
ネクタイを渡し、テディが結ぶのを見つめる女性。
"She died."
"そうか。気の毒に。"
"俺が、仕事に出ている時に、アパートが家事になってね。4people died. 炎でなく、煙でやられた。それが救いだ。タバコを、どこに入れたかな?"
"俺のをどうぞ。"
"上着のポケットに入れたのに。"
"船の奴らが怪しい。"
テディは、タバコを貰う。
"島の施設の話を聞いたか?"
"精神科病院だって事だけ。"
"患者は、皆、犯罪者だ。"
"蝶々を追っかけている患者なら、保安官は、要らないよ。"
島が近づく。
"あの島か?"
船員に聞く。
"そう。島の向こう側は、海岸までそそり立つ断崖でね。島の出入りは、あそこの桟橋だけ。あんたらを島に上げたら、すぐ引き返す。急いでくれよ。"
"Why?"
"Storm's coming."
島に着く。施設職員が2人を出迎える。
"保安官バッジは、初めてだ。警部副隊長のマクフィアソンだ。ようこそ。病院に案内しよう。"
ほかの職員が、銃を構える。
"ピリピリしているようだな。"
"そういう状況でね。"
2人は、ジープの荷台で揺られる。
"ここに眠る我々も、愛し、笑い、そして、人生を生きた"
施設の外周を走る。
"電流が通っている。"
"なぜ、分かる?"
"前にも見たから。" 
門の扉が開くと、また奥にゲートがある。中に入る。
"我々は、できる限り協力するが、滞在中は、規則を守って貰う。Do you understand?"
"いいとも。"
"あれが、男性患者収容のA棟。あっちが、女性患者用のB棟。崖の上のあそこが、C棟。南北戦争時代の砦だ。危険な患者の棟で、C棟に入るには、コーリー院長と私の許可書と立会いが必要だ。いいね?"
"伝染する病気なのか?"
"銃は、ここで、預かっておく。"
"我々は、正規の連邦保安官だ。銃は、常時、携帯する。"
"刑務所に関する規定第319条。刑務所内では、施設の責任者の命令が優先する。銃を携帯して、門は、通れない。"
渋々、銃を預ける。
"これで、手続は終わりだ。コーリー院長に会わせよう。"
男が、熊手を持ち、掃除する手を止め、微笑む。両足が鎖でつながれている。
"その女囚人は、いつ脱走を?"
"それは、院長が説明する。規則だ。"
"この施設に、これだけの警備員が、必要なのか?"
"世界でも、例のない施設でね、他の施設で手に余る重症患者を収容している。コーリー院長が創ったユニークな施設だ。ここの患者は、通常なら、『治療不可能』。"
髪の毛の抜け落ちた女性患者が、テディを見る。女性は、唇に、人差し指を当てる。
"身分確認だ。"
建屋の中に入る。
"バッジの提示を。"
"ロンドン警視庁も、院長の意見を求める。MI-5や諜報局も。"
"Why?"
テディが尋ねる。
"What do you mean?"
"情報機関が精神科医の意見を?"
"院長に、直接、聞けよ。"
またIDチェックを経て、中に入る。
坊主頭の張り出しの良い院長が迎える。
"ダニエルズ保安官。"
"オール保安官。"
"ご苦労だった。"
"Yes. Gentlemen."
マクフィアソンは、下がる。
"彼から話を。いい男だよ。仕事熱心でね。"
"仕事と言うと?"
"『法と秩序』と『医療』の融合だ。"
"何と何の融合ですって?"
目から上を箱で覆われた男、獣人の絵。
"絵の描写は、正しい。"
"ここに来る患者は、枷をはめられ、汚物まみれ。病気を『叩き出す』ために、鞭で打たれ、脳にドリルで穴を開け、意識を失うまで、冷水に浸けて、溺死さえも。"
"And now?"
"治療を施す。病を癒やすために。たとえ失敗しても、安らぎを与えたい。"
"でも、患者は、皆、凶悪犯なんでしょう?他人を傷つけたり、殺害したり。"
"そう。大半がね。"
"そういう奴らに、『安らぎ』を与えるので?"
"私の仕事は、治療だ。裁きではない。"
"それで、そのfemale prisoner は?"
"『Patient』だ。"
"Excuse me. そのpatient は?レイチェル・ソランドーは、24時間以内に脱走した?"
"昨夜、10時〜0時の間だ。"
"危険な女で?"
"そう。我が子3人を殺した。家の裏の湖で、溺死させた。1人ずつ、頭を押さえ付けて。死体を台所に運んで、自分は、食事していた。"
"旦那は?"
"ノルマンディー上陸作戦で亡くなった。ここへ来ても、食事をせず、『子供は生きている』と。"
テディは、女の写真を見る。
うっすら、雪が積もる中、地面に横たわる子供たちの死体。
"アスピリンをもらえます?"
"頭痛持ちかね?"
チャックが、顔をしかめる。
"時々ね。でも、今日は、船酔いです。"
"そうか。脱水症状だな。"
"大丈夫か?"
"Yeah."
"じゃあ、アスピリンでいい。"
"Thanks so mutch."
"レイチェルは、子供が生きていて、ここが、バークシャーの自宅だと。"
"You are kidding me?"
"2年前の入所だが、そう信じていて、我々を『新聞屋』、『郵便配達人』だと。『子供は生きている』妄想で、我々に役を振り当て、虚構の世界を創っている。"
"方々、捜したんですね?"
"島中捜したが、見つからない。第一、どうやって、部屋を出たのか。外から鍵がかかっていて、窓には鉄格子。壁を抜け、蒸発したのか。"
"グループ治療が終わって、部屋に戻り、夜中に見回ったら、消えていた。"
囚人が、証言する。
"彼女は、現実に目覚めないんですか?こういう施設にいる事を、いつかは気付く筈だ。"
"患者には、何足、靴を?"
"2pairs."
院長が答える。
"人間は、思い込みを、正せないのだ。"
"彼女は、裸足で出て行ったので?"
チャックが尋ねる。
"あの荒地、10mも駄目だ。"
"保安官。"
テディは、窓際の床のタイルをめくり、折り畳まれた紙片を見つける。開いてみる。
"4の法則 67番は誰?"
"間違いない。レイチェルの筆跡だ。"
"『4の法則』?"
"医学用語?"
"違う。"
"『67は、誰?』?分からん。"
"医者の私も、同じ結論だ。"
"単なる走り書きか?"
"違う。レイチェルは、smart. 意味がある。"
"これは、俺が預かります。"
"勿論。"
休憩スペース。
"ここから出たのか?"
"消灯後、職員がカード遊びをする。昨夜も、7人が、あそこの階段の下で、ポーカーをしていて、レイチェルは、そこを通った。"
"Invisible になってか?"
"職員のデータを拝見したい。看護師、警備員、看護助手。"
"考えておこう。"
"『考える』問題じゃない。ここは、凶悪犯の収容施設だ。"
"Patient."
"『Patient』が脱走したんです。だから。"
"だから、考えておく。"
"職員から、事情聴取もしたい。Do you understand?"
"では、夕食後に集めよう。"

"警備隊の捜索に、参加するのも自由だ。"
テディらは、海岸の捜索に立ち会うが、手掛かりなく、諦めムードが、蔓延する。
"隣の島まで18キロ。海は、冷たい。昨夜は、潮の流れが激しく、溺死すれば、死体が岸に、上がる筈だ。"
"あそこの洞窟は、調べたか?"
"行くのは、無理だ。崖の下には、毒性の蔦やうるしが、密生している。トゲは、俺のチンポサイズだ。それに、彼女は、裸足だった。"
"よし。Let's check the other side. "
"あの塔は?"
"昔の灯台だよ。中は、もう調べた。"
"中に、誰か?Patient? "
"下水処理施設だ。じき暗くなる。今日は、ここまでだ。戻るぞ。"

収容者からの聞き取り。
"踊り場に、見張りが?"
"病室の出入りと廊下がすべて見渡せる位置だ。"
"ほかに誰が、レイチェルの通った通路に?"
"Me. グレン・ミーガ。何も見ていない。"
"一晩中、いたんだね?"
"Yes. だが、何も見ていない。"
"グレン、グレン。グレン。正直に話せ。"
"一度。一度、トイレへ行った。"
"何だと?それは、規則違反だ。"
院長が指摘する。
"1分だ。"
"よし、時間を前に戻そう。消灯前に、レイチェルは部屋に。だが、その前は、何を?Anyone. anyone anyone anyone. "
"グループ治療でした。" 
看護婦が答える。
"普通でない事が?"
"Define 『unusual』."
"Excuse me."
"ここは、精神を患った犯罪者の施設よ。『普通』の世界だと思う?"
"言い直そう。昨日のグループ治療の席で、何かあったかな?『特に、記憶に残る事』が?"
"普通以上に?"
"Exactly. "
"No. Sorry."
"レイチェルは、何か発言を?"
"『雨が心配だ』って。『食事が不味い』。いつも同じ文句ばかり。"
"医者も、同席していたのか?"
"シーアン先生が、進行役でした。"
"Dr シーアン?"
"Yes. 進行役でした。レイチェルを担当している主治医なの。"
"その先生と話をしたい。"
"それは、無理だな。今朝のフェリーで、発ってしまった。前から予定していた休暇でね。"
"危険な患者が脱走して、非常警戒事態なんですよ。なのに、その患者の主治医に、休暇を取らせた?" 
"そう。医師だからね。"
"連絡先の電話が分かりますか?"

"Hello.  Hello. Hello?"
"聞こえます?" 
"嵐が本土に上陸して、全回線が不通です。"
"通じたら、教えてくれ。保安官が、重要な電話をかける。" 
"Yes, sir."
院長とテディらは、外に出る。
"私は、今から回診して、その後、自宅で、一杯飲む。良ければ、9時頃、どうだね?"
"Good. そこで話を。"
"十分話したろ?"
雨が降り、雷が鳴る。
院長の自宅。立派な邸宅。
"同じ公務員でも、雲泥の差だ。"
"驚くのは分かる。南北戦争当時、C棟がある砦と一緒に造られた。司令官の住居で、贅沢過ぎると、彼は、軍法会議に処せられた。"
"当然だな。"
"いい音楽だ。ブラームスか?"
"違う。"
柵の向こうから、見つめる患者たち。
"It's マーラー。"
"正解だ。保安官。こちらは、同僚のナーリング医師。"
"『ピアノ四重奏 イ短調』だ。"
椅子に座った白髪短髪のナーリング(マックス・フォン・シドー)が振り返る。"
"『毒』を飲もう。"
"ライ・ウイスキー。"
"ソーダと氷を。"
テディが言う。
"酒をたしなまないのか?Surprize. 君らの職業では、皆、飲むのかと。"
"普通はね。あなたは?
"私か?I'm sorry? "
"職業ですよ。精神科医?やはり、酒飲みが多いとか。"
"それは、知らんな。"
"それは、アイス・ティー?"
"さすがだな保安官。とっさに切り返して、身を守る。さぞ、尋問も上手だろう。どうだ?"
院長の執務室に、書類が舞う。
"私の専門は、君のような連中だ。暴力に、どっぷり。"
"勝手な決め付けだ。"
"そうじゃない。誤解するな。君らは、『暴力にどっぷり』。『暴力を振るう男』と言ったのではない。"
"Please. もう少し、説明してください。"
"君らは、戦争に行った。"
"分かります?2人とも、事務職でしたがね。"
"No. 違うだろう。"
執務室に書類が舞い、落ちて、血に染まる。血を流し、横たわるドイツの将校。上から覗き込む兵士のテディ。
"子供の時も、殴り合いの場から、逃げなかっただろ?暴力が楽しい訳ではないが、『退却』は、考えなかった。"
"『逃げは卑怯』と。"
"そう教わったか。なるほど。誰が、そう教えたのかな?"
"Me? Wolfs."
ナーリングと院長は、笑う。
"また切り返された。"
頭を撃ち抜かれたドイツ将校が、顔を動かす。戸外の死体たちに、雪が降りかかる。将校は、拳銃に手を伸ばすが、テディは、拳銃を踏み、遠くへやる。
"神を信じるか?"
ナーリングが、問う。
"私は、真面目だよ。"
"でしょうね。"
"あなたは、ナチスの収容所を?"
ナーリングは、首を振る。
"ドイツ語で、『コンツェントラチオンスラーガー』。私は、ダッハウ収容所の解放の場にいた。あなたの英語は、見事だ。完璧です。発音も素晴らしいが、子音が、ちょっと弱い。"
"You are german?"
"移民は、罪人なのかね?"
"さあ、どうでしょう。では、兎に角、シーアン医師と全職員のデータを。"
"個人情報の提供は、断る。"
"捜査に必要です。"
"出せない。"
"何が、『出せない』だ。"
テディは、キレる。
"ここの責任者は、誰なんだ?"
"ナーリング博士が、理事会に諮ったが、要請は、却下された。"
"彼らに、そんな権限はない。"
"保安官。捜査には、極力、手を貸すよ。"
"Investigation is over. 報告書を提出する。"
"FBIに。"
"そう、FBIにね。明日のフェリーで帰る。Com'on."
2人は、マクフィアソンの車に乗り込む。
"Nice night."
"宿舎は、看護師助手と一緒だ。"

2段ベッドに横になり、テディは、謎のメッセージが書かれた紙片を眺める。
"Boss. 引き揚げるのか?"
"Why?"
"途中で投げるのが、嫌いでね。"
"誰も、真実を語ろうとしない。鍵のかかった部屋から、裸足で、助けもなく消える?誰かが、手を貸した。今頃、院長は、あの屋敷で、作戦を練り直しているかも。明日は。"
"捜査終了は、ハッタリ?"
"どうかな。"
テディは、目をつぶる。
テディの妻。
"また酒瓶よ。テディ。飲んだくれて。"
"戦争で、大勢を殺したんだ。"
"だから、飲むの?"
"You are real?"
"No. 彼女がいる。"
"Who? レイチェル?"
"ここにいるわ。"
"湖畔のキャビンを、覚えている?幸せだった。"
"彼女は、ここよ。Don't leave. "
"どこにも行かないよ。君を愛しているから。"
抱きしめた妻の腹から、血が噴き出る。
"私は、棺桶の中の骨よ。"
"違う。"
"本当によ。"
黒い灰が、宙を舞い、積もる。
"早く目を覚まして。"
灰が、盛んに降る。
"ここにいたい。君がいるから。"
"I'm not. それを受け入れて。彼女はいる。彼も。"
"彼?" 
"レディスよ。もう行くわ。"
"行くな。行かないでくれ。君を抱いていたい。このまま、もう少し。"
"お願い。行かせて。"
"I can't. "
妻は、黒い灰となって、崩れ落ちる。テディの両手から、水がしたたる。部屋中いたる所で、炎が燃え上がる。
テディは、ベッドで目覚める。両手は、濡れそぼり、全身に汗をかいている。天井から、雨漏りがしている。
"この天気じゃ、フェリーは、出ないね。"

"院長。院長。グループ療法に参加していた患者と話を。"
"捜査終了では?"
"フェリーが、出ないんだ。"
"レイチェルが、受けていた治療は?"
"君は、最近の精神医学の現状を?"
"No. 何一つ知りません。"
"War. 保守派は、外科処置を支持。前頭葉切裁術を初めとする精神外科の分野だ。患者は、従順になるという説と、廃人になるという説がある。"
"改革派は?"
"薬による治療だ。患者の精神を落ち着かせるソラジンという新薬もある。"
"で、あなたは?"
"Me? 進歩派だよ。敬意をもって、患者の話に耳を貸せば、相手の心に到達できる。"
女性患者が、わめく。
"彼女でも?"
"そうだよ。薬を与えて、隔離する?それじゃ、治療の方向が、逆だ。レイチェルには、凶暴性を抑える薬が処方されたが、効果は安定せず、彼女は、自分の行為を、認めようとしなかった。"
"『was』。なぜ、過去形で話すんです?何か、そういう理由でも?"
"外を見たまえ。死んでいるよ。"
風雨が強い。

"次は、ピーター・ブリン。父親を看ていた女介護士の顔を、ガラスの破片で切り裂いた。"
"Can't wait. "
"とても、とても優しい女だったが、目が誘っていた。『裸になり、男のあれをしゃぶりたい』と。"
"もういい。ブリーン君。"
"彼女は、『水を1杯くれ』と。2人きりの台所でね。冗談じゃない。"
"悪いのか?"
"分からないのか?狙いは、俺のあれを引っ張り出し、笑う気だった。"
"Mr ブリーン。質問しても、いいかな?"
"切りつけたら、叫んだ。But she scared me. 分かるだろ?Interesting. "
"聞きたいのは、レイチェルの事だ。OK?"
"レイチェルか。自分の子を溺死させた女の子だぜ。腹を痛めた自分の子をね。とんでもない世の中だ。ガスで殺しちまえ。イカれた奴、殺人犯、ニガー、子殺し、ガスで死刑にしろ。"
テディは、メモ帳のページの真ん中辺りを、鉛筆で塗りつぶす。"
"頼む。やめてくれ。"
手を止めず、テディは聞く。
"女介護士に。"
"Please stop that."
"彼女に、子供がいたら?旦那も。生活のために働き、平凡な暮らしをしていた。君のカルテを読んだが、彼女の顔を切り裂いたって?君は、彼女から、平凡な暮らしを奪った。彼女は、何を怖がっていたか。"
鉛筆で、同じ所を塗る。
"君だよ。"
"やめてくれ。頼む。"
"やめろ。"
"やめてくれ。"
"レディスって男の名を?"
"知らない。"
"やめろ。ボス。"
"もう嫌だ。部屋に帰る。"
看護師に連れて行かれる。

中年の女の患者。タバコを吸いながら、話す。
"私は、一生、ここよ。その方がいいのよね。"
"失礼ですが、Miss カーンズ。"
"『Mrs』"
"Mrs カーンズ、他の患者たちに比べると、あなたは正常のようですが。"
"私だって、同じよ。荒れる日がある。それで、夫を斧で、殺したの。夫が、いつも暴力を振るって、女と寝まくり、誰もたすけてくれなきゃ、斧を振り下ろすのも、当然でしょ?"
"あなたは、ここがいい。"
"ここを出て、どうなる?世の中は、変わった。大都会を、灰にしてしまう爆弾があるんでしょ?TVって物も。声や顔が飛び出す箱。頭の中の声で、十分よ。"
"レイチェルの話を。"
"ないわ。彼女、無口だったから。子供が、まだ生きていると思っていて、『バークシャーに住んでいる』と。そして、我々を、『牛乳屋』とか、『郵便配達人』と思っている。"
"聞いたよ。あの夜、シーアン医師も?"
"Yes. 『怒り』についての話を。"
"彼の事を、もっと知りたい。"
"そうね。とても、とてもいい先生よ。母親なら、『男前』と言うわ。"
"口説かれた?"
"まさか。そういう人じゃないわ。お水を頂けるかしら?"
"No problem."
チャックが、席を外した隙に、女は、テディの手帳に、何か書き込む。チャックが、水を持って来る。
"Thank you 保安官。"
"もう一つだけ、質問します。レディスという患者を?"
"No. Never heard it."

"指示されている。院長や看護師と、同じ事、答えただろ?"
"レディスって誰だ?"
テディに、タバコを差し出す。
"皆に、尋ねただろ?Who is it?"
"ボス。俺は、あんたの相棒だぜ。"
"君には、この道の経歴と将来があるが、おれのやっている事は、任務外だ。"
"任務外かどうかは、どうでもいい。説明してくれ。"
"この事件を知った時、俺は、すぐ担当を願い出た。"
"Why?"
"レディスは、俺たち夫婦が暮らしていたアパートの修理人だった。"
"OK."
"そして、放火魔だった。奴が擦ったマッチで、火事が起こり、女房が死んだ。"

▶︎ハリケーン
"開けろ。"
テディとチャックは、草原を歩く。
"レディスは?"
"捕まりもせず、行方をくらました。1年ほど前、新聞を開いたら、奴の醜い顔が載っていた。こめかみから唇の傷。左右、色の違う目。間違いない。学校に放火して、2人焼死。懲役刑を食らって、その後、ここへ。"
"それから?"
"消えた。煙のようにね。何の記録も、残っていない。居るとしたら、C棟だ。"
"死んだかも。"
"レイチェルも同じだな。"
"ここなら、死体を隠せる。そして、誰も気づかない。"
2人は、林の中の墓地に至る。墓碑銘を確認する。
"さっきのpaitient. 水を取りに行った隙に、あんたに何か話したろ?"
"No."
"隠すなよ。"
"こう書いた。"
"RUN"
テディは、手帳を見せる。
2人は、引き返すが、風雨が強い。
"ボス。" 
"避難しよう。こいつは、竜巻だ。ここは、やばい。" 
折れた木の幹が、落ちて来る。
"危ない。"
"Jesus."
"急げ。早く。"
林の中の建物に、逃げ込む。
"ボス。"
"参ったな。"
"大丈夫か?"
"大丈夫だ。"
"レディスを見つけたら、どうする気だ?"
"殺す積もりは、ない。"
林の中を、武装した兵士が、進む。
"俺なら、そいつを2度殺すね。"
ナチスの収容所の門の前で、降伏する2人の兵士。
"ダッハウ収容所の門を入ると、ナチスの監視兵は、降伏した。"
柵の前に、居並ぶユダヤ人たち。
"司令官は、その前に、自決を図ったが、ドジりやがって、1時間も苦しんだ。表に出たら、死体が山積み。何体あったのか。想像を絶する1人だった。俺たちは、監視兵の銃を取り上げて、並ばせた。"
並ばせたドイツ兵を、銃で撃つ。
"あれは、『戦闘』じゃなく、『murder』だった。そう。俺は、大勢を殺した。もう、御免だ。"
"じゃ、なぜここへ。"
"レディスが消えて、ここのことを調べ始めたら、大勢の人間が知っているのに、誰も、話そうとしない。何かを怖がっていた。ここの資金を出しているのは、あの『非米活動委員会』だ。"
"あの赤狩りの?こんな島で、共産主義と戦うのか?" 
"人間の精神を操る実験だよ。俺の推察だ。" 
"この島で実験を?"
"だから、皆、口を閉ざす。だが、ここを知る男がいた。ジョージ・ノイスという学生で、社会主義者だったが、バイトで、ある実験に誘われた。"
"やばい話だな。"
"幻覚を見始め、教授を殴り殺しかけて、ここに収容された。C棟にね。1年で退院して、何をしたか。2週間後、酒場に入って、3人の男を刺し殺した。弁護士は、心神喪失を主張したが、本人は、こう訴えた。『電気椅子に送ってくれ。病院は、もう御免だ』と。結局は、終身刑になった。"
"面会を?"
"会ったよ。"
"ぼろぼろの人間だった。だが、彼の話しで、ここで人体実験が行われている事が分かった。"
"でも、ボス。ノイスの言葉だろ。" 
"That's right. そこが、巧妙だ。精神を病んだ者の言葉は、誰も信じない。ダッハウで、俺は、人間同士の非道な行いを、目にした。それを阻止する戦いだったのに、また同じ事を許すのか?"
"じゃどうするんだ?"
"証拠をつかみ、ここで行われている事を暴露して、ぶっ潰してやる。"
"Wait a minute. ここの事を、調べていたら、たまたま保安官が呼ばれたのか?"
"運良く、患者が脱走して、チャンスが来た。"  
"そうじゃない。世の中、そううまくは、運ばない。施設の周辺には、通電フェンス。C棟は、南北戦争時代の砦。院長は、諜報局とつながり、資金の出所は、アカ狩り組織。黒幕は、政府だよ。あんたは、はめられたんだ。嗅ぎ回ったから。そもそも、レイチェルって女が、存在していた証拠が?"
"保安官の中で、なぜ俺が?"
"目をつけられていたんだよ。『脱走事件』を餌に、あんたを釣り上げた。"
建物のドアが開き、風雨が吹き込む。
"保安官。そこか。"
マクフィアソンが、車で助けに来た。
"警備副隊長だ。保安官。"
"見ろ。見つかったぞ。"
"こんな狭い島だからな。"
"そこにいるんだろ?"
"こんな島、早く逃げ出そう。Com'on."
"行け。"
2人は、車に乗り込み、施設に帰って来る。
"体を拭け。院長が待っている。急げ。ハリケーンだぞ。"
"服は、洗濯機に入れた。明日は、着られる。嵐で、飛ばされなきゃな。タバコは、グショグショだ。これをやるよ。"
職員が、タバコをくれる。
"これを着るのか?"
"グレーの囚人服にするか?"
"いや、こっちにしとこう。"

医師たちのミーティング。 
"繰り返すが、C棟の患者には、拘束具を用いるべきだ。"
"建物が浸水したら、溺れてしまう。"
"大袈裟な。"
"ハリケーンが、島を襲うのだ。洪水になっても、不思議はない。"
テディたちが、部屋に入る。
"停電したら、どうする?"
"補助発電を。"
"停電すると、病室の錠が開く。"
"逃げ出して、どこへ?本土に、フェリーで渡って、人々に危害を?"
"そう。危害を与えるさ。ここにいる我々にね。"
"拘束は、死をもたらす。24人の人間が死ぬんだ。平気なのか?"
"私なら、A棟、B棟の42人の患者にも、拘束具を付けるね。"
"Excuse me. Excuse me."
テディが、割って入る。
"保安官。"
"済まないが、1つ質問を。"
"後から。"
"レイチェルの残したメモです。"
"『4の法則』ってやつか。"
"『2行目の文章は、意味不明だ』と。"
"『67人は誰?』今もどういうことやら。"
"A ha. 分からない?"
"Nothing?"
"あなたは、今、C棟に24人の患者がいると言われた。そして、A棟とB棟の患者は、42人だと。合計の患者数は、66人です。"
"そのとおりだ。"
"レイチェルは、こう言っている。『ここに、67番目の患者がいる』と。"
"それは、違う。"
"くだらん。何の用事かね?"
"これが、仕事だ。"
"良い知らせを聞いていない?"
"良い知らせって?"
"レイチェルは、見つかった。戻ったよ。無事にね。"

テディは、レイチェルに会う。
"傷1つない。"
"この人たちは?"
"なぜ、私の家に?"
"警察の方だ。質問したい事があると。"
"奥さん。近所で、ビラを撒いている共産主義の男がいるんです。"
"ここで?"
院長が、うなずく。
"この近所で?"
"ええ、そうなんです。調査のために、話を伺えればと。昨日、何をなさったか。"
"Yes. 昨日、私は、家族に朝食を作って、それから、ジムを会社に送り出し、子供たちは、学校に行った。その後、湖で、ゆっくり泳ぐ事にしたの。"
"I see. それから?"
"それから、想ったわ。I thought of you. "
"待ってください。奥さん。何の事で?"
"寂しかったのよ。ジム。私は、1人。You dead. 毎晩、独りで泣いたわ。どうやって、生きていけば。"
レイチェルは、テディを抱きつき、泣く。
"待てよ。"
"レイチェル。もう大丈夫だよ。俺が、悪かった。もう大丈夫だ。心配するな。OK."
"I burried you. でも、お棺は、空だったわ。亡骸は、海に投げられ、eaten by sharks. ジムは、死んだ。あなたは誰?Who, fuck of you. "
レイチェルは、テディにつかみかかり、制止される。
"Who are you? やめて、触らないで。"
稲光りが照らす。
"済まない。彼女が、何か言うかと思って、止めなかった。灯台近くの浜で、石を投げていた。どこから、逃げたのか。地下室に避難してくれ。食べ物と水と簡易ベッド。嵐が来ても、あそこは安全だ。"
雷が鳴り、部屋が明るくなる。
"顔色が悪いぞ。"
"大丈夫です。ただ。"
"Boss you are OK? "
雷が、次々と落ちる。
"ひどく、まぶしくないか?"
"光に過敏なのか?それが、偏頭痛の原因かも。"
"大丈夫。"
また雷鳴が鳴り、テディは前に崩れそうになり、チャックに抱き止められる。椅子に座らされる。テディは、えづく。
"誰か手を。"
"これを飲めば、すぐ治る。"
"それは?"
"頭の中で、カミソリの刃を混ぜるような頭痛だろ?早く飲め。"
"嫌だ。"
"痛みが、治るんだよ。"
テディは、薬を飲む。
"寝かせよう。"
雷は、止まない。
宿泊棟。
"薬品棚には、鍵を掛けておいて。"
テディは、チャックらに支えられて、やって来る。ベッドに座らされる。
軍服のような制服を着た幹部たちが見える。
"Who is that? "
"彼か?"
"警備隊長だ。何も心配せず、横になっていろ。"
"あいつは、絶対に元軍人だ。"
"そう。多分そうだ。"
テディは、眠る。
テディは、背広姿で、ゲットーにやって来る。ユダヤ人たちの死体に、雪が積もる。女の死体が、レイチェルに見える。レイチェルに抱きつく娘と2人、目を開ける。起き上がる。
"私を助けもせず。私たちを死なせたのよ。"
将校の部屋に入る。暖炉の前の椅子に、禿げあがった男が座る。顔を斜めに走る傷が、痛々しい。
"やあ、お前じゃないか。"
"レディス。"
"そうだよ。"
マッチを擦る。
"俺の友達。俺を恨むなよ。俺を恨むな。"
テディのタバコに、火をつける。
"お楽しみもある。こいつを飲みたいだろ。"
ポケットから、銀色の容器を取り出す。
レディスが、チャックに変わる。
"時計がチクタク。時間がないぞ。"
女の悲鳴。返り血を浴びたレイチェルが現れる。
"手を貸して。"
足元に、3人の子供の遺体。
"面倒な事になる。"
テディが、遺体を抱き上げる。
”私、死んだの?"
"許してくれ。"
"なぜ、助けなかったの?"
"助けたかった。だが、あそこへ行った時は、手遅れだった。"
テディとレイチェルは、子供の死体を、湖に浮かべる。
"See. 可愛い子たち。"
少女の死体が、沈んで行く。
テディは、ベッドで飛び起きる。手帳を開く。カッパを被った女が、部屋に入って来る。死んだ筈の妻。
"びしょ濡れだよ。Baby."
"レディスは、生きている。生きていて、ここにいる。"
"知っている。"
"あいつを捜し出して、テディ。そして、殺すのよ。"
テディは、小さくうなずく。
"That's ok. " 
▶︎C棟
テディは、また目覚める。
"A棟に行って。"
"発電室が、浸水した。"
看護師たちが、慌ただしく動き回っている。
"OK? Boss. "
"頭痛が治らない。"
"補助発電機が動かず、大騒ぎだ。どうする?"
2人は、玄関先に出る。
"やめろ。余計な事はいい。"
職員が、患者を追い回している。ほかの棟に案内される患者。塀に巡らせた電線が切られ、一部、柵が壊されている。
"電気系統がやられた?"
"どうやら、そのようだ。"
"全部、作動しない訳だ。フェンス、ゲート、ドア。" 
"散歩に出るのに、絶好だな。例えば、C棟とか。"
"行こう。"
"レディスに会えるかも。"
"ジョージ・ノイスの話じゃ、最も凶暴な患者は、ここに入れられているそうだ。"
"彼は、病室の配置を?"
"何も。『昼も夜も、叫び声が聞こえて、窓はなく、鉄格子だけ』と。"
患者に続いて、中に入る。患者の列から逸れる。暗闇から、警備員が現れる。
"脅かすな。"
"C棟は、初めてか?"
"Yeah.""Yeah. 話じゃ。"
"それは、序の口だよ。逃げた奴は、大半、捕らえたが、まだ残っている。お前らだけで、捕まえようとすると、殺されるぞ。いいな?よし、見回って来い。
伽藍堂のスペースに入る。かすかに叫び声が聞こえる。
"感じる。レディスだよ。ここにいる。"
男が現れ、逃げる。
"ばあっ。捕まえた。"
テディが後を追う。
"Boss. テディ。"
男がは、裸足。暗闇から暗闇へ、逃げる。
"おい。待て。"
"テディ。"
男を見失う。中央の吹抜けに出る。吹抜けに沿って歩く。男が、背後から首を絞める。テディを引きずって行く。
"聞きな。俺は、ここを出たくねえ。出て行くもんか。色々、聞いているんだ。娑婆で何が起こっているか。太平洋での水爆実験。水爆を知っているか?"
"知っている。水素の爆弾だ。"
"普通の爆弾は、外に向けて、爆発する。"
"Boss."
チャックが遅れてやって来るが、扉に阻まれる。
"水爆は、中に爆発するんだ。だから、物凄いパワーの爆発を起こす。分かるか?"
"放せ。"
男が怯んだ隙に、テディは、反撃する。何度も、殴りつけ、倒れた男の首を絞める。
"やめろ。何する。やめろ。テディ。何て事を。"
警備員もやって来る。
"ビリングスだ。殺す気か?捕まえりゃいいんだよ。"
"襲われた。"
"手を貸してくれ。医務室に運ぼう。"
"お前じゃない。お前は、来るな。"
テディは、押しとどめられる。
"これで、院長にどやされる。"
テディは、一人で捜索する。房室の辺りに差し掛かる。
"レディス。"
振り返るが、誰もいない。マッチを擦り、炎で照らす。
裸の患者たち。刺青の男が、格子から離れる。
血で、壁に、何か書きつける男。房をマッチで照らすと、中から手が伸びて来る。のけぞると、反対側の房から、手が伸びる。
"レディス。"
"ここに戻さないと、言ったろ?約束した筈だ。嘘をついたな。"
"レディス。レディス?"
"笑わせるな。"
"その声。"
"この声を忘れたか?あんなに話をしたのに?嘘をつきやがって。"
"顔を見せろ。"
"連れ戻された。2度と出られない。マッチが消えるぜ。"
マッチを擦り、叫ぶ。
"お前の顔を見せろ。"
"また嘘をつく気か?真実のために?"
"そう。真実を暴く。"
"あんたとレディス。それが、核心さ。俺は、脇役。ただの糸口。"
"ジョージ、ジョージ・ノイス?あり得ない。君が、ここにいるなんて。"
"よく見な。"
ノイスは、顔の傷を見せる。
"誰がやった?"
"お前さ。"
"馬鹿な。"
格子ごしに、テディを叩く。
"お前が、喋ったから、連れ戻された。"
"刑務所から、またここへ?全部調べて、君を助け出す。"
"1度は出られても、2度出るのは、無理だ。"
"なぜ、連れ戻された?"
"奴らは、お見通しなんだよ。お前の計画のすべてをね。お前のために、仕組まれたゲームだ。真実を暴く?お前は、迷路に放り込まれたネズミさ。"
"それは違うよ。ジョージ。それは違う。"
"そう思うか?ここに来て、独りっきりの時が?"
"相棒と一緒だった。"
"前に組んだ奴か?"
"あいつは、連邦保安官だ。"
"組んだのは、初めてだろ?"
"俺だって、見る目はある。あいつは、信用できる。"
"奴らの勝ちだな。クソっ。奴らは、俺を灯台に連れて行って、脳を切り開く。それもこれも、because you. "
"ジョージ。君を助け出す。灯台には、行かせない。"
"真実を暴き、レディスを殺す?無理だね。どっちか、選ばなきゃ。"
"俺は、誰も殺さない。"
"Lier. "
"レディスは殺さないよ。I swear. "
"彼女は死んだ。彼女は、忘れちまえ。忘れるんだ。"
"彼に話して、あの時の事を。''
死んだ妻の声がする。
"言うとおりにしろ。"
"あのロケットをくれた日。"
独居房の奥から、元妻が歩み出る。
"忘れろ。"
"胸が、張り裂けそうだったわ。"
"彼女は、お前をおかしくしている。"
"あまり幸せ過ぎて。"
"彼女に、殺されるぞ。殺される。真実を知りたきゃ、彼女に構うな。"
"I can`t."
"忘れろ。"
"I can't."
"じゃ、島を出られない。"
"ドロレス。" 
妻の姿はない。
"奴は、ここにいない。この棟から、ほかに移された。A棟じゃなけりゃ、いる所は、一つだ。"
"Light house? 
"Hey 幸運を。"

"Boss 院長が、この棟にいる。患者に暴行を働いた職員を探し回っている。逃げよう。こっちだ。"
"走ると、怪しまれる。"
2人は、C棟を出る。裏山に登る。
"何していた?"
"俺が?"
"今まで、どこに?"
"医務室に行った後、患者のカルテを覗いた。レディスは?"
"No."
"奴の受入票があったぜ。だが、診察レポートも写真も、何もない。それって、変だろ?見ろよ。"
"後で見る。"
"どうした?"
"それは、後で見る。"
"病院は、あっちだ。"
"病院には、行かない。Light houseに行く。全部、暴き出してやる。"
海べりの崖の上に立つ。
"あそこだ。クソっ。南に来過ぎた。引き返さなきゃ。岩場は、突っ切れない。岩場を迂回しよう。灯台にいく道があるかも。"
"Boss. 受入票が、あるんだぜ。奴らが否定する67番目の患者がいるんだ。"
"俺は、lite houseへ行く。Do you understand?"
"どうしても?"
"なぜ、止めたいんだ?"
"この暗闇で、あの岩場を下りるなんて、自殺行為だ。"
"OK. 嫌なら、来なくていい。"
"あんたのせいで、俺は、こんなシマに来ちまった。頼れる相手は、ほかにいないのに、まるで、この俺が。"
"まるで、何だ?言ってみろ。"
"C棟で、何があったんだ?"
"ポーランドも、嵐かな。"
"シアトルだよ。"
"シアトルか。"
"灯台に行く。Alone."
"俺も行く。"
"独りで行く。"
"そうか。"
テディは、山を歩く。灯台を正面に見る崖の上に至る。
"クソっ。クソっ。"
"すぐそこなのに、行けない。潮が満ちて来た。"
"チャック。チャック。"
崖の下に、吸いかけのタバコ。下を見下ろすと、チャックらしき人が、うつ伏せになっている。テディは、崖を下りる。風で飛ばされた受入票が、崖に張り付く。テディは、手を伸ばして、つかむ。崖を下り切るが、潮が満ち、チャックは見つからない。
"チャック。チャック。" 
▶︎レイチェル
岩に穿たれた穴から、大量のネズミが這い出る。その上の岩の窪みに、明かりが見える。
"チャック。チャック。"
テディは、崖を上る。
大きな窪み。焚き火がたかれ、中に、女がいる。女は、両手を後ろに回している。
"Who are you?"
"テディ・ダニエルズ。警察だ。"
"保安官ね。"
"That's right. 後ろに回している手を見せてくれ。"
"なぜ、どうして?"
''武器を隠していないか?"
女は、手にしたナイフを見せる。
"渡さないわよ。いいわね。"
"分かった。"
テディは、焚き火に当たる。 
"あなたが、レイチェル・ソランドー?本物の。子供を殺したって?"
"子供はいないわ。結婚もしていない。患者になる前は、職員だったの。"
"You are nurse?"
"医師だったの。You think crazy?"
"まさか。"
"でも、そう言っても、意味ないのよね。だって、精神科に行って、病気と診断されると、否定すればするほど、そう思われる。"
"それは、どういう事だ?"
"『病気』と思われたら、何をしても、そのせいにされる。抗議は、『行為の否認』で、恐怖は『妄想』とされ..."
"言葉を切り返すと、『身を守るため』と言われる。"
"頭がいいわ。用心してね。"
"Tell me something."
"Yeah. "
"What happened?"
"最初の疑惑は、アミタールと阿片を使った幻覚剤の購入。"
"精神治療薬だね。"
"手術も、疑問だった。ロボトミー手術を?患者に、電気ショックを与え、目にアイスピックを刺し、脳神経を取り出す。患者は従順になり、扱いやすくなる。残酷で、非人道的よ。痛みは、どこから体に入るか。Do you?"
"怪我した所。" 
"No. 肉体は関係ない。痛みを伝えるのは、脳なの。恐怖、感情、睡眠、空腹、怒り。すべては、脳の働き。他人が制御したら?"
"人間の脳を?" 
"人間を改造して、痛みを感じないようにする。愛も共感も、感じない。記憶はすべて消され、尋問しても、何も告白できない。"
"記憶を消し去るなんて、不可能だ。"
"北朝鮮は、米軍捕虜に、洗脳手術を施し、脳を完全に破壊した。兵士は、裏切り者に変えられた。ここで造られているゾンビも、外の世界に出て、狂気を働く。" 
"そんな事、実現には、長い歳月がかかる。"
"何年も研究を重ね、何百人もの患者に、実験を行う。50年したら、人は、この島を指して言う。『あそこが始まりだ』と。ナチスはユダヤ人、ソ連は囚人。We シャッターアイランドの患者を、実験台にした。"
"許せない。No more."
"でも、あなたは、島から出られないのよ。"
"連邦保安官を、誰が止められる?"
"私は、一流の精神科医で、家柄も良かったのに、このとおり。聞くけど、何か、トラウマがある?"
"Yes. でも、どうして?"
"過去のトラウマが、正気を失う要因にされる。あなたが収容されると、友達は言う。『やっぱりいかれたか。あのせいだ』。"
"誰にでもある事だ。"
"あなたが言われるのよ。頭は、どう?"
"My head?"
"変な夢を見るとか、眠れないとか。Headaches. "偏頭痛が。"
"Jesus. 薬を飲まなかった?アスピリンとか。"
"アスピリン?" 
"Jesus. 病院の食べ物を食べた?コーヒーも?タバコは、自分のでしょうね?" 
"タバコ?吸った。人のを。"
"精神治療薬の効果が出るのは、服用後36〜48時間。まず痺れ。指先から手に広がる。そして、悪夢の中に、色んな人が現れる。"
"あの灯台で、一体、何が?Tell me. "
"脳の手術よ。頭蓋骨を開けて、『ここをいじろう。ナチスから学ぼう。』。ゾンビが誕生する。"
"Who knows about this? 島の人間で、誰が?"
"全員よ。"
"まさか。看護師や看護助手も?あり得ない。"
"Everyone. "

洞穴で、横になるテディを、レイチェルが起こす。
"出て行って。あなたを捜している連中に、私も見つかるわ。出て行って。"
"助けに戻る。"
"毎日、隠れ場所を変えているの。"
"助けに戻り、島から出す。"
"私の話を聞いていたの?島を出る手段は、彼らのフェリーだけ。逃げられない。" 
"昨日まで友達がいたんだが、別れ別れになった。彼を見た?"
"保安官。あなたに友達など。"

▶︎灯台へ
テディは、崖の上に上る。林の中で、ジープに乗った警備隊長と会う。
"いたな。戻ると思っていた。乗れよ。さあ。"
テディは、ジープに乗る。
"散歩でもしていたのか?"
"その辺を、見て回っていた。"
"神の贈り物を、楽しんだか?"
"What?"
"God's gift. Violence. 嵐で、木が、うちの居間に突っ込み、私の方に枝を伸ばしていた。神の手のように。神は、暴力を好む。"
"さあ、どうかな。" 
"この世の中を見ろ。暴力に満ちている。人間は、暴力そのものだ。戦争を起こし、物を強奪し、兄弟の肉を引き裂く。人間は、神を称えるために、暴力を与えられたのだ。" 
"暴力でなく、秩序では?"
"秩序が、この嵐ほど純粋か?秩序なんて、あるもんか。人間は、暴力を競い合うものなのさ。"
"違う。"
"違わんよ。君だって同じさ。この私だって、暴力を振るう。社会の規制が失われ、食う物がなきゃ、君は、私の頭を叩き割り、私の肉にかぶりつく。そうだろ?院長は、君を無害と思っているが、私は違う。"
"知りもせず。" 
"君の事は、知っているさ。何世紀も前からね。"
施設に着く。隊長は、テディの肩をつかみ、言う。
"君の目玉に、歯を立てたら、私に襲いかかるだろう?"
"やろうか?"
"その意気だ。"
テディは、施設に入る。扉は、開きっぱなし。院長たちの集団が、奥から出て来る。
"どこへ?"
"島を見て、回っていた。"
"レイチェルは無事だ。君は、帰るか?"
"そうします。会議ですか?"
"まあね。昨日、C棟に侵入者が。凶暴な患者を、簡単に料理したそうだ。ノイスという患者とも、話をしたそうだ。" 
"そのノイスという男、幻覚症では?"
"ああ、しかも厄介でね。2週間前、彼の言葉に怒った患者に、めためたに殴られた。吸うか?"
"やめました。" 
"フェリーで帰るのか?"
"勿論。俺たちの役目は、終わりましたからね。"
"『俺たち』?"
"それで、思い出した。奴は、どこだ?"
"Who?"
"相棒のチャック。"
"君は、一人で、来たんだよ。ここでの価値ある試みは、なかなか理解されない。人は、すぐ簡単な解決法に飛びつくからね。理解されなくとも、私は、諦めずに戦う。"
"ご立派です。"
"相棒の話を聞こう。"
"相棒って?"
女性患者が、テディを見て、笑う。 

テディは、シャワーを浴びる。 
こっそり、ネクタイを持ち帰る。
テディは、人目を避けて、施設内を歩くが、ナーリングに出くわす。
"保安官。どこへ?"
"フェリーに乗ろうと思って。"
"フェリーか。それなら、方向が逆だ。ちょっと待て。誰か、案内の者をつけよう。"
ナーリングがポケットを探る。それを見逃さず、テディは、ナーリングの手をつかみ、壁に押し付ける。注射器を持っている。
"これは?これは、何だ?"
"鎮静剤だよ。念のために。"
"何が、念のためだ。"
"何をする。私を殺すのかね?"
"当然だろう?"
"なぜだ?君を怒らせたから?なら、謝る。何が気にいらん?言い回し?言葉?"
"ナチス。" 
"なるほど。それから、『記憶』、『夢』。知っているか?『トラウマ』の語源は、ギリシャ語の『傷』。『夢』のドイツ語は?『トラウム』、『トラウム』だ。心の傷は、モンスターを生む。君は、傷を負っていて、モンスターを見ると、自分を抑えられず、つかみかかる。"
"そう。そのとおりだ。"
ナーリングに、注射を突き立てる。
テディは、外を目指す。
"1時間で片付くだろう。"
囚人の声がし、物陰に隠れる。
"1階も掃除すんのか?" 
"休憩は?"
"18時間、働き詰めだ。"
"いい稼ぎだ。"
テディは、車に乗り込む。小石をネクタイにくるむ。
"何しているの?"
元妻が、声を掛ける。
"フェリーに乗って。"
"No. まだ帰れない。"
テディは、車を降りる。
"チャックは、死んだ事にされ、実験台になる。となると、あそこだ。"
"殺されるわ。"
"相棒が痛めつけられているんだ。助け出さなきゃ。"
ガソリンタンクに、小石を包んだネクタイを突っ込む。
"俺には、奴だけだ。"
"お願いよ。テディ。行かないで。" 
"I'm sorry honey. 君のプレゼントだけど、正直言って、悪趣味なタイだ。"
ネクタイの端に、火を点け、車から離れる。
少女が、車に近づく。元妻と、手をつなぐ。
"どけ。"
車が爆発する。元妻たちは、炎に包まれるが、そのまま立っている。警備員らが駆け付ける。テディは、走って逃げ、壁が崩れた箇所から、外に出る。
灯台に向かう岸に、降り立ち、灯台まで、泳いで渡る。
立小便をしに、降りてきた見張りを襲い、銃を奪う。
"そのまま。動くな。"
"何する。俺を殺すのか?"
"いいや、殺さない。"
銃の尻で、殴り、失神させる。 
銃を構え、灯台の中に入る。螺旋階段を駆け上がる。各階の部屋を覗くが、人影はない。最後の部屋の扉を蹴破る。院長が、デスクに向かっている。
"びしょ濡れだよ。Baby. "
"What did you say?"
"聞こえただろ?"
灯台の外などに、人影はない。
"その銃は、空だよ。"
"座って。"
"体を拭け。風邪を引くぞ。"
"Right."
"警備員を襲ったのか?"
"分からない。何の事か。"
院長は、受話器を取る。
"彼は、ここだ。シーアン医師に、怪我人を診させて、ここへ。"
"そうか。シーアン医師が、戻った訳か。"
"Not exactly. 愛車が、木っ端微塵だ。"
"そりゃ、お気の毒。"
"痙攣か?幻覚症状は?"
"逃げて、テディ。でないと、お仕舞いよ。"
"大丈夫。"
"悪化している。"
"I know. ソランドー医師から、精神治療薬の話を聞いた。"
"彼女が?いつの事だ?"
"岸壁の洞窟で見つけた。だけど、彼女は、捕まらない。"   
"だろうね。彼女は、幻覚だから。思ったより、重傷だな。君は、精神治療薬どころか、薬は、何も飲んでいない。"
"じゃ、これは何なんだ?"
震える手を突き出す。
"禁断症状だ。"
"禁断症状?何の?酒は、1滴も飲んでいないぞ。"
"クロルプロマジンだ。薬も問題だが、君の場合は。"
"クロルプロ...何?"
"クロルプロマジン。過去24か月、君に投与し続けて来た。"
"この2年、ボストンで、俺に、薬を盛っていたって事か。"
"ボストンじゃない。ここでだ。君は、患者として、2年前から、ここにいる。"
"ここで色々な事を見た俺に、『正気じゃない』と言う気か?相手を見るんだな。俺は、連邦保安官だぞ。"
"連邦保安官だった。受入票のコピーだよ。67番目の患者を示す『証拠』で、これで、『施設の実態を暴く』と。読む時間がなかったようだから、ここで読め。Go ahead."
"『患者は知的で、極めて妄想が、強い。ダッハウ収容所解放に立ち合い、元連邦保安官。暴力的性向。自分の犯罪行為を否定し、自責の念はない。物語を創作して、自分の過去から逃避。』くだらん。俺の相棒は?チャックはどこだ。"
"話を変えよう。奥さんの旧姓は、チャナル?"
"関係ない。"
"あるのだ。"
覆いを取り、白板を示す。
"この4つの氏名に共通点が?『4つの法則』だよ。どうだね?"
"相棒の身に、何かあったら。" 
"ここを見ろ。アンドリュー。アルファベットで、13文字。エドワード・ダニエルズ、アンドリュー・レディス、レイチェル・ソランドー、ドロレス・チャナル。同じ文字の綴り替え。"
"馬鹿げた小細工だ。"
"真実を暴きたいんだろ?君は、アンドリュー・レディス。67番目の患者は、君なんだよ。"
"嘘だ。"
"2年前に、ここに来た。自分を許せない犯罪を犯し、別の自分を創り上げたのだ。"
"待て。どういう事だ。"
"架空の君は、殺人者でなく、英雄。今も連邦保安官で、職務でここに来て、陰謀を知った。だから、自分の話をされても、平然と嘘だとはねつける。"
"俺の名は。"
"2年間、同じ話を聞かされ、暗記してしまったよ。67番目の患者、嵐、レイチェル、相棒。ダッハウの監視兵殺戮の話も、事実かどうか。このまま、空想の世界で、生かしてやりたいが、君は、暴力的だ。しかも、訓練され、危険だ。看護助手、警備員、患者を傷つけ、ノイスを殴った。"
"ノイスの件も、あなたが仕組んだ。"
"違う。"
"俺に、奴を襲う理由が?"
"君を『レディス』と呼んだ。絶対に、君が認めたくない事だ。昨日のノイスとの会話記録だ。『あんた自身とレディス。それが核心だ。』"
"そう。俺とレディス。"
"『誰に殴られたのか』と尋ねた君に、彼は、『お前さ』と。"
"俺のせいって意味だ。"
"殺しかけた。警備隊長と理事たちは、『処置を下すべき』と。今回、ここで、君を正気に戻せなければ、他人を傷つけぬよう、最終手段を取る。君に、ロボトミー手術を施す。"
"I understand. よく分かった。あんたらのゲームに、付き合わなきゃ、俺は、ゾンビにされる訳だ。俺の相棒は?あいつも、俺のでっち上げだと報告するか?"
チャックが、扉を開ける。
"やあ、Boss." 
"どうなってんだ?話せ。グルなのか?"
"君の身を守るため、付き添う者が、必要だった。"
"俺の監視役か。それで、そばに?Who are you? 言えよ。"
"分からないのか?この2年間の君の主治医シーアンだよ。" 
"お前には、女房の話を。お前のために、崖を下り、お前を信用し、助けるために、あらゆる危険を冒した。"
"Boss."
"時間がない。私は、理事会に請け合ったのだ。『君の妄想を現実にすれば、現実との矛盾に直面して、嫌でも現実に戻るだろう』と。2日間、君は、自由だった。島で、ナチスの生体実験を見たかね?おぞましい手術は?"
テディは、返す言葉に、窮する。
"アンドリュー。Listen to me. 試みが失敗だと、我々のここでの成果が、すべて無になる。"
"我々が、『戦い』に勝てるか、それは、君にかかっている。"
テディは、デスクの拳銃をつかみ、2人を威嚇する。
"動くな。"
"アンドリュー。よせ。"
"俺は、エドワード・ダニエルズだ。重い。弾丸が入っている。"
"本当に、君の銃かね?"
"イニシャルがある。銃撃戦の時に、銃身に付いた凹みもある。"
"じゃ、ぶっ放して、島から逃げろ。"
院長を撃つが、傷を負わない。
"アンドリュー。やめろ。"
"この銃。"
両手でつかむと、粉々になる。
"俺の銃に、何をした?"
"オモチャだよ。真実を思い出せ。ドロレスは、うつ病で、自殺願望があった。君は、家に戻らず、酒に溺れた。アパートに放火したのは、彼女だ。それで、湖畔に越した。"
チャックの胸倉をつかみ、壁に押し付ける。
"嘘だ。タバコで、俺をおかしくした。"
制止する院長を突き飛ばす。
"何もかも嘘だ。"
"見ろ。君の子供だ。"
院長は、子供の遺体の写真を見せる。
"サイモン。ヘンリー。" 
"子供は、いない。"
"君の奥さんが、湖で、溺死させた。これが、毎晩、君の夢に現れるあの小さな娘だ。"
"娘など。"
"娘は、君に言う。『なぜ、助けてくれなかったの?』と。名前は、レイチェルだ。我が子の存在まで否定するのか?どうだね?"
テディは、写真を手に取る。
"可哀想に。Baby."
ドロレスと娘が現れる。
"ここに来てはいけないと、言ったでしょ?それで、お仕舞いと。"
娘が、濡れた手を差し出す。
湖畔の家。
"Come back. 犯人は、オクラホマで挙げた。タルサまて、10か所を点々。1週間眠り続けたい。ドロレス?"
酒をグラスに注ぎ、飲む。
"ドロレス?ドロレス。"
東屋のブランコに、人影がある。
"ドロレス。"
ブランコを下り、テディの方に歩み寄る。
"Baby. びしょ濡れだよ。"
"寂しかったわ。家に帰りましょう。"
"ここが家だ。子供たちは?"
"学校よ。"
"今日は、土曜日だよ。"
ドロレスに言い聞かすように、言う。
"学校は休みだ。"
"私の学校は、違うの。"
不気味に笑う。
湖に子供が浮かんでいる。 
"Oh my god. 何をした。"
テディは、湖に入る。
娘の所に至る。
"何をした?しっかりしろ。頼む。"
表に向けるが、息がない。
"何て事を。息をしろ。
娘と息子の遺体を、肩に担ぐ。
"何て事を。お願いだ。神様。死なないでくれ。"
3人の遺体を、両手を組ませ、芝生に並べる。テディは、悲嘆に暮れる。ドロレスが、来る。
"テーブルに座らせましょ。乾いた服に、着替えさせなきゃ。私たちの生きたお人形よ。明日は、ピクニックよ。"
"俺を愛しているなら、please stop talking."
"愛しているわ。私を楽にして。"
"Baby."
"お風呂にいれましょ。"
"愛しているよ。"
"私も、愛しているわ。あなたが、大好き。愛している。"
銃声が響く。ドロレスは、撃ち殺された。テディは、横たわるドロレスの亡骸に取り付き、泣く。
"Baby."
"アンドリュー。"
テディは、床に崩れ落ちる。
"アンドリュー。Can your hear me?"
チャックが尋ねる。 
"レイチェル。レイチェル。レイチェル。"
ベッドのテディを、チャック、院長、ナースが、囲む。"
"レイチェル?レイチェル、who?"
"レイチェル・レディス。俺の娘。"
警備隊長も部屋に入る。
"なぜ、ここに。"
"俺が、妻を殺したから。"
"なぜ、殺したんだ?"
"子供たちを殺したから。妻が、『楽にして』と。"
"テディ・ダニエルズは?"
"存在していない。レイチェル・ソランドーも創作だ。"
"Why?"
"ちゃんと言うんだ。"
"最初に自殺を図った時、ドロレスは言った。『私の脳の中に、虫がいるの』と。『脳の中を、もぞもぞ動き回っていて、あちこち、線を引っ張っている。』そう、言ったのに、俺は、耳を塞いだ。俺は、本当に愛していた。"
"なぜ、架空の話を?"
"彼女のした事を、信じたくなくて。俺が、俺が殺したも、同然だ。彼女を助けなかった。俺のせいだ。"
"君は、9か月前に、1度回復して、元に戻ってしまった。"
"覚えていない。"
"だろうね。リセットされるテープと同じ。同じ事の繰り返しだ。今度こそ、繰り返さないように止めたい。現実を受け入れられるかね?" 
"先生は、俺を見捨てなかった。先生だけが、俺を助けようとしてくれた。俺は、アンドリュー・レディスだ。俺は、'52年の春に、妻を殺した。"

施設玄関の階段に、テディは座る。チャックがやって来る。
"今朝は、どうだ?"
"Good. そっちは?"
"悪くない。"
チャックは、タバコを差し出し、テディは、1本貰う。
"それで、どうする?"
"言えよ。"
"島を出よう。チャック。ここにいると、ロクな事がないぞ。"
2人から離れて、庭に、院長、ナーリング、警備隊長が立っている。
"奴らなんか気にするな。"
"俺たちの方が、利口だ。"
"そう。そのとおり。"
"ここにいると、考える。"
"どんな事を?"
"どっちの方が、マシかな。モンスターのまま生きるか、善人として死ぬか。"
テディは、立ち上がり、院長たちの方へ進む。
"テディ。"
そのまま、院長たちを引き連れて門の方に歩く。

灯台。
【感想】
ディカプリオを正義として、映画を見始める。いきなり船酔い。ディカプリオが、完璧なヒーローではないと知れ、相棒の保安官が、何やら胡散臭い。その後も、港に迎えに来た副隊長、院長、ナーリング医師など、皆が皆、悪に加担する者か、最後は、粛清され、意気揚々とディカプリオは帰還するのかと思わせる。しかし、脱走した"レイチェル"は、あっさり収容されるが、彼女と接見する中で、ディカプリオの死んだ妻が現れ、そこから、レイチェルとは誰なのか、元妻は、なぜ死んだのかが明らかにされ、正義と悪とが、逆転する。しかし、最後に、保安官2人は、互いに"テディ"、"チャック"と呼び合い、映画の冒頭に戻る。映画は、虚構だということを逆手に取るような、善悪のあわいを、漂うような表現にめまいを覚える。


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