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為替リスクの取り方・外し方

為替リスクの取り方・外し方には様々なやり方があるので、やり方をここにまとめておこうと思います。

両替

手持ちの円をドルに両替すると、為替リスクをとることになります。このとき、米国の金利が高く、日本の金利が低かったとします。まさに今の状況ですね。このとき、日米金利差分のお金を増やすことができます。円貯金では日本の金利しかもらえないのに対し、ドル貯金では米国の金利がもらえるためです。

以降、両替以外の様々方法で為替リスクをとる方法を紹介しますが、どの方法を使っても、日米の金利差を受け取る事になります。逆に、為替リスクをはずすと、金利差を支払うことになります。

FX

両替以外で一番有名だと思うのが、FX。ドル円をロング(買い)すると、為替リスクをとって、金利差に相当するスワップポイントをもらうことができます。逆にドル円をショート(売り)すると、為替リスクをはずし、スワップポイントを支払うことになります。

為替ヘッジつき投資信託

S&P500の投資信託を買うと、為替リスクをとることになります。つまり、「円→ドル両替 + S&P500買い」と同じこと。

一方、為替ヘッジつきの S&P500 の投資信託を買うと、取った為替リスクを外すことができます。代わりに、金利差を支払うことになります。つまり、「円→ドル両替 + S&P500買い + ドル円ショート(売り)」と同じことです。

借金

金利の低い円を借金してドル転してS&P500を買ったとします。借金を返すときには、S&P500を売って得たドルを円に戻してから返済する必要があるため、為替リスクをとっています。

一方、金利の高いドルを借金してS&P500を買ったとします。借金を返すときには、S&P500を売って得たドルをそのまま返せばよいです。よって、為替リスクをとっていません。

よって、ドルで借金する代わりに、円で借金してドル転して投資することには、為替リスクをとって金利差を受け取る、ドル円ロング(買い)の効果があります。キャリートレードとも呼ばれます。

逆に、円で借金してドル転する代わりに、ドルで借金すれば、為替リスクを外すことができます。

日本に住む人が円を借金するには、住宅ローンや証券担保ローンなどがあります。他にも、日経225の先物を買ったり、信用取引をしても、円の借金と同じ効果が得られます。

日本に住んでいても、S&P500の先物を買ったり、米国株信用取引をすると、ドルを借金することができます。(ドル建て指数の先物を買うとき、ドルで借入するのと同じ金利がかかっていることを忘れている人が多いのでご注意下さい。コストとして明示されていなくても、先物の価格そのものが、米国金利相当分が下がっていきます。)

レバ投信による借金

レバ投信を使う場合は、商品によって事情が異なります。例えば2倍レバのレバナスは、200% 相当のドルを借金することに相当します。為替リスクはなく、米国金利 200% 分を支払います。

一方 QLD などドル建ての2倍レバレッジ ETF では、100% 相当のドルを借金することに相当します。為替リスクを 100% とり、さらに米国金利を 100% 支払うことになります。

TQQQ などドル建て3倍レバなら、200% 相当のドルを借金することに相当します。為替リスクを 100% とり、米国金利を 200% 支払うことになります。

ドル借金を円借金に変える方法

ドル借金 + ドル円ロング(買い) = 円借金 + 円→ドル両替

が成り立ちます。例えばレバナスを買うと、ドル借金を 200% することに相当しますので、高い米国金利を2倍分支払わなくてはいけません。そこで、2倍分のドル円ロング(買い)を組み合わせれば、円借金をしてドルに両替後に NASDAQ100 を買ったことにできます。これで、2倍分の為替リスクをとるかわりに、安い日本の金利2倍分の支払いで済ませることができます。

同様に、レバナス買いと、同量の円ロング(買い)を組み合わせれば、QLD と同じ効果を得ることができます。

まとめ - 結局どの方法で為替リスクを取ればいいの?

ここまで説明してきたように、多種多様(両替・FX・為替ヘッジ・借金・レバ投信)を使って、為替リスクをとったり外したりできます。フリーランチはなく、どれを使っても基本的な効果は同じなので、自由に組み合わせてかまいません。ただし、コストが微妙に違います。

まず一番お得なのは、一部のネット証券が展開している、米国株信用取引のキャンペーン適用金利。米国3ヶ月金利が 5.4% をこえる今日(2024/5/2)現在でも、SBI証券と楽天証券では 4.5% の金利でドルを借金することができます(アービトラージ可能な状態)。ただ、いつ終了になるかはわかりません。

先物、FX、CFD は、コストが非常に低い会社が存在します。買いと売りのスプレッドがコストに相当します。証券会社によってスプレッドは異なり、状況は日々変動するため、ご自身でお調べ下さい。コストは低いですが、罠もいろいろあるので、スプレッドを自分で調べられないレベルの初心者にはおすすめしにくいです。

レバ投信や為替ヘッジでは、先物やオプション、スワップなどコストの非常に小さなプロ仕様のデリバティブ商品が内部的に使われています。ただし、我々が購入するときには、信託報酬などが追加で必要になります。とはいえ、最近では信託報酬が小さいレバ投信も増えてきました。例えば Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)の信託報酬は 0.2% をきっています。

円を借金するなら、住宅ローンは最強クラスです。0.2% 台の変動金利もあると聞き及んでいます。私自身は、0.35% の変動金利を組んでいます。住宅ローンは住宅の購入資金に当てる必要がありますが、働いて稼いだお金を繰り上げ返済せずそのまま持っていれば、実質的には安い金利で借金した状態を作り上げることができます。

住宅ローンに次ぐのが、野村證券の信用取引。2024/7/1 時点で、金利は 0.85% です。取引手数料はやや高めですが、長期投資をする場合には非常に有力な選択肢となります。なお、現物の取引手数料が特にとんでもなく高いので、信用二階建てしたい場合は、信用買いからの現引きをおすすめします。

最後にもう一つ、もしあなたの家族が円をたくさん貯金しているのだったら、そのお金でオルカンや S&P500 を買ってもらうという手も、家族全体のポートフォリオを考えれば為替リスクを取る有力な手段かもしれません。

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