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ゴールデンボックス ボードゲームアワード2022受賞作の発表

皆さん、こんにちは。
ゴールデンボックス ボードゲームアワード運営委員会です。

3月25日に発表させていただいて以来、多くの反響をいただきました。
関係者一同、コメントのひとつひとつをありがたく拝見させていただいています。
この記事では、ゴールデンボックス ボードゲームアワード2022の受賞作を発表します。

ゴールデンボックス ボードゲームアワードとは

本題に入る前に、改めてゴールデンボックス ボードゲームアワードについて説明させてください。
前回の記事にも記載しましたが、本賞はボードゲーム業界の健全な発展を目的に、デザイナーをはじめとした従事者を評価し、その活動を讃えるための賞です

賞の運営を執り行う6名の運営委員会は業界従事者によって構成されており、運営委員会が個別に声を掛けて集まっていただいた約40名の準備会の会員もゲームデザイナーを中心とする業界従事者によって構成されています。

賞の決定は、下記の手順に基づいて進めております。

・準備会の会員による推薦作の応募
・運営委員会によるノミネート作の選考
・準備会の会員による最終投票
(対象作品:2022年1月1日~2022年12月31日に発売された作品)

賞は全部で7部門から構成されており、部門ごとに応募、選考、最終投票を行っております。
本賞の意図については、下記記事に書いておりますので、あわせてご覧ください。

それでは前置きが長くなりましたが、いよいよ受賞作を発表します!

作品賞の発表

その年を代表する、最も優れたゲームを総合評価し、表彰します。対象はそのゲームに関わったチーム全員となります。

受賞作

  • 『まちがいさがし開発課』(オインクゲームズ)

    • チーム:オインクゲームズ、ボドゲイム

ノミネート作

  • 『Ostia(オスティア)』(うちばこや)

    • チーム:うちばこや

  • 『破宮の十重奏(デクテット)』(オーシャンフロンティア)

    • チーム:ヨフカシプロジェクト

  • 『まちがいさがし開発課』(オインクゲームズ)

    • チーム:オインクゲームズ、ボドゲイム

各作品について

受賞作『まちがいさがし開発課』について:
間違い探しを作らせ楽しく解かせる。そんなシンプルなアイデアを卓上で楽しめる形にし、ボードゲームという製品として成立させるためのあらゆる工夫が見て取れる。ベースのアイデア、それを実現するためのイラストやUI、そしてベストのプレイ環境を用意するコンポーネントの調達。どの制作工程も非常に高いレベルで趣向が凝らされており、このゲームがユーザーの手元に届くまでに沢山の苦労があったことは想像に難くない。感服する。(朝戸一聖)

ノミネート作『Ostia(オスティア)』について:
洗練されかつリプレイアビリティの高いゲームデザイン、航海へのあこがれを引き立てるボックスパッケージ、印刷された木のコマなどのコンポーネント、透明カバーを使って散乱しにくくしたコマ類の収納に至るまで随所にこだわりぬいた作品。ユーロスタイルのゲーマーズゲームにおいて世界水準に達している。キックスターター限定品であるが、海外も含めて一般発売され、より多くの人に楽しんでもらえることを望む。(小野卓也)

ノミネート作『破宮の十重奏(デクテット)』について:
本作は各界の第一線で活躍しているクリエイターが集い、ゲームデザイン、シナリオ、イラストの3点が高いレベルで結びついた総合芸術のような作品だ。どれかひとつの要素でも欠けていたら、たちまち色褪せていただろうが、すべての要素がお互いを補い合っているがゆえに極めて完成度を誇っている。1人また1人と散っていく生徒たちを我が事のように想ったとき、プレイヤーにとって本作はゲーム以上のものになることだろう。(秋山真琴)

ゲームデザイン賞の発表

総合的に優れたゲームデザインやディベロップメントを表彰します。評価対象はルールです。

受賞作

  • 『OPEN(オープン)』(Brain Brain Games)

    • ゲームデザイン:齋藤隆

ノミネート作

  • 『OPEN(オープン)』(Brain Brain Games)

    • ゲームデザイン:齋藤隆

  • 『ゴジラ』(アークライト)

    • ゲームデザイン:川崎晋

  • 『パチスロシミュレーター』(サイシュピール)

    • ゲームデザイン:パーティ太郎

各作品について

受賞作『OPEN(オープン)』について:
ルールを読んだ時点で、プレイしたらいったいどんなことが起こるのだろう? とワクワクさせられる。手札の公開と勝者の予想が2つの大きな柱だが、打天九を彷彿とさせるシンプルながらも一筋縄ではいかないカード構成や、読みの焦点を誰の目にも明確にするAと10の逆転ルール、番狂わせを生み出すスートのフォロー義務など、アイデアをゲームとして成立させるための仕掛けが光っている。(上杉真人)

ノミネート作『ゴジラ』について:
芝浦に出現し東京を蹂躙するゴジラと、侵攻を予測して避難経路を確保する人間のドラマを、できるだけシンプルに1対多のメカニクスに落とし込んだ手腕は見事。さらに人間側プレイヤーは相談して避難ルートを分散させるが、その相談をゴジラのプレイヤーが聞いているため、賢くかつ容赦なく攻めてくるところが興奮曲線を最後まで上げ続けると共に、ゲーム中の会話も盛り上がる。パトスが解放されるデザインである。(小野卓也)

ノミネート作『パチスロシミュレーター』について:
「パチスロ」をテーマにしたゲームでありつつ「ギャンブルゲーム」ではない―そのアイデアだけでも惹かれるものはあるが、「『ゲームデザイン』とはアイデアを形にすること、その先にあるのだ」ということを、このゲームは見せつけてくれたように思う。しかも、そのアプローチも「リアルタイムに競われる統計と推測」という意欲的なものなのだから恐れ入る。あまりにストレートなタイトルも、自信があればこそだろう。(田中誠)

アート賞の発表

ボードゲームの作品価値を高める魅力あるイラストを表彰します。評価対象はイラストです。

受賞作

  • 『破宮の十重奏(デクテット)』(オーシャンフロンティア)

    • アートワーク:久坂んむり

ノミネート作

  • 『タロット・オブ・ノクタ』(おいしいたにし)

    • アートワーク:おいしいたにし

  • 『ナッツアゴーゴー』(itten)

    • アートワーク:富岡克朗

  • 『破宮の十重奏(デクテット)』(オーシャンフロンティア)

    • アートワーク:久坂んむり

各作品について

受賞作『破宮の十重奏(デクテット)』について:
「破宮のデクテット」は、1~2人用、デッキ構築、レガシー要素ありという、極めて尖った内容のゲームである。加えて価格も8800円。そんなゲームだけに、アートワークも「逃げ」ていない。キャラクターがふんだんに配され情報量の多い箱絵、黒を基調としたイラスト群、お約束とも言える明朝体―いずれも「破宮のデクテット」とはなんたるかを表現するということに大きく寄与しており、「正解」と言えるだろう。それが、もし「ボードゲーム」のアートワークとしては評しにくいものであったとしても、だ。(田中誠)

ノミネート作『タロット・オブ・ノクタ』について:
タロットカードは本来ゲームカードであった事実を再確認させるかのように遊ぶための的確なアプローチで堅実に作られている。しかし、ゲームになってもなおそのイラストにはタロットの持つ神秘性を失わせることなく、このゲームならではのオリジナリティを感じさせる点が高く評価された。このプロジェクトは占いと遊びの横断に成功しているように思う。惜しくもノミネートは逃したが別府氏のバージョンも評価が高かった。(朝戸一聖)

ノミネート作『ナッツアゴーゴー』について:
シンプルなイラストでそのゲームの雰囲気を伝えるのはなかなか難しいことだ。だがナッツアゴーゴーはシンプルなイラストながら最大の表現をしていると感じる。出版社が目指すのはスナックのようにカジュアルなゲーム性だと思うが、そのゲーム性を1体のキャラクターに託すのは勇気がいる決断だ。このゲームへの出版社の美学を感じノミネートに至った。(朝戸一聖)

グラフィックデザイン賞の発表

ゲームを表現するタイトルロゴ、演出、優れたUIや視覚的表現を表彰します。評価対象はコンポーネント、パッケージ等、イラスト以外のデザインです。

受賞作

  • 『キャット・イン・ザ・ボックス』(ホビージャパン)

    • グラフィックデザイン:内古閑智之・中島泉紀(CHProduction)・井上磨

ノミネート作

  • 『キャット・イン・ザ・ボックス』(ホビージャパン)

    • グラフィックデザイン:内古閑智之・中島泉紀(CHProduction)・井上磨

  • 『Sapporo-1876-』(うちばこや)

    • グラフィックデザイン:浅野竜希

  • 『頼りない魔法使い』(TITANHEADS)

    • グラフィックデザイン:カミバヤシ

各作品について

受賞作『キャット・イン・ザ・ボックス』について:
モノスートなカードによるトリックテイキングというルールにより、アートワーク・グラフィックデザインへの制約が厳しいものとなるが、逆手にとったカードとボードのイラストレーションやデザインは素晴らしく、ゲームの準備、プレイアビリティ面に貢献している。
ルールブックのグラフィックもユーモアたっぷりに仕上げてあり、ゲームへの没入感への一助となっている。本ゲームの世界各国での高評価へグラフィックが果たした役割は大きい。(杉木貴文)

ノミネート作『Sapporo-1876-』について:
農学校、中央市庁舎、開拓使村、異人館といった建物を中心とし、北海道にゆかりのある有力者がずらりと並ぶゲームボードは、明治時代の札幌の雰囲気を余すことなく伝える。印刷された木製コマが黒を貴重としたボードやカードにマッチし、落ち着いた雰囲気であると共に豪華な雰囲気も醸し出しており、またアイコンやトラックの配置は、機能面と視覚効果の両面において優れている。(小野卓也)

ノミネート作『頼りない魔法使い』について:
準備のためにテーブルにカードを並べ始めただけで、「こことここがそう繋がるのか!」「アイコンのこんな使い方があるのか!」とデザインのアイデアの量に圧倒される。小さな箱とミニマルなデザインの中に、単純には収まりきらないような情報量と楽しさが詰め込まれている。特に倍速モードの実装は秀逸。ボードゲームのデジタル化が進んでいる現代に、アナログのコンポーネントが生み出せるおもしろさを再認識させてくれる作品。(上杉真人)

追記:グラフィックデザイン賞を受賞した『キャット・イン・ザ・ボックス』のクレジットに井上磨さんのお名前が乗っていないというミスがありました。大変申し訳ありません。今後はチェック体制ををしっかりと行い、こういったことが無いように致します。

プロダクション賞の発表

優れたプロダクトの発売を実現したパブリッシャー、プロデューサー、編集者等を表彰します。評価対象は企画、ローカライゼーション、プロモーション等、製品化に関するものです。

受賞作

  • 『ナッツアゴーゴー』(itten)

ノミネート作

  • 『ナッツアゴーゴー』(itten)

    • 企画・ディレクション:島本直尚

    • 原案:福田直樹

  • 『まちがいさがし開発課』(オインクゲームズ)

    • プロダクション:佐々木隼

  • 『まっくらダンジョン』(文具ゲームズ)

    • プロダクション:明地宙

各作品について

受賞作『ナッツアゴーゴー』について:
元となった「マダハイール」は、内容、コンポーネント、そして、そのタイトルも含め、おもちゃっぽさ、キッチュさも大きな魅力だったように思う。Itten-gamesは、今回、商業製品化に際し、ゲーム全体のトーンを木の素材感を重視したものへと変更した。大胆な変更に思えたが、結果、ゲーム性がうまくフォーカスされたように思う。加えて、ナッツを擬人化したキャラクターで遊び心も忘れていない。(田中誠)

ノミネート作『まちがいさがし開発課』について:
ともすれば、ゲームとして成立しないところをゲームに落とし込んだことはもちろん、プレイするにミニマムなコンポーネント群、ちょこまかとした可愛らしい特製の定規で測らせるなど、オインクゲームズの真骨頂ともいえるプロダクト力が光る。 日本人なら誰でも知ってる"あそび"をゲーム化した作品として、海外にも日本人のユーモアを含んだ奥ゆかしさ、ポップカルチャーを紹介する一助となる可能性を秘めていると感じる。(杉木貴文)

ノミネート作『まっくらダンジョン』について:
本作は書けるクリアファイルとダンジョンを書いた方眼紙を組み合わせることで遊ぶゲームだ。この2つを組み合わせてゲームにするという発想と、視界の限られたダンジョンをローグライクに遊べるようにした実装力を称賛したい。アナログによる多少の不自由さは、しかし愛らしいもので、ノートに書いた迷路を友だちに渡して遊ばせた小学生時代を思い出させる。アイデア次第で無限の可能性を秘めており、今後の展開から目が離せない。(秋山真琴)

ルールブック賞の発表

ルールの文章や翻訳、DTPを含め、優れたルールブックを表彰します。評価対象はルールブックです。

受賞作

  • 『ゴジラ』(アークライト)

ノミネート作

  • 『ゴジラ』(アークライト)

    •  ルール初稿:川崎晋(カワサキファクトリー)

    • 世界観テキスト:渡辺範明(ドロッセルマイヤーズ)

    • テキスト編集、レイアウト指定:野澤邦仁(アークライト)

    • グラフィックデザイン:福島了(Drift)

    • 校正、校閲:後藤翔、小池淳皓(アークライト)

  • 『ジャッジドミノ』(itten)

    • ルール執筆、校閲:郡山喜彦 (原作:つきいようすけ)

    • エディトリアルデザイン:富岡克朗

    • ディレクション:島本直尚

    • 校正:池上正志、竹内いつか

  • 『プラネピタ』(SzpiLAB)

    • ルール初稿:堀和紀

    • 文章、構成:藤縄英佑

    • DTP、アートワーク :遠山美月

追記:SzpiLABさんからご提出いただいたクレジットの修正依頼を受けて ルール初稿:堀和紀さんのお名前を追記させていただきました。

各作品について

受賞作『ゴジラ』について:
IPモノなので下駄を履かせての選出とともすれば思われるかもしれないが、それ抜きにしても、パンフレットのようなルールは、ゲームが始まるまでのプロローグとしてワクワク感の醸成に成功している。 ルールの構成、ゲームの流れの説明もプレイシークエンスに合わせた流れと強弱により解りやすくなっており、『ゴジラ』というワードをきっかけとして初めてボードゲームに触れる方でも、理解できる範囲に収まっているルールである。(杉木貴文)

ノミネート作『ジャッジドミノ』について:
ittenファンブリックシリーズは、どれも普段ボードゲームを遊ばない方をメインターゲットとしているが、本作品もコンパクトなフォーマットにも図を多く取り入れてわかりやすくすると共に、FAQや注意ポイントを説明の中に巧みに取り込んで、疑問を解消できるようにしている。文章量を絞りつつ、正確さや誤解のなさを担保し、さらに楽しさの演出までしている点で、他に範となるルールブックといえる。(小野卓也)

ノミネート作『プラネピタ』について:
プラネピタの説明書は過不足なく簡潔でわかりやすい。おはじきのような動きがあるアクションゲームでありながら、紙の説明書を順に追っていけばゲームを遊ぶことができる。説明書はボードゲーム制作の最後の仕事となってしまうことが多く、なかなか小さなサークル内での制作では細部まで気を配るには制作の気力が必要だと思うが、非常に丁寧でさりげないデザインの工夫に驚くばかりだ。(朝戸一聖)

追記 : SzpiLABさんの依頼により、堀和紀さんの名前を追記しました。

特別賞の発表

他部門に含まれないが特に優れた功績を残したゲームや人物を表彰します。

受賞作

  • 『SCOUT』(オインクゲームズ)

作品について

日本で生まれた優れたカードゲームがドイツ年間ゲーム大賞という世界最高峰の舞台で評価された。さらに、作品をそこに届けたのがドイツに本拠を置く出版社ではなく、日本を本拠とする出版社の現地法人だったという点は前例がなく画期的。そこに至るまでに多くの困難があっただろうことは想像に難くない。すばらしいゲームを生み出した梶野桂氏と、それをドイツにも届けたオインクゲームズの両者に最大限の賛辞を送りたい。(上杉真人)

終わりに

以上で受賞作の発表を終えます。
受賞者にはトロフィーとして金のボードゲーム箱を贈呈予定となります。

トロフィーは受賞作決定後に製作に着手するため完成まで2ヶ月ほど要することになります。尚、トロフィー製作にあたり、大興印刷株式会社様より、賞のちからになりたいとトロフィー制作の協賛いただきました。ご厚意で製作いただけますこと、この場を借りて御礼申し上げます。

第2回となるゴールデンボックス ボードゲームアワード2023につきまして、おおまかなスケジュールは下記の通りとなります。

・会員による推薦作の応募期間:2024年1月末まで
・運営委員会によるノミネート作の選考期間:2024年2月末まで
・会員による最終投票期間:2024年3月中旬まで
・受賞作の発表:2024年3月末

一度始めてみようと始めたできたての賞ですので、まだまだルールづくりなどやらなければいけないところは沢山あります。
ボードゲームを作っている皆様とともに作る賞として、今後についてみなさまのアイデアやご意見などを取り入れながら作っていきたいと思っております。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今後も継続して情報発信していきますのでnoteやTwitterアカウントをフォローいただければ幸いです。よろしくお願いします!


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