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一人勝手に回顧シリーズ#M.スコセッシ編(1)#アリスの恋/女が身を立てる

【映画のプロット】
▶︎歌手アリス
♪分からないのね 別れのつらさ
 You never know 心の痛み
 隠し切れずにいるのよ My love for you
  幾度 思いを告げたでしょう
 数え切れないほどね
 私の心を奪ったあなた 
 名前をつぶやくの お祈りのたびに 
 何でもするわ この気持ち 届くなら
 どうしたら 分かってくれるの
 Who never know? 
"カリフォルニア州。アリス 少女の頃"
♪今 気づかなければ 永遠に分からないわ
 忘れられないのよ
 名前をつぶやくの お祈りのたびに 
 何でもするわ この思い 届くものなら
 どうすればいいの You never know
   あきらめなさいと あなたは言うのね
赤い画面。アリスは、家の前の道路にいる。
"私も歌えるわ。♪You never know...私の方が、ずっと上手だわ。ほんとよ。"
"アリス。アリス。早く中に入らないと、お仕置きですよ。Do you hear me? "
"見てらっしゃい。きっと歌手になってやるわ。"
"アリス。"
アリスは、また歌いながら歩く。そして、家に入る。
ニューメキシコ州ソコーロ。27年後。
窓から、家の中を覗く。アリス(エレン・バーンステイン)は、ミシンをかけている。息子のトミーは、寝転がり、音楽を聴いている。
"アリス。アリス。音楽をやめさせろ。頭が割れる。"
夫が、叫ぶ。
" I'm sorry. "
ステレオを止める。
"耳がおかしくなるわ。パパを怒らせる気?パパのイライラは、家庭崩壊の元でしょ。1日中、ロックをかけているなんて。"
"静かな方だよ。"
" You are kidding. 感謝しろと?なぜ、こんな子が、生まれたのかしら?"
" You got pregnant. "
"呆れた。何て口の利き方なの?後、30分で夕食よ。"
"いいさ。作るのは君だ。"
"お手伝いして。何してるの?寝ている場合じゃ、ないわ。"
"やるじゃん。" 
"ダリルが、留守ね。ピーチ・ケーキを。"
"飯が残っている。"
"おなか一杯。"
"ケーキは、食えるのか?"
アリスは、ケーキを切り分ける。
"美味しそう。"
夫に差し出す。
"このコーヒーは、何だ?"
"どうしたの?そんなに苦い?"
" Tastes like a hell. "
"私のは、平気よ。"
夫のコップを飲む。
" Oh solty. "
"面白いか?"
トミーを睨む。
" What do you mean? "
"とぼけるな。砂糖に、何をした?正直に言え。"
" Not sugar.  Solt. "
トミーは逃げ、ドナルドは、怒って暴れる。
"ドナルド。"
"よし、出て行け。戻って来たら、飲ませてやる。You like it. お前が、甘やかすから、つけ上がるんだ。"
ドナルドは、怒って、寝室に引き上げる。アリスは、窓を叩く。
"くそったれ。"
アリスは、買い物を車に乗せる。
"気をつけて。"
"凄い買い物だな。パーティーか?"
"亭主が冷たいの。ご機嫌取らなきゃ。"
アリスは、車を出す。
アリスの家。 
"トミー。"
ドナルドが、優しく語りかける。
"お祈りの言葉を。"
"やめとく。"
" Father, 日々の糧を与えたもう事に、感謝します。すべての良きものにも。主の御名によりて、アーメン。"
"あなたの好物よ。美味しい?"
"ああ。"
"友達が、デンバーへ。楽しかったそうよ。"
ドナルドは、黙々と食べる。
"そうか。何しに行った?まず、家族に会って、避暑地で遊び、後は、買い物し放題。Do you like it? "
"ラム嫌い。"
ドナルドとベッドで、TVを見る。
"何て番組?"
" I don't know. "
"映画なの?"
"そうらしい。"
"面白い?"
ドナルドは、タバコに火を着ける。
" I don't know. "
アリスは、横になり、泣く。ドナルドは、後ろから抱きつく。

庭で、洋服の採寸。
"じっとして。"
"笑わすからよ。緩めにしてね。"
"分かっているわ。"
"今朝、彼とトミーが、大喧嘩よ。"
"怒鳴り声が、聞こえたわ。"
"本当は、乱暴な人じゃないの。ただ、時々、大声で怒るのよ。"
"男なしじゃ生きていけない。私は、平気よ。絶対よ。" 
"何て事ないわ。"
"無理よ。"
" Easy. 男の顔を、2度と見なくたって、平気。ロバート・レッドフォードのような男なら、話は、別だけど。" 
"そりゃ、そうよ。"
"終わった途端に、寝ちゃうような男じゃないわ。優しい人よ。"
"彼の体つきって、どんなかしら?"
"足を見た?足が目安になるの。"
電話が鳴る。
"写真で見たわ。凄かった。こんなに大きいの。"
" Hello. Yes. 家内です。"
電話を聞き、アリスは、嗚咽を上げる。
"ドナルドが事故で。私のせいよ。"
交通事故の現場。コカ・コーラの搬送車と乗用車が衝突。ドナルドは、トラックの運転席で、血を流し、絶命している。
アリスとトミーは、友人に付き添われ、葬儀に向かう。
"まだ信じられないわ。"
"ここで。"
"お悔やみを。"
"一緒に、いてあげるわ。"
"いいの。独りに慣れなくちゃ。"
"夕食は、一緒に。"
"お金は、あるの?"
"いいのよ。"
"教えて。"
"お葬式の前は、2,000ドルあったわ。"
"今は?"
"1ドル59よ。"
"これからどうする?"
"あなたは、どうする?もう2人切りよ。"
"働かなきゃ。"
"ママは、歌手だったのよ。"

アリスは、ピアノを弾きながら、発声練習する。
♪眠りから覚めて 思う事は 
 見ていた夢の続きなの
 心に羽根が生え 舞い始めると
 何だか世界が変わるよう 
 生まれる前にも 生きていたような
 同じ事があったような 
 出来事は 巡っているの
 知らん振りして 繰り返している
 それは心のいたずらなのよ
 2人こうしてお話したわね
 ずっと昔 like this 
   2人こうして見つめ合っていた
 でも あれはいつの日かしら
 あなたのその服 見覚えがあるわ 
 あなたそんな風に 微笑んでくれた
 でも いつどこだったのかしら
 初めての筈なのに
 初めての気がしない
 2人昔にも 会っていたのよ
 こんな風に笑い 同じように愛し合った
 でも あれはいつの日だったかしら
"これが、ペギー・リー?"

アリスは、家具を売りに出す。
"また売れたわ。" 
"ありがとう。"
"僕、モンテレーで、12歳に?"
" That's right. 向こうは、いい所よ。"
"ソコーロと?" 
"似てないわ。ありがとう、似合うわ。"
"このショールが、12ドル50なの?"
"元は、50ドルですわ。こちらが、値札です。"
" Oh I don't know. 綺麗だけど、私には高くて。"
"元々50ドルですもの。"
"駄目よ。"
"そうですね。嫌な事ばっかり。"
セールが終了。
"このエプロンを売らなかったなんて。"
ショールを欲しそうにしていた老女が、通りかかる。
"これ、差し上げます。"
"そんな、いけないわ。"
"上げたいんです。どうか、受け取って。"
"では、ありがたく、頂くわ。Thank you. "
"さっきは、済みません。失礼な態度を。 Enjoy. "
"きっと大切にしますよ。"
アリスは、何だか哀しくなる。
"ロックして。"
"お天気が、心配よ。行くのね。"
"一緒に来る?"
"ええ、亭主も息子も、放ってね。"
"本当に、そんな事をしたら、家族は、大パニックね。見ものだわ。"
"辛いわ。"
"いい子でね。"
"寂しくなるわ。"
"手紙を出すわ。"
"手紙なんて、当てにならない。"
"泣かないでよ。"
"泣くなんて。"
"やめて、ビー。"
"これをお守りに。"
キャップを貰う。
”体に気をつけて。"
" I will. Good bye. "
"元気で。"
"ありがとう。"
アリスは、車を出す。
"やっと出発?"
車は、郊外のまっすぐな道を走る。
"ニューメキシコ州境"
"もう振り返らないのよ。"
"ニューうんこ州さ。"
"汚い事言うんじゃないの。"
車は、ひた走る。
"ママにも。取って。"
ポテトチップスの紙筒が、抜けない。
" Mama I feel sick. "
"大丈夫?"
"吐きそうだ。"
"車を停める?"
"いよいよになったら、言うよ。Mama here comes. "
" OK. All right. 窓からしなさい。"
"大丈夫。大丈夫だ。"
"停めないわよ。"
"まただ。"
" OK. All right, honey. 窓からよ。外に吐くのよ。"
"もう収まった。"
"停めないわよ。"
"早くモンテレーへ。"
"まだアリゾナ?"
"今度、聞いたら殴るわよ。大人しく、人生でも考えてなさい。"
"短い人生。"
"短気な子。"
"つまんない。"
" So am I. 手品でも?後30分で、フェニックスよ。そしたら、お楽しみ。パリッとめかし込んで、気取った店へ。"
" What? "
" I say 高級レストランで食事よ。"
" What? "
"耳が無くなったの?今夜は、素敵な夕飯よ。"
"別に、いいよ。"
"可愛くない。"
モーテル。
"仕事を探すの?"
"そうよ。パーマをかけて。セクシーな服も。"
"駄目なら?"
"服が買えなかったら?"
"仕事だよ。馬鹿。"
"母親に、そんな事言っていいの?"
"そんな目で見ないでよ。仕事は、探すわ。"
"パパを好きだった?"
"勿論よ。何を聞くの?"
"悲しくないみたい。"
"悲しいわ。とっても悲しいわよ。隠しているだけよ。"
"よく喧嘩していたでしょ。"
"そうね。時々、本気で、腹が立ったわ。どうしたの?"
"なぜ、パパと結婚したの?"
"早く、ベッドに入りなさい。"
"入っているよ。Tell me. "
" He was a great kisser. "
" Great kiss. それで、結婚?どんなkiss? "
"2、3年したら、教えるわ。"

トミーは、雑誌を眺めている。
" Who is it? "
"ダイアナ・ロス。美女の登場よ。"
トミーはドアを開ける。パーマをかけ、グリーンのドレスをまとったアリスが立っている。トミーは、ドアを閉める。
アリスが入って来る。
"あんたの好きなジョークでしょ。"
"お土産は?"
" No. 時間がなくて。ママ、どう?"
" Pretty good. セクシーかな。"
"この町には十分よ。ストリップじゃないし。"
"仕事あるかな?"
"探してみせます。"
"学校は行ける?"
"先の事は、心配しないの。"
"もし、9月に。"
"もしもが、何なのよ。ママに、どうしろって言うの。来なさい。座って。書いてちょうだい。文句を全部、リストにしてみてよ。何が気に入らないのか、ぶちまけなさい。Wright. Wright. 残らず全部よ。書きなさい。Wright. 一生懸命、服を探したわ。若造りして、雇って貰うためよ。なのに、あんたは、文句ばかり。I get a job. All right? 誕生日までに、モンテレーへも。9月には、学校にも行かせるわ。契約書でも書く? I'm  
sorry. トミー、あなたも辛いのよね。故郷を離れ、友達とも別れて。向こうに行けば、things will    
be better. "
" Why you know? "
" Give me a break. そう責めないで。兎に角、お金を作らなきゃならないの。OK? "
" OK. "
"出掛けて来るわね。6時には戻るわ。"
" OK. "
"励まして。"
"頑張ってね。"

" Manhattanか。どっちへ?こっちよ。"
"飲み物色々。ジョーとジムの店"
オープン前の店に入る。カウンターの中を整える男に、声を掛ける。
" Excuse me. ジョーか、ジムを。ジョーか、ジムを。"
"そりゃ分かったが、何の事だ?"
" Why not? "
" No. ジョーもジムも。"
" What? "
"ジョー。"
"それは、分かったけど、何の事?支配人か誰かを、お願い。"
"ウエイトレスは、要らない。"
"違うわ。歌手よ。"
"歌うってか。"
"支配人を。"
"肺の手術で、入院している。"
" Sorry. "
" Singer は、間に合っている。"
" Thank you. お水を1杯くださる?"
水が出る。
" You are really singer? どこで?"
"昔は、モンテレーで。"
" What's your name? "
"アリス・ハイアット。"
"あいにくだな。"
" Thank you. "
" Sorry. "
"いいのよ。"

" Bossに会わせよう。"
"チキン。紹介するよ。アリス..."
"ハイアット。"
" Nice to meet you, Miss.,"
"ハイアットです。"
" My name is ホリマン。名はチキン。"
"よろしく。"
" Turn round for me. "
"なぜです?"
"尻を見たい。"
"お尻で、歌う訳じゃないわ。"
アリスは、席を立つ。
"何だ?どうなっている?"
次の店。
" Manager は、いらっしゃる?"
"経営者なら、ジェーコブスさんよ。"
" Thank you. "
"何かご用かな?"
感情が高ぶり、話せない。泣き出す。
"待ちなさい。どうした?酒をロックでくれ。"
" I'm sorry. "
"うちに、何か恨みでも?"
" Sorry. "
"安心した。飲みなさい。憂さが晴れる。どうした?話せば、すっきりするぞ。"
アリスは、泣き止まない。
"話してくれ。What can I do for you? 泣いてちゃ、分からん。"
"バンドエイドを。"
"バンドエイドをくれ。"
"一日中、職探しを。靴が新しくて、足にマメが出来てしまって。Thank you. I'm singer. "
"悪いが、雇えんな。"
"分かってますわ。"
"雇えるものなら、雇うがね。"
"ありがとう。ご親切に。もう、どうしたら。"
"うちは、ピアノがない。Com'on. "
" Thank you. 主人に死なれて。"
また泣く。
"ピアノがないんでね。"
"いいんです。女手一つで、息子を育てるなんて。"
"ピアノがないんだ。"
"歌の経験は?"
"結婚までずっと。"
"自信は?'
アリスは、うなずく。
"明日、また来てくれ。一晩考えよう。"
"どうせ、Noだわ。今、歌わせてください。"
"別の店に、ピアノがある。Com'on. "
"マリー。20分で戻る。店を頼むぞ。"

"店が承知してくれた。頑張れよ。"
"いい歌を。"
"あれだ。"
"何か、お好みの曲があれば、歌います。"
"結婚なんて時の無駄を?独り言を楽しめば、孤独もおつなもの。女を抱いて何になる?この世は広い。知らない事だらけだぜ。結婚なんて。"
" I don't know. "
"そうか。Go ahead. "
" OK. Thank you. "
アリスは、ピアノに向かう。
"マイクは?入ってます? OK. "
" Hi everybody. そのままで、聴いてください。短い歌を歌います。
♪2人 こんな風に お話したわね 
 2人 こうして見つめ合っていた
 でも あれは いつの日かしら
 あなたのその服 見覚えがあるわ 
 あなた そんな風に 微笑んでくれた
 でも もう思い出せないの
 独りぼっちなら 星も瞬かず
 独りぼっちなら 月明かりも暗い
 夜明けにも日は昇らない
 愛しい人の去った今
 風にさらわれた 木の葉のように 
 私の恋は消えてしまった
 あれほど燃えた 愛もむなしく 
 煙のように ゆらり消えたわ 
 風にさらわれた 私の恋
拍手が起こる。
" Thank you. "
"あがって、うまく歌えなかったわ。Audition は、大変です。"
"ピアノの借り賃は、割るよ。"
" Sure. "
モーテルに帰る。
"やったわ。歌の仕事よ。"
" Are you rich? "
"まだだけど、期待して。キッチン付きのモーテルも見つけたわ。家賃は、格安よ。"
"僕は、どうするの?"
"先住民と遊べば?"
"外は、暑いよ。"
"団扇があるわ。"
"変な子ね。"
"お金が出来たら、レースのネグリジェに、かかとの高い靴を買うわ。"
アリスは、すね毛の処理をしながら、ひとりごちる。
"ふわふわのボンボンが、付いているやつよ。TVで宣伝しているシェーバーも買うわ。あなたは、何が欲しい?"
"トミー。寝顔は、まるで天使ね。モンテレーへ行くわ。きっとよ。"

♪あなたに夢中よ Sweety 
 寝ても覚めても ため息ばかり
 こんなに人を愛するなんて 
 思いもよらなかった事
 甘いささやき 聞かせてね
 2人の愛の巣 温めましょう 
 隠し切れない 胸の高ぶり
 だって こんなに愛しているの
 私のあなた 
拍手。
歌い終え、席で休むアリスに、男が声を掛ける。
"素敵だ。"
" Thank you. Well. "
"独りなんだ。座っていいかな。"
" No. "
“ Why not? "
"独りでいたいの。"
" Com'on. そんな事ないだろ。"
"そうよ。あなたに座ってほしくないだけ。"
" Why? "
" Because 気分が暗いからよ。"
"僕が、助けになるよ。"
男は、腰を下ろす。
"どうかしら?"
"話してご覧。"
"知りたいの?"
"そうとも。" 
" All right. モーテルで、暇を持て余している息子がいる。歌じゃ、お金にならない。おまけに、今朝、缶詰で切った小指が、ピアノを弾くたびに、うずくの。ちょっかい出す男なんて、殴ってやりたい。"
"小指、お大事に。"
顔を見合わせて、笑う。
"いいわ。もう少し離れて。"
" My name is ベン・エバーハート。"
"アリス・ハイアットよ。"
" Hi ハイアット。"
" Please. "
"色んな奴が、同じ駄洒落を?"
"12歳以下の子どもがね。"
"活字にしたら、面白いだろうな。自分の年や、学歴に、好きな色、恥をかいた経験、仕事とか。そんな事をさ。"
"お仕事は?"
"薬莢の火薬詰め。"
"何と?"
"火薬を詰めている。"
" You are kidding. "
"楽しい仕事じゃない。"
"君の歌が、好きだ。"
" Really thank you. "
"ちょっと頼みがあるんだけどな。"
"聞くわ。"
"いいかい。そばに寄りたい。"
"駄目よ。"

トミーは、TVで映画を見ている。女優が歌う。アリスが帰宅する。ベンが付いて来る。トミーは、ブラインドの隙間から見ている。
"なぜ?"
"馬鹿の一つ覚えね。Can you understand? "
" Why? "
"子どもとは、デートしないの。"
" I'm 29. "
" Lier. '
"ほんとは、27だ。"
" Maybe. "
" Maybe? "
" When? "
" Last month. "
2人は笑う。
"私は、35よ。平気なの?30と5歳よ。私が小学3年の時、あなたは、まだお腹に。高校卒業の頃、あなたは、飴を舐めていた。子どもとデートは、お断りよ。"
アリスは、部屋に入る。
"アリス。"
ベンは、指で銃を作り、アリスを撃つ。
別の日。ボウリング場で、アリスとベン。
" Yesか Noか。"
" No. "
" No? "
"そうよ。Noよ。"
" Yesと。こんがらがった。"
" No. 見ないで。27の子と、付き合うだけでも、頭が痛いのに。それ以上は、なしよ。"
" You sure? "
2人は、キスする。

2人は、ベッドを共にする。
"何の音かしら?"
" I don't know. "
サイレンの音。

モーテル。アリスは、ベッドに入るが、目は冴えている。女の悲鳴、物が割れる音、男の怒声。女を叩く音、銃声。
朝。
"今夜も出掛けるの?"
"どうして?"
"デートの相手を、いつ紹介してくれるのさ。"
"名前は、ベンよ。紹介するわ。"
"そいつの事、ベンおじさんって呼ぶ?" 
"そいつ?偉そうな言葉は、やめなさい。"
"目の下の隈が。" 
"仕方ないわ。働いているんだもの。"
"1週間もデートしている人だ、僕が会った時、どう呼べばいいの?"
誰かが、訪ねて来る。
"待って。"
小柄な女性が立っている。
" Hello. "
" Miss ハイアット?"
" Mrs よ。"
"お話したい事があるの。"
"何かしら。"
"私、リタ・エバーハートです。"
" Sure. Com'in. "
"散らかしているわ。キッチンでお話を。"
"向こうへ。"
"化粧品のセールス?"
"いいから、行って。"
2人は、座る。
"結婚していたのね?ごめんなさい。知らなくて。"
"そうでしょうね。ほとんど夫婦じゃないみたいだもの。あなたと会ってから、あの人、1週間も仕事をしていません。お金が入らなければ、困るんです。息子のジョージが、耳の病気で、膿が止まらなくて、ひどくなる一方です。お薬は高いし、もう。I'm sorry. "
"私の事を、どこで?"
"ジョージを友達に預けて、おとといの晩、彼をつけたんです。"
トミーが覗く。アリスは、手を叩いて追い払う。
"2人が、お店から出て来るのを見ました。お店で、あなたの事を。"
"もう、心配しないで。2度と会わないわ。"
"リタ。いるんだろ。"
トミーが怯えて、やって来る。
"ママ。"
"返事しろ。いるのは、分かっているぞ。いるんだろ。リタ。このアマ。Open the door. 開けるんだ。アリス。開けろってんだ。聞こえねえのか。"
ベンが、ガラスを割り、侵入する。キッチンのリタを捕まえる。
"何していた?答えろ。何してたってんだよ。帰れ。Get out. Get out. "
リタを気遣うアリスに言う。
"どいていろ。"
"出てかねえと、怪我するぜ。容赦しねえ。出て行け。"
ベンは、リタを蹴り上げ、リタは、外に逃れる。
玄関で、ベンは一服する。
"何の真似なの。乱暴はやめて。落ち着いて。帰ってちょうだい。"
"命令しやがるのか。"
化粧台に置かれたものを、手で払う。
"許さねえ。"
アリスに手を掛ける。
"2度と命令するな。ぶちのめしてやる。"
"よし。言う事を聞けよ。仕事が終わる頃、店に迎えに行く。Right? 時間は、1時半だ。よく覚えとけ。これが、俺だ。がたがたぬかしやがると、ただじゃおかねえ。リタは、うるせえ女だ。分かったな?" 
" Ah ha. "
"迎えへ行く。"
" I'm all right. どうしよう。急がなきゃ。閉められない。"
トミーが、トランクの上に乗る。
"待って。落ち着くのよ。今度こそ閉めるわ。"
"はみ出ている。"
"入れて。"
"さあ、閉めるわよ。"
"乗るよ。どう?"
"やった。閉まった。行きましょう。"
"お金は?"
" No. "
トミーが、トランクにぶつかり、倒れる。
" You are all right? "
アリスは、引き出しをかき回す。
" Com'on. "
2人は、車で、町を出る。
"早く教えて。どこよ。" 
"ここだ。"
"ほんとに。分かったわよ。"
"ちょっと待って。"
"こんな風になっている。カーブだ。"

"3日目。ハンターたちは、またゴリラを発見。捕まえようと、思った。1人が、木に登り、ゴリラをがつん。でも、自分も木から落ちた。彼は、叫んだ。犬を殺せ、撃ち殺せ。"
"座って。"
"分かった?'
"何を?" 
"ジョークだよ。最初、ゴリラを。"
"分かったわ。"
"分かっていないよ。最初、木から落ちたゴリラは、犬にかまれて、振り回された。"
"ゴリラが、犬にかみつかれて、何よ?"
"振り回されたんだ。"
"振り回されたのね。分かった。"
"犬は、どこを噛んだか?"
" Where? "
"クルミさ。詰まり。"
"それがジョークなの?"
"違うよ。このジョークの鍵だ。クルミ、知っている?"
"タマよ。"
" Right. 詰まり、この話は。"
" Com'on トミー。運転に集中させて。"
"聞いてよ。ゴリラが木から落ちた。これ、分かる?ハンターは、落ちながら、こう叫んだ。犬を殺してくれ。だって、犬に噛みつかれて、振り回される。笑えるだろ。"
"トミー。もうやめなさい。"
"ゴリラは、木から落ちた。そして、犬に。"
"まだ話す気?"
"ママに、教えて上げたいんだ。"
" I understand. Shut up. "
"ジョークは?"
" I don't know. "
"じゃあ、もう一度だ。"
  
▶︎ウエイトレスの仕事
バッファローの頭蓋骨を模した入口のステーキハウスから、2人が出て来る。
"トゥーソンなら、お金を稼げると思ったのよ。来ちゃったわ。"
"今、いくらあるの?"
"90ドルよ。衣装に、お金がかかったのよ。"
"あいつと寝たの?"
" Tell me. "
"教えて。"
"寝る訳ないでしょ。"
"ずっと、帰りが遅かった。"
"お話していたのよ。コーヒーを飲みながら。なぜ、こんな話をあなたと。"
"僕も、年頃だよ。"
"ませた子。"
"トゥーソン。インディアンスの本拠地"
"嫌な所だ。"
"安いモーテルを探すわ。看板がないかしら。Cheep Hotel って。"
モーテルに入る。
"まあ、我慢だね。"
"ここが、おうちよ。"
"ベッドがない。"
"この辺にある筈よ。ほら。あった。これよ。"
アリスは、グリーンのドレスに着替える。
"仕事を探して来るわ。See you later. "
"期待しないよ。" 
"全く。"
"有名歌手の友達って、言いなよ。"
アリスが、買い物袋を抱えて、帰って来る。
"仕事を見つけたわ。"
" Where? "
"メルとルビーの店、" 
"ピアノあるの?"
"ないわ。"
"歌えないじゃない?" 
"歌わないのよ。ウエイトレスよ。What's that. "
"イカすお店なの?" 
"最高だわ。メリーとルビーの店よ。"
"いい名前だよ。"
"経営者は、メルよ。ルビーは、14年前に死んだの。働き過ぎでね。制服を着なきゃ、いけないの。ウエイトレス。"
"僕も、働くよ。"
" Thank you. 大丈夫よ。歩いて通えるし、食べ物にも、困らない。お金も、作れるわ。忘れていた。ギター教室を見つけたわ。"
 アリスの働き口。料理を運び、コーヒーを淹れる。
"フロー。ベーコンだ。"
"メル。ベーコンは、まだ?メルには、亀もびっくりよ。ノロいったらないわ。"
"マスでもかいてんの?勃たないくせに。ドアに挟んで、こすれば、勃つかもね。"
"俺のは、でかい。むらっむらっと来るぞ。"
"あんたと寝るなら、チキンでも食べて、パズルでもしていた方がマシ。おあいにくさま。"
"ご注文は?ココアね。ご注文決まりました?"
"まず、笑顔をくれ。"
髭面のディビッドに、声を掛けられる。
"タマゴは?"
"ハム・エッグだ。"
"ハム・エッグね。焼き方は?"
" Everybody 聞いとくれ。"
同僚のウエイトレスが、スピーチを始める。
"新入りだ。名前は、アリス。今日から働く。歌手だったそうだ。そうでしょ?おっぱいがでかい。でも、触るんじゃないよ。触るんなら、あたしのを触んな。彼女のは、見るだけだ。"
"気にするな。じき慣れるさ。"
"トーストを?"
" Yeah. "
"コーヒーを?Thank you. "
" Make a smile. "
ディビッドは、アリスを優しく見守る。
若いウエイトレスが、オーダーを間違えて、おたおたする。
"トーストを。皿を下げるな。"
"気の毒に。"
"ベラ。ベラ。ティー・バッグは、どこかしら?どこにも、見当たらないの。"
ベラが、戸棚の蓋を、床に落とす。
"何やってる?"
" I'm sorry. ティー・バッグを?"
"奥の下よ。コーヒーのそば。茶色の缶よ。"
"これね。Thank you. " 
客のピークが過ぎて。
"分かるわ。こういう仕事は、初めてね。すぐ慣れるわよ。大体は、10時半には、音を上げて帰るけどね。"
"ご親切に。どうも。"
"私を嫌いね。"
"好きじゃないわ。"
"結構よ。嫌われたって。"
"でしょうね。フロー。私は、あんなスピーチ要らないの。詰まらない冗談は、やめてね。"
" Jokes? "
"新入りの歓迎会は、結構よ。ほっといて。"
"あんたとは、絶対、食事を一緒に、したくないわ。"
"大丈夫。その心配はないわ。"

トミーに、愚痴をこぼす。
"大嫌いよ。あんな店。But 17ドルもチップを稼いだ。来週には、もっと稼ぐわ。"
"こんな洞穴、早く出たいよ。"
アリスは、飲み物に、指を浸し、トミーの顔めがけて、しずくを飛ばす。
"よせよ。よせったら。怒るぞ。"
トミーは、アリスの胸に、飲み物をかける。トミーは、顔にコーラをかけられる。トミーは、洗面室に駆け込む。
"駄目よ。よしなさい。もうお仕舞い。本気は、なしよ。よしなさい。ビショビショになるわ。"
トミーは、容器に水を満たして、アリスに迫る。
"後悔するわよ。頭から、かけてあげるから。本気よ。ドバッといくわよ。"
トミーは、水をぶちまけ、ピッチャーから水をかけられる。
"1抜けた。お仕舞いよ。もう終わりだってば。停戦よ。"
"ほんと?"
"今度こそ。ほんと。見てよ。ビショビショ。まったくもう。"
アリスは、またトミーの頭に、水を垂らす。

" Bye. "
" Bye. "
トミーが友達と、ギター教室から出て来る。
"変だ。変わった子だ。トゥーソンでも、珍しいタイプだ。"
"そうかな?"
" Yeah. What's your name? "
"トム。"
"あたしは、オードリー。本名は、ドリスだ。変な子。ワイン飲む?"
" What? "
"うちで飲もう。"
" No. I can't. 両親は?"
"パパは、2年前に蒸発。ママは、3時から仕事。売春なんだ。"
"帰って来たら?"
"気づかない。何が起きたって、騒ぐような人じゃないんだ。ママ、厳しいの?"
"別に。歌手だ。ウエイトレスも。"
"歌うウエイトレス。変だ。飲むかい?"
"今日はやめとく。今度の水曜に、会った時に。"
" Right. Bye bye. "

ディビッドが、アリスに言い寄る。
"金曜は?"
"悪いけど、駄目よ。"
"大晦日は?"
"その頃、この町にはいないわ。"
"俺が、嫌いか?"
"違うわ。"
"髭が嫌なら、剃る。"
"髭は好きよ。"
"そうか。"
"コーヒーは?"
" Yeah. "
隣のトミーは、コーラにストローで、息を吹き込む。
"トミー、何しているの?やめなさい。オードリーと遊んで来たら?"
"メンスなんだ。"
"だったら、端の席で。大人しくしてなさい。じっとよ。"
"詰まんない。B, O, R, E, D. BORED. "
席を立って、歩くトミーは、ベラにぶつかり、食器を落とす。
"何て事。"
トミーは、窓際の席に座る。
"これを読む?"
"何なの?"
"花嫁殺人事件よ。"
"花嫁殺人事件か。"
"塗り絵しても、いいわ。"
"子連れデートは、辛い。"
店が閉まる。
" Goodnight ladies. "
"あら、バイクなの?"
"父が、迎えに。父に会う?"
"喜んで。"
"お迎えに上がりました。"
トミーがやって来る。
" Thank you, sir. "
"アリス。父のデュークよ。"
"どうも。"
" How do you do? "
"素敵ね。"
"かっこいい。"
"変だ。気持ち悪い。父のデューク。"

レストラン。開店準備中。
"開かないの。"
ベラが、ボトルを差し出す。
"フロー。バターは?"
"知るもんか。"
"嘘つけ。"
"私の股ぐら、舐めてから疑いな。"
"バターをどこへやった?"
"うるさいね。マスでも、かいてなよ。"
フローが、ドアを開く。
"お待たせ。さあ、どうぞ。"
"ポテトとコーヒーね。
ディビッドがやって来る。 
" Hi. "
トミーを連れて、外に出る。
"これ、おじさんの?"
積んでいる馬を見せる。
"ママ。馬だよ。乗ってもいいでしょ。"
"駄目よ。"
"だって、ここにいたら、どうにかなっちゃうよ。"
"本を読みなさい。"
"ママ。"
ディビッドが見ている。
"いいわ。遠くへ行っちゃ駄目よ。馬を射よね。"
"作戦だ。"
トミーは、牧場で、馬に乗る。

"牧場には、ウサギも。"
"いいわね。" 
"でも、主に馬だ。"
"珍しい?"
"リボンって馬が、最高。まだある。おじさん、アイスクリームも作っている。日曜においでって。"
"牧場なんて、ママは、行きたくないわ。"
"行きたいよ。"
" No. "
"行こうよ。"
" No. No. "
"ちぇっ。"
トミーは乗馬する。
"気をつけて。"
"しっかり。"
"上手よ。"
"6年越しで、手に入れた。色々な牧草を、一面に植えた。あっちは、アルファルファだ。後、2か月で芽が。"
" I see. 驚きね。"
"いい所だ。"
"本当ね。"
"トミー。爪を立てるなよ。" 
" OK. "
トミーは、牛の乳を絞る。アリスに引っ掛ける。
"やったわね。牛に、蹴られなさいよ。"
"爪を立てるぞ。"
"すげえデカパイだぜ。仕方ねえだろ。"
"どこで、そんな言葉、覚えたのかしら。"
"バックれちゃって。"
"きっと学校ね。"
アリスは、キッチンで、洗い物をする。
"台所用品は?"
ディビッドとトミーは、ギターを弾き、歌う。
"一緒に、歌ってくれ。"
"カントリーは、駄目よ。"
" You try. "
"男の人にしちゃ、色々揃っているのね。台所よ。"
"妻が揃えた。"
"奥さんがいるのね?"
"いや、昔の話だ。2年前に別れた。妻が、子どもを連れて、出て行った。"
"ごめんなさい。"
"いいさ。うまくいかなくなり、彼女が出てった。俺も、止めなかった。"
"詰まんないの。弾いてよ。"
"殴られたいの?"
"殴れば。"
"いい態度ね。"
ディビッドに、モーテルまで送って貰う。
"トミーを。"
"静かだと、この子らしくないな。"
"そうなの。"
"いい子だ。"
"楽しかったわ。"
" Me too. "
レストラン。フロー。客が、体に触れ、声を上げる。
"私に触ると、手を怪我するよ。"
"ちょいと値上げを。アリスの注文が、出来ている。アリスは?"
"トイレで、サボっているんでしょ。"
"なぜ嫌う?いい子だ。"
"彼女が、私を嫌いなのよ。"
レストランの書き入れ時。
"BLT上がり。ベラは、どうした?注文品が溜まっている。"
"フロー。ベラは、どこだ。"
"ミルクがまだなの?"
痺れを切らして、メルが給仕する。
"ベラは?"
"答えないのか?"
"便所で、クソ食ってるよ。"
料理の載ったトレイを落とす。汁が飛び散る。
"何やってんだ。"
"ベラを探しただけだぜ。"
客が笑う。
アリスは、いたたまれない思いがして、フロアに背を向ける。
"すまないな。女は、扱いにくいよ。"
フローは、アリスに謝る。
"悪かったわ。I'm sorry. "
"あんな汚い事、よく言えるわね。うちの子より、酷いわ。"
"うけたの?"
"呆れたのよ。自分で、考えたの?"
"まさか。父さんが、よく言っていたのよ。"
" You are kidding. "
"面白い人なの。農場で働いているわ。名前は、ピーピー。でも嫌がるの。下痢みたいだって。"
2人は笑い転げる。
"詩も作るの。アリスは、アリの巣。"
"良かった。"
ウエイトレス3人が、肩を組む。
"何している。仕事しろ。どこへ行ってた?この忙しいのに、何を笑いこけている?"

"宿に帰る途中で、募集の看板を。思い切って、決めたの。"
"いい事を教えるわ。上のボタンを外すの。かがむたびに、チップが増えるわ。私は、先週、50ドルも儲けたわよ。"
"こう?"
"やっぱりやめて。私の分が減るわ。"
"面白い人ね。あなた、話相手が欲しいのね。"
"あなたこそ、寂しいんじゃない?"
"ビーに会いたい。今、2時半頃かしら?"
" Exactry. なぜ分かるの?"
"勘よ。今頃、ビーは、メロドラマを。登場人物のシェフって男に、入れ込んでいるの。"
"いい人紹介するわ。あなたに、会えば、誰だってぞっこんよ。"
"嬉しいわ。でも、気にしないで。父のデュークに、夢中なの。"
"気が変わったら、教えてちょうだい。"
"そうする。日差しが、気持ちいい。"

トミーとオードリー。
"ワインを?"
"やめとくよ。"
"万引きする?"
"何を?"
"何がいい?"
"特にないよ。"
" What do you want? "
"別に。ギターの弦が欲しいけど、高いもん。"
"シカゴmusic storeかい。''
" Yeah. "
"行こう。"
楽器店。
店員の後ろで、オードリーが、わざとこける。
"大丈夫か?"
"膝が。"
" What happened? "
"床が、つるつるだよ。チア・ガールのテスト、駄目かも。"
"悪い事したな。"
トミーが、弦を盗る。
"もう大丈夫だろ。"
" Thank you very much. "
"頑張れよ。"

ディビッドの牧場。
"フェンスを直すより、鞭で、調教したい。"
"電気を通せば、いいわ。"
"それも、無駄さ。じき、リンゴがなれば、連中は、じっとしていない。"
"連中?"
" Cows. 覚えとけ。奴らは阿保だ。鶏は、もっと阿保だ。七面鳥など最悪だ。七面鳥は、雨が降ると、上を見上げる。ぽかんと口を開けて、溺れ死ぬ。"
"嘘よ。"
"本当さ。うちの婆さんは、200羽死なせた。一度の豪雨でだ。"
"髭に触らせて。Soft. "
2人は、キスをする。

"兄貴とキスを?"
"したんじゃないわ。男の唇をぬるぬるにするのは、一番、下手なキスだと教わったの。"
"唇の話か。"
"キスの前には、唇をよく拭けと言うの。歯が当たらないよう、唇を閉じろとも。郵便配達は、2度ベルを鳴らすで、こんなアップのキス・シーンがあったの。ラナ・ターナーとジョン・ガーフィールドよ。2人の顔が、段々近づいて、音楽も盛り上がる。その瞬間、2人は、口を開けたの。おかしいわ、どうしたのかしらと、私は、兄の横顔を見たの。兄は、画面を睨んだままだった。3週間経って、突然言ったわ。アル、考えたが。"
"アル?"
"私のあだ名よ。キスの時は、やはり、唇を開けた方がいいな。"
"面白い兄貴だ。オチを心配したよ。"
"私たちは、映画を見て、芸能男に憧れたの。"
"なぜ、引退を?"
"私が、結婚したからよ。主人は、故郷に住みたかったの。歌いたかったけど、彼が、歌など許さんと。はいと私。そんな感じが、好きだったの。"
"好き?"
" Well 男らしさとは、黙って付いてこいだと、思っていたのよ。兄とやったコントは、こうよ。踊り子が休んで、舞台に穴が開き、私たちが呼ばれたの。兄が、舞台を前に進む。私は、後ろで、同じ動きを。私の姿は、見えないわ。兄が、こう言うの。今日は、妹がいないんです。突然、私が(手を振り、登場する。)。観客は爆笑。もう一度こうよ。"
"面白い。"
"これが、私の初舞台だったの。"
"凄い。"
"ノー・ギャラよ。舞台で、お金貰えると、知らなかったのよ。19の時、私は、モンテレーの素敵なホテルで、歌い始めたの。楽しかったわ。だから、あの町に帰りたいの。"
"目的は、どっちだ?"
"目的?What do you mean? "
"帰りたいのか、歌いたいのか。"
"両方よ。贅沢?"
"2つは同じか。"
"違う?"
"どうかな?"
"考えている事があるの。"
"俺にもある。"
"ほんと?"
"君のは?"
"そうね。教えてあげるわ。秘密の場所に行って、内緒話の取り替えっこしましょう。"

牧場。
"犬を殺せ。撃ち殺してくれ。分かった?説明したげる。最初、ハンターは、銃を撃たなかった。全然だ。なのに、2回目は、犬を撃てと。犬を殺せ、撃ち殺してくれだ。待ってよ。どうしだか、分かる?"
ディビッドは、車を出す。
レストランに入る。
"あら、どうしたの。魚釣りに行くんだ。"
"ピッツビルの湖だ。"
"そう。その湖だよ。"
"チーズバーガーを4個頼む。"
" OK. 事件が、男の人が、通り魔に遭ったの。"
"チーズバーガーが、先だ。話は、後で聞く。"
"ほかにご注文は?"
"いいよ。"

"どうしたの?大事件?"
ディビッドが、車の下を覗き込む。
"オイルが漏れている。修理しなきゃならん。"
"どう?"
"トラックを直さないと、駄目だそうよ。"
"分かった?"
"がっくり。"
" Cheer up. 明日で12歳よ。大人だわ。何だってできる。釣りも、結婚さえも。"

"3っつ数えたら、抜け。口ほどにもない奴め。"
トミーは、鏡に向かい、決闘の真似をする。
"25セント入れて、もう一度やれ。一匹狼の気障な野郎め。早撃ちなんだってな。"
アリスとディビッドは、ソファで寄り添って、寝そべっている。
"抜いてみろよ。俺が、3っつ数えたら、抜け。1、2、3。バン。"
"トミー。Please. 心臓が止まりそうよ。"
"25セント入れて、もう一度だ。ママ。"
" Can I put it in? "
"あっちへ行け。"
アリスは、トミーを足で、押しやる。
"ユニークな子だ。"
ディビッドが、ギターを教える。
"3度も教えたぞ。DからA7だ。"
"3度も言ったよ。A7は、指が痛くなる。"
"トゥーフィンガーで。"
"僕の手は、子どもの手だ。無理だよ。"
"練習しなきゃ始まらないぞ。"
"答えは、こうだ。No. "
"やらずに、諦めるのか?"
"ディビッド。"
トミーは、大音量で、ステレオをかける。
"やめろ。"
ディビッドは、ステレオを止め、レコードを壁に叩き付ける。
"クソガキめ。分かるか?"
"カントリーなんか、馬鹿みたいだ。屁だ、クソだ。"
トミーが、ディビッドの顔を紙皿ではたき、トミーは、尻を叩かれ、倒れ込む。
"殴ったの?そうなの?"
アリスが、詰め寄る。
"そうだよ。"
"殴ったの?"
"あの子には、必要だ。"
"男は、皆、同じ言い訳をするのね。なぜ、殴るのよ?"
"俺の家だ。言う事は、聞いて貰う。"
"怒ってばかりのくせに。お手本になってほしかったわ。"
"君は、いい手本だな。"
"努力しているわ。"
"挙句が、あんな口を利く子に。"
ディビッドは、部屋の飾り付けをはがす。
"私の言葉は、悪い?"
"甘やかし過ぎだ。あの子は、何でも、聞いて貰えると思っている。"
"それは、あなたよ。自分の事ばっかり。あなたに、子どもの何が分かるの?"
"君は、どうだ?"
"どういう事よ。"
"もういい。"
"よくないわ。子育てに、口を出さないで。私の子よ。自分の子は、どこ?私は、自分に、自信を持っているわ。"
"そうか。仕事も俺の事も、迷っているんだろう。"
"いいえ。決めたわ。"
ギターを持って、出て行く。
"止めないでしょうね。"
とぼとぼ歩いているトミーを拾う。
"乗りなさい。16キロも、歩いて行く気?"
"何だよ。"
"何だよとは、何よ。"
"誕生日には、モンテレーへ。心配ないって言ったぞ。"
"行くわ。"
"ウエイトレスなんて。"
"どこが悪いの。あんたを養っているのに。絶対に、モンテレーへ。"
"僕の希望は、どうなのさ。"
"2人で行く約束よ。"
"何が約束だ。"
"誰に向かって、言っているの。行くったら、行くわ。"
"もし、仕事があって、もし、お給料が良くて、もし、男と付き合わなきゃだ。絶望的。もういいさ。"
"今度、口開けたら、力ずくでも、閉じさせるわ。"
トミーが、口を大きく開ける。
"本気ですからね。降ろしてやるわ。一人で、歩いて行きなさい。"
車を側道に入れて、停める。
" Out. Get out. Go. Walk. "

"うちのパパは、最悪さ。よく、ベルトでお尻を叩かれた。今でも、言ってやりたい。"
オードリーの家。
"ハリー。ベルトでケツを叩いてやる。" 
"うちのパパも、最低だった。I guess so. 分かんないや。"
"この町の学校へ行く?"
"モンテレーへ行く。"
"トゥーソンから出られて、幸せだよ。この町の学校は、変だ。理科のエメット先生は、男のくせに、ヘアネットを。恐ろしい。不気味だ。"
"お代わりを。"

"トミー。いるの。"
モーテルに、トミーの姿はない。アリスは、半泣きになりながら、車で、トミーを探す。
"どうしょう。"

"何か遊ぼうよ。"
"気持ち悪い。25セント入れて、try again. "

モーテルの公衆電話が鳴る。アリスは、電話に突進する。
" Hello. Yes. You OK. Oh my God. Thank you. "

"店の主人は、大目に見ると。息子さんには、言い聞かせました。"
"あの服は?"
"気分が悪いと言うので、シャツを。"
"気分が?"
"ワインです。
サインを求められる。
"歌うウエイトレスさん?"
オードリーが、尋ねる。
"トミーの母よ。"
"オードリーです。Nice to meet you. "
"よろしくね。事情を聞かせて。"
"別に、単なる失敗です。ちょっとしたね。"
" Who? "
" Stores. "
"行きましょう。"
"行かなきゃ。ママが、うるさくて。トミーによろしく。"
"伝えるわ。"
オードリーは、出て行く。
"あばよ。Suckers. "
"どうぞ。"
" Thank you. "
トミーを引き取る。
車の中。
"酔っ払いね。"

朝。
"寝てなさい。"
目覚ましを止めて、また寝る。
ドアが叩かれる。
"アリス。遅刻よ。"
"ごめんなさい。寝坊した。すぐ、行くわ。"
レストラン。
" You OK? ディビッドは?"
アリスは、かぶりを振る。
"どうしたの?こっちへ。Com'on. Com'on. "
アリスは泣き出す。
"ちょっと話しましょう。Com'on. こっちよ。Shut the door. "
"何もかも、終わりよ。なぜかしら。頑張っているのに。ディビッドに出会い、モンテレー行きの貯金で、トミーの贈り物を。カウボーイの服よ。うまく行かないわ。私は、主人が、とても怖かったの。怒らせまいと、ビクビクしていた。"
"怖かった?"
"そうよ。彼のいない今、思うの。彼は、私を気にかけていると、思っていた。でも、分からないのよ。"
"気にしてくれてたんでしょう?"
"違うの。ただ、そばにいただけよ。私は、男なしじゃ生きていけないわ。"
"聞いて。私も、色々あったわ。私には、娘がいるの。可愛い子よ。でも、歯が悪くて、治療に、4,000ドルもかかるの。私には、無理なお金よ。亭主は、ケネディ暗殺以来、別人のよう。"
"あなたが、犯人とでも。"
"あなたは、美人だし、グラマーよ。しかも、歌が上手だわ。"
"聞いた事もないくせに。"
"歌手だったんでしょ。"
"子どもの頃は、上手かった。でも、もう音痴よ。"
"何を言ってるの?そんなもの、誤魔化せるわ。"
店では、ベラが泣きべそかいて、給仕している。
"ディビッドの奴、殺してやるわ。本気よ。"
"愛しているんでしょ。"
"そうよ。"
"フロー、アリス。何している?"
"メル。We'll be back a minute. "
"店が大変だ。"
"待って。"
"早くしろ。"
"うるさいと、2度と、戻らないから。"
"店は戦争だ。"
"戻ってほしくないの?"
"頼むよ。"
店は混乱。ベラは、休業の札をかける。
"そうよ。これは、私の人生だわ。男に捧げるものじゃない。"
"当然よ。"
"耐えられない。"
"何が望みなの?"
"それが、分かれば、泣きやしないわ。"
"アリス。これを見て。私が作ったの。材料は、何だと思う? Safety pins. これが、私の元気の素。望みを、はっきり持つの。一度決めたら。迷わず、突き進まなきゃ駄目。"
"決めたわ。ディビッドに、1発お見舞いよ。"

"メル。違うわ。注文はトマトよ。"
"トマトだ。"
"添えるのよ。"
ディビッドが、やって来た。
"担当変わって。"
"トイレに籠る気?"
"お願いよ。"
"彼に何と?"
"私と寝たきゃ、出直しなよ。"
"分かったわ。"
ディビッドに向かう。
"ご注文は?"
"君だ。2人で、またうちに来てほしい。自由にしていい。やり直すんだ。君を理解したい。I'll try. Please. "
アリスは、給仕に回り、ディビッドは、席を立ち、外を眺めて言う。
"頼んでるんだぞ。"
"それが、何よ。"
"どういう事だ。"
"下手に出たからって、口説けると思わないで。"
"そうじゃない。"
"当然よ。"
"君らと一緒に、暮らしたい。"
"あなたとトミーの喧嘩を見るのは、御免よ。"
"俺たち次第だ。君は?"
"歌いたいの。私は歌手よ。これからは、それを一番大切にするわ。"
"上手いのか?"
"私なりに、歌えるわ。"
"まるで、賭けだな。賭ける価値は?"
" Yes. Yes. Deffinietly. Yes. Yes. "
"もう秋ね。"
"モンテレーも大切か?"
"あなたには、分からないわ。"
"説明しろ。"
"あの頃、幸せだったのよ。"
"ガキの頃だろう。ここでも幸せになれる。"
" Sure. Sure. でも、行くと言ったら、行くわ。"
"止めないさ。俺も、一緒に行く。牧場など構わん。All right. "
" All right. "
"コーヒーをくれよ。"
" All right. "
2人は、抱き合う。客が拍手する。

"オードリーに手紙を書くよ。"
"彼女は、ちょっと大人ね。"
"そうかな。いい子だ。後2週間で、新学期が始まるよ。"
"そうね。新学期までに、モンテレーに行くと、約束したわね。でも、学校は、この町にもあるわ。"
"僕、ここの学校へ?"
"かもね。"
"やった。Great. "
"モンテレーは、いいの。"
"ママの発案だろ。"
"良かった。歌なら、どこでも歌える筈よね。"
"ディビッドを?"
"愛しているわ。"
"音楽の趣味悪いけど、いい人だ。喧嘩しても、うまく行くもんなんだね。"
"いい事言うじゃない。ありがとう。My boy. "
"ママ、息ができないよ。"
【感想】
夫の顔色を伺いながら、ぴりぴりしながら生活して来た女性が、夫が急死し、途端に困窮する。仕事に、できれば、結婚前にステージに立っていた歌手の仕事に就こうと奮闘する。しかし、因習の壁に弾かれ、思うに任せない。映画の中で、歌も披露されるが、何か冴えない。また、一人息子は、口が減らず、我儘に振る舞うので、感情移入できない。実質的に本作のフィナーレとなるレストランで、ディビッドとアリスが互いの真意を確かめるシーンは、どこか、古い映画を思わせ、スコセッシの趣味の良さが垣間見える。
12歳の少女を演じるジョディ・フォスターが、存在感を放つ。

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