書評:シリコンバレー流科学的に自分を変える方法 ZONE(原題:STEALING FIRE)
自己啓発本は、陰謀論と同じく、特定のコミュニティでどういう思想をベースに行動しているかをしるために、たまに読んでいます。
この本は、ポジティブ心理学やGRIT(グリット・やりぬく力)の先という感じで、古典的な自己啓発の流れを汲んでいる本だ。
ゾーンやメディテーション、サイケデリックを同一のものとみなし包括するエクスタシス(NOSC)という概念で説明している。
ゾーンやフロー、その類似概念を体験したことがある人は、わかりやすい。人を幸せにするのはお金ではなくフロー状態という考え方もある通りその状態に入るのをコントロールできれば様々なメリットがありそうだ。
ただ、その状態に入るための具体的なアクションに落とし込むことが難しい。最後に快感スケジューリングというそれなりに具体的なアクションを提示しているがサイケデリックを体験しやすい薬理学的なアプローチは取りずらい*1しお金のかかるアプローチをとれる人はうらやましいなと感じるだけになってしまう。
やろうと思うのであれば、薬理学以外や、お金のあまりかからない方法によって入りやすさを制御することになるのだが一連の状態がわからない人にはさらに難しい*2。というよりそもそもこの本の内容がわからない気がする。
私はすでに自分を変え慣れていて、この手の本を読むと、知っていることが形を変えて記述されているのを見るだけになってしまいがちなのだが、自分を変える手段として読むか、他人を変える手段として読むかの2つのアプローチがあるということは提示したい。
過去と他人は変えられないという前提を持つことはメンタルヘルスの基本なのだが、どうしても他人変えることを真剣に行わないと死ぬというシチュエーションは結構頻繁に発生する。家族という他人に対してだったり、仕事上の関係者や、友人やパートナーとなった人に対して。一番は自分という他人に対してだったりするのだが。
科学的に自分を変えることが出来るのであれば、当然、科学的に他人を変える方法として悪用できるので変える方法がコモディティ化した先に備えてどこまでを社会として許容するかということも含めて検討しなければなりませんね。
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