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フィンランド旅行記一日目 サーリセルカ(投げ銭)

 取ってある部屋はツインが2つ。親子で別れ部屋に入ると、一気に疲れが出て動けない。家を出てから23時間の長旅に加えてトラブル続きだったから当然だろう。
 しかし旅行の目的はオーロラを見ることだ。一番オーロラが見えるであろうここサーリセルカには2泊しかしないので、今日を逃したら明日しかチャンスがない。年齢的にもっと疲れている両親も同じ気持ちだったようで、15分ほど休んで防寒をしっかりして、すぐにホテルを出る。

改めて外を見渡すと、一面の雪景色で人っ子一人いない。見たことのない景色に、とうとう北極圏に来たんだなあという気にさせられる。
 日本で買った雑誌によると、オーロラの観測ポイントは2箇所あるらしい。そのうちホテルに近い、教会のそばにある観測ポイントに行くことにした。
 それにしても思っていたよりずっと寒い。さっきはチェックインするのに走り回っていたので暑いくらいだったが、ゆっくり歩いているとどんどん熱を奪われるようだ。
「もう寒いから帰る!」
「まあまあ、オーロラ見に来たんだからあと少し頑張って!」
寒さに耐えられずダダをこねだした母を弟となだめる。

 教会へ行ってみると、日本語を話している女性3人組がいたので、人見知りをしない母が早速話しかけた。
「こんばんは〜。オーロラ見えました?」
「ちょうど今見えてたところですよ!」
!!
「ええっ?どこですか?」
思わず僕も身を乗り出す。
「ほらあそこ! 白くなってるの見えません?あれがオーロラなんですけど、さっきまでもっと緑色に見えてましたよ! ここよりもたぶんあっちのソリ用のゲレンデのがよく見えますよ!」
 3人組にお礼を言って急いでゲレンデへ向かう。
 暗くて遠近感がないからか、空を見上げても白っぽい空の下に黒い山がそびえているようにしか見えない。実は白いのがオーロラで、黒いのが空ということなんだろうか。

 ゲレンデにはソリがいつくか置いてあり、三脚をセットした人が何人かいた。もう一度空を見上げると確かに黒いのは山ではなく空だ。黒の奥に星が見える。ということはあの雲みたいのがオーロラなのか。確かにじっと見ていると少しずつ形が変わっていく。
「へえーあれがオーロラかー。でも色がついてないね。もっと色んな色が見たいなあ」
そう母が言うように、もっと色がついているのかと思っていた。しかしさっきの3人組は緑色に見えたと言っていたので、消えてきてしまっているのかもしれない。

 それでも日本では見たことないほど大小たくさんの星が瞬いていて、父などはこっちに感動していた。北斗七星は全部の星がはっきり輝いていて、周りにたくさんの星があってもすぐにわかる。
 しばらく待っているとだんだんオーロラは右の方に移動し、しまいには見えなくなってしまった。カイロ以外はフル装備してきたものの、手足の感覚がなくなってきた。両親はとうとうギブアップしてホテルに帰っていったので、弟としばらく空を眺めるが、結局白いオーロラらしきものがもう一度薄く見えただけだった。

ホテルへ着いたのは12時半過ぎ。両親の部屋へ集合し、ホテルのフロントで買ったサンドイッチを食べながら一日を振り返る。本当に色々あった一日だったが、無事にたどり着いてよかった。
 交代でシャワーを浴びて1時半過ぎに就寝した。はっきりオーロラが見えなかったのは残念だが、初日から見えたのなら明日も期待できる。わくわくした気持ちで泥のように眠った。

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