「鴨川等間隔」と京都盆地の3つの川
岡崎体育の曲の中で人気の曲といえば「鴨川等間隔」をあげる人は多いだろう。岡崎体育自身もお気に入りのひとつと言っているくらいで、コンサートでも常連の曲だ。
2019年にNHKで放映された「岡崎体育 LIVE at NHKホール」では、この曲を"冴えない大学生の日常を描いた"と紹介している(ちなみにナレーションは宇治市出身の麒麟・川島が担当)。
京都盆地って?
盆地とは周囲を山に囲われた、低く平らな地形…中学生くらいに地理で勉強するやつですね。
縦長の京都府を3分割した一番下の部分、京都市から南端の木津川市まで、近畿地方でいうとど真ん中らへんに位置する盆地だ。夏の風物詩、五山の送り火はこの盆地の北側の山々で行われる。
山があり盆がありまた山がある、変化に富んだ岡崎体育の音楽・盆地テクノの聖地である。
この聖地には3つの川が流れていて…
1.鴨川
タイトルになっている川。
盆地の北東部から京都市内の中心部近くを真南に流れる。北から三条、四条、五条…九条通りを過ぎるあたりで南西に向かう(その先で盆地北西部から来る桂川と合流)。
とまぁ地理的な説明を詳しくしてもアレなんでざっくり言うと、鴨川はカップルの憩いの場ですね。ざっくりすぎる。
市内の繁華街、三条〜四条界隈をぶらぶら
歩き、河川敷の芝生に腰をおろして遠くの山々を眺めるもよし、寄り添って会話するもよし。
カップルみな考えることは同じで、川沿いに来たものの先客がいる。パーソナルスペースを保つためにちょっと離れた場所で座る。別のカップルが来る。パーソナルスペースを保つためにちょっと離れた場所で以下略。等間隔のできあがりである。
おそらくお洒落に縁のない「俺」は、1人で繁華街に来て散々悩んだ挙句紺色のパーカーだけ買って…ってあれ?パーカーってどうなん?大学生がパーカーってどうなん?お洒落の部類に入りますか?しかも前に買ったスニーカーも紺やったし…ていうか紺はダサいなネイビーブルーって言っとこ…とか思いながら四条大橋を歩くんだろう。
目に入るのは等間隔リア充。あー風が心地いいわ。でも女の子は髪の毛ファッサーなるもんな、しゃーない。でも隣の彼氏はそんなん気にせーへんやろ。あー風が心地いい。嫉妬やない、これだけは言える。
え?自分の実体験?そんな訳ないじゃないですかやだなー。
ちなみに繁華街から鴨川を渡ると京阪の駅がある。京阪の線路は出町柳駅から七条駅あたりまでは鴨川沿いに南下している。「俺」は京阪に乗ろうとしたのかそれとも…?
少し歌詞を戻す。歌い出しで「俺」は、免許更新の待ち時間に手持ち無沙汰でヤンマガを読みながら硬いパイプ椅子に尻を冷やしている。
たぶん初回更新か。21〜22歳あたりと言ったところか。
「俺」は京都府民なのだろうか?この運転免許試験場は鴨川が南西に進路を変えて桂川と合流した先に位置している。
公共交通機関で行くにはクッソ不便な場所なのだが、「俺」はきっと電車とバスを乗り継いで来たんだろう。
京都府警のサイトには試験場へのアクセスとして、JR長岡京駅、阪急長岡天神駅、近鉄竹田駅・桃山御陵前駅、京阪淀駅・京阪中書島駅からそれぞれバス乗り換えと案内がある。
更新手続きしてから服を買いに来たと考えるとここは京阪を使ったと予想したい。
しかし「俺」の居住地は謎のまま…
(どうでもいいけど試験場の待合所にあるコモパンの自販機はまだあるのだろうか。賞味期限まで1か月以上ある!が売りのパッサパサのパン)
「俺」の友人達はみんなそれぞれの友達と遊びに行ってしまったので、1人でぷらぷらするしかない。大学内ではよく一緒に過ごすが、「俺ら親友!人生の友!」みたいな距離感ではないし、外では会うこともない。どこか一歩引いたような、透明な壁がある、もしくは作っているのだろう。おそらく似たようなスタンスの「塩田」とよくつるんでいるが、今日は飲みに誘うのはやめて、1人で買い物でもするか…みたいなそんな休日。ものすごく分かる。
2.宇治川
京都府のお隣滋賀県の琵琶湖から流れてくる川。
盆地の東側から岡崎体育の出身地・宇治市内を西へ流れ、最終的に淀川となり大阪湾へ注ぐ。
鴨川等間隔のMVのロケ地は宇治なので、鴨川じゃなくて宇治川ばっか出てくる。宇治川等間隔。
時は流れて同級生はそれぞれの道を歩み始める。つまりは社会人になったようだ。てことは今は大学5回生?それか浪人してたからようやく4回生になったのか?
とにかく「俺」と「塩田」(同じ浪人or留年仲間?)は周りの学生より歳上のようだ。
塩田は家業を継げばいいしお気楽なもんだ。反面「俺」はそういう訳にもいかず就職先を見つけないといけないが、そう思いつつも徹夜でゲーム生活でそもそも卒業できるかの疑問があったりなかったり。久々に実家にでも顔出そうかな。奈良線のホームはどこだっけ?とか考えたり。
奈良線はJRの路線で、京都駅から奈良駅までを南北に走る。(正確には京都〜木津間が奈良線だが、2駅先の奈良駅を終点として走っている)
ちょうど中間地点が宇治で、宇治川をまたいで走るときの車窓が個人的に好きだ。
(ちなみに大久保のファミマでおなじみ近鉄も京都と奈良を結ぶが、路線名は近鉄京都線)
「俺」、実家はJR奈良線なのか。もう勝手に宇治が実家ということにしよう。
奈良線のホームはどこかと迷うくらい広いのは京都駅しかない。普段は京都市内で生活してるのか?
3.木津川
三重県の方から京都盆地の南部を流れる川。
京都市の南の宇治市のずっとずっとさらに南の木津川市から北上し、桂川と合流する。
京都市と聞くと清水寺とか祇園など、THE 京都のイメージで全国区だし、宇治市も宇治茶や平等院でギリギリ名前は認知されているとは思う。
近畿に住んでるなら「京都市の下に宇治市がある」程度なら把握してる人もまぁいるだろう。
では宇治より南は?…なんかあったっけ?奈良県だよね?
そのレベルだ。
そのレベルの川を鴨川と同じ感覚で歌詞に載せる岡崎体育マジぱねぇ。
BBQに参加する「俺」
どういうシチュエーション…?気候的に春か。ジャージ纏ってるし。サークルの歓迎会?ゼミか何かの親睦会?
何かの付き合いで参加したのは間違いない。
しかし遠目に眺めるだけで輪に入らないどころか、キャピキャピ女を許さないって…
髪を耳にかける仕草は許してやったのに…完全に余裕が無くなっている。脳内でプロレス技かましてるし。しかも砂利の上。
木津川の上流に笠置という町がある。規模の大きなキャンプ場があり、GWはBBQ狂いで賑わう。大阪・奈良・三重からも足を運ぶ人が多い。木津川BBQといえば大抵ここを指す。
しかし思う。岡崎体育は同志社大出身だよな…
「俺」は岡崎体育ではないのは承知している。岡崎自身もこれはフィクションと公言している。
だが僕の指はgoogleを開いていた。
「同志社 木津川 BBQ」…ほら出た。
数は少ないもののサークルの新歓BBQの案内や写真。
TwitterやInstagramでも確認できる。
笠置から下流へ約20km。京田辺市にある同志社大学京田辺キャンパス。そこからそう遠くないところに木津川は流れている。
ネットに出てくる写真はキャンパスからほど近い河川敷の風景。
え?何でわかるかって?あのキャンパスの学生はよく近くの木津川でBBQしてたからね…え?実体験?お察しください。
では「俺」は京田辺キャンパスの近くに住む学生なのか?
だとしたら奈良線で実家の宇治に帰るなら、JR学研都市線の同志社前駅から乗車して木津駅へで奈良線に乗り換えるはずだ。
木津駅はホームに迷うほど大きな駅ではないからこれは考えにくい。やはり京都市内か。
きっとBBQは今出川キャンパスとの合同サークルが何かだったんだろう(考えるのをやめた)。
…とまぁ輝くような大学生ではなくむしろ堕落しつつある学生生活だけど、リア充的堕落(と表現して自我を保つ)を見て嫉妬やないと言い聞かせたり。何となく後ろめたさや焦りがあるし、現状を変えねばという気持ちもあったり。
しかし決して負の感情で染まった訳ではない。
十六文キックでカミから順に蹴落としたりたい気分だぜ
最後のフレーズは岡崎体育の伸びやかな声も相まって、不思議と清々しく前向きな気分になる。
なんか所々「俺」の心情ではなく自分の思い出が混ざっている気がしないでもないが、誰にでも当てはまる部分があるのがこの曲の良さを際立たせている理由だと思う。
鴨川(からの桂川)と宇治川と木津川は、盆地の西側、大阪府との県境あたりで合流し、淀川となって大阪湾を目指す。
僕は京都盆地で学生時代を過ごし、就職して大阪へ出てきた。
僕の人生は川なのかもしれない。
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