ゴッキンゲルゲル・ゴキ博士の知らんけど日記 その49:「ブラック・ジャック」という奇跡28 ~指~

 第28話「指」は、1974年6月24日、週刊少年チャンピオン誌に掲載された。あらすじはこうだ。

 旧友・間久部緑郎からブラック・ジャックのもとへ手紙が届く。会いたいと。彼のもとへ向かう。二人は中学時代からの親友。その頃、間久部の指は、手も足も6本ずつあった。ブラック・ジャックも車椅子で生活をしていた。ブラック・ジャックは言う。「中学のときだ・・・・・・」「わたしもきみも みじめだったなあ」「わたしは身体障害者 きみは不具者だったんだ」。「そうだ・・・おれはそのために クラスでもバケモノあつかいだったし のけものにされて いつも ひとりぼっちだった」「そのとき 車イスにのった きみに出あったんだっけな」「きみとおれとは同情しあい ともだちになった・・・・・・毎日いっしょにあそんで なぐさめあったっけなア」と間久部も返す。「しかし おれもきみも クラスじゃあ ズバぬけてトップだった・・・・・・そうだ がんばったんだ からかわれれば からかわれるだけ ふたりとも はをくいしばって・・・・・・」。
 間久部は奨学金をもらい、アメリカの大学へと旅立つことに。出発前、間久部はブラック・ジャックに6本目の指を切りとってもらう。7年ぶりに再会した間久部は言う。大学を退学させられて悪の世界に入ったと。「いまじゃ暗黒街じゃあ 名を知らねえやつはモグリだといわれてるくらいの男になっちまったよ・・・フフフ・・・かわればかわるもんさ われながらね」という間久部に、「指を おとさないほうが よかったなア 間久部」とブラック・ジャック。「そうかもしれねえよ」「六本の指で ガムシャラにがんばっていれば いまごろは 大学者だったのにな」と応じる間久部。
 大悪党となった間久部はICPO(国際刑事警察)に追われている。そこで、ブラック・ジャックに指紋を変える手術を依頼する。断れば殺すと。間久部の部下の指と間久部の指をすべて入れ換える。手術は成功。ブラック・ジャックが謝金をもらって帰ろうとすると、謝金の入っている鞄に仕掛けられていた爆弾が爆発する。間久部が命じたのだ。ブラック・ジャックは瀕死の重傷を負う。間久部は指を入れ換えた部下も殺す。
 後日、間久部はパリ警察で警部の取り調べを受けている。「するとおまえは いままでにおかした 殺人 密輸 麻薬売買 とばく サギ イカサマ 暴行 収ワイ 人身売買 売春 立ち小便のどれも みとめないのだなっ」と警部。指紋が違うので逮捕できない。そこへ、警部にブラック・ジャックから小包が届く。間久部の6本目の指がアルコール漬けされた標本。万事休す。
 ブラック・ジャックは「友だちか・・・・・・」と一人つぶやき、間久部からの手紙を破り捨ている。

 本編「指」は、新装版『ブラック・ジャック』にも元祖『少年チャンピオン・コミックス』にも収録されていないため、大阪府立図書館よりコピーを取り寄せた。収録されなかったのは、「不具者」という表現が不適切だということと、後年この作品は「刻印」というタイトルでリメイクされているからだと思われる。が、心理学的意義は小さくないゆえ、あえて取り上げる。

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