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一人勝手に回顧シリーズ#アルフレッド・ヒッチコック編(16)#ロープ/エリートの驕り

ヒッチコック初のカラー作品である。
舞台をアパートの1フロアに限定し、映画を現実の時間と、同時に進行させる画期的な取組みをしている。

ニューヨーク🗽の摩天楼を臨むアパート高層階の一室、フィリップとブランドンが、パーティー会場に早めに呼び出したディヴットの首をロープで締める。ディヴットは、事切れて、フィリップとブランドンは、死体を道具箱に収める。殺害の動機は、自分は人を殺しても許されるという万能感、選民意識だろうか。しかし、自信にあふれるブランドンに比して、フィリップは、重大なことをしでかしたとの反省と怯えでうろたえている。

そのアパートの一室では、今晩、パーティーを開く予定であり、間もなく家政婦がやって来る。
死体を収めた道具箱の上には、燭台と料理を置くこととし、布を掛けたうえで、飾りつける。
ディヴットの父と伯母、恋人、恋仇のケネス、そして、二人の先生だった大学教授ルパート・カデル(ジェームズ・スチュワート)が、やって来る。
ディヴットが来ないのを、ディヴットの父らは、訝しく思うが、ブランドンは、のらりくらり答える。
パーティーの参加者は、参加者の間の人間関係に基づき、おのおの語る。学術書か、その初版本十数冊が披露され、ディヴットの父に数冊が贈呈される。ブランドンの発案で、本は、ディヴットを締めたロープで結わえられて。
時々、なぜか話題が、殺人に振られる。フィリップは、動揺し、声を荒げたりする。たまらず酒をあおる。
ディヴットが来ないまま、その身を案ずる父らが、退散し、パーティーは、お開きとなる。

フィリップとブランドンは、明日から、休暇を取り、小旅行に出掛けることとし、家政婦に、明日朝に、部屋の片付けをするよう、言いつける。死体は、家政婦が帰った後、車で運び出す段取りだ。
その時、電話が鳴る。フィリップが出ると、ルパートからで、タバコ入れを忘れたので、取りに行きたいというものだった。
ブランドンは、万が一に備えて、拳銃をポケットに仕舞う。
現れたルパートは、探すフリをして、タバコ入れを、道具箱の上、書籍の陰に置く。ルパートは、二人の様子がおかしいので、嘘をついて、戻ってきたのだった。
ルパートは、話を引っ張り、タバコ入れを見つけたフリをし、「君たちを見送ろう」と提案する。そして、パーティーに現れなかったデヴィッドに話題を振る。ブランドンは、ポケットの拳銃を握る。
ルパートは、ジャネットが、ブランドンが誘拐したと言っていたと言う。君ならやりかねないと。そのうえで、パーティーの前に何があったかを推理する。フィリップは、たまらず大声を出す。
ブランドンが、銃を持っているのも言い当てる。そして、例のロープを取り出し、二人に示す。すると、フィリップが観念して、ブランドンが放り出した拳銃を手に取り、ブランドンとルパートに向かう。ルパートは、フィリップの拳銃を奪う。銃声が一発とどろく。
ルパートは、ブランドンの選民思想を、激しくののしる。社会的な制裁を受けよと言って聞かす。ルパートは、窓を開け、二発、銃を、空に向けて撃つ。三人は、おのおの声なく、腰を下ろし、また、パーティーの後片付けをする。

エリート二人は、驕り高ぶった自らの歪んだ思想に導かれて、殺人を犯す。それは、冷血な論理でなく、全能感がなしたものであり、やはり、ことの重大さに、事後的に気付き、いかに正当化するかに、躍起になる。フィリップは、特に、ブランドンに"付き合った"格好で、犯行直後から、動揺している。
エリートのロジックは、実は、反道徳的で、もろく、崩れやすい。

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