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スカビオサ

洗濯物をほしながら感じる。今日は空気がひんやりしている。何鳥か分からないけれど、鳥たちは元気いっぱいだし。「今日は高原の朝ー!」と嬉しくなる。猛暑の後は「高原の朝」をひしひしと感じられる。ここは住宅街で豊かな緑も高原もない。けれど目を閉じれば、高原が見える(ような気持ちになる)。これはそもそも夫が言い出した。「今日は高原みたいな朝だよ」と。そこから始まった。こんな日はベランダにキャンプのイスを持ってきて、ひんやりを味わいたいものだ。

洗濯物を干し終えた時に、近所の子どもが「ただいまー」と帰ってくるのが見えた。5時半過ぎだったと思う。続いてパパと下の子たち。早朝に走ってるんかい。朝を有効に使っている人もいるんだなあ。いい夏休みにしたいなあ。どうやったら、いい夏休みになるのかなあ。脳は問いを与えれば考えてくれることを知っている。超真面目。働き者。脳にはいつも感謝している。

誰もいないリビングで、袋にガサッと入れていた書類や紙切れを片付け始める。私はスクラップが好きだ。集めた言葉を貼り付ける時の、なんとも言えぬ心地よさ。読み終えた雑誌から自分の好きな写真や気になる本の紹介を切り抜いている。むかしはまめだった。それがストレス解消であり、至福の時間だった。今はいい加減。でも、もういい加減でいいんだ。いつも貼り付けながら思う。面接であなたは何が好きかときかれたら、「スクラップが好きです」と答えよう、と。それが?と言われるだろうか。話をふくらませる自信はある。なんて妄想をいつもなぜかする。

新しいノートに、切り抜きやらメモのストックを貼り付けていく。この前、花屋でこの花は何という名前ですか?と聞いた。実はたずねるのは二回目で、この前忘れちゃって、と言ったら紙に書いてくれた。いつもお団子の店員さん。感じが良い、とは言えないひと。ちょっとクセがある。でも、それもすごく良いなと思っている。わざわざ、私のために紙にかいてくれたメモをながめる。

スカビオサ

すごくきれいな花。ノートはスカビオサのメモから始まった。もうこの花の名を、私は忘れることはないでしょう。