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一人勝手に回顧シリーズ#フランシス・F.コッポラ編(15)ヴァージニア/エドガー・アラン・ポーに捧ぐ

【映画のプロット】
▶︎ホール・ボルティモア
ある所の小さな町。大都会から、ほどほどの距離で、道路が、町の中央を走っていたが、店は、数えるほど。Coffee shop、金物屋、保安官事務所。色んな人間が、いた。風来坊、家出した若者、fanatics、retired seniors 。詰まり、誰からも干渉を受けたくない連中ばかり。それが、叶う町だ。昔から住んでいる保安官のボビー・ラグレインジは、木工が趣味だった。だが、この町で、一番、驚くべきものは、7つの面を持つ時計台だった。このスワン・バレーの町のどこからでも、見えたが、時計が示す時刻は、すべて異なっていた。明らかに、悪霊が、棲みついているのだ。何年か前に起こって、今も、町に影を落としている殺人事件が、関係しているのか。あるいは、湖の対岸に集まるteenagerのせいか?悪魔礼賛のような悪事にふけっているという連中だ。彼らの服装、彼らの聞く音楽。若者を誘惑する謎のリーダーの名は、『フラミンゴ』。それ以上の悪い噂もある。色々あったその時期に、ホール・ボルティモアという三流作家が、この町にやって来た。オカルト系のシリーズ本を、サイン入りで、売るためだ。"
" Excuse me. 本屋は、どこかな?"
車の運転席から、ホール(ヴァル・キルマー)が、尋ねる。
"町には、本屋がない。"
" Great. "
金物屋で、サイン本を売り始める。客はいない。
"ホール・ボルティモアの本を?"
" No thanks. "
女性客が、品物を見て回る。ホールは、咳払いする。
"ホール・ボルティモアの本を?"
" No. Who's ホール・ボルティモア?"
" I'm me. "
"あなた?よろしく。"
"あなたは?"
"ステイシーよ。 Excuse me.  Sorry. "
娘がついて行く。
" Hi. ステイシー。Bye. "
店主に尋ねる。
"この店は、銃を売っている?"
" No weapons. 弾薬だけ。"
"弾薬だけ?"
" Yeah. "
"ナイフは?"
"通路2だ。"
保安官(ブルース・ダーン)がやって来る。
"ホール・ボルティモアか。I'll take one. Could you autograph? "
" Sure. "
"ボビー・ラグレインジに贈ると。"
" Best witches(魔女の祝福)と共に"
"あんた、スティーブン・キングには及ばんな。"
"悔しいがね。"
" You know 実は、俺もホラー小説を書いててね。"
"本当に?あんたは、保安官だろ?"
"40years. 俺の書いたものを、読んで貰えないかな?何年か前だが、この町で、大量殺人事件が、起こってね。この町は、呪われていると。"
"折角だが、ここで、本を売ったら、次の町へ移動するんだ。"
"オカルト作家が、大量殺人に興味は、ないのか?"
" No. "
"俺と、一緒に来な。死体置き場にある仏を、拝ませてやる。"
"仏が?"
" Yes, sir. "
" Now? "
" Yes, sir. "
"小説になるネタだ。"
2人は、死体置き場に行く。
"こいつを見てくれ。"
"木製の。"
"気を付けろ。お前、何年働いているんだ。"
人形が寝かされたストレッチャーが、ボビーの腰を打つ。
"仏を乗せた台車で、俺の足を轢いたぞ。"
"  Sorry, sherif. "
"死人が、よく出るのか?"
"前にもあった。連続殺人でね。名刺代わりに、杭が打ち込んである。"
"顔は見たくない。"
"そうだろう。分かるよ。可哀想な娘だ。アーバス。アーバス。"
" All right. All right. "
"勤務中だろ?"
"娘の身元は?"
"色々な娘がいてね。宿無し、家出娘、もっとタチの悪い奴、皆、湖に、たむろしている。この事件をネタにして、俺と一緒に、本を書かないか?"
"あの杭は、そのままにしとくのか?"

コーヒーショップ。
"魔法瓶に、コーヒーを入れてくれ。"
" OK. "
ホールは、しおりを手に取る。
"エドガー・アラン・ポー?"
"滞在した。"
"チカリング・ホテルに。昔の話よ。"
"チカリング・ホテル?Thanks. "
" Have a good day. "
ホールは、チカリング・ホテルに行く。ホテルは、廃墟と化している。エドガー・アラン・ポーの滞在を記念したプレートを見つける。
"大先輩に敬意を。"
プレートに、ワインを注ぐ。

ホールは、モーテルに部屋を取る。
バーボンを取り出し、布で覆われた自著を手に取る。裏表紙に、処女作を娘に贈るとの献辞が、記されている。
"パパの誇りは、お前とこの本だ。愛を込めて"
"運命の巡礼者"
本の間から、娘ヴィッキーの写真が。
"何か、書きたい。それも、自分の事を、自分のために。底無し沼へ落ち込む自分を止めたい。"
ホールは、パソコンで、妻と通信する。
"その道は、たった一つ。もう、オカルト本は、書かない。サムにも、そう伝えた。自分のために。"
"ヴィッキーの事故の前も、お酒に溺れる前も、同じ事を。"
"自分のペースで、書く。"
"それは、よく分かるわ。本当よ。分かっている。もう1冊書いて、終わりにするのよ。その後、本当に書きたいものとじっくり取り組むのよ。サムに、前借りの話をした?"
"プライドが傷ついたよ。オカルトは、書かない。"
"あなたは、気楽な旅行。私は、借金取りに、追われている。言い逃れをして、取り繕い。やっと、食べているのよ。身勝手な人だわ。Grow up. "
"俺が、witchesに詳しいのは、女房がwitchだからだ。"
▶︎夜の散策
ホールは、パソコンを閉じる。グラスに氷を入れ、バーボンを注ぐ。外で、鐘が鳴る。時計台の1面の時計が、午前0時を指している。ホールは、外に出て、立ち小便をする。夜の林道を歩く。同じ方向に歩く少女と出会う。
" Hi. "
" Hello. Where come from? "
"さっき、すれ違ったわよ。My teeth を見てるの?"
"いや、君が突然、現れたので。"
"歯並びが、気になるの。"
少女の目の縁が赤い。
" Show me. "
少女は、歯をむく。
"金具が目立つんだよ。"
"歯並びが、悪いの。"
"じきに、気にならなくなる。"
"この歯だから、あだ名は、ヴァンパイラ。あなたは、Vと呼んで。"
" Vか。いいね。本当の名は?"
"ヴァージニア。"
"ヴァージニアか。13歳くらい?"
"まだ、12よ。でも、背が高いから。あなた、オカルト小説を書く人ね。金物屋でサインを。I love your books. 特に、エリザベスのあのセリフ。私を見捨てたら、お墓から甦って、お前を絡め取る。"
" Thank you. I like your look. "
" Oh yeah. こういう趣味なの。私が、怖くない?"
" What? "
少女が、歯をむく。
" Yes. A little. あのclock、3度も真夜中を告げたぞ。"
"ここでは、時間は意味ないの。サイン会も、行き損なった。"
"ホテルがまだ開いている。ソーダでも、奢ってあげよう。僕にも、娘がいてね。"
"悪いけど、それは、やめた方がいいわ。"
" Why not? "
"本当は、サイン会で、私の事、話したかったの。"
"今、聞こう。"
" No, I can't. "
" Com'on. "
ホールは、ホテルに歩いていく。
"店は、開いてるわよ。Come in. "
"散歩に出て、道に迷った。あの娘は、誰?"
"どこに娘が?"
"レストランは?"
"24時間営業よ。あの時計だから、朝食だって、いつでも OK. "
" Yes. "
"あなたは?Mr..."
"ボルティモア。"
"あの時計。"
"正確な時刻を告げない。"
"そのうち、あんたも驚く。"
"あの鐘の音。昔より、いい響きだ。"
"ビールを。"
"メルヴィンは、時計台の管理人よ。教会の鐘もね。重荷になるだけの厄介な仕事。"
"機械が、もう寿命でね。だが、俺は、毎日、登っている。文字盤は、お前が、サマータイムの発案者か?って目を。本当の発案者は、誰か?ヒトラーだ。ゴルフ好きの医者も、サマータイム派だよ。ゴルフを長くできる。時を変える?時が、ひとを変える。あんたは、サマータイムをどう思う?"
"考えた事もない。"
"じゃ、何を考える?"
" That's grave. "
" Grave? "
"踏んでいいの。全部、お墓だから。"
"ここが?"
"床下に、12人の子どもが埋められている。"
"子どもが、13人殺されたの。Well, he is right. 12人が殺され、1人は逃げて、地獄に落ちたの。"
"いつの話?"
" Oh, long time ago. "
"時計が直った。時計が直ったぞ。"
" Clock is fixed. Clock is fixed. "
女主人が、ギターを弾き、歌う。
♪ブンブン飛ぶ蜜蜂に タバコの木
 ソーダ水が 泉から湧き起こっている
 レモネードが流れ落ち 青い鳥が歌っている
 そこがビッグロックのキャンディ・マウンテン
 ビッグロックのキャンディ・マウンテン
少女が、中を覗く。
♪おまわりさんは 木の義足 
 ブルドッグの歯は ゴムでできている
 雌鶏が産むのは 半熟たまご
 畑では 果物がたわわに実り
 納屋は どこも干し草の山
 雪の降らない その土地を目指そう
 みぞれにも縁がなく 風も吹かない そこへ
 そこがビッグロックのキャンディ・マウンテン
 ビッグロックのキャンディ・マウンテン
 おまわりさんは 木の義足
"いたな。"
少女は、身を翻すが、何者かが、首に噛み付く。
"血を吸われた。"
"こいつ、吐き出せ。"
"酷い子。記録して。"
"咬まれたのは?4時か?"
"違うわ。"
"時計の時刻は、4時だぞ。"
ホールは、モーテルに帰る。ホテルを見返すと、子どもたちが、外に駆け出して来る。
少女が現れる。
"死んだ子どもたちよ。"
一人の子どもは、男に抱っこされている。男が、口を開く。
" You. 何している?何を聞いた?"
"何も、聞いていない。"
"早く消えて。あなたって、酷い人。"
" Children hurry. 月が沈む。寝る時間だ。おいで。皆、来るんだよ。"
男と子どもたちは、ホテルの中へ入る。
"僕は、道を見失なった。今の僕に必要なのは、この話かも。"
少女は、走っていく。
"待てよ。どこへ行く。"
吊り橋の上から、ホールが川を覗くと、水の中から手を伸ばす少女が見える。
"私を助けて。"
ホールはつまずき、髭の男に、助けられる。
" You, まさか、エドガー・アラン・ポー?Show me the way. "
ホールは、男に先導されて、モーテルに帰る。
"ホール。Wake up. そこにいるんでしょ。"
パソコンから、妻が呼び掛ける。
"私よ。あなたの妻。Hello. "
ホールは、辺りを見回す。
"ホール。目が覚めているんでしょ。目が覚めた?It's me. "
" What? "
" This is your wife. "
"ああ、分かっている。I need a secound. "
妻は、文字の書かれた皮の表紙を見せる。
"待て。それをどうする気だ?"
"この価値を知っている?"
" Yes I do. "
"16万ドルで売れるのよ。"
"もっと、価値がある。僕の金庫を開けたな。馬鹿はよせ。本を下に置け。僕は、真剣だぞ。"
"分かってる。凄い本なのよね。"
"ホイットマンの手作りの本だ。個人で所有しているのは、世界で4人だぞ。Please. "
"妻より本の方が、大事なのね。"
"手袋を付けろ。" 
"本を取るか。前借りの交渉か。"
" Please. "
"こんな事は、嫌だけど。でも、やるっきゃないわ。"

ホテルの廃屋。ホールは、ドアを蹴破り、侵入する。
"墓だ。"
ライトで、床を照らす。

スワンバレー図書館。
" Hello. "
" Miss.ラグレインジが、眠っているの。"
" I'm sorry. チカリング・ホテルの資料を、見たいんだが。"
"探してみるわ。"
資料を持って来る。
"ありがとう。"
"ポー氏。街の時計台を題材に"
"住民には、大衝撃"
"罪のない子どもたちが、犠牲に"
"彼らの魂を救わねば、悪魔の餌食となる"
悪魔、時計台と、メモする。時計台の鐘が鳴る。
ホールは、保安官事務所を訪ねる。保安官は、椅子で眠りこけ、ノックに反応がない。ホールは、電話をかける。
"保安官事務所を。"
"お待ちを。そちらは、393 229 3923ですね。おつなぎします?"
" Yes. "
"今日は、休みだ。"
"やあ、どうも。作家の私だ。今、窓の外だ。入り口に回るよ。"
"分かった。休みだ。"
"話を。保安官は、あの死体の事は、話すなと。彼は、どこに?"
"日曜だから、教会だ。信心もしていないのに。"
" Listen. Listen. 郡検視官は、いつ杭を抜きに来るって?"
"俺は、何も知らねえ。"
" Somebody says 今週中と。"
"俺は、知らん。"
"入っても?" 
"どこにも手を触るなよ。証拠品だから。Don't touch anything. あいつに怒鳴られるのは、うんざりだ。"
電話をかける。
"保安官は?ちょっと待って。"
"ボビー。電話よ。"
"例の作家って奴が、事務所に来ています。"
"日曜なのに?代われ。"
"保安官。私だ。殺されたって娘が、忘れられなくってね。"
"  Really. "
"夢にまで、出て来てね。一緒に、本を書こう。"
保安官は、指を鳴らす。

"コウモリの家"
"保安官が、コウモリを飼っているのか?"
"あっちは、鳥の巣箱だ。コウモリと鳥は、違う。奴らも、それを知っている。"
"私は、オカルト系が、専門だが、血を吸うwitchが、吸血鬼?"
"全然違うよ。俺の記憶にある限り、ここに本物のwitchがいた事はない。"
"年寄りの姉貴だって、そう言うよ。"
"ここが書斎だ。かけて。楽しみだな。共著。ホール・ボルティモア/ボビー・ラグレインジ。"
"いや、アイデア提供。ボビー・ラグレインジ。"
"アイデア提供?俺は、素晴らしい人物を創ったんだぞ。"
" Who? "
"ボビー・ラグレインジ。"
"何だと?詳しく聞こう。"
"タイトルは、吸血鬼の処刑台。売れるぞ。"
" Not bad. Go on. "
" The girl, who is she? ただの家出娘だ。年よりちょっと老けて見える12か13歳の家なし娘だ。木の杭は?"
"意味は?"
"あれが、凶器?死後、加えられたものか?あれは、犯人の名刺なんだ。杭の一方の端は、滑らかで、指紋はない。犯人は、それをゆっくり、娘の体に、押し込んだ。突き刺してはいない。まるで、some kind of machineを使ったように、見える。"
" machine? "
"だから、vampire の処刑台なのさ。つまり、言うなれば、vampire用のelectric chair だよ。"
"特別に作られた処刑装置か。ユニークな発想だ。どういう物かな?"
"ちゃんと、考えて、模型を作ってある。 Ready?"
"  Really. "
"これだよ。Watch this. 凄いだろう。"
人形の胸に、杭が刺し込まれる。

ホールは、テーブルを組み立て、ビデオ通信の準備をする。バーボンをグラスに注ぐ。
" I can help you? "
" Hey, サム。売れる本なら、前貸しを頼めるか?"
"またか。"
"そう、まただ。"
"読み応えが、あるんだろうな?霧の湖だけじゃ、困る。"
"あんたは、キツい事を言う。題名は、vampire excusions. "
" Vampireか。"
"殺された幼い娘が、主人公だ。幼くて、可愛い。"
"殺された子か。いいね。文体より、話を面白くしろよ。処刑は、どう絡むんだ?"
"そこは、これから考える。最後は、どんでん返し。涙もある。明朝、あら筋を送る。デニーズに、小切手を送ってくれ。"
"悪くない。ホラー小説のホール・ボルティモアが、vampire に挑戦。売れるぞ。"
"そうだろ。"
"結末は?"
"完璧だ。"
"確かだな?"
"勿論。だから、女房に送金してくれ。そしたら、本を書く。2万5,000ドルだぞ。"
"1万、デニーズに送っておく。"
"2万5,000だね?ありがたい。"
"送金は、1万。あら筋が、明朝届かなきゃ、払わん。霧の湖は、やめろよ。"
" THE VAMPIRE EXCUTIONS ホール・ボルティモア著(協力 B.ラグレインジ)"
ホールは、バーボンを、またグラスに注ぐ。
"むしむしする夜だった。空は、曇っていて、霧が、もやが、もやが立ち込めていた。その湖、ミニ湖には、ミニ、ミニ、ワナパヌーキ湖には、霧が、ゆっくり広がっていく。ヴァージニアの音のないdreamのように。駄目だ。霧の湖、霧の漂う湖。霧の漂う湖。サムが切れるぞ。それは、湖面を覆う空からのtears. それは、鯨の尻。違う。湖面に、立ち込めた霧は、カミソリの刃に似ていた。湖の霧は、僕の最初のwifeのようだ。時と共に、散って行く。"
バーボンを注ぐ。
"頭が回らない。舌も、もつれてきた。僕は、突然、黒人のバスケ選手に、変身しちまった。she is, she タフタのドレスを。タイプを打っている僕は、60年代のゲイのバスケ選手だ。短いショーツ。露出度は高いが、ジャンプしやすい。"
"湖には、霧がなかった。もやだけ、淡いもや、もや、ミス。Miss ヴィッキー。可愛い君は、今どこに。"
娘の写真。
"オカルト作家の娘 ボート事故死"
在りし日の娘の映像。ホールは、書きかけた書き出しを、すべて消す。
ホールは、保安官事務所に赴く。助手が、寝ているのが、見える。ドアは、鍵がかかっておらず、中に入る。死体の安置室に入る。電話が鳴り、助手が起きる。
"保安官事務所。助手のアーバスだ。"
保安官。
"あの作家。俺に、色々、用事を頼んで、モーテルに戻っていない。奴を見たら、後30分、ここで待つと。30分過ぎたら、帰る。"
" All right, sherif. "
"鍵が開いているよ。"
"お前のためだよ。PJ。"
"ダイエットは?"
"頼んだハンバーガーか。トランプやるか。"
"いいけど、負けを払ってよ。"
" PJ。コードをそっちへ。"
" OK. "
ホールは、2人の目を盗んで、入り口に回る。
"入るよ。"
"黙って入って来るな。心臓が止まるよ。"
"Sorry. ノックしたろ。"
"保安官が、あんたのモーテルから、電話してきた。後30分だけ待つと。"
" Thanks. "
"貸しは、18ドルだよ。"
ホールは、モーテルに戻る。
"グッスーリ。"
" Night pose. Sleep all. Night all. リストになかったが、俺が愛用しているスリーピノル。これで、眠れる。一緒に仕事するんだろ。それなのに、睡眠薬か。"
"夢も見るかな?"
"服用法は?"
"読んだ。"
ホールは、ベッドに横になる。
"それで、書くのか?都会の作家は、酔っ払って、恍惚状態で書くのかと。"
"そうだよ。ある男の手を借りれば、完璧な結末の本になる。この町に、本物のクスリを処方してくれる医者が?"
"保安官に聞くのか?たそがれのレース、ボビー・ラグレインジ著。彼女の肌は、ミルク・クリーム。レースのネグリジェの下に、透けて見えた。"

夜の森の中。ホールは、歩く。ポーが、腰掛けている。
"また現れたな。謎を解きたいんだ。"
"私は、君を待っていた。彼女の墓のそばでね。入って。"
小屋の中に入る。
"あなたは、エドガー・アラン・ポーだ。だから。"
"頼み事かね?"
"小説の結末を。"
"一時期、ディケンズと文通して、小説を結末から、逆に書く手法を話した事がある。"
グラスにバーボンを注ぐ。
"小説の長さは?"
"1ページ、40行から50行で。200枚くらい。"
"テーマは?"
" Beauty. "
"語調は?"
" Melancholy. "
"それが決まれば、後は、繰り返しの文句だ。"
" I like it. 時計台に関係ある文句では?"
"リフレーンは、短い方がいい。私の有名な作品では、一言のリフレーンが、詩を引き締めた。"
"消え去りぬ。"
"単調なリフレーンを繰り返すのは、ほとんどの場合、人間だ。だが、言葉を話すのが、理性のない生き物ならば?真っ先に思い浮かぶ動物は、オウムだ。だが、同じように大鴉も、言葉をしゃべる。しかも、不吉な鳥だ。あの詩の雰囲気に合う。上等なウイスキーで、こんな話を?"
"素晴らしい話だ。続けて。"
" So, I ask myself. メランコリーな語調で。一番、悲劇的と思われているものは、何か。"
" Death. "
"その悲劇的な死を、最も、詩的に表現できる状況は?それが、最も、美に近付くのは、どういう状況だ?The death of a beautiful girl が、それだ。それは、疑いもなく、この世で、最も詩的なテーマだ。またそれを物語るのに相応しい人物は、疑いもなく、その娘を愛した男だ。"
ポーは、グラスの酒を飲み干す。
"私は、両方をつなげた。恋人の死を悲しむ男。そして、詩の中で、消え去りぬと叫び続ける大鴉。メランコリーなあの詩の節は、全部、消え去りぬで終わる。"
"それで、結末の付け方は?"
" Your story is a tragedy. "
2人は、外を歩く。
"舞台は、私も、1度泊まった古いチカリング・ホテル。町には、子どもたちが。孤児、家出した子、親に見捨てられた子。その子たちを、フロイドという牧師が、引き取った。親切な牧師で、子どもを愛し、親身に世話をして、教理問答を教え、神の愛と善の大切さを説いた。"
教室の光景。
♪小さなお耳よ 聞く事に注意して
 小さなお耳よ 聞く事に注意して
 天の聖霊は 私たちを愛している
2人は、教室に入る。
"そして、ある晩、子どもが1人いなくなり、それが、始まりだった。"
"1人いない。ピーター?まさか、湖の向こう岸へ?"
湖の向こう岸では、若者がたむろし、火が焚かれる。
"誘われても、向こう岸へ行くんじゃないぞ。It is very important. あいつらは、あいつらは、害虫だ。穢れている。向こう岸に住む悪霊だ。死にきれずに、さまよう。Vampires. "
♪小さなお手てよ 触るものに注意して
 小さなお手てよ 触るものに注意して 
2人は、子どもらが、テーブルに着いた食堂に入る。
"子どもたちを養い、野生のセロリやキジムシロ、トリカブトの汁を、魔除けとして、子どもたちに塗っていた。"
"そっちを向いて。Thank you. That's right. もういいよ。"
牧師は、子どもに、魔除けの汁を塗る。
"これで、お前たちに、怖いものは何もない。そのうち、ナイロンの靴下を履けるようになるぞ。"
牧師は、嫌がる少女に、汁を塗ろうとする。

ホールに、ファックスが届く。
"あら筋はどうした?待っているんだぞ。結末は?"
時計台に留まるフクロウ。
保安官事務所。
"それ、ママの降霊盤だよ。"
"見ろよ。"
"何をするんだ?"
"大胆な新しい試みが、ミステリー小説やチャーリー・チャンシリーズを、面白くした。ボビー・ラグレインジも、革新的な名探偵だ。お先にどうぞ。"
部屋に、保安官助手とPJ。
"これが、降霊盤ってもんだ。それに、この場所がいい。死人に近い。Killer は、まだ近くにいるかも。"
"死体置場は、やり過ぎだ。"
"明かりを落とそう。"
3人は、降霊を始める。
" Hello. "
"前に会った?"
" Yes. "
"動かしているな?"
" No. "
" Shut up. "
" H、I、M。HIM。あんただ。"
ホールも加わる。
"  OK. あんたは、誰?"
" I AM HER 。私は、あの娘。"
死体の足が、動く。
"今の音は?"
" Ask. "
" Ask what? "
" Who killed you? "
" B。"
皆の手が、宙をさまよう。
"保安官、動かすな。"
" Who killed you? "
" B。"
"湖の悪ガキどもだ。奴らは、悪魔だ。ボスのフラミンゴって奴は、vampire なんだよ。そうだろ?"
" GOODBYE。"

時計台の鐘が鳴る。
湖の向こう側。火が焚かれ、人影が動く。
"アーバス。銃を隠せ。"
ホールが、尋ねる。
"君は、キルケ? "
" Exactly. "
"フラミンゴは、どこだ?"
"あっちよ。"
"蓋のように重く 暗い空が 倦怠に蝕まれた私の上で うめき声を上げる "
"インテリだな。ボードレールか。"
"俺は、人生を色々、知っている。ボードレールの夢もね。"
"空は 地平線の円周を 覆い尽くし
夜よりも 悲しげな暗い陽光を 我々に注ぐ "
"ある女の子の行方を知りたいんだ。歳は、12か13。"
"女の子は、大勢いる。"
"ここで、悪が行われてるって噂を聞いたが。気になるかい?"
" Look around. ここのどこに、悪がある?Look at the moon. "
" It's beautiful. "
"俺も、心配している。あの子を、3日ほど、見掛けないから。面倒を見てやっているんだが、一体、何があったのか?"
警察車両のサイレンが鳴り、コロニーの前で止まる。
"アーバス。何をしている?"
保安官が、車から降りる。
"そこか。制服はどうした?任務でもないのに、ここで、何をしている?彼が、あんたの了解を貰っているって。"
"パートナー作家殿。あんた、俺と組んで、この事件を調べるのでは?俺は、人に騙されるのを好まん。馬鹿にされる事もな。Famous フラミンゴ様か。こいつは、驚きだな。Lady killer様だ。"
"アーバス。逮捕しろ。"
女たちが、前に出る。
"フラミンゴは、ああいう人よ。来るのか、行くのか、もういない。"
バイクが、走り去る。

"これが、鍵?"
"そうだよ。"
"これか。時計台に登る鍵。"
" Yes. 何する。鍵を返せ。登らせんぞ。"
ホーリーとメルヴィンは、時計台に登る。鍵が、なかなか開かない。
"変だな、今日は。すんなり開いたのに。"
" Yestaday? "
"先週だったかな?"
"先週?"
"その前かな?"
" Me try. Thanks. "
鍵が開く。
"あれは?"
"前も、こうだったのか?"
"俺は、下に降りる。ここは、祟られているんだ。"
"このsmell。"
"悪魔が棲んでいる。乗り移られるぞ。俺は、降りる。あばよ。"
ホールは、ライターの火を灯す。無数の歯車が、回転する。
ベッドに寝かされた遺体の、布がめくれ、ホールの娘が現れる。
"パパ、一緒に来て、私を助けて。"
ホールは、頭を押さえる。鐘が鳴る。
"パパ、助けて。パパ、助けて。..."
ホールは、床に倒れ、床が抜け、落下する。

ポーとホールは、強い風の中、歩く。
" Listen. "

湖のほとりで、女性がアリアを歌う。フラミンゴも聞き入る。月が出ている。
ポーとホール。
"悪魔かな?"
"いや。"
2人も、歌う女を見る。
"違う。"
"誰が、あの娘を殺したんだ?Tell me. "
"本当に、知りたいのか?"
"真実をね。"
"結果を覚悟しろ。"
"勿論だ。全部、話してくれ。"
"そう望むなら。君が、思い出すだけで、恥と思う昔の出来事だ。"
牧師が庇護する子どもたちが、調理をする。
"これを。"
"切れるナイフね。"
"秘密の味って、何かしら?"
"これは、特別なレモネードなんだよ。"
" That's right. Good job. Careful. "
少女が指を切り、血が流れる。
"アリス。飲んでいいわよ。"
子どもたちに、ヴァージニアが紙コップを渡す。
"おいしいだろ?沢山、飲んで。"
ヴァージニアたちが、毒が盛られているのに、気づく。
"飲んじゃ駄目。何か入っている。やめて。"
"ヴァージニア。大人しく。騒がないで。ヴァージニアが、悪いんだ。美味しいレモネードなのに。"
無理に、幼女に、レモネードを飲ませようとする牧師を、ヴァージニアが制する。
"暴れるな。静かに。"
その光景を見ているポーが、話を続ける。 
"彼は、恐ろしい決断をくだした。子どもたちが、vampire になるよりはと、飲み物に毒を入れ、喉を裂いた。
牧師が、死んだ少女たちを、円状に並べる。牧師が、次々に喉を裂く。
"どうにかしろ。助けるんだ。"
牧師は、頭を抱える。
" The death of beauty. "
"1人の娘だけ、その場を逃げた。"
"ヴァージニア。また隠れん坊か?I find you. 見つけた。"
ナイフで襲う。
"ヴァージニア。ヴァージニア。"
フラミンゴが、バイクにまたがり、発進する。牧師は、逃げるヴァージニアを追う。牧師は、ヴァージニアを捕まえるが、フラミンゴが、掬い上げ、バイクで逃げる。フラミンゴは、ヴァージニアを前に跨らせ、走る。フラミンゴは、ヴァージニアの首に噛みつき、血を吸う。
"道は、ただ一つ。神に通じる道。"
牧師は、ヴァージニアの写真を焼く。ヴァージニアが寝ている小屋に、牧師が忍び込む。
"来るんだ。"
"そのおぞましい男は、彼女を、地下室に繋いだ。"
" No. やめて。" 
"黙れ。大声を出すな。神様の言うとおり、黙れ。"
"どうだ。好きに叫ぶがいい。神にも、もう聞こえん。"
ヴァージニアは、額に血を流したまま、鎖で繋がれる。
♪道はただ一つ 神に通じる道
 道はただ一つ 神に通じる道
 キリストの名により 洗礼を受けん
"彼女が、美しさに輝いていた日々。生きた人間としてではなく、夢の女として私は、彼女を愛していた。"
2人は、地下牢に入る。
"分かるか?Dear friend,  She was "
"ヴァージニアの墓"
従妹で、愛する妻だった。Her name is ヴァージニア。だが、別の名を与えた。レノーア、ベレニス、レディ・ライジーア、マデリン・アッシャー、アナベル・リー、エレオノーラ。"
戸口に、ヴァージニアが立ち、手招きする。2人は、外へ出て、ヴァージニアと向かい合う。ヴァージニアの服に、結婚が、べっとり付いている。ヴァージニアは、ゆっくり空に上がっていく。

"パートナーの作家さんよ。目を覚まして、開けろ。Wake up. Wake up. Open the door. "
ドアを開ける。
"これを見ろ。俺は、作家週報を、購読しているんだ。Vampire excutions って新作で、1万ドルの手付金が払われたと。"
" No. No. それは、旧作の支払だよ。女房の懐に入った。腹の立つ話だ。だが、Vampire  Excussions は、やはり共著で行こう。ボルティモア+ラグレインジ。"
"俺の5,000ドルを渡せ。"
"金の話は、結末を書いてからだ。'
"結末?犯人を明かすんだよ。それが、ミステリー小説だ。"
"待て。"
"犯人を明かすんだ。"
"  OK. "
"一番大事な要素を、忘れている。"
"何を?"
"主人公のラグレインジ探偵さ。事件を解決するのは、彼だ。もっと、話に登場させなきゃ。連続殺人鬼が、湖畔で、女たちを殺しまくる話だ。その女どもが、ビョーキの犯人の心に、火をつける。女どもも、どう考えても普通じゃない。悪魔に身を売ったアバズレだ。ここが、いかれているんだよ。"
"本当に、そう思うのか?悪魔に、身を売ったのだと。"
" Who? "
"娘たちさ。"
"当たり前だ。あいつらが、崇めるのは、邪悪なもの。死とsexだ。What do you think? やめろよ。俺の事じゃない。間違うな。あいつらだ。悪魔を崇めている淫売どもだ。"
置き時計で、ホールの頭を叩く。
ホールは、地下牢の外にいる。
牧師が語る。
"そう、邪悪なものを崇めている。死とsexをね。淫乱な女どもだ。奴らの白い肉体には、悪魔が宿っている。あんたの頭から離れないあの娘もね。"
"僕は違う。"
" It's not me. "
"奴らだ。"
"奴らだ。悪魔の化身だ。私は、魂を救ったのだ。"
"貴様。"
"私を裁くな。"
"私を裁くな。"
"父なる神よ。私の主よ。"
"許したまえ。"
"私は、神を忘れ、快楽を求めました。聖霊と神の光の届く所に、私を留めてください。穢れを清め、髪を湯に浸け、すべてを清めて。"
牧師の言葉とポールの言葉が、重なる。ポールは、メモを取る。
ヴァージニアは、叫ぶ。牧師は、自分の手で、顔を張る。ヴァージニアが、手を振ると、牧師の頬が張られる。
"完璧な結末を。"
牧師は、叫びを上げ、ぬかづく。縞々の蛇が這う。
"怖い。この崖を覗くだけで、体が震える。"
"小さな崖だよ。"
ポーが言う。カンテラで照らす。
" Wait. Wait. "
"もっと先へ行くか?"
"早く、結末を教えてくれ。"
"これ以上行くと、自分の事を書く事になる。君の求める結末は、君自身なのだ。"
"ここまで来て、止めるだと。"
"じゃ、face to the truth. この話に、それ以外の結末はない。"
崖下の川に、ヴァージニアの姿が映る。川面を走るボート。船上の今は亡き娘。
"我が身を恥じる。私も行くべきだった。娘は、あの時、パパも一緒に、行ってと。小さなボートかと。まさか、スピードボートに、乗る気だとは。前の晩に、酒を飲み過ぎて、起きられなかった。それに、女が一緒だった。我が身を恥じる。目覚ましを掛けたが、セットを間違えて、鳴らなかった。"
ボートは、前を横切る船団のロープに引っかかる。ロープに血がにじみ、娘は、湖に投げ出される。
"もし、行っていたら、もし、行っていたら、娘は無事で。私のせいだ。我が身を恥じる。一緒に行けば、あんな事には、私が、悪かった。私のせいだ。私が、行っていれば。"
2人で、あの小さは亡霊を、分かち合おう。My friend. Our work は、我々が、可愛い彼女に用意した墓なのだ。"

ホールは、モーテルで目覚める。テーブルに突っ伏した格好で。額から血。保安官事務所に赴く。ドアを蹴り破る。蹴つまずき、目の前に、ストレッチャーに乗せられたアーバスの死体が流れて来る。見上げると、ラグレインジも遺体となり、吊るされている。胸に、血でGUILTYと書かれて。
" Oh  God. "
安置室に置かれたもう一体の遺体に近づく。顔を覆う布を取ると、ヴァージニアが現れる。口を聞く。
" Help me. パパ、help me. "
ポールが、胸に刺さった杭を抜く。血がほとばしり、娘が声を上げる。血塗れのヴァージニアは、起き上がり、微笑みを浮かべ、にじり寄る。歯の矯正具が外れ、牙が覗く。ホールは、噛みつかれ、悲鳴を上げる。

出版社。
"完璧だ。文句のつけようのない素晴らしい作品だ。"
"そう思うか?"
" I do. オカルト作家のボルティモアは、過去のものだ。"
" Never more. "
" The Vampire  Excussions は、3万部売れた。ほどほどの数字だ。"
"保安官は、杭殺人と助手殺しの犯人として、自殺。"
"ホイットマンの本は売られず、ホールは、妻の元に。"
"その後、フラミンゴは、姿を見掛けた者はいない。"
【感想】エドガー・アラン・ポーに導かれ、過去と往還する話と思っていたら、ドラキュラ映画だった。しかし、ヴァージニアがドラキュラとなった経緯、なぜフラミンゴは、ドラキュラとなったのか、宙吊りにされる。死者か生者か分からない存在が、画面に横溢する。生身の人間は、妻と出版社のエージェントくらいか。保安官とその助手も、どこか後ろ暗く、最後は恐らくは、ヴァンパイアに殺されてしまうから、生気のない人みたいだ。現実的にストーリーを追うので、あまり入っていけなかった。

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