NO FRILLS,NO BULLSHIT/FRIARS”N”SNIFFERS

細菌問題は本当に憂鬱である。
人々の健康面も当然ながらイベントの仕事やってライブやってる俺にとっては、仕事も音楽も出来ない八方塞がり状態になっているので、明日をどう生きる?状態。
音楽は音の学問である。音の感覚を考える事により、人は精神を研ぎ澄まし、それは新たな科学や生活様式を育てる土台となってきた。
素晴らしい発明の裏に素晴らしい音の発見あり。
こんな最悪の春に最高の音源が発表された。
福山、山口、福岡の西日本を股にかけたメンバーによるパンクロックバンドFRIARS”N”SNIFFERSのアルバム「NO FRILLS,NO BULLSHIT」、冗談や誇張抜きにして、涙無くしては聞けない作品だ。

音楽の説明は音楽だけで完結したいところですが、彼等とは思い出が余りに多くあるので俺個人的な話を交えながら(けど長くなりすぎるので最小限に)、この2020年最重要作品について触れていきたいと思います。

「FRIARS”N”SNIFFERSってバンドを始めたんよ。」と、ドラムのリョーイチ氏に聞いたのはもう7年以上前。
元々リョーイチさんとボーカルのマサミツ君がやっていて、そしてフライヤーズの母体ともいえるバンドLAST REJECTIONは大好きで、俺がやってるミッドナイトトーキョーのレコ発にも頼んで出てもらっていた。

音楽的交流もさることながら、どっちかといえばバーベキューをやったり、めちゃくちゃなメンツで飲み会を繰り広げるなどしていた。
LAST REJECTIONが当時、色んな事情あって活動困難になっている時のFRIARS結成の報には驚いた。
そして、何よりその活動の内容にもっと驚いた。

え、あのイベントに出演?あのバンドとツーマン?

もう観たくて仕方がない。
リョーイチさんに連絡し、ALCOHOLIX初の単独主催イベントに出演してもらう事が決定した。

当日、ギターのウッチーさんと初対面する。
ウッチーさんは誠実さを絵に書いたような律儀で魂の熱い素晴らしい人で、熱くこの日のライブについてお互いに話した。

そのライブは硬派なUK80型パンクのサウンド、更にカジュアルズを取り入れるオリジナリティに溢れたもので、流行や周りの傾向を一切遮断し、本当に自分達が好きなものを追い求めた真のパンクそのものだった。

震えた。これや、これやで。
俺が大好きなパンクロックだ!

2010年なのに針式のチューナーを使い、サイズの小さいマーシャルをフルボリュームでウェットな素晴らしい音色を奏でていたLAST REJECTIONコータロー君とは対照的に、ウッチーさんはスタックアンプの爆音でクリーンでソウルフルなギターサウンドで、FRIARSが新しいバンドである事を宣言しているようだった。
加えて寡黙で腰の据わった井上君のベースにリョーイチさんのマシンガンドラム(リョーイチさんの8ビートとマシンガンの様に正確なフィルは本当に最高。)、そしてマサミツ君の堂々たるドスの効いたボーカル。
心から出演してもらって嬉しいと思った。

それからも節目のライブには必ず共にする程、俺にとって最重要バンドであり続けた。
そしてリョーイチさんやウッチーさん(広島や岡山に行く度に都合をつけて頂き、本当に感謝です。)の紹介で繋がれた日本中のパンクス、スキンズとの出会い。
感謝してもしきれない。

その後、驚きの井上君脱退。
アートワークも手掛けていた井上君の脱退にどうなるんだろう…と思っていた矢先、新ベースにモッチーが加入。これはびっくりしたがすぐに納得した。最高の人選である。

元々モッチーはFRIARSが大好きだったし、年々Oi/SKINS、そしてブリティッシュカルチャーに傾倒していってた。
俺が初めてモッチーと出会った時、彼はUSハードコアの専門家のイメージが強かった。友達つてでしか会う事もなかった。
が、ある時ライブハウスで珍しくお互い一人でいて、モッチー君は最近何聞いてんの?と聞くと、「COCKNEY REJECTSかな。」と意外な事を言い、徐に口でドラムを歌い出し、「East End!」と2人同時に拳を上げたのに笑って、「極楽君、話せんじゃん。」何ていって、全然音楽と関係ないブッタクとかほか弁の話で盛り上がったのが彼と仲良くなったきっかけだったりする。

そんな彼が長い時を経て、FRIARSに加入したのは俺にとって物凄く熱い話だった。
だが面白いもんで、まだ加入した事を俺が知らない頃。
リョーイチさんにミッドナイトのヘルプを頼んでた時にスタジオにモッチーが来て、何やらバンドの話をしていて、モッチーが俺に「いやあ、すげえ楽しいよ。」と笑って、「へえ。2人で新しいバンドやるの?」と聞くと、2人とも「あれ?言ってなかったっけ?」とキョトンとしてFRIARSに加入した事を伝え、俺は大層びっくりした。
そのくらい自然だったのだろうか。

この布陣になり、遂にリリースされた待望の単独作「NO FRILLS,NO BULLSHIT」は期待を遥かに上回る最高の内容だった。
別内容の7inchレコードとCDがセットになっている仕様の先進性にまず驚かされる。
ダウンロードカードなど中身が色々入っていて、お得感も抜群。
CDはCDでジャケがパッケージされているのも嬉しい。
レコード音源のダウンロードはSONOCAというアプリを使っていて、俺の様なダウンロード音痴にも優しい。

CDと7”で録音された場所が違うのも面白い。
しかも80年台中盤のネオアコに影響され過度期に入ったストリートパンクを彷彿とさせるニューウェーヴィーな音像の曲がレコード、Oi/Skins直系のラウドでシンプルなパンクサウンドの曲がCDなのも面白い。
録音された場所と媒体が違う事もあり、まるで違う時期にリリースされた二枚のEPを聞いてる様な感覚になる。
革命的なリリース形態だ。
思わず真似したくなるが、彼らがやったのでもう遅い。
先駆者は常に追随者をおいて先に行くのだ。

しかしこの美しい曲達よ。美しいギターサウンドのGOT MY OWN THING、ギターポップの文脈でも評価されるべきYOU GOTTA SAY WHAT YOU WHANT TO SAY、マイナーコードの響きが心地よいPHYCHO KILLER。
そして先人達への最大のリスペクトが感じられるフレーズの数々。これだから音楽ってのは、中でもパンクロックは素晴らしいね。
今すぐライブが観たくなるLIFE IS A GAME、KEEP ALERTの攻撃力、ラスリジェからお馴染みの必殺ナンバーTHE INVISIBLE MANはファットな録音で最高(ちなみにラスリジェ版もまた素晴らしい)、サッドなメロディで意味深い歌詞のPROTOTYPEも素晴らしい。
歌詞も素晴らしいんですよね、ただの英訳歌詞ではないのを気づかれたろうか?ガッチリ踏まれた韻が気持ちいい。
日本語歌詞の対訳までニヤリとさせるのはさすが。

と、勝手に解説させて頂いたこのアルバム。本当に素晴らしいです。
本当に最悪な毎日だし世の流れです。
俺はやりたい事をやる為に労働したり、何かを見つける為に失敗したり、謝ったり。憂鬱な実家の問題と戦ったり。週末が稼ぎどきなもんでライブも中々行けないし。
それでも僕は素敵な音楽が自分を、世の中を進化させる為にも、何とか無理しでも探しに行こうと思う。約束はいつだって出来ないけど。
何故ならFRIARS”N”SNIFFERSの様な素晴らしいバンドがいるから。

最後にTO FRIENDの歌詞を引用して終わります。

oh,grateful to my friends

In this our small island

oh,grateful to my friends

wa’ve gotten to know the rock and roll band

“砂の城は崩壊し
君は一人ぼっちになるやろう
友には感謝を
このちっぽけな国で
バンドを通じて知り合ったんだ”

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