虫のおいしゃさん
草を抜く。
家のまわりの草をひたすら。
一時間以上かけて。
*
小さなムカデたちがあらわれる。
ナメクジの登場にギョッとする。
ナメクジもギョッとしたのでしょう。
ひえー、って感じで逃げていった。
長らく「竜の髭」と勝手に命名した草は、
彼岸花であることが昨年分かった。
赤い花は美しいと思った。
また彼岸花を眺めてもいいかな、
と思ったけれど、抜くことにした。
彼岸花は風にのってやってきた。
球根には毒があるそうだ。
その球根も抜くことにする。
なかなか抜けない。
そしたら、ジャンボムカデが出てきて、
これにはさすがにギョッとした。
毒で刺されたりするかも、
と思ったけれど、
ジャンボムカデはそんなことは
しなかった。引っ越しますわ、
って感じで、たくさんの足を
ウェーブさせてあっという間に
どこかに消えた。
丸い球根がやっととれた。
ひとつひとつ丁寧に抜いた。
睡蓮の花を咲かせたいなあ、
と睡蓮鉢もあったけれど、
なかなかうまいこといかず。
そのよどんだ水も捨て、鉢も洗った。
睡蓮も終わりにすることにした。
これはすっきりした。
だいたいこんなことをやっていると
近所の子どもがやってきて、
「ねえ、何してるの?」とか
「ぼくもやる」とか言ってくることが
よくあったもんだ。
誰かいないかな、と思ったけれど
誰もいなくて、ちょっと残念。
みんな大きくなったもんな。
*
隣の子と虫トークするのが大好きだった。
「ぼく、虫のお医者さんになりたいな」
とつぶやいていたことが
ずっと心にのこっている。