ゴールデンボックス ボードゲームアワード 2023 受賞者の発表

皆さん、こんにちは。
ゴールデンボックス ボードゲームアワード 運営委員会です。

この記事では、ゴールデンボックス ボードゲームアワード 2023 の受賞者を発表します。

ゴールデンボックス ボードゲームアワード とは

本賞はボードゲーム業界の健全な発展を目的に、デザイナーをはじめとした従事者を評価し、その活動を讃えるための賞です。

アメリカの映画業界のアカデミー賞をモデルのひとつとしており、業界従事者が選考者かつ受賞者となる賞となっています。

賞の運営は6名の業界従事者から成る運営委員会によって執り行われています。
賞の選考は数十名の業界従事者から成る選考会による推薦及び投票によって実施されています。
賞は全7部門で構成されており、部門ごとに選考が行われています。

・作品賞
・ゲームデザイン賞
・アート賞
・グラフィックデザイン賞
・プロダクション賞
・ルールブック賞
・特別賞

ロゴについて

こちらが今年の ゴールデンボックス ボードゲームアワード のロゴです。

賞として常に変化し続けていくことを表すため、毎年全く同じにならないよう、その年ごとにロゴのフォントを変更していくデザインとなっています。

作品賞

その年を代表する、最も優れたゲームを総合評価し、表彰します。評価対象はゲーム全体であり、受賞対象はそのゲームに関わったチーム全員です。

受賞

  • ナナトリドリ』(株式会社アークライト)

    • チーム:株式会社アークライト

ノミネート

  • 『ゴーアウトガール』(ハレルヤロックボーイ)

    • チーム:ハレルヤロックボーイ

  • 『スノープランナー/Snow planner』(14games)

    • チーム:14games

  • ナナトリドリ』(株式会社アークライト)

    • チーム:株式会社アークライト

各作品について

『ゴーアウトガール』について:
日本では馴染みある大富豪をキャラクターゲームという切り口にし、大富豪の特殊ルールをキャラクターの能力に分配し、配られた手札を見て、自分の使用するキャラクターを選ばせる。ゲームが始まる前に、すでにプレイヤーにプレイを想像させ、もうすでに楽しい。脱落か脱出という2つの出口を用意し、細かなシステム的な気配りによって本来の大富豪よりもプレイングの幅をもたせつつも、もともとの大富豪のもっている派手なプレイ感が残っている。学園のキャラクター達にはゲームシステム以上の個性があり、自分の戦いをそのキャラクターに委ねている感覚だ。情緒的な楽しさとシステム的な楽しさが同居する類稀なカードゲームとなったことを称賛したい。(タンサンあさと)

『スノープランナー/Snow planner』について:
「日本のボードゲームもここまで来たか!」と唸らされる。ルール、アート、デザインのどこを取っても隙がなく、完成度が高いだけでなく独自性も兼ね備えている。中重量級のダイスプレイスメントゲームとして骨太なゲームプレイを提供しつつ、バランスの取れたランダム要素や多彩なカード効果でセッションごとの多様性もあり飽きさせない。様々な要素を持つこのゲームをこれほどのレベルでまとめ上げた手腕に賛辞を送りたい。(上杉真人)

『ナナトリドリ』について:
手札を整理し、機をうかがい、ここぞという場面で勝負する、ハンドマネジメントの妙味が存分に味わえるゴーアウト系カードゲームの新定番。数比べというシンプルなルールに立脚しつつも、運に頼らずに上がろうとすると繊細なプレイングが求められ、初心者から慣れているプレイヤーまで幅広い層に勧めやすい。間違いなく、近年のゴーアウトブームの発端になったゲームのひとつ。(秋山真琴)

ゲームデザイン賞

総合的に優れたゲームデザインやディベロップメントを表彰します。評価対象はルールであり、受賞対象はゲームデザイナーやディベロッパーです。

受賞

  • 沈黙ノ艦長』(よぐゲーム・アソビション)

    • ゲームデザイン:赤瀬よぐ

ノミネート

  • 『MOT COIN(モットコイン)』(四等星)

    • ゲームデザイン:mor!

  • 『マイトロッコタウン』(StudioGG)

    • ゲームデザイン:Shun、AYA

  • 沈黙ノ艦長』(よぐゲーム・アソビション)

    • ゲームデザイン:赤瀬よぐ

各作品について

『MOT COIN(モットコイン)』について:
ひたすら競りをおこない競り以外のことはおこなわない純然たる競りゲー。中核となるダイスを使った競りは、プレイアビリティも良くスピーディーに競りが進行して遊びやすい。競りに使ったダイスが以降のラウンドで戻る仕組みや、購入した仮想通貨の価格が連鎖的に上昇する仕組み、終了トリガー、大暴落等、各要素がどれもしっかり練られており、そのすべてが面白い!と感じました。説明書も面白ムードに満ちていて、良いことには「良いことだぞ!」と注釈が入っているのが斬新でした。(斎藤隆)

『マイトロッコタウン』について:
Studio GGのゲームはいずれも、理知的なルールと、それをサポートする直観的なフレーバーが特徴的であり、このゲームはStudio GG節の真骨頂とも言える。ゲームをプレイするということは、動画を見たり、本を読んだりという他の趣味に比べ、自らインプットを行う必要があり、それだけ負荷が高い。しかし、このゲームは緻密に練られた自然なゲームデザインによりその負荷を極力減らしており大変遊びやすく仕上げてある。ゲームデザイナーの苦労が遊びやすいルールとして結実した傑作である。(杉木貴文)

沈黙ノ艦長』について:
「楽しいテーマ」か「おもしろいルール」。よいゲームにはこれらのうちどちらかが必要になる。もし両方を兼ね備えていれば、それはすばらしいゲームになる。『沈黙ノ艦長』には「ここに目をつけるとは!」と驚かされるテーマと、緊張と笑いを生み出すルールがあり、それら2つがこれ以上ないほど美しく調和している。テーマを聞くだけでルールがわかり、ルールを聞くだけでテーマがわかるほどだ。芝居の要素を組み込みながらも明瞭なゲームプレイを成立させているのも見事。(上杉真人)

アート賞

ボードゲームの作品価値を高める魅力あるイラストを表彰します。評価対象はイラストであり、受賞対象はアーティストです。

受賞

  • 『ギブトレ』(SUSABI GAMES)

    • アートワーク:OBOtto

ノミネート

  • 『Swider(スワイダー)』(キューハチドッグ)

    • アートワーク:イワムラタクヤ

  • 『ギブトレ』(SUSABI GAMES)

    • アートワーク:OBOtto

  • ナナトリドリ』(株式会社アークライト)

    • アートワーク:ことり寧子

各作品について

『Swider(スワイダー)』について:
日本でボードゲームの火付け役となった「ごきぶりポーカー」をはじめ、90年〜00年代のドイツのカードゲームにはどこか気の抜けたゆるいタッチのイラストが多かった(というと現在も健在であるゆるいタッチに対して失礼かもしれないが)。そんな気が抜けたようなイラストもボードゲームのひとつの魅力として楽しんでいた方も多い。Swider(スワイダー)はそんなかつてのドイツのボードゲームを彷彿とさせるようなアートである。絶妙なバランスでかつてのドイツのボードゲームに思いを馳せさせるノスタルジックが詰まっている。同時にそれだけではない普遍的な魅力も兼ね備えている。この魅力を少ない文字で伝えるのは難しいが、キャラクターの仕草ひとつとっても作り手の想いが伝わってくるように感じる。(タンサンあさと)

『ギブトレ』について:
「ギブトレ」のアートワークには、ある種の「日本産ゲームイラストの正解」があるように感じました。コントラスト強めの色調に、可愛らしくもインパクトのある個性的なキャラクター、デフォルメされつつもディテール豊かに描かれたカードアイコンなど、何か原作があったのではないかと錯覚できるほどに漫画的であるように感じます。実際、一部のカードイラストは、ストーリーを感じさせるほどに描き込まれたものもあります。それでいて、決して過剰ではなく、ゲームのアートワークとして「華を添える」という範疇に留まっているように感じられるのも優れた点です。「際立ったキャラクターと物語を感じさせるフレーバーを独自に生み出し、ゲームのアートワークとして昇華させる」―このアプローチを見事に成功させた「ギブトレ」に拍手を送りたいです。(田中誠)

ナナトリドリ』について:
ここ数年で一定の浸透を見せているボードゲーム産業の更なる市場拡大には、より幅広い市場、特にファミリー層へのアプローチが必要と思われる。可愛らしいイラストレーションを採用した『ナナトリドリ』はこの1年の作品の中でも、そのような市場拡大の可能性を秘めている作品と感じる。実際、私の経営する小売店の店頭でも『ナナトリドリ』のアートに魅せられたお子さまが手に取り、親御さんにねだるという姿を何度か見てきた。このシーンを思い描いてアートが描かれ、編集が施されたと考えると胸が熱くなる。(杉木貴文)

グラフィックデザイン賞

ゲームを表現するタイトルロゴ、演出、優れたUIや視覚的表現を表彰します。評価対象はコンポーネント、パッケージ等、イラスト以外のデザインであり、受賞対象はグラフィックデザイナーです。

受賞

  • 『ラフレシアン』(SzpiLAB)

    • グラフィックデザイン:遠山美月

    • コンポーネントデザイン:藤縄英佑

ノミネート

  • 『MUSH SMASH(マッシュスマッシュ)』(SORAGAME STUDIO(ソラガメスタジオ))

    • グラフィックデザイン:西原将矢(ソラガメスタジオ)

  • 『ラフレシアン』(SzpiLAB)

    • グラフィックデザイン:遠山美月

    • コンポーネントデザイン:藤縄英佑

  • 六華』(株式会社アークライト)

    • グラフィックデザイン:高畑慧(コロコロ堂)

各作品について

『MUSH SMASH(マッシュスマッシュ)』について:
全体的な色のバランス、そしてプレイアビリティ、そして内容物の大きさの選択の3つを評価しました。ゲームの中心となるキノコのカサが、「配置」や「高さ」、そして「大きさ」がランダムに変わる盤面を、視覚的に阻害しないように、そしてきれいにまとめているのが素晴らしいと感じました。また、ボードやチップにとどまらず、箱、ルールに至るまで一貫した緑を基調とした作りになっており、アートとの一体感を出しています。(田邉顕一)

『ラフレシアン』について:
こんなにワクワクするアイテム満載の小箱ゲームがあっただろうか。六角形の小箱から鮮やかな大輪が咲くという箱を最大限に活かした変形ギミックに脱帽。花弁を構成する独特な形状のボードやカード、存在感のあるリーダー棒など幾度も試作を重ねてきたことが伝わってくる。投擲用の妖精カードは、バンジーの紐が伸びるように見える視覚的効果とリリースポイントを示すUIを兼ねており、優れたグラフィックデザインがなされている。(明地宙)

六華』について:
麻雀の再構築を目指したときに麻雀由来のデザインを用いず、それでいて伝統ゲームのように昔からあった雰囲気を出すのは容易なことではない。そのアプローチとして、1〜6までの数値を花火として見せたのは見事としか言いようがない。誰が見ても1〜6の数字であることが簡単に理解でき、それでいて連番時のリズムもあり、他にはないユニークな見た目牌のデザイン。これは簡単に見えるがとても難しいことだ。Less is more(レス イズ モア)「少ないほうが豊かである。」ミース・ファン・デル・ローエの言葉を引用させてもらうが、このミニマルなデザインの中に打ち上がる花火のような豊かな体験が詰まっている。(タンサンあさと)

プロダクション賞

優れたプロダクトの発売を実現したパブリッシャー、プロデューサー、編集者等を表彰します。評価対象は企画、ローカライゼーション、プロモーション等、製品化に関するものであり、受賞対象は出版社やプロデューサーやディレクターや編集者です。

受賞

  • 『テープルゲームズ』(テープルゲームズ)

    • プロダクション:橋口貴志、神山剛

ノミネート

  • 『テープルゲームズ』(テープルゲームズ)

    • プロダクション:橋口貴志、神山剛

  • 『ハーベスト』(ForGames)

    • プロダクション:郡山喜彦、岡野翔太

  • 六華』(株式会社アークライト)

    • プロダクション:橋本淳志、野澤邦仁(アークライト)

※『テープルゲームズ』は作品単体ではなく、レーベルとしてのノミネートです。

各作品について

『テープルゲームズ』について:
本作はカセットテープをフォーマットにした8名の作家による特別な企画である。カセットテープのアナログ感や収集する楽しさはボードゲームに通じている点が秀逸である。同じフォーマットだからこそ作家の個性が際立ち、また宣伝活動においては作品ごとに異なるBGMでラジオ風の紹介を行うという新しい試みに心を掴まれた。ゲームそのものにとどまらず、販促活動も含めたボードゲームの楽しさや自由さを体現した類稀なる企画といえる。(仲安晃一)

『ハーベスト』について:
リメイク制作というのは、簡単なようで難しいものです。たとえ、ルールに手を入れなかったとしても。これまでのファンの思い入れにどう応えるのかーそれがもちろん自分自身である場合もあって、変に気負ってしまうことがあってもおかしくありません。テーマ、イラスト、タイトル……それぞれにどのようにアプローチするのか、本当に難しいのです。「ハーベスト」は、伝説的な国産レアゲームと言われた同タイトルのリメイクなわけですが、そこには変な気負いのようなものは感じられず(もちろん、気合いを入れて作ったのは間違いないでしょうが)、あくまで「現代的なファミリーゲーム」として着地させることを主眼としたのではないかと感じられます。そして、それを見事にやり切ったと言えるのではないでしょうか。華やかで柔らかなロゴ、ポップで明るいキャラクター、手頃な価格と、そのいずれもがファミリーゲームとして理想的です。そこにもはや「伝説的な国産レアゲーム」の面影はありません。純粋な「ファミリーゲーム」に生まれ変わったのです。(田中誠)

『六華』について:
「六華だ!」と私のAmazonカートを覗いた普段ボドゲを遊ばない友人が言った。それくらい一般層にも認知された作品。麻雀のゲーム性を損なわずに「役が3つだけ」「10点先取」(「定価3960円」)などシンプルさで老若男女問わず楽しめるように徹底している姿勢に脱帽。モダン伝統的ゲームシリーズとしてはもちろん、ドンジャラのようにIPと相性が良いと推測できるため、まだまだ話題を作る余力を残している。(ケンチャンヌ)

ルールブック賞

ルールの文章や翻訳、DTPを含め、優れたルールブックを表彰します。評価対象はルールブックであり、受賞対象はライターや翻訳者やDTPデザイナーです。

受賞

  • 『ハーベスト』(ForGames)

    • ルール執筆・校正:郡山喜彦(原作:森川幸人)

    • 校正・校閲:岡野翔太

    • DTP:井上磨

ノミネート

  • 『ハーベスト』(ForGames)

    • ルール執筆・校正:郡山喜彦(原作:森川幸人)

    • 校正・校閲:岡野翔太

    • DTP:井上磨

  • 『RATORO ラトーロ』(Sui Works)

    • ルールブック:Sunny

  • ラフレシアン』(SzpiLAB)

    • ルール初稿:堀和紀

    • 文章・レイアウト:藤縄英佑

    • DTP・アートワーク:遠山美月

各作品について

『ハーベスト』について:
可愛らしいイラストや目に優しい配色・文字は「読むことの辛さ」を和らげ、短い補足文は読み手の疑問を直ぐに解消します。説明文を削いで図示に頼るという形に見えますが、曖昧になりそうな処理には必ず明示があり、プレイに迷うことは無いでしょう。印象的だったのは、交渉要素を「他の人と協力」とすることで、ゲームの楽しみ方を示唆している箇所です。末尾の作者と編集者からのメッセージは必見で、作品に愛着が湧いてきます。(北野栞菜)

『RATORO ラトーロ』について:
誤解を招きにくい簡潔明瞭な表現、見落としの少ない太字強調、文字を読む前にイメージできる図の多用など、模範的な読みやすさの工夫が随所に施されている。さらにアイコンを見出しに使ってフェイズを参照しやすくしており、別々に記載されることが多い説明と例を合わせることで冗長さを避けている。FAQやエラッタが読めるQRコードも用意されており、万全のサポートに安心して読むことができる。フルカラーなのも嬉しい。(小野卓也)

ラフレシアン』について:
昨年の『プラネピタ』に続きSzpiLABの『ラフレシアン』がノミネートとなった。ゲームのサイズに合わせた小さな紙面という制限を受けながらも、それを感じさせないよう、取捨選択された情報と見やすいレイアウトで仕上げられている。随所に配置された図は、実際のプレイ中の景色を完全に再現していてわかりやすい。色数をキーカラーの赤と文字色の黒に抑えつつ、下線や薄字などさりげない方法でメリハリをつけている点も巧み。(上杉真人)

特別賞

他部門に含まれないが特に優れた功績を残したゲームや人物を表彰します。

受賞

今年度の特別賞の受賞はありません。

トロフィーについて

受賞作の発表は以上です。
受賞者にはトロフィーとして金のボードゲーム箱を贈呈予定です。
トロフィーの完成までに数ヶ月要することをご了承ください。

トロフィーは、多くのボードゲームやカードゲームの製造を手掛けられている大興印刷株式会社の協賛によって制作されます。ご厚意で製作いただけますこと、この場を借りて御礼申し上げます。

選考について

今年度の選考は、選考会の以下のメンバーの推薦及び投票によって行われました。

Shun(Studio GG)
TakeWatch
shimamuw(ハレルヤロックボーイ/大気圏内ゲームズ)
かく(SUSABI GAMES)
たかみまこと
たきざわまさかず(こぐま工房)
ましう(ましうgames)
みずの(A.I.Lab.遊)
オグランド(東京ゲームメイカーズ)
ケンチャンヌ(ネタバース合同会社)
サニィ(Sui Works)
ヒゲボド
ポーン(ステッパーズ・ストップ)
安藤耀司(LIQUOR GAMERS CLUB)
刈谷圭司(ハーベストバレー)
高津勇星(YUTRIO)
佐藤雄介(新ボードゲーム党)
秋山昂亮(YUTRIO)
新澤大樹(倦怠期)
赤瀬よぐ
仲安晃一(PLAY MARKET)
田邉顕一(COLON ARC)
北野栞菜(union tales)
明地宙(SoLunerG)
与儀新一(77spiele)
他、都合により匿名3名
(JISコード順)

今年度の運営は、運営委員会の以下のメンバーによって行われました。

委員長  朝戸一聖
副委員長 杉木貴文
運営委員 上杉真人、小野卓也、田中誠(50音順)
事務局長 秋山真琴

各作品についての文章は、運営委員や、その作品の推薦者のうちの1名によって書かれました。

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