虫のおいしゃさん

草を抜く。
家のまわりの草をひたすら。
一時間以上かけて。



小さなムカデたちがあらわれる。
ナメクジの登場にギョッとする。
ナメクジもギョッとしたのでしょう。
ひえー、って感じで逃げていった。

長らく「竜の髭」と勝手に命名した草は、
彼岸花であることが昨年分かった。
赤い花は美しいと思った。
また彼岸花を眺めてもいいかな、
と思ったけれど、抜くことにした。

彼岸花は風にのってやってきた。
球根には毒があるそうだ。
その球根も抜くことにする。
なかなか抜けない。
そしたら、ジャンボムカデが出てきて、
これにはさすがにギョッとした。
毒で刺されたりするかも、
と思ったけれど、
ジャンボムカデはそんなことは
しなかった。引っ越しますわ、
って感じで、たくさんの足を
ウェーブさせてあっという間に
どこかに消えた。
丸い球根がやっととれた。

ひとつひとつ丁寧に抜いた。

睡蓮の花を咲かせたいなあ、
と睡蓮鉢もあったけれど、
なかなかうまいこといかず。
そのよどんだ水も捨て、鉢も洗った。
睡蓮も終わりにすることにした。
これはすっきりした。

だいたいこんなことをやっていると
近所の子どもがやってきて、
「ねえ、何してるの?」とか
「ぼくもやる」とか言ってくることが
よくあったもんだ。
誰かいないかな、と思ったけれど
誰もいなくて、ちょっと残念。
みんな大きくなったもんな。



隣の子と虫トークするのが大好きだった。
「ぼく、虫のお医者さんになりたいな」
とつぶやいていたことが
ずっと心にのこっている。