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一人勝手に回顧シリーズ#マーティン・スコセッシ編(10)#カジノ/グッドフェローズを踏まえて

【映画のプロット】
▶︎天才ギャンブラー
これは、事実に基づく物語である。
1983年
サーモンピンクのジャケットを羽織り、タバコを吸いながら、サム・ロススティーン(ロバート・デ・ニーロ)が、ダイナーから出て来る。
"愛する事は、信頼する事だ。金庫の鍵でさえ、渡す。当然だろ?"
クーペに乗り込む。
"俺は、そんな愛を手にした筈だった。"
エンジンをかけると、車が爆発する。

カジノのフロアに立つサム。
"俺は、サム・ロススティーン。『エース』と呼ばれるすご腕の予想屋だった。俺の一言で、ノミ屋の賭け率が変わったほどだ。その腕を見込まれて、俺は、ベガスのカジノタンジールの運営を任される事になった。タンジールには、大金が注ぎ込まれていた。6,270万ドルだ。詳しいいきさつは、知らない。"
"いきさつなど関係ない。兎に角、親友の俺ニッキー・サントロ(ジョー・ペシ)が、用心棒につき、奴には、ジンジャー(シャロン・ストーン)という女も出来た。だが、結局、すべてがパア。俺たちのようなゴロツキに、あんな美味しい話は、もう2度と、訪れないだろう。"
"当時、ベガスは、大勢の鴨が、10億もの金を落とす場所だった。夜、周りの砂漠は、闇に閉ざされる。一目に触れる事はない。"
"そこで、トラブルの元は、ここに葬られた。車で荷物を運ぶ前に、あらかじめ、穴を掘っておく。そうじゃないと、厄介な事になる。万一、目撃されたら、余計な穴まで掘る羽目になるからだ。"
タンジール
 The Strip 
 Las Vegas
10年前。
"それまでの俺は、ただのギャンブラーで、いつもサツに睨まれていた。それが今や、合法的カジノの運営を任され、客に夢を売る立場だ。支配人には、友人のビリー・シャーバートを据えた。ベガスは、過去の泥を、綺麗に洗い流してくれる。いわば、『聖地』のような場所だ。それだけでなく、金もザクザク入って来る。そう、ここは、砂漠に咲いた金のなる木なのだ。派手なネオンに、豪華なホテル、シャンペン、無料の招待旅行、若い女たち。すべて、客の金を巻き上げる餌なのだ。それが、ベガス。客には、最初から勝ち目はない。客の落とした金は、テーブルから、会計係を通って1か所に集められる。カジノで、最も神聖な場所。すなわち、『集計室』だ。ここには、俺でさえ、入る事ができない。俺は、金を送り込むだけだ。"
"100ドル札の束で、家が建つほど、金が集まる。だが、重役たちは、中の事を、何も知らない。きちんと集計されてるって?とんでもない。集計係の本当の任務は、『金をかすめとる』事なのだ。金額を誤魔化し、伝票を捨て、棚から、現金を抜き取る。今、金をカバンに詰めているこの男は、重役や国税局に知られず、金を持ち出す運び屋だ。他の男たちは、誰も気にしていない。皆、そっぽを向いて、見ない振りをしている。金勘定に、忙しく、そんな暇はないって訳だ。その間に、男は出て行く。守衛も、100ドル貰って、見て見ぬ振り。毎度、お馴染みの光景だ。『やあ』、『どうも』、『またな』。それで、お仕舞い。誰にも、見咎められずに、去って行く。男が向かう先は、カンザスシティー。そこには、中西部のボスたちが、待ち受けている。"
カンザスシティー
"勿論、ボスたちのお目当ては、このカバンの中身だ。男は、定期便のように、月に1度、カバンを運んで来る。ボスたちは、デトロイトやクリーブランド、ミルウォーキーなどから、この食料品店の奥に、密かにやって来る。料理は、手作りだ。信じられないだろうが、このジジイたちこそ、ベガスの陰の支配者なんだ。彼らは、トラック運転手組合の資金を一手に、握っている。そして、毎月の『カバン』を条件に、資金がカジノに流される。こいつは、デトロイトのボス。そして、この男が、リモ・ガッジ。"
"いくらある?"
"ボスの中のボスだ。"
"およそ70万ドルほど。"

"まだ宵の口ですが、ギャンブル業界の皆さんに、お集まりいただき。"
"組合年金局長のアンディ・ストーンは、表向きは、堅気の人間だ。顔も広く、大統領とゴルフも。"
"ここに、タンジール開業資金として。"
"だが、実際には、ボスたちの命令で動いている。"
"6,270万ドルを、グリーン氏に融資します。"
"今回もそうだ。"
"このグリーンは、表看板には最適な、おめでたい人間だ。今回、融資を受けたのも、手腕が買われたからだと思っている。"
"競争に打ち勝つ自信はあります。"
"グリーンは、何者か?さあね。元は、アリゾナの不動産屋で、ガソリン代にも、事欠いていたらしい。肩書きは社長だが、実際には、すべてアンディが指示した。"
"そうか、分かった。"
"ネバダ州法人タンジール"欄に署名。
"後は、カジノを仕切れる人間を探すだけだ。そこで、エースに白羽の矢が立った。だが、奴は、慎重だ。すぐには、飛び付かなかった。"
"ライセンスが下りるか?俺は、過去に、不法賭博で、何回も捕まっている。"
"ライセンスなんか、要らない。申請だけでいい。申請手続中でも、カジノは運営できるんだ。問題ないさ。"
"調べられたら?"
"調べるもんか。カジノで、奴らも潤っている。定期的に、仕事の肩書きを変えればいい。『カジノ責任者』とか、『飲食責任者』とか。その都度、書類は、一番下に回される。30年間、無免許の男もいる。"
"引き受けるとしたら、俺のやり方でやるぜ。"
"勿論。"
"干渉は御免だ。"
"誰にも口出しさせない。約束する。"
"こうして、話は決まった。奴ほど、この仕事に、打って付けの男はいない。肩書きが、洒落ている。『タンジール広報宣伝責任者』。実際は、カジノの責任者だ。奴は、15の時から、賭博で稼いで来た。奴にとって、賭博は、遊びではない。"
"それでも、プロか?"
ディーラーに注文をつける。
"まるで、脳外科医だ。"
"チップは、きちんと置け。"
"奴は、いつもあらゆる情報を探ってから、金を賭けた。故郷の町で、俺とつるんでいた頃。"
その昔、故郷の町。
"QBがヤク中だとか、恋人が妊娠したとか、試合日の風速まで、知っていた。バスケでは、床の材質で、ボールの弾み方まで計算した。兎に角、徹底的に調べて、賭けに臨んだのだ。"
ギャンブラーたちが、一斉に電話ボックスに走る。
"エースは、6だ。俺も乗る。"
"毎年、奴は、確実に勝ち続けていた。いつも真剣で、楽しむ事はない。そういう奴だ。ボスたちには、得難い男だった。奴の予想に従えば、間違いなく儲かるからだ。特に、リモは、ギャンブルが、滅法、弱い。"
"クソ。また負けだ。やってられん。" 
"エースが頼りだ。毎週末、奴のお陰で、しこたま儲けた。奴は、リモに情報を流す。イカサマ。馬のドーピング、審判の買収、ハンディの操作、何もかもだ。それも、当然だろう。リモを喜ばせるのが、最高の保険なんだ。" 
▶︎ニッキーとジンジャー
"なぜ、オクラホマが勝つと、思った?皆、ミシガンに賭けていた。"
"だから、儲かる。"
"いつもこれだ。来週は、どうなる?"
"まだ早い。木曜に教えますよ。"
"よし、家に来てくれ。7時だ。よくやった。また頼むぞ。"
"ニッキー。来い。"
"奴の面倒を見てやれ。あの男のお陰で、随分と儲けさせて貰っている。そこらの能無しとは、違う。いいな。頼んだぞ。"
"そんな訳で、俺は、エースの用心棒になった。"
"いいコンビだった。俺が胴元で、彼が集金人。ボスたちの覚えも、めでたかった。彼の集金方法?聞くな。"
ニッキーらは、バーで飲む。
"ベアーズのハンディは?"
"8。"
"ほら見ろ。" 
"9だと。"
"間抜け。"
"これは、君のか?"
エースは、ペンを摘む。
"そうさ。なぜだ?"
"いいペンだから、失くすといけないと思って。"
"欲しけりゃやる。ケツの穴にでも、突っ込んどけ。"
"俺は、ただ。"
ニッキーが、ペンを取り、男の喉元に、突き立てる。倒れた男を、執拗に蹴り続ける。
"何か、言っているぜ。女々しい声を出しやがって。さっきの威勢は、どうした?クソったれめ。"
"落ち着け。"
"ニッキーは、考えるより先に、まず手が出る。どんな相手だろうと、ためらわない。拳で殴られれば、バットで返す。相手がナイフなら、銃だ。彼とやるなら、殺す事だ。さもないと、最後に必ず殺される。" 
"俺と組んで、奴は、更にボスの懐を潤した。だから、ベガスに。奴は、ドル箱だ。カジノのあがりは、たちまち2倍になった。途轍もない金額だ。ボスは、ご満悦だった。"
"ベガスでは、有力者の顔を立てるため、地元の役立たずも雇った。馬糞掃除をしていたような連中だ。"
"ゴミが落ちているぞ。掃除させろ。"
"分かった。サム。"
"サム?"
"ロススティーンさん。お任せを。"
"何で、あんな男を雇ったんだ?"
"仕方ない。"
"なぜ。"
"コミッショナーの親戚だ。"
"またコネか。"
"地元の有力者の機嫌を損ねる訳にはいかない。連中が、州を動かしているのだ。毎週、何人もの議員や役人が、遊びに来る。大事な客だ。連中には、すべて無料で、サービスする。どこのお偉方も、美味い汁を吸いたがるものだ。だが、こんな連中は、まだ扱いやすい。警戒を要するのは、このイチカワのように、大金を動かす男だ。バカラ一手に、3万も儲け、根こそぎ、金をさらう。彼は、ケイマンのカジノを、2軒潰した。今回も、200万儲け、シャンプーやタオルまで持ち去った。しかも、ホテル代はただで、送り迎えのジェット付きだ。俺は、『故障』を理由に、足止めした。"
"申し訳ありません。計器のトラブルのようです。"
"無事でよかった。"
"乗り継ぎ便は、間に合わない。"
"街のホテルは、満室です。"
"我々は、1フロア全部を提供した。"
"ご迷惑を。"
"陰謀だろ?"
"とんでもない。''
"戻ってからの彼は、1,000ドルずつ、ちびちびと賭けた。だが、そんな我慢も、いつまでも続く訳がない。彼にとって、1万の勝ちは、9万の負けに等しい。賭け金が上がる。結局、儲けを吐き出し、100万を失った。カジノの秘訣は、『客に儲けさせ続ける事』。そのうち、必ず負ける。勝つのは、我々だ。カジノでは、監視の目が光っている。客は、ディーラーを。ディーラーは、客を。ボックスマンは、ディーラー。接客主任は、ボックスマン。ピット主任は、接客主任。シフト主任は、ピット主任。そして、支配人は、シフト主任。俺は、支配人を。そして、カメラが全体を見張る。更に、元イカサマ師が、怪しい動きを、監視する。" 
カメラに映るジンジャー。
"今日は、ついているわ。"
エースは、ジンジャーが、チップを抜き取り、バッグにしまうのに、目を止める。
"ありがとう。取っといて。"
ジンジャーが、チップを配る。
"ジンジャー。お礼だ。"
チップを示す。
" Com'on. "
" What's the matter? "
"儲けたでしょ?分け前を。"
"チップをくすねたろ?"
"冗談でしょ。儲けの半分は貰うわ。"
"見ていたぞ。バッグの中に隠した。"
"言いがかりだわ。" 
" Get out. "
" Get out? 冗談じゃないわ。"
ジンジャーは、チップをばらまく。
エースは、ジンジャーを目で追う。
"最高だ。俺は、一目で惚れた。だが、彼女のような女は、金がかかる。"
エースとジンジャーが、濃厚なキスをする。
"化粧を直して来る。"
"彼女には、金が必要だ。"
"すぐ戻るわ。"
"彼女は女王。上客を捕まえ、散々、散財させる。"
"ジンジャー。元気か?"
"いつもありがとう。お礼よ。"
"またよろしく。"

"運のつく薬よ。"
"彼女は、誰にもでも好かれ、一目置かれるhustler   だった。客は、2、3日有頂天の日を過ごし、身ぐるみはがれて、追い出される。"
カジノのソファ席。エースの元に、ジンジャーが戻る。
"釣り銭は?"
"スロットで、すっちゃったわ。"
"嘘さ。金は、バッグにある。"

"調子は?"
"最高。あんたは?"
"くたくた。"
"作法も心得ている。"
"チップよ。"
"ここでは、すべてが、持ちつ持たれつだ。"
"6,800ドル。"
" Thanks. "
"それが、ベガス。"
"彼女は、周りの人間に、惜しまず、心づけを渡す。特に駐車場係は、大切だ。何でも面倒を見てくれる。それに、駐車場からは、警備員や警官に賄賂が渡っている。"
"頼むわよ。"
" No problem. "
"いい子ね。"
ジンジャーは、車に乗り込む。
"駐車場係は、儲かる。だから、金を払っても就きたがる。彼女には、一つ問題が。レスターというケチなヒモが、付いていたのだ。"
レスターとジンジャー。
"今度の話は、確かだ。大物が付いている。損はさせない。金が入ったら、すぐに返す。どうした?何を考えている?言ってみろ。誰の事を考えている?"
"あなたの事。"
"彼女には、似合わん男だ。"
" Good luck. "
"イカサマ師。レスターは、たかり屋で、イカサマ師。しみったれた小悪党だ。ジンジャーのような女が、なぜ惚れたのだろう。駄目な男に、女は弱い。そこにつけ込まれたのだ。"
故郷の町。
"ニッキーは、違う。"
検問で、手荷物をチェックされる。
"何も出て来ないぜ。"
"彼は、本物の悪党だ。だから、警察も躍起になる。"
"引っ掻き回さないでよ。"
"気が強いだろ。"
"休暇旅行から戻れば、空港で、警官が待っている。アントワープで、宝石店が襲われ、警察は、彼を疑ったのだ。無理もない。ニッキーなら、やりかねない。"
帰宅したニッキーの妻が、結った髪を揺すると、宝石が、ポロポロ落ちる。
"行くわよ、ほら。Beautiful. "
"彼が、ベガスに来ると聞き、俺は、不安だった。"
"終わりよ。ないわ。"
"まだだ。髪に引っ掛かっている。"
"ないわよ。"
"強情だな。よく探せ。見ろ。あっただろ。"
"よくやった。"
"いよいよ、出番がやって来た。ベガスが、俺を待っている。俺の役目は、エースの護衛と、上納金を守る事だ。"
ニッキー夫妻が、エースの家を訪ねる。
"やあ。"
"見ろよ。" 
" Incredible. 
" Well come. ベガス。"
"ジンジャー。"
ジンジャーを紹介する。
"こいつは、参った。"
"ジェニファーとニッキー。"
"よろしく。"
"やるな。"
"食後、俺は、話をするため、ニッキーと外へ出た。彼は、こう切り出した。『ベガスに、移る。』"
"反対か?"
"いや。"
"いいんだな。"
"勿論さ。でも、気を付けてくれ。ここは、故郷の町と違う。俺たちは、よそ者だ。シェリフを怒らせると、砂漠の穴に、埋められるぞ。"
"面白い。故郷の町には、もう飽き飽きだ。ここは、最高だ。ボスの目も光っていないから、好き勝手ができる。"
"兎に角、面倒は御免だ。俺は、ここでは、合法的にやっているんだ。"
"心配するな。お前を巻き込んだりはしないさ。"
"エースと違い、俺には、ベガスが『手付かずの金脈』に見えた。ノミ屋も売人も、好きに鴨れる。ここには、誰も仕切る奴はいない。それに、俺は、絶対に儲かる手を、見つけたのだ。"
"いい方法とは言えないが、確かに儲かった。勝てば、取り立て、負ければ、脅したのだ。彼にさからえる者は、いなかった。"
" Hi. "
"どうも。"
"金は、どうした?"
"金?あんたには貸しが。"
"馬鹿言え。こっちが貸している。"
" You sure? "
"ああ。"
" I'm confused. "
"そうか。分かるように、頭を窓に突っ込んでやろうか?よこせ。"
"悪かったよ。"
"今度からは、大人しく払え。いいな。"

"次は、ニコラス・サントロの番よ。"
小学校の授業参観日。
ニッキーの息子ニコラスが、皆の前に立つ。
"ジョージ・ワシントンは。"
"暫くは、何事もなかった。俺は、彼ら夫妻を、友人として、皆に紹介した。"
"息子は、リトル・リーグに入った。コーチの1人は、警官だったが、子供には、関係ない話だ。"
"大振りし過ぎだな。" 
"ああ、そういう性格なんだ。"
ニコラスは、いい当たりを飛ばす。
"やがて、ニッキーは、本性を発揮。カジノでも、大きな態度を取り始めた。"
"当然だろ。よその組織から、カジノを守るのが、俺の役目だ。例えば、この2人。こいつらは、20万ドルも横取りする気だ。"
ニッキーが、男の肩を叩く。
"やあ、ここで何を?" 
"移った。"
"ここへ?"
"奴とな。"
エースを、顎で示す。
"カーマインを?"
"一緒に来た。奴なら、さっき出て行ったぜ。"
"出て行った?本当か?嘘だろ。そうか。"
"向かいの店にいる筈だ。"
"邪魔したな。上手くやれよ。"
"じゃあな。"
"まだ、お金を渡していません。"
窓口の職員が言う。
"必要ない。"
"彼に警告され、他の組の連中は、すぐ手を引いた。だが、ニッキーやボスの事を知らない馬鹿な連中もいた。彼らは、変装して、何度でもやって来る。よく見れば、分かる。例えば、この男、さっきから、ずっと勝ち続けている。馬鹿な奴ほど、greedy. すぐバレる。"
エースは、物を拾う振りをして、腰をかがめ、男の様子を伺う。
"ディーラーは、グルではない。ただ、脇が甘く、カードを高く上げ過ぎる。この男(協力者)が、カードを盗み見て、仲間に合図を送っている。"
協力者の指が、モールス信号を送る。
"ライオンが、弱い羊を襲うように、奴らは、ドジなディーラーを、狙うのだ。"
"私だ。ピット2に、人を寄越してくれ。"
エースは、内線で指示する。
"19番の髭の男だ。『ハッピーバースデー』を。" 
女性スタッフが、カードのテーブルに、ケーキを運ぶ。男性職員が、髭の男に近づき、電気ショックを与える。
"医者を。心臓発作らしい。道を開けてください。"
"家畜用の電気棒の仕業だ。本当の心臓発作の方が、奴にはマシだったろう。"
イカサマ男は、テーブルを立つ。
"この2人は、何年も、カジノを荒らしていたらしい。"
電気棒を見舞われた男は、事務所に連行される。
"何をする。"
ズボンを下ろされる。
"あったぞ。イカサマ師め。"
男は、テーブルに手を突かされる。電動ノコが、用意される。
"ケジメはつけなければならない。他のイカサマ師への見せしめだ。"
"一つ聞きたい。さっき、右手を使っていた。左手でも?"
" No. "
" Can do? "
" No. "
"本当か?"
" I never try. "
"右利きか?"
" Yeah. "
男の右手が、金槌で潰される。
"左で練習しろ。"
イカサマ男が、窓口で、金を引き出す。
"11万だ。"
" Yes. "
" OK. "
職員が、声を掛ける。
"ここで、数えるには、金額が大きい。"
" Yeah. "
"事務所にご案内しましょう。よく冷えたシャンパンをお出しするように。頼む。Pardon. 支配人のシャーバートです。Have you fun? "
男も、事務所に連れ込まれる。
"手を潰された。"
" I'll give you a choice. 手を潰されるか、金を置いていくか。Do you want? "
"金は、要らない。"
"2度と、イカサマはしないよう、仲間にも伝えろ。You understand? "
"分かった。"
"よく覚えておけ。今度、その面を見たら、容赦はしない。あの電気ノコで、切り刻んでやる。Got it? Get out. "
"そいつを外に、放り出せ。"

"すべて順調だった。イカサマ師は、消え、上がりも増えて、ボスたちも大満足だった。そこで、俺は、賭けに出た。慎重な俺には似合わない危険な賭けだ。"
エースとジンジャー。
"もう若くない。そうだろ?今の暮らしは、長くは続かない。"
"足を洗えと?"
"そうじゃない。結婚してほしい。どうだ?Serious. 落ち着きたいんだ。"
"相手を間違っているわ。"
"いい親になる。"
"私たち、会って、まだ2、3か月よ。You know? "
"俺は、43歳だ。もう、これ以上は、待てない。君を愛しているし、ほかの女は、考えられない。"
"結婚して、幸せになれる?"
"勿論だ。"
"あなたの事は好きよ。でも、結婚はできない。悪いけど、愛してないの。ごめんなさい。分かって。"
"いいんだ。でも、思いやる気持ちがあれば、愛は、自然と生まれる。俺は、それで十分だ。そもそも愛って何だ?お互いを尊重し合い、思いやる事だろ?そういう気持ちを大事にして、一緒に暮らして行けば、いつか俺を愛せるさ。それでいい。"
"上手く行かなかったら、どうなるの?"
"俺は、十分に稼いでいる。だから、どうなろうと君の暮らしは、ちゃんと面倒を見る。子供が生まれたら、尚更だ。何があろうと。"
"本気なのね。" 
"言ったろ。君は、一生、安泰だ。I promise you. 賭けてみないか?"
2人は、結婚式を挙げる。
"周りは、とやかく言ったが、気にしなかった。俺には、自信があった。"
"エースは、大物を招待し、結婚式に、箔を付けた。断る奴はいない。皆、普段、甘い汁を吸っているからだ。結婚にも、保険を掛けた。まず、子供を作ったのだ。新婚旅行の間、子供は、俺たち夫婦が面倒を見た。"  
"感じるか?俺は、そこにいる。お前の心の中に。体の中に。感じるか?どうなんだ?何とか言えよ。"
" I love you. "
"俺もさbaby. "
レスターとジンジャーは、電話で話す。
" Do you know that? "
"今は、結婚するのが、一番だと。"
" That's right. 上手く行く。"
"本当?"
"ああ、すべて君のためだ。今は、奴と結婚するのが、一番いいんだ。"
金髪の女が、レスターのそばに来て、ヤクを決める。
"本当さ。奴は、金がある。いい暮らしが、保証されるんだ。心配するな。俺は、いつもお前のそばにいる。"
エースが、ジンジャーが電話しているのを、見つめる。
"初めて会った時の事を、今でも覚えている。胸が高鳴った。お前は、14だった。目に焼き付いているよ。子馬のような脚。歯にブレースをしていた。今も、あの頃のままだ。"
"またかけるわ。じゃあね。"
" You're all right? "
" Yeah. " 
"泣いている。" 
"違うわ。"
"飲み過ぎだ。" 
"何でもないわ。でも、レスターとは、子供の頃からの付き合いなの。だから、さよならを。それくらいは、いいでしょ?" 
" It's all right. でも、もう過去の事だ。Right? "
" Yeah. "
"今は、俺の妻だ。分かるな?You sure? "
" Yeah. "
"皆の所へ、戻ろう。"
" OK. "
 
2人の新居。ジンジャーは、目を見張る。
" Great. 素敵。"
数々の衣装が、収納されたクローゼット。
"全部、私のものなの?"
"これもだ。"
"本当に?"
毛皮のコートを着せる。
"凄いわ。何の毛皮?"
"チンチラだ。"
"柔らかいわ。"
"いいだろ?"
"優しいのね。"
ケース一杯の宝飾品。
"一度に付けたら、付け過ぎ?"
"好きにしろ。約束は、守ったろ?"
"素敵だわ。この宝石も。"
"家に置くのは、危険だ。銀行に預けろ。"
"これは、いいでしょ?"
"よく聞け。大事な事だ。信頼し合えなければ、金や宝石など意味はない。俺は、君を信じる。"

ロスアンゼルス。
2人は、ジェット機から、降り立つ。
"ベガスの銀行には、100万ドルと宝石がある。これは、ジンジャーのためだ。だが、それ以外にも、俺の商売は、現金が欠かせない。"
"手伝うわ。"
2人で、紙幣を箱に詰める。
"そこで、コリンズ夫妻名義で、貸金庫に200万入れた。保釈金や身代金用だ。この金が必要な時、俺は、拘束されている。だから、金庫の鍵は、ジンジャーに預けた。"
"ここに、署名を。彼女が署名したら、金庫には、彼女しか入れないんだな?"
" That's right. 奥さんを、よほど信頼しているらしい。"
"ああ。なぜ?"
"別に。Unusuale. そんな人は、ほかにはいない。"
ライブレストラン。
"これで、一安心だ。俺は、念のため、肩書をまた変えた。『飲食責任者』。これで、ライセンスの事も、気にしないで済む。だが、問題は、ニッキーだった。"
"俺は、ディーラーを抱き込むため、連中に金を貸した。"
"必ず返せ。"
"分かっている。恩に着るよ。"
"奴らは、腐ったcoke freak だ。抱き込むのは、訳はない。続いて、大金を賭ける客に、狙いを定めた。"
"奴らが、イカサマをやっているのは、見え見えだった。下手な合図。当然、監視委員会の役人が、目を光らせ始めた。ニッキーを追い出したいが、無理だ。俺と違い、彼は、組織の一員なんだ。"
エースが、カードで遊ぶニッキーに、耳打ちする。
" Be careful. 役人がいる。"
"ついているだけだ。"
"ほどほどにしておけ。"
"エースは、一番肝心な事を、忘れているんだ。俺は、こう叫びたかった。『俺たちは、ベガスに、金を奪いに来たんだぞ。』と。"
"誰だろうと構わん。テーブルから、足を下ろさせろ。"
支配人が声を掛ける。
" Excuse me. 足を下ろしていただけますか。"
"そんな気分じゃねえ。" 
"耳を貸さない。" 
"警備員を。" 
エースが声を掛ける。
" How are you? "
"やあ。"
"足を下ろして、靴を履いてくれ。"
" Fuck you. "
"あの男をつまみ出せ。手荒く扱って、構わん。"
"悪いが、一緒に来てくれ。"
"嫌だね。"
"来るんだ。"
男の足を払い、別の警備員が、後ろから羽交い締めにする。
"クソ。俺が誰か、分かっているのか?後悔するぞ。オカマ野郎。放せ。"
男は、警備員に抱えられて、行く。
"1時間後、電話があった。"
ニッキーから。
"あいつは、俺の仲間だぞ。知らんのか?"
"それなら言うが、奴は、ビリーを侮辱し、俺をオカマと言ったんだぞ。"
電話を、一旦、保留する。
"来い。俺のダチを『オカマ』と?本当に言ったのか、クソったれ。来い。"
ニッキーは、暴行を加える。
"すぐに行って、詫びを入れて来るんだ。今度、こんな真似をしたら、頭をかち割るぞ。Do you hear me? "
"サム。勘弁してやってくれ。お前が、俺のダチだと知らなかったんだ。頼むよ。これからも、カジノに入れてやってくれ。"
"これが最後だぞ。今度やったら、出入り禁止だ。"
"分かった。すまなかったな。"
電話を切る。
"足をテーブルに、載せたって?この大馬鹿野郎のクソったれめ。今度は、砂漠に埋めるぞ。謝って来い。"
"エースは、どんどん大物に、なって行った。ある時は、評判の魔術師を呼び、派手な興行を行った。客を集める手腕は、大したものだった。パリから、踊り子も呼んだ。だが、彼女たちは、厄介だ。目を離すと、すぐに体重が増える。"
開演前のステージで、踊り子たちが、順番に体重を測る。
"4キロもオーバーだぞ。" 
"ロススティーン様。"
"『さん』でいい。" 
"敬意を。"
"それより、理由を?"
"ストレスを感じると、どうしても。"
"言い訳はいい。理由を言え。" 
"太るとクビになるから、それがストレスに。"
"そのとおり。クビだ。Send back to Paris. もういい。"
"彼女は、主役だろうと、関係ない。"
"奴は、ほかにも、人の考えつかない事をした。ベガスは、全米で唯一、ノミ行為が合法な街だ。そこで、ノミ屋を集め、カジノで営業させた。数年後には、すべてのカジノが、真似をした。"
" My inovations とニッキーの仕事熱心さで、あがりは増大した。"
エースとニッキー。 
"サツの目が、光っているぞ。"
"垂れ込みが?"
"お前をブラックリストに、載せようとしているらしい。"
"そいつは、光栄だ。アル・カポネと同列って訳だ。"
"笑い事ではない。カジノに出入りできなくなるぞ。"
"生活費を稼いでいるだけだ。"
"兎に角、忠告はしたぞ。"
"分かった。"

"こっちを向いて。"
エースとジンジャーが、写真に収まる。
"サムは、献身的な努力と革新的なアイデアで、カジノ業界に、確固たる地位を築きました。彼をカントリークラブのメンバーに迎えられ、嬉しく思います。"
"俺のような男を表彰式するのは、この街だけだろう。"
"私の慈善行為が評価され、とても光栄に思います。"
ジンジャーに、女友達が、声を掛ける。
" Congratuations. "
"凄い額の寄付金だわ。"
"ジンジャーの姿に、俺は、満足だった。彼女は、会場の花だ。誰もが、彼女の魅力に、打たれていた。"
"娘の誕生会があるの。是非、来てね。土曜日よ。"
"ええ。" 
"皆に、好かれた。"
" Congratuations. "
" Thanks. "
"今晩は。奥さん。"
"美しい方だ。ご主人が羨ましい。"
"それは、どうも。" 
"カジノの従業員だ。優秀だが、次の日、クビにした。"
"彼女は、男の気をそそるのが、上手かった。"
"見て。"
娘に、ジュエリーを見せる。
"全部、パパが私にくれたの。"
"でも、彼女が、心を動かすのは、これ。"
"見て。凄いでしょ。全部、私のもの。"
"彼女は、満足だったし、俺も、仕事に専念できた。"
"あれは、裏に置きました。Over there. "
"なぜだ。あんな場所じゃ、目立たん。"
" OK. "
"ジャックポットは?あれは、一番、人気があるmachine だぞ。売上が落ちる訳だ。少しは考えろ。"
"分かりました。"
"やり方は、3つ。正しいやり方、間違ったやり方、私のやり方だ。Do you understand? "
"わかりました。すみません。"
"君は、スロット主任だ。しっかりしろ。"
"はい。気を付けます。"
"俺は、18時間、仕事。ジンジャーは、優雅な生活を。"
ウェイターに、席を案内してされる。
"どうぞ。いい席をご用意しました。"
"あの馬鹿に何と?"
"ロススティーン夫人と。"
"効果抜群ね。"

"だが、やがて恐れていた事が、起きた。ニッキーが、カジノへの出入りを禁止され、俺たちは、自由に会う事もできなくなった。"
エースとニッキー。
"どう言う事だ?『以後、すべてのカジノから、彼を追放する。彼を出入りさせたカジノは、その都度、10万ドルの罰金』。マジかよ。" 
"勿論さ。"
"『彼の悪名と数々の噂は』。クソっ。"
"抜け道は?"
" No. "
"こういう手は?たまたま寄ったレストランが、カジノの中にあった。"
"駄目だね。駐車場に、足を踏み入れる事もできない。" 
"お仕舞いか?"
"ああ、そうだ。"
"彼は、ブラックリストに載せられた。出入り禁止など、まだいい。彼の名は、国中の警察に刻み込まれたのだ。だが、彼は、事態を甘くみていた。"
"俺は、引き下がらないぜ。追い出されてたまるか。クソったれ。"
"連中が、そう出るなら、俺だって、黙っちゃいられない。俺は、弟のドミニクとギャング仲間を呼び寄せ、カジノ経営者やノミ屋の家を、片っ端から襲った。仲間は、その道のプロだ。サルは、忍び込みの名人。ジャックは、元々は、金庫会社に勤めていた。警報装置を黙らせるのは、バーニー。皆、顔馴染みだ。俺は、自分の宝石店も開いた。押し入るのは、スリルがある。睨まれるのは、御免だから、写真は伏せた。"
"まだか?"
"やけに頑丈だ。あと一息。"
"もう少し、腕を磨け。よく調べておけ。"
"鑑定屋に言っとけ。石をすり替えたら、タダじゃおかんとな。"
電話が鳴る。
" Yeah. "
"ペントハウスよ。"
"2人か?"
"ええ。"
"今は?"
"外へ。Don't worry. "
"よし。"
"街中に、情報屋がいた。"
ホテルのボーイ。
"いいぞ。急げ。"
"駐車場係。"
"到着した。"
"ピット主任。"
"1230号室だ。"
" Secretary. "
"新品のコインよ。" 
"皆、分け前を。"
"来たぞ。"
"仕事は、慎重かつ大胆だった。警報を切り、あるいは、裏から壁をぶち抜いた。こんな犯行は、ベガスで、初めてだった。まるで、西部の無法地帯だ。"
"入荷したてのダイヤを。"
"食うためなら、何でもやるさ。"
"このダイヤには傷が。"
"嘘をつけ。"
"私は、25年のベテランだ。"
"ルーペが曇っているんじゃないか?"
"宝石派、パームスプリングスやアリゾナ、LAで、アラブ人に売り捌いた。"
"買う気があるのか?"
"今、話をしている。"
"全部で、4万ドルだ。"
"2万しか出せん。"
"英語が話せるじゃないか。2万5,000だ。"
"寝室を改造して、倉庫代わりにした。店は、危険だ。サツの目もあるし、仲間も信用できん。鍵は、俺しか持っていない。女房は、ソファで寝た。稼ぎは、ボスたちには、内緒だ。知られたらまずい。カジノが儲かるから、ボスは、騒ぎを起こすのを嫌う。"
金を、家の床下に隠す。
"皆に、分け前を?"
"配った。"
"だから、ベガスは、無風地帯だったのだ。だが、金庫も、限度がある。"
"この手の投資には、多少のリスクが伴う。"
"そこで、銀行屋を通じて、一部を投資に回した。"
"そこを上手くやってくれ。まず、5万預ける。"
"また、新たにレストランも開いた。"
"奴らのか?"
" Yeah. "
"管理は、弟に任せた。"
サンドイッチの間に、唾を吐いて、包む。
" Fuck. "
"お待たせ。よく味わえ。"
"ニッキーは、次々とレストランを開き、いずれも繁盛させた。特に、リーディング・タワーは、評判で、政治家やショーガール、映画スターで賑わった。"
ニッキーが、客に声を掛ける。
"あのショーは、最高だ。"
"サムが、電話をくれと言っていた。"
"伝言係を?"
"まあね。"
"奴らしい。ごゆっくり。"
"彼は、ショーガールに、目がなかったし、実際、よくもてた。"
"やあ。"
"シェリーに、ステイシー。"
"ニッキーだ。一緒にどうだ?"
"その前に、キッチンを案内しよう。新鮮なものを、毎日、空輸して、運んでいる。他の店と違い、うちで使う仔牛は、ミルクで育てたやつだ。"
シェリーを車の運転席に座らせる。
"だから、白くて、柔らかい。ピンクの肉は、いくら叩いても、硬いんだ。Do you know me? "

"あの金は、取られちまった。仕方がない。奴らに借りがあったんだ。"
"嘘をつくな。どうせまた、博打で、すっちまったんだろ?ガキが2人もいるのに。あの金は、生活費に渡したんだぞ。カミさんが、泣きついて来た。博打ですったんだろ?違うか。"
" No. "
"俺に、嘘をつく気か。アル。それで、通ると思うな。正直に言えば、もう一度、金をやる。どうだ?答えろ。"
アルは、小さくうなずく。
"阿保め。それでも親か?ほら、持って行け。"
金を渡す。
"今度だけだぞ。よく覚えとけ。"

ニッキーの家。 
"何枚食う?"
" Two. "
" Tow? "
"どこで何していようと、彼は、朝6時半に帰宅し、息子のために、朝食を作った。"
"シロップをたっぷり。バターは、少しだ。なぜか分かるか?"
"心臓に悪い。"
"お前は、本当に賢い。さあ、食べな。"

"俺は、2週間ごとに、ボスに金を届けた。ほんの挨拶程度だ。"
故郷の町。
"いくら稼いでいるか、分かる筈がない。金を受け渡す場所は、ガレージの奥だ。"
"リモ。" 
"フランク。"
"サツは、見て見ぬ振りをしていた。"
"ニッキーが、よろしくと。"
"ボスの機嫌を取る事は、忘れなかった。命じられた仕事は、完璧にやり遂げた。ある時、新興ギャングのドックスが、リモの店を襲った。リモの手下2人と夜勤のウエイトレスが、殺された。身の程知らずの大馬鹿野郎だ。"
"糸を引いている奴がいる筈だ。どんな手を使っても、名前を吐かせろ。"
"任せてくれ。リモ。"
"よし。" 
"正直言って、この男の根性には、感心した。タフな野郎だ。"
顔を腫らし、血を流した男が、連れて行かれる。
"2日間、殴り続け、アイスピックで、玉を刺した。"
"やり方が、手ぬるいんだ。フランク。"
"だが、吐かない。いい根性だ。そこで、万力にかけた。"
"ドックス、聞こえるか?お前の頭を、万力にかけた。吐かないと、頭を潰すぞ。俺も、やりたくない。大人しく吐け。" 
" Fuck you. "
"聞いたか。このクソったれ。Fuck me? ふざけやがって。くたばれと言ったのか?"
ニッキーは、万力を締める。
"このクソったれが。名前を言え。"
"チャーリー・M. "
"あんなくずを庇って、目ん玉を飛び出させたのか?チャーリー・M. だと?馬鹿め。Kill you. Mother fucker. フランク、楽にしてやれ。"
"噂は、ベガスに伝わり、誰もが、ニッキーを恐れた。街の新しい Boss の誕生だ。"
"チャーリー・M. だと?"

▶︎暗転
"『オール7』が、3回だぞ。どれだけの確率だと思う?"
"100万分の1くらい。"
"20分で、3回連続だ。なぜ、連絡しなかった?"
"あっと言う間だったんで。"
"細工をされたんだぞ。"
"何の証拠も。"
"あるさ。金を奪われた。"
"たまたまかも知れません。"
"そんな事ある訳ないだろ。少しは、頭を使え。リールを取り替えたに決まっている。1回の確率は
150万分の1、3回連続は10億分の1だ。あり得ると思うか?少なくとも2度目には、おかしいと気付く筈だ。"
"そう言われても。"
"もう、これ以上は我慢できん。さっさと出て行け。" 
" Fire me? "
"そうだ?もう用はない。"
"後悔しますよ。"
"せいせいするさ。"
"横暴だ。"
"見抜けなかったなら馬鹿だし、知っていたならグルだ。Get out. Com'on. Let's go. "
"あの男は、クビにした。"
"コミッショナーの義弟だぞ。"
"義弟だろうと何だろうと関係ない。もう、うんざりだ。"
"叔父は首席判事だし、親戚には、有力者が大勢いる。"
"あんたは社長室にいるから、現場の事は、何も知らない。大勢の客やディーラーが、金を奪おうと、狙っているんだ。だから、どんな些細な事も見逃さず、絶えず目を配る必要がある。"
2つのカップケーキ。
" Look this. こっちは、何もない。ブルーベリーの量が、まったく違うだろ?"
" What are you talking about? " 
"目を離すと、すぐにこうなる。" 
エースは、席を立つ。 
"どこへ?"
厨房に入る。
"ブルーベリーの量を、揃えろ。全部、同じにするんだ。"
"凄い手間が。"
"構わん。すべて同じにしろ。"

エースは、娘の食事の世話をする。
"もう少しだ。よし、いいぞ。ママか?"
"聞いて。お金が要るの。"
"金が?"
"少しまとまったお金よ。"
"口座から出せばいい。"
"ええ。でも足りないの。2万5,000ドル欲しいの。"
"2万5,000ドル?君がか?なぜ?"
"必要なの。"
"何に使うか、聞きたいね。2万5,000は、大金だ。"
"ムキにならないでよ。喧嘩は御免だわ。必要だったけど、もういい。忘れて。"
"喧嘩?訳を聞いただけだ。なぜ言えない?是非、聞きたいね。2万5,000も、何に使う?コートか?"
" No. "
"買えばいいさ。金額の問題じゃない。訳が知りたいだけだ。"
"私は、今まで、誰にも頭を下げた事はないわ。そんな私に、膝まずいで、頼めと言うの?"
"俺は、使い道を知りたいだけだ。これは、信頼の問題なんだ。俺は、君を信じたい。Do you understand? Can I trust you?  Can I trust you? Can I trust you? Answer me. Can I trust you? "
"いいわ。" 
" Good. じゃあ話してくれ。"

ジンジャーは、箱から、札束を取り出し、封筒に入れる。
ニッキーが、見張る。
"銀行を出た。尾行する。"
"どうだ?上手く行ったのか?"
"ええ。"
レストランで、レスターと落ち合い、金を渡す。
エースが、レストランに来る。ジンジャーの隣りに、腰を下ろす。
"やあ、レスターだな。サムだ。"
握手を求める。
"確か、君はイカサマ師で、ゴルフのハスラーだったな。最近は、タカりもするのか?もし、そうなら、これもやる。"
札束を放り出す。
"遠慮するな。妻からも取ったんだろ?"
レスターは、店内を見渡す。見張りが、数名。
" Look at me. 俺の妻の知らなかったのか?"
"知っていた。"
"いいか。今後、妻から、金を取りたければ、拳銃を持って来い。堂々と奪ってみろ。悪いが、出て行ってくれ。妻に話があるんだ。消えろ。"
"出てきゃいいんだろ。クソったれ。" 
レスターは、出て行く。
"別れの電話をした時、奴は、『結婚するな』と言ったか?"
" No. "
"何と言った?『結婚して、金を奪え』と?一緒に来い。"
駐車場で、レスターが暴行を受けている。
" No. やめて。悪いのは、私よ。やめて。"
ニッキーが、車から見ている。エースは、泣き叫ぶジンジャーを、車に押し込み、発進する。
"自分で殴れ。卑怯者。"

"酷い男だわ。部下に殴らせたの。自分の手を汚すのが、嫌だったのよ。なぜ、殴らなきゃいけないの?"
"分かってやれよ。"
ニッキーが言う。
"君が、奴に恐喝されていると、思ったんだ。"
" No. No. 結婚前に、彼の事は、ちゃんと話してあるわ。"
"本当か?"
"友達を助けちゃいけないの?"
"初めて、君らを見た時、サムは、本当に幸せそうだった。イカれたユダヤ人だが、普段は、あんな真似はしない男だ。それだけ、君を愛しているんだよ。"
" Com'on. そんなんじゃないわ。打算で結婚したの。私が、後々の事を考えずに、結婚するような女だと思う?"
"まあ、そうだな。"
"別れてもいいように、宝石を。"
"宝石?全部でいくらだ?"
"盗む気?"
"まさか。奴が、君にいくら出したか、興味があるだけだ。"
"100万ドルか、それ以上よ。"
"ほら、見ろ。君に惚れていなければ、そんな大金は出さん。"
"結婚すべきじゃなかった。あの人は、双子座で、二重人格。まるで、蛇よ。信用できないわ。本当よ。"
"かもな。でも、聞けよ。人に意見できる柄じゃないし、君も、今は、素直に聞けないかも知れないが、結論を出すのは、急がん方がいい。暫く様子を。"
"あんな酷い事をしたのよ。なぜ、殴るの。ネタわけじゃないわ。会うのもいけないの?どうしてよ?" 
"愛しているから、嫉妬するんだ。"
"あんまりだわ。"
"今度会ったら、俺からも話してみる。"
" OK. "
" Right? "
"ありがとう。話を聞いてくれて。"
"飲み過ぎだ。少し控えろ。酒で駄目になった女を、俺は、何人も見て来た。"
" So nice. "
"きっと上手く行くさ。"
" Thanks. 本当に。"
"いいんだ。"

エースの執務室。電話が鳴る。
"コミッショナーのウェッブさんが。"
"待て。"
" OK. "
"お待ちを。" 
エースは、ズボンを穿く。
" Mr ウェッブ。何かお飲み物を?"
"結構だ。ありがとう。"
エースが、指示する。
"通せ。4分後に電話を。"
" Mr ロススティーン。ウェッブです。"
" How do you do? "
"よろしく。"
"お噂は。"
"儲かっているようですな。結構な事だ。お忙しいのに、申し訳ない。"
"掛けてください。"
"どうも。今日は、ある事を円満に、解決したいと思いましてね。ご存じないだろうが、ダンは、皆に好かれていて、友達も多い。彼の家は、街では、かなり古い家柄だ。彼らの意向は、無視できん。私も、あんたもな。そういう観点から、言わせていただくと、彼をクビにするのは、少々、問題がある。"
"だが、彼は、3回連続の大当たりを見過ごした。よほどの大馬鹿か、グルか、どちらかだ。雇っては、おけない。"
"彼がグルだという事を、証明できるのかね?"
"証明すれば、刑務所行きだ。"
"君は、監視委員会に、君の前歴やギャングとの交友を、探られてもいいのかね。"
"そんな中傷を受けるいわれはない。これは、社内の問題だ。彼には、随分、目をつぶって来た。だが、無能だし、何の役にも立たない。邪魔なだけです。"
"そうだろうね。確かに、あいつは役立たずだ。だが、brother in law. そこら辺を考慮して、考え直してくれんかね?"
" I can't do that. あなたの立場は分かるし、何とかしたいが、こればかりは無理だ。"
"主任にしろとは言わん。使い走りでいいんだ。"
"残念だが、駄目です。彼は、信用できない。"
電話が鳴る。簡単に応答し、切る。
"申し訳ないが。"
"君らは、この土地の事が、何も分かっていない。我が物顔で、いい気になっているが、ただのよそ者に過ぎん。追い出すのは、訳もないんだ。邪魔したな。"
" No ploblem. 残念です。"
"まったくだ。"

"俺の薬は?"
ベッドのジンジャーをなじる。
"酒じゃ足りずに、薬も?"
"知らないわ。"
"胃潰瘍の薬だぞ。痛むときに、半錠だけ飲む。3か月分あったんだ。"
"なぜ、殴ったの。助けたかっただけ。寝た訳じゃないわ。"
"どうかな。What? What? "
"私が、人に優しくして、何がいけないのよ?"
" Listen. ジンジャー。僕は、君と上手くやっていきたいだけだ。君だって、今の暮らしに。"
"やめて。もう沢山。出て行くわ。本当よ。"
"落ち着け。娘のためだ。"
" OK. OK. "
"兎に角、酒がよくない。禁酒療法を受けろ。"
"必要ないわ。" 
"秘密は守ってくれる。だから、新聞には。"
"それが心配なのね。私の事じゃなく。"
"馬鹿な。君みたいな美人が、なぜ、自分を粗末にする?兎に角、酒をやめろ。君は、強い女をだ。俺なんかより、ずっとな。その気になれば、何でもできる。そうだろ?酒をやめるんだ。"
"ええ。分かったわ。I try. I try. だから、怒らないで。お願い。"

"そんな騒ぎをよそに、カジノは順調だった。金が流れ込み、カバンが出て行く。何と言っても、ここでは、金が一番だ。だが、問題は、カバンが少女、軽くなった事だった。"
集金係の食事。
"俺たちの金を、誰かがくすねていると言うのか?手間暇かけて、稼いだ金だぞ。"
"途中で、多少、こぼれるのは仕方ない。"
"とんでもない話だ。"
"運搬役のナンスに、そんな事を言っても、仕方ない。収益の横流しを手伝わせている連中に、『盗むな』と言うのが、無理なんだ。そうだろ?ボスたちは、何も分かっちゃ、いない。"
"くすねた金をくすねられたら、意味ないだろ。"
"彼らがいるから、仕事ができる。多少は、大目に。"
"だが、ボスたちに、そんな話は通じない。そこで、幹部のアーティ・ピスカーノを、お目付役に送り込んだ。"
"それで?"
"何も。"
"どういう意味だ?"
"何もない。"
"問題は、ピスカーノが、とんだ間抜けだった事だ。"
"調べたのか?"
"勿論だ。"
"この間抜けのせいで、とんでもない結末を招こうとは。"
"もう一度、行け。"
"経費はどうなるんだ?"
" What? "
"前回の交通費も、まだ払って貰っていない。"
"何を馬鹿な。"
"帳簿につけておくぞ。"
"そんなもの、どうする?税金を払うのか?"
"いつも自腹じゃ、やってられん。俺の身になれ。"
"ベガスで、いい思いをしたろ?"
"あの金は、誰のだ?"
"その頃、思いもかけない事件が起きた。"
社長。
"冗談だろ。"
"約束した筈よ。"
"突然、グリーンの共同経営者なる女が現れ、金を払うよう、要求したのだ。"
"どういう事?"
"君に払う金などない。"
"何ですって?" 
"グリーンは拒絶。"
"このままじゃ、済まさないわ。"
"彼女は、告訴した。"
"では、グリーン氏に対するスコット氏の告訴を整理します。"
"被告の弁護人です。"
"原告弁護人です。"
"では、始めて。"

"この決定には、満足しています。"
敗れた会社側。担当者が電話する。
"ボスを。"
"まずい。タンジールの帳簿を出せと言われた。ボロが出る。"
"裁判は、彼女の思いどおりに進んでいた。そこで、ボスは俺に、法廷外での決着を命じた。"
ニッキーは、自宅の女の頭に銃弾を撃ち込む。
社長が、取材される。
"事件の感想は?"
"事件?"
"彼女が殺された。共同経営者でしょ?"
"違いますか?"
"以前、不動産取引があったが、それだけだ。"
"犯人に心当たりは?"
"こうして、ニッキーだけでなく、グリーンまでが、警察に目をつけられた。俺は、疑惑を晴らすため、インタビューに応じた。"
"よく社長の代行を?"
"社長は、不動産業が忙しく、たまにしか顔を出さない。"
"普段は、あなたがボス?"
"私の社長の意向に従い、日々の運営に目を配っているだけです。"
"詰まり、ボスね。"
"社長が留守の時は、私がボスだと言えなくもない。確かに。"

コミッショナー。
"これを読んだか?ロススティーンの記事だ。『組織とつながりのあるノミ屋が、自らをタンジール帝国の実質的ボスだと語った。』"
"まさか。"
"ここに出ている。ライセンスを申請しているのか?"
"さあな。分からん。"
"念入りに調べてくれ。問題があるようなら、街から追い出してやる。頼むぞ。"
TVニュース。
"ロススティーン氏の免許に関して、監視委員会が、調査を開始。氏は、タンジールの代表ですが、ギャングのN.サントロの友人でもあり、場合によっては。"
エースは、電話を取る。
" Hello. "
ニッキー。
"例の店で、C(銀行屋)に会いたい。"
"駄目だ。予約が取れない。あの店(俺の家)は無理だ。入れない。"
"ゴルフコース側から入る。9時だ。"
"分かった。"
"ロススティーン氏の免許問題は、論議を呼びそうです。氏は、犯罪組織との関係を噂される中、カジノの免許を取得しようとしています。氏が、ニッキー・サントロと親しいという事実は、どう影響するのでしょう。監視委員会の判断が、注目されます。" 
ジンジャーは、カウンターに寄りかかり、酒を飲む。
"飲み過ぎだぞ。下に行っていろ。俺は、客と話がある。"
"ロススティーン氏の今後は、どうなるか、特集番組でお伝えします。"
"さあ、下に行け。"
"心配要らんよ。政治家の点数稼ぎに過ぎん。"
ニッキーが来る。
"何か飲むか。チャーリーは?"
"頼む。"
"結構だ。"
"やあ、クラーク。何度も連絡したぞ。"
"忙しかった。"
"電話くらいできるだろ。"
"ニッキー。説明した筈だ。最初から、あの投資には、リスクが伴うと。"
" Yeah. 金を返せ。"
"脅迫する気か?"
"あんたは、俺を誤解しているらしい。俺がどうする積もりか、ちゃんと説明しよう。明日の朝、銀行にあんたを訪ねる。その時、金を用意してなかったら、あんたの頭を叩き割ってやる。ムショを出る頃、運がよきゃ、意識が戻っている。そしたら、もう一度、頭を叩き割る。ムショなど、俺は、屁とも思っていない。That's my business. That's I do. 銀行屋に金を騙し取られて、たまるか。"
クラークは、去ろうとする。
"いいか。カネを返さないと、ほんとうにあたまをぶち割るぞ。"
"サム。"
"奴は、関係ない。"
クラークは、立ち去る。
"明日の朝だぞ。忘れるな。いいな。"
"どうだ?"
"気は確かか?FBIに通報されたら、どうする気だ?"
"3週間も逃げ回っていたんだぞ。俺に指図する気か?"
"そんな積もりはないが、どうかしているぞ。"
"それは、お前の方だ。これからデカい事をやろうと思っているのに。それじゃ、頼りにならん。俺と組む積もりなら、少しは、根性を見せろ。"
"あんたは、俺の立場が分かっていない。俺は、あのカジノの責任者なんだぞ。ライセンスが取れなければ、俺だけでなく、大勢が困るんだ。"
"俺がベガスを仕切れば、そんなもの、どうでもなる。俺と組みたくないのか?どうなんだ。はっきり言え。"
"ああ、組みたくないね。巻き込まれるのは、御免だ。俺は、合法的にカジノをやりたい。騒ぎは沢山だ。"
"この記事はなんだ?"
"記者が勝手に書いたんだ。ビリーに聞いてみろ。"
"ボスは、よく思わん。"
"お前との関係を、テレビで騒がれる方がまずい。"
"何が言いたい?"
"少しは、行動を慎め。"
"お前はどうなんだ?気取りやがって。ピンクのローブに、気障なシガレット・ホルダー。女房の気持ちも分かっていない癖しやがって。"
" My wife. 何の話だ。"
"例のレスターの件で、散々泣きつかれたぜ。"
"自分が尾行した事は、話したのか?"
"それは、関係ない。兎に角、彼女は怒っていた。"
"夫婦の事に、口を挟むな。逆の立場なら。"
"彼女の方から来たんだ。放り出せるか?"
"余計なお節介を焼くな。"
"あの時、俺に電話したのは、誰だ?必要な時だけ頼むのか?"
"ああ、それはお互い様だろ?さっきの事だって、後始末をするのは、俺だ。"
"偉そうに。勝手にしろ。"
"ニッキーの考えている事は、分かっていた。リモに代わって、ベガスを支配したかったのだ。彼は、ボスを無視して、事を進め始めた。カジノ経営者が殺され、ニッキーが疑われた。ディーラーが殺され、ニッキーが。垂れ込み屋の殺害も、ニッキーが疑われた。Lawyer. ニッキーが。返済が滞った者が、次々に消え、ニッキーが疑われた。20件以上の殺人が疑われたが、証拠がなく、釈放された。"
"警察は、何かあると、すべて俺のせいにした。"
"気を付けろ。転ぶぞ。"
"誰かが、バナナの皮で滑っても、俺のせいだ。ボスたちも、俺のやり方が、気に食わない。荒っぽ過ぎる?悪かったな。下劣に奴が、相手なんだ。ボスに、何が分かる。俺が、前線で戦っている間、奴らは、酒を食らい、のうのうとしているだけだ。"
"フランク。砂漠で、首が見つかった。知っているか?"
"聞いた。"
"また、新聞が大騒ぎして、書き立てる。"
"それで?"
"兎に角、まずい。もっと慎重にやれと、あいつに伝えろ。"
"分かった。"
"知った事か。奴らは、葉巻をくゆらせ、ご馳走を食っている。こっちは、話をするのも、バス停だ。"
"金は、ちゃんと送っているぜ。"
"怒っている。"
"汗を流しているのは、俺だ。放っておけ。Fuck. "
"分かった。"
"文句あるなら、相手になってやる。ボスを殺せば、後は、簡単だ。"
"また、来てやがる。"
ニッキーは、双眼鏡で、停車している車を観察する。
" Mother fucker. "
"お陰で、こっちにも、とばっちりが来た。だが、FBIに監視されても、彼は平気だった。"
"監視するなら、やり返す。俺は、高価な機材を揃えた。CIAと同じメーカーの盗聴防止装置。警察の無線機に、FBIの暗号解読機。赤外線カメラ。俺は、奴らに何の尻尾もつかませなかった。"
"警察やFBIが監視する中、彼は、ゴルフを楽しんでいた。こっちは、大変だ。ライセンスの審問会が、迫っていた。俺には、死活問題だ。"
"これだけ調査に協力して貰えば、心証もよくなる。"
"公正な審理を?"
"それは、心配要らない。"
"さて、それでは次に。"
飛行機が飛ぶ音がする。セスナ機が、エースやニッキーの上空を飛ぶ。
" What is this? 着陸する気か?"
セスナ機は、ゴルフコースに降り立つ。
"見ろ。FBIだ。"
"ニッキーを空から監視中、ガス欠に。委員たちの目の前でだ。"
セスナ機を降りた男たちが走る。
"ぶつけてやれ。"
ゴルフのパーティーは、一斉に球を打つ。
"悪い事は、重なるものだ。幹部のピスカーノは、カンザスで、食料品店をやっていた。"
"またカバンの中身で、騒いでいる。その度に、俺は、ベガス行きだ。"
"彼は、いつも義兄や母親に、不平をぶちまけていた。"
"経費は、ちゃんと請求しろ。"
"帳簿につけているさ。あのクソ爺いどもめ。"
"何て言葉を使うんだい。気をつけな。"
"済まん。ナンスの野郎が、しっかりしないからだ。"
"まただ。"
"『野郎』くらい。"
"沢山だ。"
"間の悪い事に、FBIが、カビの生えた殺人事件の捜査のために、たまたまこの店に、盗聴器を仕掛けていた。"
"ナンスだって怪しい。途中で、金を抜く機会は、いくらでもある。それにあの集計室には、誰も入れない事になっている。皆がグルになれば、好き勝手にちょろまかせる。グリーンだって、グルかも知れないぞ。"
ナンス、グリーンが、メモに取られる。
"大体、俺は、奴を信用していないんだ。クソ野郎どもめ。ぶっ殺してやる。済まん。気をつける。でも、頭に来ているんだ。奴らのせいで、行ったり来たり。"
"興奮すると、発作を起こすよ。"
"すべて、FBIに筒抜けになった。カバンの事も、何もかも。"

首都ワシントン。
"信じられるか?今や、FBI中が、聞き耳を立てていた。そう、ピスカーノが、すべてを台無しに。"
1980年。審問会。
"議長、委員の皆さん。ロススティーン氏です。"
"審問会の日が来た。俺は、ライセンス取得に、自信満々だった。"
"元FBI捜査官の報告書を提出します。ロススティーン氏の前歴には、何の疑惑も。"
"弁護人。その前に、ライセンス申請を却下する動議を出したい。動議を支持する者は?"
"支持します。"
"では、採決を。"
"賛成。""賛成。""賛成。"  
"以上、閉会する。"
"どういう事だ。こんな審理があるか?FBIの報告書も見ていない。タンジールに招待した時、あなたは、公正な審理を。"
"招待など。"
"受けなかったと?月に3回は、招待した筈だ。"
"お答えしよう。ロススティーン氏は、嘘を言っている。私は、グリンスタイン氏と、会食しただけだ。"
"私も、一緒だったろ?答えろ。私も、一緒だったろ?"
"建物の中にはいた。"
"建物に?一緒に食事して、公正な審理を約束した筈だ。違うか?せめて、一緒だった事は、認めろ。どうなんだ?"
"認める。"
"どっちが、嘘つきだ。Bitch. "

"ニュースです。昨日の免許審問会は、大混乱に。カジノの役員ロススティーン氏が、監視委員の腐敗を非難したのです。『只で遊び、領収書まで要求しただろ?』。申請を却下されたロススティーン氏は、廊下まで委員たちを追いかけ、弁護人が止めるまで、怒鳴り続けました。『俺の過去の方が、君らよりずっとましだ。審査する資格はない。』。昨日の審問会の目的は、疑わしい経歴の持ち主が、免許を持つ事の是非を問うものでした。"
"偽善者め。どうなる?"
リモは、審問会の記事が載った新聞を、部下に渡し、尋ねる。
" I don't know. "
"奴が怒鳴った相手は、我々の『友人』だぞ。どう収める気だ?"
"奴に、別の肩書きを与えて、様子を見よう。"
"分かった。そうしろ。"
"肩書きは、『管理人』でも、何でもいい。兎に角、暫くは、目立たぬようにしろと言え。"

" Ladies&gentlemen タンジール・ホテルがお届けする新企画サム・ロススティーン・ショーです。Ace Hi. 今夜のプレミア・ショーをライブでお送りします。演奏は、スマノフ楽団。ロススティーン・ダンサーズ。プロのギャンブラーでもあるロススティーン氏が、皆さんをベガスの裏側へと案内します。ご紹介します。タンジールの新しい娯楽部長サム・ロススティーン。"
"皆さん、今夜は、私のショーへようこそ。隣の女性は、トルーディ。パリから招いたダンサーです。
最初のゲストは、F.アバロン。"
ウェッブが、指示を出す。
"目を離すな。"
アバロン。
"大家族でね。"
"子供は?"
"これは、自慢なんだが、8人だ。子作りは楽しいよ。"
エースが、ジャグリングを披露する。
"よせ。"
フィリップ社長が、TVに向かってつぶやく。
" Oh Jesus. "
"見ろよ。"
エースが訴える。
"コミッショナーには、失望しました。TV討論会を打診したが、逃げた。何を恐れている?私は、隠す事は、何もない。何でも答えるよ。"
"どういう積もりだ。『最高裁で争う』と、一晩中、TVで喚いていた。ワシントンに持ち込むだと?正気とは、思えん。"
エース。
"偽善がまかり通り、正直者が馬鹿を見る。酷い世の中だ。"
リモ。
"アンディ。奴に伝えろ。『悪あがきはよせ』と。"
"あれは、明らかな憲法違反だ。最高裁も、告訴を受け付けた。"
"何を、馬鹿な事を言っている。さっさと手を引け。"
" Walk away? 冗談だろ。そんな事できるか。"
"ボスが、言っているんだ。ボスの言葉は、絶対だぞ。逆らえば、命はない。"
"それより、ニッキーを何とかしろ。こっちまで、とばっちりを食う。まったく最悪だ。警察は協力的だったのに、奴のせいで、今じゃ、そっぽを向いている。"
"どうしろと?"
" I don't know. 暫くよその土地にやってくれ。"
"無理だな。"
"奴がいなければ、まだ巻き返せる。"
"そんな事より、大人しくget out. "
"できない。"
"アンディとの会話は、すぐニッキーに伝わった。翌朝、早速、電話が。"
ジンジャー。
"一緒に買い物に行く?"
"今や、暗号も使えない。そこで、別の手を考えた。盗聴が許されるのは、犯罪に関する話だけだ。日常的な会話だと、一旦、切る。"
"肘が痛いの。"
スイッチが切られる。ニッキーとエースが、それぞれ電話を取る。
"3時だ。"
"場所は?"
"砂漠の奥。"
"なぜ?"
"いいから、来い。"
電話を代わる。
"スージーが、そっくりな服を。だから、別の服を探したわ。"
"家を出る。茶色の車だ。連れがフランクらしい。"
"ニッキーは、早目に出た。尾行を巻くためだ。最低6回乗り換え、空からの目を避けるため、地下のガレージも利用した。"
地下の駐車場を走り回るニッキー。
砂漠。
エースは、先に着き、タバコを吸う。
"砂漠で、人に会うのは気持ちがいいものではない。どこを見ても、『穴』があるように思える。普段、ニッキーに会って、生還できる確率は99%。でも、今回、『砂漠の奥』と聞いて、50%だと思った。砂漠を疾走するニッキーの車。
"よくも告げ口をしてくれたな。"
"告げ口?"
"惚けるな。"
"何の話だ?"
"俺が、いつ迷惑を掛けた?よその土地に行けだと?追い出したきゃ、軍隊集めろ。俺は、サツを刺激するのは困ると言っただけだ。"
"俺に、街を出ろと?"
"ああ、ほとぼりが冷めるまでだ。俺には、カジノを守る責任がある。"
"お前が、カジノを仕切れるのは、俺がいるからだ。俺のお陰さ。カントリークラブやTVのお陰じゃない。あのTVは、何なんだ?ボスから、毎日、『やめさせろ』と電話が。"
"あれは、カジノの出入りする口実だ。"
"だったら、飲食部長にでも変えればいい。出たいんだろ?"
"ああ、番組で、奴らに反撃できる。奴らだって、無視できなくなる。"
"いい恥さらしだ。"
"俺が?こうなったのも、元は、お前のせいだ。いつも、お前との関係が問題に。"
"すべて、俺のせいだと?"
"ニッキー。ベガスに来てもいいかとお前が、言った時、俺は、何と言ったか?忘れたか。"
"ちょっと待て。俺が、いつ、お前に許可を求めた?よく聞くんだ。クソったれのユダヤ野郎。お前が生きていられるのは、俺のお陰だ。もし、俺がいなければ、お前は、とっくにギャングの食い物にされている。いいか、2度と、俺をコケにするんじゃないぞ。クソったれ。"
ニッキーは、言い置いて、去る。

ショーパブに、エースが現れる。
"奴だ。"
"見たか?赤の他人みたいに、無視しやがった。"
ニッキーが、吐き捨てる。
"挨拶くらい、してもいい筈だ。"
" Fuck. "
エースは、男女の集団で、乾杯する。
"気にするな。"
"俺が、気にしていると思うか?"
"あの弁護士野郎も、ずっとソッポを向いている。ユダヤ人どもめ。"
"楽しんでいる。"
"こっちもだ。"

エースは、ベッドで電話を取る。支配人から。
"サム。You have a problem. "
" What? "
"ニッキーが来ている。止めようがなかったので。見て見ぬ振りをしている。今、21番テーブルで遊んでいるが、だいぶ凹んでいる。1万ほどだ。熱くなっている。5万貸せと。"
"1万にしておけ。すぐ行く。"
"1万なら、貸します。"
"5万だ。"
支配人に胸ぐらをつかみ、すごむ。
"どうせ、人から分取った金だろ。ふざけやがって。"
ディーラーの女が、愛想笑いをする。
"なぜ笑う?俺が負けて、そんなに面白いのか?"
ディーラーが、交代する。
"その面を覚えてとこう。"
"今度は貴様か。この泥棒め。一晩中、客の金を巻き上げてたんだろ。さっさと配れ。"
"こんな札は、ケツに突っ込め。"
カードを、投げて返す。
"もう一度。"
"妹のケツに突っ込め。"
また投げて返す。ディーラーは、責任者の方を見る。
"次だ。いちいち横を見るな。腰抜けの泥棒め。"
"次だ。何をびくついてやがる。"
"また絵札だ。次。"
エースと支配人がやって来る。
"もたもたするな。"
手下が、エースが来たのを示す。
"ここで、何をしている。"
"奴に金を貸すよう言え。"
"出入り禁止なのを忘れたのか?''
"いいから、金を出せ。"
"1万だけだ。サツが来る前に帰れ。1万だ。"
支配人が睨む。
"何を見ているんだ。"
ニッキーは、支配人を突き倒し、暴行する。
"もうやめとけ。行こう。"
"まだ、これからだ。配れ。"

エースとジンジャー。弁護士に相談する。
"詰まり、慰謝料のほかに、養育費と親権まで望むんですね?"
"当然の権利だわ。"
"彼女が素面なのは、昼間の2時間だけだ。金や宝石を渡しても、1年で使い果たす。その後はどうなる?また口実を設けて、戻って来るだけだ。"
"約束したわ。忘れたの?結婚が駄目になっても、生活は保証すると。" 
" Look my eyes. Look my eyes. 俺は、アル中のお前に、子供を渡すような男だと思うか?どうだ?あり得んね。"
"結婚後、俺は、精一杯努力したが、結局、彼女の愛は、得られなかった。十分な金と贅沢な暮らし、子供に家庭、それで満足すると思った。だが、そうは行かなかった。仕方ない。とりあえず、別居する事になった。"
エースは、ダンサーたちの楽屋を見て回る。 
"そんな頃、彼女は、エイミーを連れ、ビバリーヒルズへ。"
"交換です。"
"ビバリー・ホテルを頼む。ロススティーンを。ご夫妻は、発たれました。"
レスターと落ち合うジンジャー。
"ご夫妻?"
"よく似合うよ。"
"はい。そうです。"
" Thank you. "

駐車場で、エースは、電話を取る。
"妻が、LAにいる。レスターという男と一緒だ。娘を連れている。かどわかす積もりだ。"
"任せろ。"
エースの家。
"居所が分かった。"
エースは、電話をかける。
" Hello. "
" Hello. "
"レスター?"
" Who's calling? "
"サムだ。ジンジャーと話したい。"
" She is absent. "
"聞け。いるのは、分かっている。娘を戻せ。すぐ飛行機に乗せろ。"
"俺を怒らすな。そんな積もりは。"
娘のそばで、ヤクを決めるジンジャー。 
"早く彼女を出せ。"
"本当にいないんだ。こっちから、掛け直すよ。"
"702-472-1862。"
"分かった。"
" Right back. "
"了解。"
"クソ。忙しくなって来た。どうする?200万だな?金庫に200万あるんだな?宝石は忘れろ。現金とこの娘だけで、十分だ。ヨーロッパに行って。" 
娘が言う。
"行きたくない。映画を観るの。"
"黙っていろ。大人の話だ。髪を染めて、整形するんだ。奴は、この娘にいくら払うと。"
"うるさい。嫌なガキだ。"
"そっちこそ。"
"引っ叩くぞ。クソガキ。"
"いよいよ夢が、実現する。" 
"電話してきたのね。ここに。"
"そうさ。"
"住所もばれているわ。すぐに誰かが。"
"心配ない。奴は、俺の電話を。"
"大人しく待っていると思う?きっとこの家は、取り囲まれているわ。"
ジンジャーは取り乱す。
"馬鹿言え。"
"バッグを持って、早く。何しているの。あんたもよ。" 
"はい、はい。"
"車に乗って。"
ニッキーが、電話を受ける。
"落ち着け。心配ない。"  
"殺されるわ。" 
"1時間後に、掛け直せ。何とかしよう。"
"1時間後に、この番号でいいのね?"
"そうだ。いいか。馬鹿な真似はするな。分かったな。"
いさかうレスターと娘。
"2人とも、やめて。" 
"そいつのせいだ。待て。運転する気か?冗談じゃない。助手席に乗れ。まったくうんざりだ。"

ニッキーは、エースの家を訪ねる。ガレージの車に、2人は乗り込む。
"電話が。"
" Yeah. "
"彼女からだ。"
"それで?"
"怖がっている。"
"あの男と、娘をさらった。" 
"ああ。殺されると恐れている。"
"当然だろ?" 
"なぜ、俺に相談しない?身内の事だろ。ボスに連絡しやがって。どういう積もりだ?かえって、事が面倒になるだけだ。違うか?"
"どうすればいいか。俺には、分からん。"
"お前が、許してやれば、彼女は戻って来る。"
"分からん。"
"彼女は、戻りたがっているんだ。娘を取り返すのが、先だろ。違うか?"

ジンジャーが、電話を取る。
" Hello. "
" Hi it's me. 話をしたかったんでしょ?"
"君らの居所は聞かん。だから、エイミーを、今すぐ飛行機に乗せろ。"
"1人じゃ、危ないわ。"
" What do you mean? "
"詰まり、もし私が、一緒に戻ったら、許してくれる?"
"分からん。"
"でしょうね。馬鹿な事をしたんだもの。"
"金は、どうした?"
"ごめんなさい。少し、使ってしまったの。"
"いくら?"
"かなりよ。"
"額は?"
"2万5,000ドル程。"
"2万5,000?残りは、金庫に?"
" Yeah. "
"いいだろう。その程度なら、我慢できなくはない。"
" OK? "
"今、どこだ?すぐ、迎えの飛行機をやる。"
エースは、2人を空港で、出迎える。
"何に?"
"何の事?"
"金だよ。"
"彼の服を。"
"2万5,000も?"
"時計もよ。"
"服と時計か。"  
"娘は、無事、戻った。彼女を家政婦に預け、俺は、ジンジャーと食事に出掛けた。冷静に振る舞おうと思ったが、服3着に2万5,000?It dosen't make a sence. 奴の服は、いくらする?"
"最高で1,000ドルとして、25着も買えるが。たった3日では、直しが間に合わん。"
"時計も買ったわ。"
"だが、奴が欲しがる時計などたかが知れている。どんなに高くても、1万か、1万2,000だ。服3着が3,000として、いくら残る?1万か?"
"やめて。"
"只の計算だ。"
"沢山よ。私は、戻って来たのよ。"
"それで、解決か?あんな事をしておいて、戻ったから感謝しろとでも?"
"時計と服のほかに滞在費が4,000ドルとしよう。さぞ、楽しかったろうな。特に、奴は、最高にいい思いをした筈だ。俺の金で。奴と寝たんだろ?何だ。その目は?泣いているのか?君は、演技が上手い。女優になれる。人は、それで騙されるかも知れんが、俺は、そうはいかん。あの紐野郎め。本来なら、ぶっ殺しているところだ。もし、逃げていたら、2人とも命はなかった。殺していたよ。"

ベッドで、ジンジャーが、ひそひそ電話で話している。エースは、部屋の入り口で、聞き耳を立てる。
"大丈夫よ。帰って来ないわ。聞いて。もう、我慢できないわ。自分の事は、棚に上げて、いつまでも責めるの。もう、沢山。勿論よ。やり直したくて、戻って来たのに。殺してやりたいわ。ええ、本気よ。手伝ってくれる?"
"そんなに殺したいか?やってみろ。"
エースは、電話を取り上げる。
" Hello. "
"そうよ。あんたなんか、大嫌い。もう我慢できないわ。大嫌い。殺してやりたいわ。"
"そうか。一緒に来い。来い。来るんだ。"
ジンジャーを引きずる。
"出て行け。さっさと出て行け。"
クローゼットに入り、服を放り投げる。
"荷をまとめろ。"
"お金も持って行くわ。"
"心配するな。"
"お仕舞いよ。"
"出て行け。"
"お金は?裸で、街に放り出す気?"
"お前は、俺を一度も愛さなかった。この薄汚い売女め。"
"犬みたいに扱われて、どうして愛せるのよ。"
"犬以下だ。"
札束を取り出す。
"金だ。これで、2日はもつだろ?持ってけ。この強欲女め。"
"銀行のお金と宝石もよ。"
"9時に開店する。"
"誰にも、邪魔させないでよ。"
"ああ。好きにしろ。"
"スーツケース一つだけ?"
"後で、取りに来い。"
"エイミーも連れて行くわ。"
"駄目だ。" 
"連れて行く。"
"駄目だ。出て行け。"
"私の娘よ。"
"弁護士と話すんだな。"
ジンジャーを放り出し、鍵をかける。
"このままじゃ、絶対に済まさないわよ。"

エースは、ベッドに横になり、タバコを吸う。ジンジャーが、戻る。ベッドに寝そべる。
"それでも俺は、別れたくなかった。まだ、愛していたのだ。金も渡したくなかった。もし、渡したら、彼女は、戻らない。"

朝。
"じゃあな。"
エースは、娘を送り出す。
"今後は、居所を知っていたい。ポケベルだ。軽いから、いつも持っていろ。必ずだぞ。OK? "
ジンジャーは、小さく頷く。

荒野のプレハブ小屋。
ニッキーとジンジャー。
"どうしたいんだ?こんな状態を続けたいのか?駄目な時は、すっぱり別れろ。その方がいい。俺は、そう思う。"
"ただ。"
" What? "
"いいの。"
"どうした?"
"言えよ。"
" Yeah? 誰か、銀行の人を知らない?宝石を持ち出したいの。お金も入っているから、お礼は、十分にできるわ。"
"考えとこう。"
" OK. "
"信用できる奴じゃないとな。"
"鍵は、彼が持っているの。お尻の穴に、隠しているのよ。"
"かもな。サムなら、やりかねない。"
"後一歩で、娘を連れて、ヨーロッパに逃げられたのに。でも、きっと殺されたわね。"
"俺にやらせたろ。本当だぞ。娘を取られたら、奴は、黙っちゃいない。"
"だから、言われたとおり、戻ったでしょ?"
"ああ、そうだな。"
ニッキーは、ジンジャーを抱擁する。
"あれで、良かったんだ。"
"あなたの言う事に、間違いはないわ。"
"奴はどうかしている。"
"ええ。"
"あの馬鹿め。"
" Changed. "
"まるで、別人だろ?思い上がっている。"
"私が嫌いなの。憎んでいるのよ。"
"泣くな。君は、強い女だ。"
"本当は、弱いの。"
ジンジャーは、さめざめと泣く。怖いのよ。あの人に、何をされるか。"
"大丈夫だ。心配ない。"
" I need a help. お願い。怖いの。私を守って。支えてほしいの。"
"本気か?支えに?分かった。もう心配するな。誰にも手出しさせない。守ってやる。それでいいか?いいな?"
2人は、互いの唇を求める。
バラック小屋は、監視されている。
"エースの妻だ。"
小屋の外で、キスする2人が、盗撮される。
"いいぞ。"
"上司が、喜ぶ。"
2人は、別々の車で帰って行く。
家で、ジンジャーの帰りを待つエース。ジンジャーが、車で帰宅する。
" Hi. "
"ポケベルは?"
"捨てたわ。"
"捨てた?"
"最初は、持っていたわ。でも、運転中に、ビビビビッと。レストランでもよ。皆に、見られたわ。エイミーは?"
"寝かせた。"
"タバコよ。オスカーから電話が。"
"誰と昼食を?"
"ジェニファー。"
"どこで?"
"リビエラよ。"
"何を?"
"私は、サラダ。"
"彼女は?"
"同じよ。"
" OK. ジェニファーに電話して、何を食べたか、聞け。あっちで、聞いている。"
"なぜ?"
"分かっているだろ。Just do it. "
"いいわ。ちょっと待って。"
ジンジャーは、電話をかける。
"話し中だわ。"
エースが、電話をかける。
" Hello ジェニファー。"
ジンジャーが、電話のフックを押す。
"ジェニファーじゃないわ。"
"誰と?"
"別の人。"
"だから、誰なんだ?"
"あいつじゃないだろうな?まさか、奴じゃ。"
"遊んでいるのは、知っていた。それは、お互い様だ。だが、何て事だ。相手がニッキーとは。"
"気は確かか?"
"最悪だった。"
"これきりに。"
"彼女は、後悔してみせた。だが、口先だけだった。"
抱き合うニッキーとジンジャー。
"ジンジャー。奴から、何か言われても、すべて否定しろ。ボスに連絡されたら、serious problem になる。奴は、勘がいい。"
"分かっているわ。そんな馬鹿に見える?"
"とんでもない。いい女だ。行くよ。"
"この頃、奴は、行き詰まり、ボスへの土産も、少なくなる一方だった。届け役のフランクも、気が気ではなかった。"
"フランク。聞きたい事が。ここだけね話だ。正直に答えろ。"
"分かった。"
"本当の事を言うんだぞ。"
"勿論。"
"ニッキーは、エースの妻と寝ているのか?もし、事実なら、ヤバイ事だ。"
"ここで、下手な事を言えば、ニッキーもエースも女房も殺される。ボスたちは、何よりも、仲間内での『不倫騒ぎ』を嫌っていたのだ。だから、嘘をついた。もし、ばれたら、俺の命もない。"
" No. そんな様子はない。"
"確かか?"
"確かだ。リモ。ベガスの状況は、よくない。"
"だから、心配なんだ。問題は、ニッキーだ。奴は、ちゃんとやっているのか?"
"大丈夫だ。"
"いいか。フランク。奴から目を離すな。"
"分かった。"
"友人たちの利益を損なわせたくないからな。いいな?"
" I understand. "
" OK. "
"フランキー。Good boy. "
" Thanks. "
"今や、ニッキーたちは、最低の状態だった。酒にヤクに女。最早、奴に、昔の面影はない。"
"飲み過ぎだ。"
"うるさい。以前なら、1発で殴り倒していたのに、今は、3発必要だった。ベガスの毒に、染まったのだった。手下たちも、同じだ。皆、いつもヤク漬けで、馬鹿な真似をしでかした。"
"何か用か?"
車から、警官たちが降りる。
"動くな。"
"余計な挑発を。"
"銃を捨てろ。"
" Fuck you. "
警官は、男を射殺する。
"警官は、銀紙を銃と勘違いした。無理もない。"
"見ろ。ただのサンドイッチだぞ。"
"暗かったから、包みが銃に見えたんだ。" 
"クソ。2か月は、内勤に回されるぞ。"
"仕返しのため、仲間たちは、警官の家を銃撃した。彼の店は盗聴され、中では話せなくなった。外でも、口を手で覆う。"
"クソったれ。"
監視中の捜査官がつぶやく。
"FBIが、読唇術のプロを雇ったからだ。"
"また聞かれた。"
"止まるな。何を?"
"あの女の事だ。" 
"それで?"
"知らんと。ボスにばれたら、只じゃ済まない。"
"エースが垂れ込むと?"
"それは、ないさ。"
"だが、危ない。"
"そうだな。"
"俺は、奴を信用していない。"
"でも、ボスは。"
"金づるだから、甘いんだ。奴は、きっと、何か仕掛けて来る。その前に、こっちから。こいつは?"  
"通行人だ。" 
"いいか。誰かに、砂漠に穴を掘らせておけ。"
"手配しよう。"
"年のためだ。"
"任せろ。" 
"俺が、『ユダヤ野郎に会え』と言ってからだ。"
"ああ、準備しておこう。"
"まだやれとは言っていない。考えておく。見張りは?モーテルか?"
"さあな。そこら中にいる。"

エースは、会食の席から家に電話するが、誰も出ない。
"失礼。すぐ戻る。"
"電話があったら、シャーバートに回せ。ちょっと家に用が。" 
指示された男は、電話をかける。
"家に向かった。"
ニッキーが受ける。
"分かった。" 
エースは、家に寄る。
"ジンジャー。"
"パパ。助けて。"
"エイミー。Open the door. "
"縛られているの。"
エースは、体当たりで、ドアを破る。エイミーは、ベッドに結えられている。
"誰が、こんな事を?"
"ママよ。"
"今、ナイフを。"
"行かないで。"
" OK. すぐ戻る。"
ナイフで、拘束を解く。
"いつから?" 
"さあ。"
"ママは、いつ出て行った?"
"分からない。"
電話が鳴る。
" Hello. "
"サム。"
"誰だ。ニッキーか?" 
"ああ、OK? "
"いや。何か用か?"
"話がしたくてね。"
"ジンジャーが、娘を縛って、家を出た。行方が。"
"彼女なら、俺の店にいる。"
"店に?一緒なのか?" 
" Yeah. " 
"すぐ行く。"
電話を切る。
"来るぞ。"
エースが、店に着く。ニッキーが出迎える。
"サム。騒ぎは起こすなよ。" 
"あの女と話したいだけだ。"
"思い悩んで、相談に。"
"話をしたいだけだ。" 
"いいか。落ち着け。Calm. 分かったな?俺の店だ。"
ジンジャーの席に行く。
" Hi サム。"
"娘を縛り付けるとは、どういう気だ?母親だろ。気は確かか。"
"ベビーシッターが、いなかったのよ。"
"このヤク中め。今度こんな。"
"彼女は眠っていたし、すぐ帰る積もりだったのよ。"
"いいか、聞け。黙って、俺の言う事を聞くんだ。今度、こんな真似をしたら、殺してやる。いいな?"
"なぜ、別れてくれないの?なんでもサインするわ。宝石の入った金庫の鍵を貰えればいいの。"
"お前のお陰で、とんだ恥さらしだ。立て。母親らしくしろ。立て。立つんだ。"
"大声を出さない方がいいわよ。"
" Get up. さっさと車に乗って、帰るんだ。"
"帰るわよ。"
2人は、帰宅する。
"なぜ、奴の顔色を?"
"そっちこそ。誰にしゃぶらせたのよ。"
"頭に来る女だ。淫売は、しょせん淫売だ。"
" Fuck you. サム・ロススティーン。Fuck you. "
ジンジャーは、また出掛ける。
"シャーバートを。" 
"ビリー。銃があったな。すぐ持って来てくれ。"
"ああ、分かった。"
支配人が答える。
ジンジャーは、ニッキーの店に着く。 
ボーイに言う。  
"すぐ戻るわ。"
店に入る。
"彼はどこ?今すぐあいつを。" 
ニッキーが現れる。
"車を隠せ。"
"必要ないわ。ここに来た事は。"
ジンジャーを、事務所に押し込む。
"ボスにばれたら、どうする。奴に、何と言ったんだ?"
"別に。何を言われても、すべて否定したわ。"
"危険だと、言った筈だ。『ヤバいから、十分に気をつけろ』とな。"
"ヤバいなら、殺せばいいわ。"
"殺せだと?馬鹿な。"
"すべて解決するわ。"
"ふざけるな。奴とは、35年の付き合いだぞ。Fuck you. こうなる事は、分かっていた。"
"私のお金は?"
"そんな事知るか。奴が出すと思うか?何をしたか、考えてみろ。お前さえ、黙っていれば。俺が、馬鹿だったよ。"
ジンジャーは、ニッキーを叩く。逆に、腕をつかまれ、追い出される。
"出て行け。"
"あんたなんか。お金は、自分で取るわ。FBIに訴えてやる。"
" Be careful. "
"これっきりよ。"
" OK. "
ジンジャーは、車で立ち去る。
"さあ、入れ。"
"クソったれめ。"
"参った。フランク。あんな女に、手を出したのが、間違いだ。"
" Take it easy. 誘ったのは、女の方だ。"
"兎に角、まずい事になった。実にまずい。"

エースは、ライフルを受け取る。
"娘を近所に預け、現金と宝石を、シャーバートに渡した。"
"ホテルの金庫に入れろ。"
朝になる。ジンジャーが、帰って来た。
シャーバートに指示する。
"1人だ。エイミーの部屋で待て。"
"出て来い。無視しようたって、そうはいかないよ。"
車を、しきりにエースの車にぶつける。
"早くしろ。話があるんだ。さっさと出て来い。Fuck you. 出て来ないと、車を家に帰る突っ込むよ。腰抜けのクソったれ。話があるんだ。出て来い。"
ジンジャーは、車から降り、エースと向かい合う。
"またヤクをやっているな?後悔するぞ。"
"脅したって、無駄だ。あんたなんか怖くない。"
エイミーも、隣家の窓から見ている。
"ニッキーと寝たさ。私には、彼が付いているんだ。文句あるのか?"
警察が駆けつける。
"何を見ているのさ。消えろ。見世物じゃないんだ。もう我慢できない。FBIに駆け込んでやる。とっ捕まればいいんだ。"
警官が声を掛ける。
監視役が写真を撮る。
"奥さん。お静かに。近所から、苦情が。"
"家に入りたいだけよ。"
"こんな状態じゃ、入れる事はできない。"
"どうしてよ。着替えや荷物を取りに来ただけだわ。"
"荷物を取るだけなら、いいのでは?"
"中をめちゃめちゃに、されかねない。"
ジンジャーは切れて、暴れる。警官が、制止する。
"もう、頭に来たわ。"
"いかがでしょう。すぐに済みます。"
"もし、騒がなければ、もし、騒がなければ、5分だけ中に入れよう。君らが責任を持って、追い出してくれ。
" Can l go in? Can I go in? 入るわよ。Fuck you. "
停車しているキャンピングカーから、写真が撮られる。エイミーは、家人が、窓際から、抱き抱える。
"私の大切な書類や品物を、どこかに隠してしまったの。きっとここだわ。"
デスクの引き出しを開ける。
"見張ってて。"
"大丈夫ね?"
鍵のかかった引き出しをこじ開け、鍵を見つける。
"これだ。"
エース。
"急がせてくれ。"
"ええ、私たちも忙しい。すぐです。商売の方は?"
"順調だ。家族は?"
"妻がまた妊娠しましてね。"
"おめでとう。"
"楽しみです。"
ジンジャー。
"後一つで、お仕舞いよ。"
ジンジャーが、毛皮を羽織って、出て来る。
"何されるか分からないから、途中まで送って。"
"失礼します。"
ジンジャーは、車を出し、パトカーが続く。キャンピングカーも発車する。
銀行に寄る。
"お金を出すの。一緒に来て。"
停車している車から、盗撮される。
貸金庫を開ける。
エースは、銀行に電話をかける。
"チャーリー。止めろ。彼女は、ヤク中だぞ。"
"無理だ。鍵を持っている。名義も2人のままだ。"
"違法だ。法的には、半分は俺のものだぞ。すぐ行く。"
ジンジャーは、札束を取り出す。
"袋が要るわ。誰かに、持って来させて。"
"取って。お礼よ。親切だから。"
札束を差し出す。
"口を開いていて。いいわね?"
ジンジャーは、車のトランクに札束を載せる。
エースたちが、駆けつける。
"彼だわ。止めて。私を殺すと言っていたの。"
"ロススティーンさん、お待ちを。"
ジンジャーは、走り去る。
"何もできません。"
"見ろ。スピード違反だろ。"
"無理です。鍵を持っていた。名義もちゃんと。"
ジンジャーを追う車。
"停めるぞ。"
"分かった。"
パトライトを載せ、ジンジャーの車の後ろに停まる。
"逮捕します。"
"なぜ?"
"犯罪の幇助と教唆の疑いです。"
"別れようと。"
"彼女は、結局、何も喋らなかったが、それは関係なかった。"
"私のものよ。"
"証拠は揃っていた。次々と、すべてが崩れていった。まるで、ドミノ倒しのように。ピスカーノのcomplain. ニッキー、ジンジャー、俺。皆で、何もかもぶち壊したのだ。"
"ママ。"
"誰かしらね?"
"FBIだ。"
"手入れの情報を聞きつけ、俺は、姿をくらました。"
"キャスパー捜査官だ。"
"どいてよ。"
"口の利き方に、気をつけろ。"
"皆、外へ出て。"
"皆、捕まった。"
カジノが捜索される。
"やったぞ。サイコロ賭博の記録だ。"
"グリーン?聞くな。"
"私は、関係ない。強要されただけだ。知っている事は、何でも話す。"
"極め付けは、これだ。ピスカーノの『出張記録』。"
" Bingo. "
"すべて書いてあった。名前、住所、日付。何もかもだ。"
"礼を言うよ。正に、至れり尽せりだ。"
"お袋の帳簿だ。"
"逮捕する。"
"このドジめ。"
"ショックのあまり、彼は、心臓発作で死んだ。"
"捜査官は、遂に、俺の家にも来た。"
"なぜ、この男をかばう?"
"俺は、写真を見たくもなかった。"

公判。
"ご覧のとおり、皆、高齢です。勾留には耐えられません。" 
"ボスたちは、医師に付き添われ、法廷に出た。被告人の保釈を要請します。"
"10分休廷します。"
"所得隠しで、25年以上は、食うだろう。何とか、手を打つ必要がある。そこで、ボスたちは、すぐさま会合を持った。こう言う場合、大勢が死ぬ羽目になる。『証人は消せ』という訳だ。アンディは?"
"彼は、大丈夫。喋らん。父親と同じで、義理堅い男だ。"
"信頼できる。元海兵隊だ。"
"ああ、心配ない。"
"リモ。What do you think? "
"さあな。万が一という事もある。そうは思わんか?"

"彼に電話して、木曜の11時に来るように伝えろ。重要な話があると言え。"
男は、背後に近付いた男たちに、射殺される。
"いい奴だが、所詮は、よそ者だ。もし、イタリア人なら、殺されなかっただろう。"

コスタリカ。
"ナンスは、高飛びした。コスタリカに隠れ家を見つけ、安心していた。"
刺客が、隠れ家を襲う。
"だが、息子がヤクで捕まり、ボスは、奴がFBIと取引するのを恐れた。そこで。"
腹から血を流しながら、よろよろ歩くナンス。
"どこへ行く?"
とどめを刺される。
"兎に角、次々と消された。こうして、証人はいなくなった。"
撃たれて、墓穴に落ちる者。車の運転席を襲われる者。
"ジンジャーは、哀れだった。LAで、いかがわしい男たちと付き合い、たちまち身ぐるみはがれた。発見された遺体を、俺は、解剖して貰った。ヤクの過剰摂取だった。死後、残っていたのは、3,600ドルだけだった。"
エースは、車に乗り込む。
"俺の車を爆破した奴は、どう見ても。"
車が発火する。
"プロではなかった。爆弾は、助手席に仕掛けられていた。更に、俺の車の運転席には、金属板が敷かれているのを、誰も知らなかった。それが、命を救った。"
キーを回すと、爆発する車。
"誰が命じたか、見当はついていた。多分、ボスも。"
"騒動が、一段落し、仲間たちが保釈された頃、ボスは、弟にベガス行きを命じた。依然、ベガスは、ドル箱なのだ。俺は、まだベガスには近づけない。そこで、叩けて待ち合わせた。仲間に、弟の事を頼むためだ。何しろ。" 
ニッキーは、フランクに金属バットて、脚を殴られる。弟も、捕らえられ、金属バットで殴られる。
"もう勝手は、させねえ。クズめ。"
"フランキー。"
"よく見ろ。" 
弟は、3人がかりで滅多打ちにされる。
"フランクやめろ。"
ニッキーは、体を抑えられている。
"よせ、まだ生きている。"
"もう、やめろ。フランク。"
フランクは、構わず、バットを振り下ろす。
"よし、脱がせろ。"
弟の着衣をはがす。
"クソ。卑怯者め。"
弟をパンツ1丁にして、あらかじめ掘った穴に落とす。続いて、ニッキーを殴打する。ニッキーも同じように、衣服をはぎ、穴に落とし、土を掛ける。
"ニッキーは、やり過ぎて、ボスの怒りを買ったのだ。彼らは、見せしめに、生きたまま埋められた。"
燃え上がるエースの車。左袖に着火するが、外に逃れ、仲間に助けられる。
"危ない。"
車が、本格的に爆発する。
"大丈夫か?"
"俺は、生き延びた。"
救急車で運ばれる。
" Sure lucky Mr. "

ビルが爆破される。新しいタンジール。
"ベガスも変わった。大企業が進出し、今ではまるで、ディズニーランドだ。子供は、海賊ごっこ。親は、なけなしの金で、ポーカー、スロットに興じる。"
爆破される古い建物。
"昔と違い、ディーラーは、客の名も、好みも知らない。サービスも酷いもんだ。上客が、大金を持って、現れても、学校出立ての若造に、社会保障番号を聞かれる。運転手組合が、消えた後、古いカジノは、取り壊された。新たなビルの建設資金は?Junk bond. "

サンディエゴ。
邸宅で、エースは、電話中。
"それで?確認できたら、すぐ知らせてくれ。"
"俺は、また振り出しに戻った。まだ、予想の腕は確かで、皆を儲けさせている。今の暮らしに、不満はない。"

【感想】
主役のエースは、天才ギャンブラー。少々ダーティな面があるが、理由もなく、暴力に訴えることはない。マフィアに利益をもたらし、重宝される。彼らとの交際にも、節度をもって当たる。ニッキーは、直情径行の典型的なギャング。ジンジャーは、守銭奴の悪女。ニッキーは、エースの用心棒として派遣され、エースは強引に、ジンジャーを妻とするが、それぞれエースを振り回した挙句、非業の死を遂げる。エース、ニッキー、そして1回だけフランクが、ナレーターを務め、状況を語る。このスタイルには、賛否もあろうが、"レイジングブル"に始まり、"アイリッシュマン"に至るスタイルが、確立した。

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