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デーデポッポー

いつもの鳴き声と少し違うな、
と思ったら〇ちゃんが鳴き真似してた。
黄色い通学帽から顔が見える。
空を見上げて、ふたたび

デーデポッポー
デーデポッポー

私はベランダで洗濯物を干していた。
声につられて下をのぞいたら、
〇ちゃんと目が合う。
〇ちゃんはパッと鳴き真似をやめ、
学校に向かった。

〇ちゃんは電線にとまるキジバトに
向かって鳴いていた。



そうだそうだ。
去年、〇ちゃんが見つけたんだ。
私はただ話してる声が
聞こえただけ。

「あ、△ちゃんちに
ハトが巣つくってるー」

うちと△ちゃんちは、
ちょっとトラブったことがあった。
それからというもの ギクシャク が
約5年以上続いている(ハハ間で)。
どうしようもない。

△ちゃんちの木を見たら、
たしかに巣をつくり始めていた。
巣を作ってるよ、って
△ちゃんハハに教えてあげなくちゃ。

ちょうどばったり会ったから、
ドキドキしながら声をかける。

「えー!(木を)切り倒そ」

△ちゃんハハは木だけを見て、
そう返してくれた。
これが去年の話。
いや一昨年だっけ?

最近やたらキジバトがいる。
仲の良さそうな二羽。
夫婦なんだろう。

ほんの少しの植え込みの木に
巣をつくろうとしている。

キジバトの入念な物件探しを
私は見ていた。
人を全然こわがらない。
この前、うちのベランダにも
やってきてびっくりした。
逃げないからびっくりして、
つい、カーテンをシャッとやった。
やっと飛んだ。

洗濯物を干しながら気づく。

枝をくわえたキジバトが
おしりふりふり、ゆっくり歩く。
何往復もしている。
え、どこに行ってるんだ?
目で追うと、◇さんち。
◇さんちの木にどうやら
巣をつくり始めているようだ。

◇さんに連絡する。
「えー!ありがとう!」

外に出て水やりしていたら、
◇さん、脚立にのぼり、
玄関脇の木を切っている。

ありがとう、とかけよってくる。

「この木の上を切ったらさ、
ふたつの木に作り途中の巣があったの。
予備もつくってたんだね。
いろんな色のどこから持ってきたんだろう、
っていう素材とかもあって」

『わ、その作りかけの巣、見たかった』
って思ったけれど、言葉をのみこみ、
えー、そうなの!と返す。

「3,4日で作っちゃうんだってね。
たまごとか雛がいたら、
もう撤去できないって書いてあって。
明日から少し家あけるから、
帰ってきたらもう巣ができてる
ところだったよ。
本当に教えてくれてありがとう!」

ありがとう、ありがとう、言われる。

振り向くと、
枝をくわえたキジバトが
私たちをじーっと見ていた。
夫婦でじーっと。
枝をくわえたまま、
しばらく呆然としていた。

「あ、あの子たちだね」
と◇さんと私は笑った。
キジバトにとっちゃ
笑いごとじゃないけれど。



それから、キジバトを見なくなった。
このエリアはあきらめたようだ。

広い家の庭なら、
キジバトの巣があっても
良いのかなあ。

ツバメの巣は大歓迎なのにね、
って思ったりする。