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一人勝手に回顧シリーズ#フランシス・F.コッポラ編(2)#カンバセーション...盗聴.../危険な楽しみ

【映画のプロット】
▶︎ハリー・コール
休日と思しきユニオン・スクエア。大道芸人が、パントマイムを披露する。時折、音声にノイズが、混じる。
男が、ビルの屋上から、初老のハリー・コール(ジーン・ハックマン)を、望遠鏡で追う。ハリーは、ラブホテルの植え込みに消える。 
音楽が、流れる。
"♪起きろ 起きろ お寝坊さん
 さあさ 早く ベッドから "
行き交う人々。
"兎に角、僕の部屋に帰ろう。"
"25セント上げて。"
"♪起きろ 起きろ お寝坊さん "
"What's about me?"
"今に分かる。"
"詰まらないわ。"
ハリーは、ベンチから、立ち上がる。
酔い潰れて、ベンチで寝る男。
"まあ、気の毒ね。"
"まあ無害さ。"
"私達もね。神様。"
ハリーは、道路を横切る。
"あんな老人を見る度に、いつも思うの。"
"What do you think?"
"あの人も、誰かの子どもだったって。"
ハリーは、停車しているバンに乗り込む。
"本当よ。あの人も、昔は、誰かの赤ん坊で、父や母に可愛がられ、それが、今は、死人同然で、ベンチに。両親や伯父は、どこなの?そんな事を考えるの。"
カップルの会話は、バンのテープに記録される。
"C班は?"
"新聞ストの時は..."
"録音率は、40%。"
"B班は?"
"よくない。"
女の2人連れが、ワゴンのマジックミラーのウインドウで、化粧を直す。
"可愛こちゃん、早く塗りな。スタッフは、写真を撮る。
"もっと、ベロを見せろよ。フレンチキスで、行こうぜ。"
"しっかり録音しろ。"
"好調さ。"
盗聴されているカップル。
"見て、あの補聴器の男。買い物袋を持っている。"
"ポールが、感づかれた。"
"ずっと、私達をつけてる。"
"気のせいだよ。"
感づかれた男が、バンの窓を小突く。
"見られたぜ、ハリー。" 
"らしいな。よく聞こえた。それで?"
"録音は、使える筈だ。"
"仕事の時には、電話する。"
"Heyポール、明日の大会には?"
"出るさ。" 
"How about you?"
"Maybe.2年前みたいに飲もうぜ、スタン。"
"デカにしちゃ、いい奴だ。"
盗聴されているカップル。
"You go. I stay a while. "
"依頼主は、誰だ?"
" I don't know. "
" The Justice department? "
" No. "
"では、国税局だな。道理で、退屈な仕事だ。"
"遊びじゃないぞ。"
"内情は、知りたい。"
"我々には、関係ない。録音が仕事なんだ。"
カップルの女は帰り、男は残る。ハリーは、バンを降り、バンは走り去る。ハリーは、アパートに帰る。
"コールさん、お誕生日おめでとう。"
ハリーは、玄関の3重のロックを解く。防犯ベルが、鳴る。足元に、包まれたプレゼントがある。ハリーは、電話をかける。
" Hello. ミセス・エバンゲリスタ?上の階のハリー・コールです。プレゼントありがとう。ご親切に、どうも。ですが、ええ、頂きましたよ。ですが、その、どうやって部屋の中へ。All right. 警報は?止めた?鍵はどこに?非常火災用?分かった。いや、家財くらい、焼けたって平気です。どうせ、家具も備付けだし。実を言うと、鍵だけが、私の財産でして、誰にも、合鍵を持ってほしくない。誰から、私の誕生日を? Ah, I don't remenber telling you. では、Take the guess how old I am. 44? That's a very good guess. 郵便物は、私書箱に回すように、します。鍵を渡さんで済む。Bye. "
ハリーは、ジャズのレコードをかけ、合わせてサックスを吹く。

ハリーは、出勤する。空っぽの工場の跡。
"  Morning. 録音業者大会の記事だ。君の名前もある。つまり、君は、名士って事だ。"
"欠席はできん。"
" Listen. 参加する業界の名士の中には、サンフランシスコのハリー・コール。スペリーの講演は、『盗聴と法律』。聞けよ。どこだったかな?デトロイトのモランも出席。"
"いつから、モランが、業界の名士になったんだ?"
"今や、大物だ。コーヒーは?"
ハリーは、カップルの写真を、デスクの縁にぶら下げる。
"キャデラックのデザインを盗んだのさ。凄い評判だった。" 
デッキ3台を並べ、録音を再生する。
"12月1日午後1時、買い物袋、A班。"
"12月2日午後1時、遠距離マイク、B班。"
"12月2日午後1時、広告塔、C班。"
"困ったわ。クリスマスの贈り物よ。主人は、何でもあるし。"
"必要ないさ。"
"あなたに贈る物も、まだ決めてないの。クリスマスの贈り物よ。主人は、何でもあるし。"
巻き戻す。
"あなたに贈る..."
"必要ないさ。" 
"あなたに贈る物も、まだ決めてないの。"
"早く探してくれよ。"
"私のは?"
"今に分かる。"
"詰まらないわ。ヒントを言って。楽しみが、倍になるわ。"
"心配か?"
"何が?" 
"同じ所を歩き回っている。"
" Oh, that's terrible. "
"だが、無害さ。"
"私達もね。"
"神様。あんな老人を見る度に。"
巻き戻し。
"あんな老人を見る度に、いつも思うのよ。"
"何をだ?"
"あの人も、誰かの子どもだったって。本当よ、あの人も、昔は、誰かの赤ん坊で、父や母に、可愛がられて。それが、今は、死人同然でベンチに。両親や伯父は、どこなの?そんな事を考えるの。"
"ニューヨークの新聞ストの時、大勢の老人が凍死した。一晩で、50人も。''
ハリーは、外出し、電話ボックスに入る。
" Good after noon.  May I help you? "
"内線の746を。"
"専務室。"
"こちら、コールだが、資料が揃ったので、面会の約束を。"
"専務は、外出中です。明日、電話します。番号を。"
"公衆電話からだ。I don't have a home telephon. "
"お待ちを。"
"コールさん。では、明日の2時半で。"
"2時半?全額貰えるね?"
"お約束どおり。"
"じゃ、明日。"
夜。ハリーは、アパートを訪ねる。
"ハリー?"
"エミー。"
"来てくれたの?"
"ワインだ。誕生祝いで貰った。"
" I don't know your birthday? "
"飲むか?"
" Yeah. 何歳になったの?"
"42だ。"
"お祝いに何かしましょうよ。"
"何を?" 
" Something personel. "
" What's? "
"例えば、身の上話を。秘密を。"
"秘密なんて、ない。"
" I'm secret. あなたの秘密を知ってる。私を探っている事。いつだか、階段の陰で、見張っていたわ。A whole hour. 私を信用してないのね。I know. 女は敏感よ。ドアを開ける時も、こっそり鍵を入れて、素早く開ける。不意を狙うみたいに。私が電話している時も、そっと聞いてるし。"
"何の話だ?"
"別に。ただ、そう感じるだけ。♪起きろ 起きろ お寝坊さん さあさ早く ベッドから "
"Why you sing it? "
"好きなの。"
ハリーは、不服そうな態度をとる。
"どうして?"
" Nothing. 今日、誰かが、その歌を歌っていた。"
"女の人?"
" Yes.  "
"誰なの?妬けるわ。"
"仕事で、その女を見ていたら、君を思い出した。"
"お勤めは、どこ?"
"あちこちだ。仕事でね。ミュージシャンなのさ。Freelance musician. "
" Where you live? なぜ、電話もダメなの?"
" I don't have a telephone. "
" You alone? "
" Why you ask me the questions? "
"お誕生日よ。"
"詮索するのは、よせ。"
"知りたいのよ。"
"ひとりだ。これ以上は、答えん。"
ハリーは、ベッドから出る。
"月末だ。金を置いておく。なぜ、急に、質問を。"
"ハリー。I'm so happy to you come up tonight. 待ちかねていたんですもの。でも、もうお別れなのね。"
ハリーは、部屋を出る。
バスの中。車内の電気が切れる。盗聴した、カップルの事を思い出す。

ハリーは、依頼主のオフィスを訪ねる。
"専務に、届け物を、直接、手渡したい。I have an appointment. "
" Are you  Mr.Koal?"
" Yes,I am. "
"お見えです。すぐ、専務秘書が来ます。"
専務室。
"美味いクッキーだ。どうです?"
"いや、いい。"
ハリーは、クッキーを取るが、香りを嗅いで、元に戻す。部屋の望遠鏡を、覗く。
" What you see? "
"いや、別に。"
"約束の1万5,000ドル。これが、テープですね?"
"専務との約束で、直接、手渡す事になっている。"
" Understand. But he is not this afternoon. 国外出張だ。代わりに受け取っておけと、言われた。"
ハリーは、テープを渡す。
"日を改めて。"
代わりに、机の上の書類を取ろうとすると、専務(ハリソン・フォード)と取り合いになる。
"いいかね。深入りはよせ。これは、危険なテープだ。分かるか?誰かが、酷い目に遭いかねない。"
ハリーは、部屋を出る。
" Mr.Koal, be careful. "
ハリーは、昨日のカップルの男がいるのを認める。ハリーは、女の方も、エレベーターに乗り込んで来るのを、認める。

ハリーは、作業所で、テープを聞き返す。
" What about me?"
" You see. "
"詰まらないわ。"
"♪赤い 赤い コマドリが飛ぶ "
"誰が、こんな話を始めた?" 
"あなたよ。"
"違う。"
"忘れっぽいのね。"
"面白そうに、笑って。"
"ははは。"
"心配か?"
"何が?"
"同じ所を歩き回っている。"
" It's terrble. "
"だが、無害さ。"
"私達もね。神様。あんな老人を見る度に、いつも思うの。"
"何をだ?何をさ?"
"あの人も、昔は、誰かの..."
"ハリー、休憩しよう。アルの店で、ビールでも飲もうよ。"
"これを仕上げる。"
"渡したんだろ?"
"静かに、スタン。"
また、テープを聞く。
"できる?"
"酒も飽きた。"
"馬鹿げた会話だ。"
"うるさい。すべてに飽きた。"
"私にも?"
"そうだ、いつかはな。"
スタンが口を挟む。
"何の話かね?"
"頼む。邪魔するな。"
"そう、怒るな。"
"いらいらする。"
"なぜ?"
" But you ask me the questions, all day long. "
" Jesus! "
" Don't say that. "
"お助けを。"
"よせ。神の名を無用に、汚すな。"
" What's matter ハリー?"
"ヘボ技師め。"
"週末に。Sunday, maybe. "
"日曜ね。絶対よ。"
"俺達の仕事は録音だ。内容じゃない。"
"質問したくらいで、なぜ怒る?"
"依頼人の事など、知らなくていい。"
"ジャック・ターホテル。3時に、773号室。"
"たまには、詳しく話を。"
"お前には、関係ない事だ。" 
"好奇心さ、いけないか?"
" Listen.俺は、この商売で、覚えた。好奇心は禁物だとな。俺達の仕事は、盗聴と録音、それだけだ。" 
" See you later. "
スタンは、バイクで出掛ける。
"電話も、盗聴されているみたい。"
" I love you. "
"あまり、一緒だと危ない。"
"でも、もう少しだけ。" 
"電話も、盗聴されているみたい。"
太鼓の演奏で、男の声が、聞き取れない。データを変換して、太鼓の音を消す。
"我々を殺す気だ。"
また聞き直す。
"我々を殺す気だ。"
ハリーは、考え込む。
教会。ハリーは、告解する。
"罪を犯しました。前の告白から、3か月。私は、幾度も、神の名を使って、ののしり。新聞置き場から、金を払わずに、新聞を取り、不浄な考えを、楽しみました。今、している仕事では、若い男女を傷つけそうです。以前にも、私の仕事で、傷ついた人がいます。今度も、また同じ事を。それは、直接、私の責任ではありませんが、その罪を心から、悔いています。"

監視機器等の展示会。
"どうぞ。"
"これは、どう使うのかね?"
"コールさんですな。How do you do. ご覧ください。凄いシステムですよ。最近開発された電話通信の監視方法です。"
"こちらが、そのLT500型です。通信監視には、是非、このLT500型を。"
"何者かに、ドアを開けられた時、これがあれば、すぐ警報が鳴ります。"
"このスーパーカメラは、10時の黒い所に、仕掛けがあって、裏に。"
"モラン様。デトロイトのウィリアム・P.モラン様、お電話です。"
"この録音機は、完全自動です。受話器を取れば、直ちに始動し、戻せば、自動的に停止します。新型ですよ。旧式の音声始動と違いますよ。あれは、雑音でも、始動するし。会議の途中でも、勝手に切れる。"
"モラン方式だろ。"
"冗談じゃない。あれは、うちのを盗んだんだ。プロかね?役人か?自営か?"
"自営だ。"
"では、お名前と住所を。ハリー・コールさんで。失礼をば。うちの5-A型を。せめて、愛用者として、パンフレットにお名前を。"
"器材は、自家製で。"
"せめて、商品と一緒の写真を。このスペクター社の名誉ですから。"
ハリーは、別の展示に移る。ディスプレイを2面備えた、監視卓のカメラを動かすと、先日の専務秘書が映る。
講演会。
"簡単に、自動車に取り付けられ、絶えず、規則的な発振音を送ります。"
モランがハリーを見つけ、声を掛ける。
"ハリー。Good see you. Beautiful suits. "
" French. "
"飲みに行こう。詰まらんよ。"
"小型で、ダッシュボードの下にも、簡単に隠せます。"
"面白い男を紹介しよう。商売敵だ。バーニー。"
"コール。こちらモランだ。"
"バーニーと呼んでくれ。君の評判は、聞いているよ。"
"デトロイトで、例のキャデラックの秘密を盗んだ切れ者だ。"
"知ってるよ。"
"一度、会いたかったが、機会がなくてね。"
"休憩にしろ。酒だ。"
"待ってくれ、すぐだ。"
" Honey. Showtime,right? うまくやってくれよ。"
" Ladies & gentlemen. Ladies & gentlemen.
モラン式S15式ハーモニカ・タップをご紹介します。わずか2分間で、取り付け可能。電源は、ニッケル・カドミウムで、探知は、絶対不可能。どこからの電話にも、作動します。シンガポール、カラチ、モスクワ。いかが?その髭が、ロシア人みたいな人。相手に電話かける時、最後の数字の前に、このハーモニカを吹いて、最後の数字を押す。相手の電話は、鳴らない。だが、受話器が、代わりに、マイクのように、作動。室内の声を、すべて送る。では、実例をお見せしましょう。私の家に取り付けてある電話番号を押します。最後の数字の前で。ハーモニカ。そして、最後の数字。ベルナルドは鳴らない。"
"ばれたら。"
"気づくもんですか。"
"ご主人は?"
"業者の大会に、出てるわ。"
"いつ、戻る?"
"Too late. "
"今のは、冗談です。これで、性能は、お分かりでしょう。実演を終わります。パンフレットをどうぞ。"
"ご感想のほどは?"
"面白い。素人が、飛び付く。"
"サービスのボールペンだ。使ってくれ。"
酒の方がいい。"
"スタン、後を頼む。そのために、給料出してるんだ。すぐ、戻るから。"
"相棒だったんだな。"
"奴は、俺のアイデアを盗んだ。"
"あの美人も誘えよ。" 
"無駄だよ。仕事中。"
"ハリー、何だ?"
"スタンに話がある。"
"先に行っとく。""早く来いよ。" 
"いつ、モランの所へ?"
"昨日だ。"
"あんなことで、気を悪くしたのか?"
"目先を変えたかった。"
"いいか。俺のしている事を、誰にも言うなよ。"
"何も、教えてくれなかった癖に。" 
"分かった。これからは、何でも打ち明けるよ。"
"ダメだ。秘密主義なんだろう?"
"何でも話す。待て、頼む。考え直してくれ。困るんだ。Somebody follow me. "
"誰に?分からん。あの仕事と関係があるらしい。なぜか、分からん。心配だ。"
"考えとくよ。"
" Thanks. "
" Janc." 
ユニオンスクエアの模型。
ハリーは、電話を掛ける。 
"この電話番号は、現在、使われておりません。"
" Infomatiown. "
"エミー・フレドリクスの新しい番号を。"
"お待ちください。その名義の電話は、ありません。"
" Thank you. "
専務秘書を見つける。
"何の用だ?"
"落ち着け。ただの使いだ。飲むか?"
"なぜ、尾行する?"
" I'm looking for you.尾行じゃない。"
"なぜ、ここへ。"
"盗聴屋の大会だろ。失礼。録音保安技術者か?おえらいんだな。"
"専務に直接じゃなきゃ、渡さんぞ。"
"それは、聞いたよ。"
" What's messege? "
"日曜1時に、例のテープを、専務が待ってて、直接、受け取る。"
"考えとく。"
モランが、車を出す。
"君らは、後ろ。スタンは、助手席に。"
"めかし込んでと。"
"待て。女は、前に座るんだ。"
車が、割り込む。   
"何て運転だ。見てろ。"
"怒るな。楽しもうぜ。""やらしとけ。"
モランは、割込車両を追う。
"やめて。""ポールは、追跡の名人だ。"
"今のを聞いたか?"
"調査を頼む。今、ロンバート街。車のナンバーは、カリフォルニア560BALだ。"
"何の調査だ?"
赤信号で並ぶ。
"おい、このナマクラ運転野郎。あの世に行っちまえ。"
車は、ハリーの仕事場に着く。
皆は、酒などを持ち込む。
" Now bar is open. "
"音楽を。""いい仕事場だな。"
"新聞の身の上相談に、孤独な男よりってのが、あった。ハリーが出したんだ。"
"ハリー・コールの事だが、さぞ聞き飽きただろうけど、言わせて貰うよ。最高の筋金入り、ハリー・コールに乾杯。"
"筋金入り?"
"西部一の録音屋さ。"
"じゃ、東部では?"
" Me. それにも乾杯。"
"NYでは、会わなかったな。"
"おかしいか?"
"同じ街で、同じ仕事。会うのが、当然だろ。" "NYにいたのか?"
"有名だぜ。一つ、今も謎だ。例の年金横領の盗聴だ。"
"誰に聞いた?"
"皆んな、知ってる。だが、方法は、分からん。どうやった?"
"ハリー。1回、10セントよ。踊って。"
女は、ぶら下がっている滑車に、頭を打ち付ける。 
"痛かった?"
"大丈夫よ。いつもの事なの。子どもの頃、よく頭を壁にぶつけて、遊んだわ。今もやるの。悩みを忘れるわ。"
"12の時、初めて、電話から盗聴した。12だ。住んでたアパートの赤電話からな。半年間、誰にも、気付かれなかった。親父は、感心して、ひどく喜んだ。うちのバーニーは、天才だとな。それ以来の腕だ。手も広げてきた。"
ハリーは、電話を掛ける。バーニーらが、邪魔する。
"猥褻だ。""徹夜で飲もうぜ。""そう、ムキになるな。"
"新型の盗聴防止電話を買えよ。"
ハリーと女は、フロアの空き区画に出る。 
" Where are you from? "
" NY. "
"昔は、私もNYで、最初は受付係。昇進して、秘書になったの。それから、お抱え秘書。結局、ボスと結婚したの。家は、遠いの?ハリー。"
"そのご主人は?"
" I don't know, probably. つまり、形の上だけはね。彼は、事業の金策で、あちらこちら、飛び回り、私は、ここに置き去りって訳。これで、私の一代記は、すべて終わりよ。"
"君の一代記に、乾杯。"
"私が嫌いなのね、話もしたがらない。"
"でもないさ。"
"じゃあ、tell me. お願い。私と話がしたいって。友達になろうって。嫌な事は、忘れて。"
"もしもだ。君が、誰かを待つ身だとして。"
"話して。"
"男の来るのを、あてもなく、ひとりで待ち続ける。男の事を、何にも知らず。それでも、君は、待ち続けるか?男が、自分の事は、何も打ち明けず、男の気持ちが分からなくても、君は。"
"何なの?"
" Woud you go back to him?"
"どうやって、愛情を確かめるの?"
"方法はない。"
スタンらが、バイクに乗って、2人を茶化す。
スタンは、一人、事務所スペースに戻る。
"ハリー。12年前、あの大統領候補の電話を、残らず盗聴した。どの党かは、言わんが、国中、至る所での電話を残らずだ。俺が、奴に投票したかは、言わん。想像に任せる。It mean
he lost."
"ハリー、鸚鵡で盗聴した話を。ハリーは、鸚鵡に隠しマイクを仕込んだんだ。"
"本当か?"
"それより、'68年のトラック組合の汚職は、どう盗聴した?"
"初耳だ。"
"新聞にも出たぞ。"
"知らん。"
"大見出しだった。司法長官の依頼だろ?分かってるぞ。組合の委員長が、厚生年金の横領をやった。違ってたら、訂正してくれよ。委員長と経理係だけの秘密だった。魚釣りに出掛けて、相談した。舟の上でな。陸では、知らん顔だ。舟の盗聴防止は、完璧だった。ほかの船が近付くと、話をやめた。しかし、ハリーは、見事に録音した。方法は、未だに謎だ。それからが、大変だ。"
" Why?"
"それで、人が、3人も殺されたのさ。ハリーは、とぼけていた。"
"俺は、テープを渡しただけだ。"
"委員長は、経理係を疑った。"
"真相は、分からずしまいさ。3日後に経理係が、発見された。妻や子どもも、家の中で、裸にされ、手や足を縛られ、体毛を剃られ、頭は、切り離されていた。"
"殺したの?" 
" No.no.no.嫌がらせだ。"
"今は、伝説さ。どう録音したの?"
"殺しに、責任はない。"
"だが、君は、NYから姿を消した。"
"事件とは、関係ない。"
"教えろ。どうやった?""教えてやれよ。"
スタンが、音楽をかける。
"止めろ。止めるんだ。"
ハリーは、激昂するが、スタンは、意に介さない。
"いいだろう?"
ハリーは、ゴミ箱を叩きつけ、音楽を止める。
"どうした?"
"最近のハリーの事件さ。大評判になるぜ。"
"俺だって、録音屋だ。ハリーの方法くらい、必ず推察できるさ。"
"試してみろ。"
"やらせてみろよ。" 
スタンが解説する。
"ここが、ユニオン広場だ。ここに石段、周りにベンチ。正午、近くの勤め人が、大勢、出て来る。食事したり、話したり、群がっている。"
"それで?"
"相手は2人。絶えず、群衆の中を歩き続ける。立ち止まらない。盗聴よけだ、人混みの中を歩き回っている。その2人の会話を残らず、録音する。どうやる?"
"一つの方法では、無理だ。"
"当然だ。"
"お前がやれよ。"
"考えろよ。"
"前もって、相手の服に、隠しマイクを。"
"どの服を着るか、分からん。"
"突き当たって、酔ったふりして、マイクを仕込む。"
"すぐ見つかる。"
"読唇術の名人にやらせる。双眼鏡でな。"
"注文は、acutual voiceだ。"
" Why? "
"確かだからな。"
"考えるぞ。高くつくな。客は誰か?"
"我々か?"
"我々って?"
"政府さ。" 
"違う。4とおりの方法が要る。"
ハリーが、答える。
"3とおりだ。"
"3とおり?で、何を使った?"
"3段階指向性マイクに、モスフェットアンプ、後は、ホールの尾行で、2割は録音できた。"
" Beautiful. 正に芸術だ。"
"マイクは、2つ。凄い新型だ。200ヤードも離れて、立派に録音できる。ニュース・カメラマン2人だ。見せたかったぜ。"
" What did do you? "
"望遠レンズで、マイクで照準を合わせた。"
"録音された2人よ。"
" I don't know. 兎に角、見事な成功だった。"
"興味あるな。"
"そのマイクは?"
バーニーが言う。
"一緒に、仕事したい。俺と組めば、誰も敵わない。要するに、君のアイデアで、俺が部品を作る。稼げまくれるぞ。ゲイの男が、愛人の録音をした話、聞いたか?"
"君の作り話か?笑わせるぜ。ふざけた男だ。もうけ話なのにな。"
"ハリー、組もうぜ。すべて五分五分で、どうだ?一人がいい。"
"分かったよ。"
"顔を立てたのさ。すべて努力だ。"
"どうせ、俺は2流だ。"
"ハリー、あなたの話し声よ。"
"モラン・スーパー7だ。"
"やられたな。"
"盗聴屋が、盗聴されるとはな。"
"それでも、君は待ち続けるか?男が、自分の事は、何も打ち明けず。"
"いつ、とったの?"
"どうだ、見事だろ。"
"男の所へ戻るか?"
ハリーは、試供品のペンを折る。
"切って、出て行け。"
"ただの冗談だぜ。"
"ハリーは、真面目人間だ。"
"謝るよ。お前もか、スタン?"
"さあ、飲もうぜ。"
"原価が分かるか?1,500だよ。進呈するよ。"
ハリーは、またペンを折る。
"帰るぞ。"
女は渋る。モランは、諦める。
"じゃあな。"
ハリーは、展示会の名札を、投げ捨てる。皆、去る。
"困ったわ。クリスマスの贈り物よ。主人は、何でもあるし。ハリー、相手してくれない?"
ハリーは、音楽をかける。
" Harry, turn off. "
ハリーは、カップルの録音を聞き返す。"
”Frightened. あの女は、怯えている。ただのconversationじゃない。I feel. Something. "
"忘れて。ただの悪戯よ。感情を殺すのが、仕事でしょ。ただ、録音するだけ。"
"今に分かる。ヒントを言って、楽しみがばいになるわ。心配か。Why? 同じ所を歩き回っている。"
ハリーと女は、濃厚なキスをする。
"私達もね。神様。"
"『神様』という声を聞け。"
"あんな老人を見る度、いつも思うの。What do you think? あの人も、誰かの子だったって。本当よ、あの人も、昔は、誰かの赤ん坊で、父や母に可愛がられ、それが、今は、死んだも同然で、ベンチに。両親や伯父は、どこなの?そんな事を考えるの。NYの新聞ストの時に、大勢の老人が凍死した。一晩で、50人も。新聞がなくて?寒さを凌ぐ紙だ。悲惨な話ね。誰が、そんな話を始めた?あなたよ。違う。忘れっぽいのね。面白そうに笑って。はははは。どこで聞いた? Secret. "
ハリーは、ベッドに横たわり、女は、服を脱ぐ。
"週末でも。Sunday, maybe. Sunday difinitely. ジャック・ターHotel. 3時に、773号室。見て、補聴器の男。買い物袋持ってる。ずっと、私達をつけてるわ。気のせいだよ。♪赤い 赤い コマドリが飛ぶ "
"あなた。"
"何もかも、済んだら、素敵ね。愛してるわ。"
"もういいのよ、安心して。"
"あまり、一緒だと、危ない。でも、もう少しだけ。殺す。彼らを殺す気だ。我々を殺す気だ。"
"大変な事をした。テープを消さないと。二度と、あんな事は。"
"帰る。いや、もう少し。私が、人殺しを。"
"可哀想に。神の許しもない。2人の声が、耳から離れない。"
"いいのよ。私がキスしたいだけ。許してあげるわ、私が許してあげる。"
テープが止まる。2人は、眠る。ハリーは、カップルを夢に見る。女が、広場の石段を駆け上がる。ハリーが呼び掛ける。
" Listen. My name is ハリー・コール。Do you hear me? Don't be afraid. 一方的だが、私は、あなたの事を知っている。話したい事があるんだ。"
女に霧がかかる。
"子どもの頃、大病をした。左腕と左足が麻痺して、半年も歩けなかった。医者は、治らないと言った。母は、私を熱いお湯に入れた。それが、治療法だった。来客で、母が去った時、体がずれて、沈みかかった。湯が、鼻まで、来て、気がつくと、母が、体中に聖油を塗っていた。そのまま、死にたかった。5歳の時、父の友人の腹を、私は、打った。1年後に、彼は死んだ。君たちは、殺される。恐ろしいのは、殺す事だ。"
773号室の前に、ハリーが立つ。扉を開け、女を刺す。ハリーは、目を覚ます。 
"メレディス。えい。"
ハリーは、テープの箱を開けるが、中身がない。
"ちくしょう。"
あくる日。ハリーは、電話をかける。
" Good morning. May I help you? "
"内線の765番を。"
" Just moment please. 専務室です。"
"秘書のスティット氏を頼む。マーチン・スティット氏だ。私は、コール。"
"こちらから電話を。"
"いや、今、話がしたいんだ。"
"お名前は?"
"コール。"
"綴りは?"
"C,A,U,L。コール。"
"お待ちを。"
"すぐ、こちらから。"
"いや、まだ、番号を言ってない。Hello. "
電話は切られる。電話が鳴る。引き出しの中の電話が鳴る。
"Yes. "
"コール君。スティットだ。"
"この番号は?"
"専務に用事の者は、全部調査する。君の事もだ。テープは、頂いた。専務は、すぐに聞きたがっている。心配らしい。これで、消される心配はないが。Do you understand? コール君。深入りはよしたまえ。写真を届けたまえ。支払いは、専務が。" 
ハリーは、専務を訪ねる。録音が、外に漏れる。
"あんな老人を見る度、思うの。何をだ?あの人も、誰かの子どもだったって。本当よ。あの人も、昔は、誰かの赤ん坊で。父や母に可愛がられて。それが、今や死人同然で、ベンチに。"
ハリーは、部屋に入る。
"両親や伯父は、どこなの?そんな事を考えるの。NYの新聞ストの時、大勢の老人が、凍死した。一晩で、50人も。"
部屋には、専務とスティットがいる。 
"誰が、こんな話を始めた?あなたよ。違う。忘れっぽいのね。マーク、話はできるわ。これ以上、我慢できない。涙が出て来るわ。僕も泣きたい。やめて。" 
"もう一度?"
"君が、あの2人を。"
"私の陰謀ではない。事実をお伝えしただけです。"
" Money is on the table. "
"できる?酒も飽きた。全てに飽きた。私にも?そうだ、いつかはな。週末でも。Sunday Maybe. 日曜ね。絶対よ。ジャック・ターHotel. 3時に。773号室。
ハリーは、金を数える。 
"見て、補聴器の男。"
机の上の写真に、専務とカップルの女が映る。
"買い物袋持ってる。"
"外で、数えてくれ。"
"ずっと、私達をつけてるわ。気のせいだよ。♪赤い 赤い コマドリが飛ぶ 何もかも済んだら、素敵ね。I love you. "
ハリーが、専務に写真を示す。
"ご所望の写真です。"
"あまり一緒だと、危ない。でも、もう少しだけ。"
" How do you do? "
"我々を殺す気だ。電話も、盗聴されてるみたい。もう2時だ。帰る。いや、もう少し。別れるのが、辛い。"
スティットが、声を掛ける。 
"1万5,000ドルか。いい商売だな。コール君。"
"2人をどうする?"
"今に分かる。"
エレベーターは閉まる。 
"我々を殺す気だ。♪赤い 赤い コマドリが飛ぶ 週末に。Sunday maybe. 日曜ね、絶対よ。ジャック・ターHotel. 3時に。773号室。"
ハリーは、ホテルを訪れる。
"773号室、空いてるかね?"
"773号室、塞がってます。部屋は、皆、同じです。"
"隣の部屋は、どうかね?"
"隣室ですか?Yes I do. "
ハリーは、隣室に入る。壁に耳を当てる。ベランダから、隣室を伺う。通風孔に、耳を当て、洗面台の下に、盗聴器を取り付ける。トイレの水を流しながら、マイクを、パイプスペースの中に差し込む。声が聞こえる。
"アンは、私の妻だ。"
"これ以上、我慢できない。"
"涙が出て来るわ。"
"僕も、泣きたい。"
" I love you. "
ハリーは、息を荒げ、洗面台の下から出る。壁に、耳を当て、壁の絵を見つめる。ベランダに出ると、血まみれの女が、曇りガラスの間仕切りに、押し付けられる。ハリーは、部屋に戻り、TVをつけ、毛布を被り、耳を押さえる。暫くして、ハリーは、TVを消す。廊下に出る。773号室をノックし、反応がないと見ると、鍵をピッキングする。誰もおらず、整えられたベッド。トイレは、使われた様子はなく、バスタブも、空っぽ。しかし、トイレを流すと、赤い水が、逆流し、便器から溢れる。ハリーは、トラムに乗り、専務の所へとって返す。
"リチャード。"
"専務は?"
"不在です。帰ってください。"
ハリーは、階段で、2人の男に押さえ付けられる。ハリーは、正面突破を諦めるが、社の前に停車するリムジンに目が止まる。中を覗くと、カップルの女がいる。
ハリーは、"会社重役、交通事故で死亡"の見出しが踊るタブロイド紙を手に取る。
重役と件の女が、会社通用口から出て来る。
"通路を空けて、これじゃあ、通れん。""通して。"
専務の妻は、マイクを向けられる。
"後任は、誰に?"
また773号室の扉を開けた時のシーンに戻る。
"困ったわ。クリスマスの贈り物よ。主人は、何でもあるし。"
壁や洗面室に塗りたくられた血。ビニールに包まれた専務の遺体。
"必要ないさ。"
会社の出口に戻る。記者に取り囲まれる妻。相手の男。
"だが、無害さ。私達もね。"
専務殺害のフラッシュバック。女が専務に話しかけ、男が専務にビニール袋を被せ、首を締める。
専務と妻の写真。スティット。
専務を突き倒す。
" I can't stand it. "
妻に掴みかかる専務を、背後から、男が捕まえる。 
"できる?週末に。Sunday maybe. Sunday, diffinitely. ジャック・ターHotel. 3時に。773号室。我々を殺す気だ。"
専務のビニール袋に包まれた血まみれの遺体。

ハリーは、自宅でサックスを吹く。電話が鳴る。
" Hello. Hello. "
電話を切る。またサックスに戻るが、また電話が鳴る。
" Hello. "
甲高い笑い声のような音。
" Hello. "
"気づいたようだな。だが、深入りはよせ。盗聴しているからな。"
ジャズとサックスの音が、受話器から流れる。電話を切る。
ハリーは、盗聴器を探す。壁紙を剥がし、床をめくる。しかし、見つからない。
木片や壁紙の散乱する部屋で、ハリーは、サックスを吹く。
【感想】
"ゴッドファーザー"の出来に不満だったので、少し不安があったが、依頼に基づき盗聴したカップルの会話が、殺人事件に発展するからくりは、十分に映画的である。専務秘書の関与、専務と妻の関係、ハリーの自宅に仕込まれた盗聴器のありかなど、はっきりしない点も多いが、抑制されて、描かれている。佳品には及ばず、及第点といったところか。

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