『里帰り、おおいなる』第四話:待ち受け
九月に入っても、うだるような暑さはおさまらない。
国枝恵は、差すような日差しの中、自転車の車輪止めを片足ではじくと、勢いよくこぎだした。家の前の坂道を下り、線路を超え、通っている千代田高校までは十五分の距離である。飛ぶように過ぎてゆく道の両側からは、夏はまだ終わらないとばかりに、蝉の大合唱が聞こえている。
恵の心ははずんでいた。
無理もない、今日から新学期である。
世の多くの学生がそうであるように、二か月にもわたる長い夏休みを終え、一回りも二回りも大きくなった同級生に会うのは