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僕の彼女はお散歩マスター 

僕はどちらかというと仕事がら車での移動が多い。

でも仕事ではほとんど立ちっぱなしか、動きながらやっているので、
一日の歩数はかなりのものだ。

彼女は、自宅で仕事をしているから、朝晩は必ず1時間以上の散歩をして
どの散歩コースが楽しくなるかを熟知している。

たとえば、夏の暑いハレの日なら木々の多い木陰がずっと立ち並ぶ小道を選ぶ。しかも5時には起きて動き出すと言う。

雨の日なら軒先の多い古民家の家並み。雨音を聞きながら、ただ石畳を数えて歩くという。

そんな風に楽しそうに話す彼女の散歩の様子は、僕も散歩に連れてって欲しい気分になる。
まるで犬のような気分だ。

なんだか瞑想みたいになっているその散歩の様子を、ヨコで見てみたい。そう思うことがよくある。

でも、僕はめっぽう朝に弱い。だから早起き次第で行くか行かないかを決めようと思っている。

そんなことを思い浮かべていた時、突然「今からマスターは散歩に出かけます。」と彼女は言い出した。

夕方のことである。

やった!そうか、朝じゃなくてもいいんだなと思い、ホイホイとついて行った。

僕は玄関で久々にランニング用のクツにはき替えた。

彼女は「ヒモはギュッと!途中でヒモを結ばなくていいようにしたいの」と言った。

へー、僕はその言葉に少したじろいだ。

さぁ出発。

そんな流れで、階下の歩道に出て歩きはじめると、彼女がいない。

もうあんなところに!?いつの間に??

「ああ」と言いながら僕も速足で追いつこうと半ば走るようについっていった。

は、速いな。

彼女は楽しそうに、しかも寡黙にどんどんずんずん、しかもスマートに歩き続けている。

しかも、瞬間的に携帯で植物などを撮っている。瞬間的な技だ。

それにしても今日は快晴。気分もいい。

なんだか爽やかな気分になってくる。

歩いている途中。

ああ、お腹が空いたなぁ。なんか食べてくればよかった。

コンビニの前を横切る、かと思いきや「なんか食べる?」と彼女は言う。

「うん。おにぎり♪」

コンビニに入るとサッと天然水と梅干しのおにぎりを購入し、外に出て
また歩き出す僕たち。

小さなリュックにおにぎりと天然水をおさめながら、歩いた。

「おにぎりを食べるにはあそこがいいわ、最高のロケーションよ」
とハツラツとした笑顔の彼女。

それから、20分ほど歩いたところでとても風光明媚な山と海を180度見わたせる広い場所に出た。

僕は思わず「気持ちいいなぁーーー」と深呼吸した。

さっきまで汗を拭いていた彼女は、すでに座っておにぎりをほおばっていた。

僕はあまりの景色の美しさに、おにぎりのことも忘れていた。

ああ、彼女のお散歩がマスター級になるのも、納得だな。

僕も時々こうして歩くことにした。これならハレの日でも雨の日でもいいなぁ。

僕はしあわせだった。


・お散歩
・マスター
・彼女

でショートショートを作ってみました。

HAVE NICE GW♡


#ショートショート小説

田丸さんと又吉さんの「歩く望遠鏡」を読むだけでも楽しい一冊


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