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フィンランド旅行記一日目 成田〜ヘルシンキ(投げ銭)


 午前7時半。父、母、弟と共に成田へ向けて出発する。薄着とはいえ、友人に借りた雪山用の上着を着ているのでだいぶ暑い。
 空港に着き、まずはユーロへ両替する。前もって銀行で両替をしておいたのだが、家に忘れてきてしまったのだ。銀行では1ユーロ125円だったのが、レー トの高い空港では129円。向こうではカードで買うのが主流らしいので、レートも高いしあまり現金は使わないと思い150ユーロほどに替えてもらった。

 スーツケースを預け朝食にラーメンを食べたところでようやくリラックスした気持ちになった。展望デッキでしばらくのんびりし、搭乗時間が近くなったのでゲートへ向かう。本当は搭乗時間に飛行機に乗り込まなくてはいけないのだが、気が抜けていたのかどんな手続きがあるのか全く覚えておらず、シャトルバスに乗り手荷物検査、税関を終える頃には搭乗時間をとっくに過ぎてしまっていた。
 小走りで何とか間に合ったが、父は息があがっていた。自分一人なら多少のトラブルは気にしないが、両親は新婚旅行以来、弟は初の海外となると、僕がしっかりしないとなと改めて思った。

 機内へ乗りこみ座席を探すが、窓のある左右の席の中央に4人並んだ、窓のない席だった。空からの眺めを楽しみたかったのに残念だ。機内はアジア人、おそらく日本人が6~7割と多く、そこら中で日本語が飛びかう。
 20分ほど飛行場をぐるぐる移動し、ようやく飛行機は大きな音を立ててスピードを上げていく。去年北海道旅行で体験したばかりだが、この瞬間はいつも心が躍る。
 無事に離陸し、どんどん日本が遠ざかって行く。これであと10時間後にはとうとうフィンランドに着いてしまうのか。そう思うとだんだん実感が湧いてきた。

 まずは首都のヘルシンキまで行き、そこから国内線でさらに北のイヴァロという所へ向かう。宿のあるサーリセルカまではイヴァロからバスが出ているらしい。
 海外に行った人の話では、機内でビールがもらえるという。タダなので到着まで何杯も飲んだなんてことを聞いたので楽しみにしていたのだが、備え付けのメニューを見てみると、なんとビール一本4ユーロと書いてある。水までも一杯1ユーロだ。

 水くらいサービスで出すだろうと外国人のCAに聞いてみるが、Not freeと言っていたので有料ということか。お金を払うものなんだかなあとがっかりしてしまったが、母が日本人のCAに聞いたところ、シャンパン以外は全部無料らしい。Not freeと言っていたのは聞きまちがいだろうか。これからの旅行が思いやられる。
 気を取り直してフィンランドのビールを頼んだところ、OVILというものが出てきた。少し甘くて酸味があり、ググッと飲むよりチビチビ飲むのに合っていてうまい。機内食は海老カツ丼で、米はべちゃべちゃしていたが、味付けは海老の風味が効いていて悪くなかった。

 ロシア上空を飛びヨーロッパにだいぶ近づいた頃、トイレのそばに小窓があるのを発見した。CAに許可を取って外を見てみると、広がっているのは陸ではなく流氷だった。驚いて弟と母を呼び、しばらくの間3人で外を眺めていた。

 それから2時間くらいしてアナウンスが入る。もうすぐフィンランドのヘルシンキに到着するという。どんどん高度を下げて見えてきたのは、一面の雪と点在する森のような茶色い針葉樹たち。白と茶色のコントラストがおもしろい。
 空港に降りると、初めて見る景色にわくわくしてくる。カフェも看板も、日本にはないセンスのよさを感じさせる。

 そのまま手荷物検査へ向かい、パスポートと乗ってきた飛行機のチケットを見せるが、イヴァロまでのチケットも見せろと言う。違う列に並んでいる家族分の チケットも自分が持っていると話すと、チケットがなければ通れないので渡してくるよう言われた。荷物を持って列を外れると、同時に家族も列を外れて戻って きた。チケットを渡して無事に通過できたが、家族からすると勝手のわからない海外では、少しのトラブルでヒヤヒヤしてしまう。

 安心したところでスーツケースを取りに行く。少し迷ってしまったので、着いた頃には荷物はほとんど残っていなかった。自分たちの便のベルトコンベヤーを見つけて待つが、一向に荷物がやってこない。
嫌な予感がした。
 ロストバゲージはまれに起こるものとは聞いていたが、4人分もなくなるなんてことがあるのだろうか。周りには同じくロストバゲージしたであろう人が4、5 人途方に暮れたり、空港の職員に事情を話している。カウンターには何か書類を書いている人がいて、覗き見てみるとスーツケースの特徴を記す項目があるようだ。

 これはいよいよ腹をくくらなければいけない。貴重品は全員持っているので、最悪の事態にはなっていない。僕のトランクは業者からレンタルしたものだが、 2万円くらい払って弁償すればなんとかなるだろう。両親と弟は全ての防寒具をスーツケースに入れてしまったらしいが、サーリセルカに着いてから買えばいいだろう。とはいえ家族は不安そうな表情を浮かべていて、周囲の雰囲気もとても重くなっている。
 カウンターにいる職員に尋ねに行く。
「預けた荷物を見つけられないんですが…」
「チケットを見せてください」
「はい、便名は合ってるはずです」
「スーツケースを預けた時にバーコードの書かれた紙をもらいませんでしたか?」
そういえばそんなものをもらった。リュックから取り出し見せると
「成田からイヴァロまで運ぶから、ここでスーツケースを受け取る必要はありませんよ」
そうか!そういえば前にロサンゼルス経由でカナダに行った時も、スーツケースを受け取った記憶はない。みんな安心して一気に力が抜ける。僕がきちんと覚えていればよかったのに申し訳なかった。

 ほっとしたら何か食べたくなったので、さっき見つけた店でアイスを食べることにした。フィンランドはアイスの消費量が世界二位だとかで、たくさん種類があるらしい。店員の女性は英語が話せて、こちらが日本人とわかると日本語であいさつしてくれた。僕が頼んだチョコミントはとてもさっぱりしていて、その上 にたっぷりかかっているチョコレートのおかげで濃厚な味も楽しむことができる。ただカップにはスイスと書かれている。

 しばらくゆっくりしてからゲートをくぐり、免税店などをまわる。こっちの方が断然店が多い。食べ物、化粧品、フィンランド発祥のムーミンやマリメッコなどの雑貨屋もある。サーリセルカに着く頃にはスーパーは閉まっているかもしれないと思いリカーショップへ行くが、国内線へ乗る場合は酒は購入できないと断られてしまった。


続きます。
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