アップルメガネは誰のもの
アップルが二つ並んだようなメガネは光が当たると、赤のようなオレンジのようなピンクのような不思議な色に変化する。
ある日、そのメガネはウッドデッキのある海沿いのカフェテーブルにおいたままになっていた。 それは誰かの忘れ物として、ずっとレジの下の専用かごにおさめられていた。
今朝、カフェのオーナー・ルカの末娘がやってきて、このメガネは誰のものか聞いてきた。 「それは忘れ物なの。落とし主が分からないのよ。」と言ったら、 じゃ、わたし使っていいの?と聞いてきた。 そのメガネは、赤ちゃんがかけるには大きすぎるし、小学生くらいの子によってはちょうどよいサイズのもの。 そういえば、その忘れ物があった日は子どもは来なかったなぁと思いながら、「じゃあほんの少しならかけてもいいよ」といった。
うれしそうにあの子がメガネをかけていた時の間、ルカもなんだか気持ちが穏やかだった。 いつもの「ダ・メ・よ」がでてこないこともあってか。 まぁそんな日もあるかと思った。それからウッドデッキでお客さんが来るまで二人はゆったりと過ごしていた。
そのメガネがだんだんステキなものに見えてきたので、ルカはもうカゴに返そうねと娘にいいきかせた。 素直にもどそうとする様子を見ながら、なんだか今日はいつもとちがうなと思った。
ルカはカゴに返すためにレジに向かいながら、ちょっとそのメガネをかけてみた。 そのとたん、 たくさんのシャボンが空中に浮いているすべり台のある大浴場に入り、その帰りに父にバニラアイスを買ってもらって食べている情景がうかんだ。 「そんなこと、あったなぁ」 ずっと忘れていた、しかも大好きな思い出がよみがえって来た。
いきなり「ママバニラが食べたい」と娘がいってきたので、ルカはメガネをカゴにもどし、冷凍庫をあけた。残念ながら、ボックスの中のバニラはからっぽだった。
ちょうどその時、友人がエントランスから入ってきて「ルカ、バニラ持ってきたよ。好きだったでしょ?」と言いながら、二人の前にアイスの入ったクールパックの持ちてを差し出した。 「あ!ラッキー(笑)ちょうどよかったよ。ありがとう。」とルカはうれしそうに受け取った。
そして3人でウッドデッキで風に吹かれてバニラを食べながら おしゃべりをした。
ショートショート小説を作ってみました。
バニラ・アップル・メガネで。
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