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一人勝手に回顧シリーズ#フランソワ・トリュフォー編(1)#大人は判ってくれない/アントワーヌ・ドワネルものの端緒

【映画のプロット】
亡きアンドレ・バザンの思い出に
教室で、女のピンナップが、こっそり回される。
"ドワネル。持って来い。"
"けしからん。立っていろ。"
"後1分。静かに。後30秒で、集める。"
"前列は、用意して。3つ数える。1、2、3。集めろ。"
"待て。"
"寄越せ。"
"待てよ。"
"何だ?"
"ズルを。"
"許さん。"
"犬め。"
"全員、提出したか。出てよろしい。お前は、駄目だ。"
ドワネルは、呼び止められる。
"罰として、立っていろ。"
校庭で、思い思い過ごす生徒たち。
"不当なる罰に泣くドワネル。天のみぞ知る。"
"目には目を。歯には歯を。"
"暇さえあると、こうだ。お前たちには、罰として、3日間休み時間なしだ。"
ドワネルは、壁に不満を書きつける。
生徒たちが、教室に戻る。
"皆んな、面白いぞ。"
"何が、そんなに面白い?席につけ。"
ドワネルは、壁の前から、つまみ出される。
"お見事。若き詩人の誕生だ。だが、文法もろく知らん。明日までの宿題を出す。席につけ。"
"宿題は、動詞の変化だ。直接法、条件法、接続法で。『私は、教室の壁を汚した。そして、フランス詩の形式を汚した。』、『野ウサギ』"
"ドワネル。落書きを消すものを持って来い。早くしろ。"
"リシェ。勝手に席を変えるな。"
ドワネルは、教室を出る。
"『時は、茂みが燃えるように、赤い花々で色付く頃。もう、私の長い耳の先っぽが黒く』"
生徒の1人は、ノートをちぎる。
"『ライ麦より高く、飛び出て、目立つほどだった。私は、青く若い芽を食べた。あちこち走り回り、芽をつまんだ。ある日、くたびれ果てて、巣の中で、眠っていたら』"
ドワネルが、雑巾を持って、帰って来る。
"『可愛いマルゴが現れた。』"
ドワネルは、黒板に向かう教師の背後から、頭頂部を触る。
"シモノだな。"
"違います。"
"誤魔化すな。『彼女は、私をとても愛してくれた。』"
ドワネルは、落書きを消す。
"『優しい女主人だった。』"
生徒は、教師の目を盗んで、体を動かす。
"『とても親切で、思いやりがあって、膝の上で抱きしめ、キスしてくれた。』"
"誰だ?口笛は。名乗り出ろ。情けない連中だ。シモノか。"
"違います。"
教師は、チョークを投げる。
"違います。"
"卑怯者。酷いクラスだ。頭が悪いばかりか、生意気だ。それに、恥知らずだ。"
"それで消した積もりか。汚しただけだ。席に戻れ。親が泣くぞ。10年後が、思いやられる。"

生徒は、校門を出る。
"親の金をくすねるさ。"
"大変だぞ。モリセの奴。おいモリセ。水中眼鏡をどこで買った?"
"特売店さ。"
"金はどうした?"
"親から、くすねたんだろ。生意気だぞ。落書きがバレたのも、お前のせいだぞ。汚ねえ野郎だ。"
"覚悟しろ。"
"思い知らせてやる。"
ドワネルと友達
"今日中に宿題なんて。"
ベンチに座る。
"酷い奴だ。"
"先生だからな。"
"兵役に行く前に、ぶん殴ってやる。"
"Salut."
ドワネルは、家に帰る。
紙幣をポケットに突っ込み、母親の鏡に向かい、髪を撫でつける。3人分の食器を並べる。
食卓で、ノートに書き付ける。
"私は、教室の壁を汚した。"
母親が帰宅する。
"お帰り。ママ。"
"ただいま。"
"小麦粉は?"
"小麦粉?"
"買物のメモを読んだでしょ。メモはどこ?"
"なくした。"
"成績が悪いのも、当然ね。スリッパを。寝室のベッドの下を探して。小麦粉をすぐ買って来て。"
商店の前で、老婆と女。
"うちは、逆児でしたよ。大変でしたよ。家系なのね。母も、酷い難産でね。"
"うちは、長女のお産は、とても楽でした。でも、末娘の時は、帝王切開でね。死ぬところでした。"
"うちは、妹も難産続きよ。医者にも見放されて。その挙句、体中から血を抜かれてね..."

階段で、父親と一緒になる。
"今頃、買い物か。"
"忘れて。ママに叱られた。"
"ママを怒らせないように、気をつけろ。"
"それ、何?"
"フォグランプだ。ラリーに使うのさ。"
ドアを開ける。
"見ろ。息子も厚化粧だ。"
"冗談は、嫌いよ。"
"私も、同感だ。"
"お釣りは?"
"昼食代に。"
"パパにお頼み。"
"ご機嫌斜めだ。"
"昼食代を。"
"何だと?"
"1000フランだよ。"
"500フランでもいいんだろ。300でも。100フラン。ほら、500だ。今度だけだぞ。"
"ハサミはどこ?"
"ハサミはどこでしょう。"
"またそんな。"
"宿題なんかしてないで、早く食卓の用意を。"
"そう。何事も、時と場合を心得ましょう。この万年筆は?"
"交換した。"
"また交換か。"
"何だ。焦げ臭いな。"
"魚だよ。"
"雑巾を焼いているのかって、ママに聞いてきな。"
"Pourquoi?"
"冗談にさ。"
鍋が運ばれる。父親が、スープをよそう。
"片付けておくれ。"
"いとこの奥さんがね、近くお産だってさ。"
"4人目よ。ぞっとするわ。"
"夏休みには、子供をどうする?"
"林間学校があるわ。"
"それが、一番だな。"
"8か月も先よ。"
"計画は、早い方がいい。"

横断幕を広げる。
"あまり引っ張るな。いいだろ。"
"ライオン・クラブ。"
"何の騒ぎ。"
"そっと巻くんだぞ。"
"次の日曜日だが、どのコースがいい?"
"私は、駄目。約束があるの。"
"それは、困る。私が幹事だ。"
"無理よ。午前中は家事。午後は..."
"火遊びか。そんなところだろ。"
"早く寝なさい。"
"おやすみなさい。"
"なんて馬鹿なの。"
"冗談も分からんのか。"
"馬鹿な事ばかり、言って。"
"ゴミを捨てて、灯りを消すのよ。"
両親の言い争いが聞こえる。
"ラリーに出ると、コネも出来て、出世の糸口になるのに。"
"出世は、無理よ。"
ゴミを捨てに、階段を降りる。

"起きて。早く。寝過ごしたわ。"
鏡の曇りを、手で拭う。
"私は、教室の壁を汚した。"
"どれも、穴が開いている。"
"新しいのを買って。後は、洗濯屋なの。"
"子供のシーツ代は、渡した筈だぞ。"
"あの子は、寝袋が好きなのよ。そうね?"
"暖かくて、気持ちがいいよ。"
"まだいたのか。"
友達と会う。
"そう急ぐなよ。"
"遅刻するぞ。"
"慌てるな。どうせ罰を喰らう。"
"そうか。"
"そうさ。金あるか?"
"昼食代だけ。"
"任せろ。こっちだ。"
2人は、通学路を外れる。
"ここだ。カバンを扉の裏に。"
"盗られないか?"
"安全な場所だ。"
映画館を通り抜ける。ピンボールを遊ぶ。
高速で回る円筒の中に入る。ドワネルは、壁に逆さに張り付いてみせる。
母親が、男とキスしているのを見かける。
"息子よ。見られたわ。"
"どっちの子?"
"栗色の髪の子。今頃、こんな所に。"
ドワネルたち。
"どうする?"
"どうもしないさ。"
"あの男は?"
"知らない。"
"なら、心配ない。"
2人は、カバンを取り出す。
木の陰に、2人を監視する男。
"明日は、学校に行く。"
"欠席届がいるな。どうする?"
"古い欠席届がある。日付を直せばいい。これを写せよ。"
"字はどうする?"
"母親の真似を。"
"尖った字で、難しい。"
"何とかしろ。"
"そうだな。"
ドワネルは、家で細工する。
"『先生。誠に失礼ですが、実は、息子のルネの、ルネの体調が悪く』、ルネじゃない。"
書き損じを、ストーブにくべる。
父親が帰宅する。
"また焦げ臭いな。"
"下からだよ。"
"今晩は、2人だけだ。"
"ママは?"
"今夜は、遅くなるってさ。年末の会計の追い込みで。今夜は、男2人で、料理と食事。卵があるだろ。"
"あるよ。"
"よく勉強したか?"
"Oui."
"何を?"
"『野ウサギ』。"
"『ウサギと亀』か。"
"違うよ。『野ウサギ』だよ。"
"暗踊できたか?"
"当たらなかった。"
"自分から手を上げるんだ。競争に負けるぞ。先手を取らないとな。ママの誕生日が、もうすぐだ。17日だよ。何かプレゼントを。聞いているか?気持は、分かる。ママは、お前にきつく当たる。イライラしている。でも、ママの気にもなれ。仕事が多過ぎるんだ。内でも外でも。ここは、狭過ぎる。新しい家を探そう。ママは、事務所でも働き通しだ。女は、どこでもこき使われる。だが、ママは、お前を愛している。しまった。"
ドワネルが笑う。
"『私の旅ガイド』は?"
"知らない。"
"嘘つけ。知っている筈だ。昨日は、あったぞ。"
"知らない。"
"消えてなくなったと言うのか。"
"知らない。"
"ママに聞こう。もう寝ろ。ゴミを忘れるな。"
父親が、ドワネルの寝室を家探しする。
母親が帰宅する。
"社長よ。車で送ってくれたのよ。"
"残業手当は?"
"勿論よ。"
"即金で貰ったか?"
"いい加減にして。"
"それで、日曜はお遊びか。『私の旅ガイド』は?"
"子供が知っているわよ。"
"知らんとさ。"
"嘘ついているのよ。"
"血筋だ。"
"教育よ。"
"父親がいなくてもいいと言うのか。"
"何かと言うと、そればかり。聞き飽きたわ。子供を、施設でも入れなさいよ。私も、楽になるわ。"

ドワネルは、表を小走りで行く。
"月末まで持たないわ。"
"洗濯ぐらい自分でやれよ。シャツを洗うだけでもいい。"
"フォグランプを買ったくせに。"
"中古品だ。"
呼び鈴が鳴る。
"ねえ、開けてよ。"
"ガス代の集金かも。"
"外で言う筈よ。"
ドアを開ける。
"アントワーヌ君は、病気ですか?"
"病気?Pourquoi?"
"昨日、休んだので。"
"聞いたか?ありがとう。"
"Bien sure."
"驚かないのか?"
"驚かないわ。あの子の事だから。"
ドワネルと友達。
"どう言おう?"
"うんと大袈裟に言う方がいい。母が、脚を折りましたとかさ。休んだ理由に、一番、いい。"
"そんな出鱈目言えないよ。"
"別々に行こう。"
"僕が、先に行く。"
教師。
"お前か。宿題ができずに、仮病か。親を騙して。どんな欠席届を書かせた?見せろ。"
"ありません。"
"ない?欠席届もないのか?図々しい。"
"先生、実は、母が。"
"母がどうした?"
"死にました。"
"悪かった。済まない。病気だったのか?早く話してくれれば良かったのに。さあ、行きなさい。"
笛に合わせて、生徒は行進する。
"何と言った?"
"ほっといてくれ。"
教室。
"森のイバラは。"
"トゲだらけ。"
"また後ろから助けて貰っているな。"
"後ろは、ケツだ。"
"先生、邪魔するんです。"
"続けて。"
"どこから?"
"花瓶の花より。"
"花瓶の花より優り、独立と。"
"絶えざる危険は。"
"奴隷より。"
"永遠に優る。永遠の怠け者。もういい。"
"家では、できたのに。"
"ドワネル。御免。シモノだ。"
"『野ウサギ』。ジャン・リシュパン作。"
教師は、教室の後ろに行く。
"皆んな、座って。"
ドワネルが、心配そうに教室の外を窺う。母親が見える。
ドワネルは、父親にびんたされる。
"校長先生。懲罰は、当然ですよ。"
"しかし、限度がある。ご両親だけが、厳しくできるのです。"
"今夜、話し合おう。"
ドワネルと友達。
"どうする?"
"もう、親たちとは、一緒に暮らせない。家出するよ。"
"どうしてもか?"
"もううんざりだ。帰らない。家には、手紙を書く。"
"手紙を?"
"そうだ。"
"今夜、どこに泊まる?"
"分からない。構うもんか。"
"いい考えがある。1時間後に、広場で会おう。"
"Salut."

"叔父の印刷工場だ。床が腐って、凹んでいる。"
"崩れないか?"
"この下なら、暖かくて、眠れるよ。"
"この袋を、枕にすればいい。やけに重いな。夜中まで、散歩していろよ。"
"カバンを預かってくれ。"
"いいよ。"
ドワネルの両親。
"『お父さん、お母さん。僕は、嘘つきです。』"
"この私を、死なせるなんて。"
"好みの問題さ。『もう、一緒に暮らせません。1人で、頑張って生きて行きます。独立して、落ち着いたら、静かに話し合いましょう。さようなら。 アントワーヌ』"
"私を嫌っているのよ。"
"辛く当たるからだ。"
"嫌な子ね。"
工場で寝ているドワネル。人の話し声で、目が覚める。夜の町を歩く。
"お願い。捕まえて。"
ドヌーヴが、声を掛ける。
"いいよ。"
"姉さんか?"
男が声を掛ける。
"違う。犬を探している。"
"彼女の犬?"
"知らない。"
"犬を?"
"お願い。探して。"
"名は?"
"知らない。"
"よせ。子供は。"
"僕が、好きに頼まれたんだ。"
"分からんのか。"
メリー・クリスマス
商店の前に置かれた牛乳をひったくる。物陰で飲む。
賑やかな通りに出る。
朝。登校する。
"ドワネル。親に何と言われた?"
"全然。何とも。"
"allez allez. 親も親だ。こら、シャブロル。"
英語の授業。
"最後の質問は、もっと易しい。Where is the father?"
"The father?"
"Non. Father. 舌の先を、歯の間に挟んで。こうやって、ほら。Father."
"Father."
"Non."
"先生。無理です。そんな変な舌で。"
"黙れ。せ、せ、席に。席に戻れ。生意気な。アブウ。答えなさい。Where is the girl?"
"Beachだ。Beach. Beach. Beach."
教室に、職員がやって来る。ドワネルを呼ぶ。
"座って。フロショ。自習だ。"
ドワネルの母親と校長
"主人も、私も手を焼いています。"
"さぞかしお困りでしょうな。"
ドワネルが部屋に入る。
"どうしたの?どこで寝たの?"
"印刷工場で。"
"でも、成績より、行いが大事ですから。"
"その通りです。"
"反抗期ですな。"
教師が言う。
ドワネルは、連れ帰られる。
"風邪をひかないように。さあ、ベッドにお入り。"
"眠くない。"
"ママのベッドにおいで。"
ドワネルは、ベッドに潜り込む。
"お前の年頃には、私もね、問題があったの。親に反抗して、何も言わずに日記に書いたの。いつか、お前にその日記を読ませてあげる。なつやすみだったわ。羊飼いの少年と家出したけど、連れ戻された。そして、別れさせられた。仕方なかった。泣いて諦めたわ。母親の命令だもの。ママにだけ、教えて。あの手紙の事。どういう積もりだったの?"
"僕の行いが悪くて、学校で勉強しないから。"
"それで、どうなの?"
"学校を辞めて、一人で生活しようと思って。"
"馬鹿な真似は、およし。大学まで行かないと、駄目よ。パパを見てよ。出世できないからね。役に立たない科目もあるわ。代数とか、理科とか、面白くないし。でも、フランス語は、別よ。読み書きは、大切だわ。2人だけの約束をしましょう。この次の作文で、5番以内だったら、そうね、ご褒美に、1,000フランあげる。パパには内緒よ。"
ドワネルは、反応しない。

体育の授業
生徒と教師は、街をジョギングする。ぽろぽろ集団から、生徒が離れ、街に消える。

ドワネルは、カウチに寝そべり、本を読む。
『絶対の探求』
"瀕死の病人は、起き上がり、稲妻のような視線を、子供達に投げつけた。髪はそよぎ、皺は震え、顔は熱気を帯び、霊感に満ち、崇高に輝いた。彼は、手を上げて、叫んだ。有名なアルキメデスの言葉を。『我、発見せり。』"
バルザックの肖像を、壁に貼る。

教室
"実際に体験した心に残る出来事を書きなさい。"
"我、発見せり。『祖父の死』"
ドワネルは、バルザックの肖像の前にローソクを立てる。
食卓
"新しいタイピストが入った。賢い女だ。すぐ、社長にとりいって、秘書になったよ。大した才覚だ。社長とできているので、気をつけないとな。出張費の水増しの方法なんか教えたりして、馬鹿みたよ。ところで、私の『旅ガイド』は、どこに行ったのかね?隠さんでもよかろう。"
"またその話ね。"
"変じゃないか。焦げ臭いぞ。"
"火は、消したわ。"
"何だ?"
バルザックの祭壇から火が出ている。
"消してよ。早く水を。"
"この馬鹿。いい加減にしろ。ロウソクを点けて、どうする積もりなんだ。"
"バルザックに。"
"バルザックがどうした?こっちを向け。"
"作文を。"
"そう。約束したのよ。"
"何を?我が家の火災保険をか?放火でもする気か。このライターでどうだ?家の躾が、甘過ぎると言うのか。陸軍幼年学校行きだ。そこで、訓練を受けるか?厳しいぞ。"
"ねえ、気分を変えて、3人で映画を見に行かない?"
"結構な話だ。立派な教育法だ。"
"いい作文が書けた?"
"うん。書けた。"
"ねえ。ジュリアン。信じて。びっくりする事よ。"
"御免だ。"
"映画へ連れて行って。"
"何を見る?"
"『パリはわれらのもの』。"
"企んだな。"
"見たくない?"
"見たいさ。私は働いた。見る権利がある。だが、放火犯に映画とはな。"
3人は、外出する。
"アイスクリーム、美味かったよ。"
"ああ、美味かったな。"
車で家路につく。
"やっぱり謎解きの推理ものだったな。難解だ。笑っているな。"
"とても面白かったよ。"
"詰まらん。"
"良かったわ。内容があるわ。"
"何?"
"内容よ。"
"映画が。"
帰宅する。
"鬼将軍と参謀本部のお帰りだ。"
"ママの脚、綺麗だろ。"
"焦げ臭くても、楽しき我が家だ。"
"ゴミを捨ててきてね。"
"あの子、喜んでいる。良かったわ。"
ボディタッチする父親。

教室
発表している子の水中眼鏡を取り上げ、皆で回して、つぶす。
"ドワネル。お前の作文が最初だ。一番悪い例として、取り上げる。『絶対の探求』の丸写しだ。0点だ。バルザックに失礼だぞ。正に、"暗黒事件"だ。作文の主題に、祖父の死を選んだ。それは、勝手だ。ズル休みの口実に、親を殺してしまうほどだからな。"
"丸写しと違います。"
"丸写しだ。『瀕死の病人は、起き上がり、稲妻のように、視線を投げた。髪はそよぎ、皺は震え、顔は、崇高に輝いた。彼は、手を上げて、叫んだ。有名なアルキメデスの言葉を。"我、発見せり。"』。私も発見したよ。すべて丸写しだ。"
"違います。"
"校長室へ行くんだ。これを校長先生に。学期末まで停学だ。"
教室を出る。
"先生。彼は、写していません。"
"停学になりたいのか。"
"いいですよ。"
"生意気な。出て行け。"
"停学なら、出て行きます。"
"失せろ。"
"不当です。"
"不当だと?私は、教師だぞ。"
襟首をつかんで、引きずり出す。
"校長室へ行ったか?"
"逃げました。"
"何?逃げた?"
ドワネルとルネ
"1発食らわして、逃げたんだ。君は?"
"年末まで停学だってさ。僕は、もう家には戻れない。陸軍幼年学校に送られる。"
"陸軍?"
"軍隊の学校らしい。"
"軍隊なら、将来性があるな。"
"軍隊は、苦手だ。海軍なら兎も角。海が見られるから。"
"僕は、大西洋も、地中海も見た。北海は、知らないけど。来いよ。僕の家に、泊まれよ。"
2人は、こっそりアパートに入る。
"凄いな。馬だ。"
"親父のだ。記念品だ。"
"でっかい部屋だな。"
"手を貸せ。長椅子をどけよう。"
"両親は?"
"ここには、滅多に来ない。風車小屋と同じさ。金が要るな。最初は、金だ。"
"そう。金が問題だ。"
"何とかしなきゃ。先に遺産を貰うか。"
鍵付きのトランクから、紙幣をつかむ。カーテンに隠れる。
家人が、トランクを開け、金がないのに気付く。
2人は、街に飛び出す。
僧服の男に、声を掛ける。
"Bonjour madam."
"悪たれめ。"
ルネと父親
"ママに会ったか?"
"午後、会ったよ。"
"私には、全然、顔を見せない。何か、企んでいるな。果物はどこだ。"
父親が席を立った隙に、時計の針を進ませる。食料を集める。
子供部屋
"食えよ。"
ルネは、また食卓に戻る。
"9時半だ。クラブに遅れる。"
父親は、出て行く。
"急げ。映画に遅れるぞ。"
映画館。映画が終わり、壁のピンナップを剥ぎ取り、逃げる。
女子トイレの置き時計を盗む。
子供部屋
"喉が渇いた。"
ワインのボトルを取る。
"空っぽだ。"
"君の番だぞ。"
"親父だ。毛布であおいで、煙を散らそう。"
"これでいい。"
ドワネルは、ベッドの影に隠れる。
父親が、ドアを開ける。
"何事だ。煙だらけじゃないか。まるで喫煙室だ。タバコ代を、小遣いから天引きだ。何だ。これは、クズ籠ではないぞ。100万もするんだ。芸術品だぞ。これだけは、手放せないぞ。よし、もう灯を消して、寝るんだ。"
"おやすみ。"

屋根裏部屋の窓から、吹き矢を吹く。
"いいぞ。"
"こいつはいいや。"
"『旅ガイド』をくれ。"
"あの馬が、100万か。"
"あれを売ったら、殺されるよ。"
"100万入ったら、海へ行こう。船で、誰もいない沖へ出よう。"
ドワネル、ルネほか3人連れ。人形劇を見る。赤ずきん。劇を見つめる子供たち。
"何を盗む?"
"タイプライター。"
"それはいい。"
"ただ、番号が付いている。"
"質に入れるさ。売るとバレるから。"
人形に声援を送る子供たち。オオカミが捕まる。

ドワネルとルネ
ドワネルは、オフィスに忍び込む。無人のオフィスから、タイプライターを運び出す。
ドワネルたちは、タイプライターを抱え、街を歩く。男に声を掛ける。
"いくら?"
"1割だ。1,000フラン。"
"質に入れてからだ。"
"信用せんのか?"
男に、タイプライターを渡す。
様子を見ていた2人は、男を呼び止める。
"タイプライターを返せ。ズラかる気か?"
"駄目だったんだ。"
"なら、返せ。"
"手間賃に500フランだ。"
"ないよ。"
"少しはあるだろ。300でいい。"
"全然ない。返せ。"
"仕方がない。品物は、預かる。"
"そうはさせない。"
"返せ。ぶん殴るぞ。"
"騒ぐな。どうせ盗んだ品物だろ。"
"お巡りが来た。聞いてみようぜ。"
"分かった。返してやる。この餓鬼どもが。"
"重い。"
"順番だ。"
"誰の考えだ。こんな。"
"君だ。"
"君だろ。"
"もう嫌だ。捨てよう。"
"馬鹿言うな。"
"兎に角、事務所に戻そう。帽子を被って、入って行くよ。大人に見えるだろ。"
"持ってくれ。"
"言い出したのは、君だぞ。"
"分かったよ。持ってくれ。帽子を被る間だけだ。"
ドワネルは、タイプライターを戻す。
夜警に見つかる。
"お前は、ドワネルの息子だな。タイプライターを置け。パパが喜ぶだろうよ。こっちもどやされるんだ。思い知らせてやる。泣きべそかいても、駄目だ。ずる賢い餓鬼は、大嫌いだ。"
"ドワネルさんで?会議中に失礼ですが、すぐ来ていただきたいんで。びっくりなさいますぜ、不愉快でしょうが。"
"帽子に触るな。そうだ。"
ルネは、外で待つ。父親に連れられたドワネルが現れる。
"ピックニックに行くのとは、違うぞ。これで、ママも私も、安心して眠れる。友達の顔を、よく見とけ。もう会えんからな。"
"いずれは、こうなると分かっていたんだ。少しは、身に堪えるだろ。"
"署長さんに。"
父親と警察署長
"手を尽くしました。なだめたり、叱ったり。殴りはしませんが。"
"時には、折檻も必要です。

以上、書きかけ

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