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フィンランド旅行記一日目 ヘルシンキ〜イヴァロ(投げ銭)

 日が暮れた頃、搭乗時間になったので飛行機に乗り込む。イヴァロまでは1時間20分ということだ。日本時間では現在午前3時なのでとても眠いが、飛行機からオーロラが見えることもあるというので、隣に座った母と話しながら窓の外をずっと見ていた。

 結局オーロラは現れないまま、イヴァロ空港に到着した。機内に表示されている外の気温はマイナス14℃だという。今まで体験したことのない寒さにおののきながらもわくわくする。
 成田空港のように飛行機内から空港内まで通路が作られるわけではなく、階段から地上に降りて空港内へ向かう。外気に触れたばかりの時はこんなものかと思ったが、1分もしないうちに顔や手が痛くなってくる。寒い!一面の雪の中を小走りで空港へ入る。

 中は荷物をピックアップする小さなスペースがあるだけで、空港にしてはだいぶ小さい。
 次々と荷物が運ばれてくるが、ヘルシンキでのことがあるのでロストバゲージしてないかみんな気が気でない。「荷物はイヴァロで受け取るからヘルシンキで 受け取る必要はない」と言われたはずだが、もし聞き間違っていたり誤った解釈をしていたらと思うとまばたきすらしたくない。ここからサーリセルカまでバスが出ているらしいが、あまり遅いとバスが出発してしまうかもしれない。それも不安の一つだった。
 10分ほど経って、父のスーツケースが出てきた。ああよかった。少なくとも聞き間違いではなさそうだ。それから5分ほど待ち、僕のスーツケースを最後にやっと全員のものが揃った。

 外に待機しているバスを確認すると、Saariselkäと書いてある。サーリセルカと読めるのできっとこれだ。しかし調べたところによると、ツアーパッケージ用のバスと、乗車券を買って乗るバスがあるということだ。荷物を積んでいる運転手に、予約してないんだけど…と聞いてみると、話し終えないうちに
「どこのホテル?」
と言われる。ホテルの名前を伝えると中に入れとジェスチャーされたので、ツアー用のものだとしてもなんとかしてくれるだろうと思いバスへ乗り込んだ。
 座席に座ってしばらくするとさっきの運転手がやってきて、9ユーロという。手には携帯用のレジを持っていて、お金を払うとそこからレシートを発行して渡してくれた。どうやら大丈夫そうだ。

 30分ほど走ると、今度は白い街灯が見えてきた。その向こうには大きな建物がいくつも見える。サーリセルカに着いたようだ。ホテルの前まで連れて行ってくれるらしく、「リエコンリンナ!」と運転手がホテル名を叫ぶとバスが止まり、乗客が降りていく。

 その後2,3のホテルに寄り、泊まる予定のホテルを告げられバスを降りる。
 ホテルはログハウスのような作りで、雰囲気はなかなかよさそうだ。看板に日本語で「ようこそ」と書かれているところを見ると、日本人の観光客も多いのだろう。
 レセプションの看板を見つけて中に入ろうとすると、ドアに「GOKITA」とだけ書かれた紙が貼ってあった。歓迎しますという意味なのかと思いドアノブを回すがドアが開かない。ドアの向こうはすぐフロントのようだが人気がない。
 え?冗談じゃない!

 両親に待機してもらい、弟と手分けしてホテルの人を探す。建物の逆側のドアが空いたので、そこからロビーのカギを開け、ひとまず寒さをしのぎに中に入った。やはりカウンターには誰もおらず、6畳くらいの小さなロビーがあるだけだった。フロントにある呼び鈴を鳴らしても応答はないし、備え付けの電話にも呼び出しの番号は書いていない。現在11時。日本時間では朝の6時だ。眠気と疲れがひどいのに、ロビーでなんか夜を明かしたくない。

 敷地はだいぶ広いようで、ロビーのある建物以外にもいくつか同じような建物がある。弟と手分けして誰かいないか探すが、レストランも開いて いない。レストランの扉のさらに数メートル奥の部屋に、オフィスなのかwindowsのスクリーンセーバーが見えた。明かりもついている。レストランの扉を何度も強くノックするが、何も応答がない。スクリーンセーバーになっているくらいだから席を外しているのだろうか。

 仕方なく弟と辺りを調べると、道路に出たところに「INN」と書かれたパブがあった。宿もやっているならもしかしたらホテルに連絡してくれるかもしれない。そう思って中に入ると、広くはないがたくさんの若者で賑わっていた。入口そばにあるカウンターには、注文を受けている初老の男性と、サーバー からビールを注いでいる若い女性がいた。
 手前にいた女性に声をかけて事情を説明すると、フィンランド語で店員の男性と話し始めた。
「ホテルの連絡先はわかる?」
と女性に聞かれ
「あー……、ホテルにあるから取ってきましょうか?」
「わからないなら大丈夫。」
そう言ってイスに腰掛け電話をプッシュしだした。ホテルか事情のわかる誰かにかけているのだろうか。
 だいぶ長いことコールしているので、弟にはまたホテルの人を探しにいってもらう。長いコールの電話を3回ほどかけたが誰も出ないようで、電話番号を調べてくるよう言われた。
 フロントに戻ると母が
「ずっとここの電話鳴ってたわよ」
と言う。パブの女性がかけてたのだろうか。旅行代理店から渡された番号はおそらく代表番号なので、フロントの番号の可能性が高い。パブの人がこの番号しか知らないのなら絶望的だ。
 パブに戻り女性に電話番号を書いた紙を渡すと、少し曇った表情をしたのち、また電話をかけてくれた。しかし何度か電話した後ため息をついて
「ごめんなさい。何度か電話したけど誰も出なかったわ」
「そうか……。ホテルにどうにか連絡するか、またはどこか泊まれるホテルを探すか何かいい方法はないですか?」
「うーん……わからない。電話に出ないなら何もできないわ」
この宿も空いてないならロビーで寝るしかないか…。オーケー、センキューと言うと同時に女性が
「ちょっと待ってて」
とまたどこかへ電話しだした。今度は誰か出たようで何か話している。電話を切ると笑顔で
「この通りの反対側にある、ホリデイクラブっていうホテルで予約されてるみたいよ」
と言う。どういうことかわからないがとりあえず希望が見いだせた。
 急いで道路を渡り、目の前にあるホリデイクラブに入る。フロントで事情を話すと、ここに2日間泊まることになっているという。キエッピは満室のため急にこのホテルに回されたらしいが、GOKITAの張り紙だけじゃそんなのわかるわけない。少し憤ったがとにかく宿は確保できた。早くみんなに知らせに行こう。
 ホリデイクラブのフロントでいきさつを話してやっとチェックイン。クレームを入れてもいいんじゃないかという話も出たが、面倒だし、何より泊まる宿があるというだけで僕としてはもうどうでもよかった。

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