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里帰り、おおいなる

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一人の男がこの街に帰ってくる――。 そんな噂が一人歩きして事態は思わぬ展開へ!!
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#お仕事小説部門

『里帰り、おおいなる』第十話:乾杯

「香旬停」の松の間で、第二十回目の会合が開かれようとしていた。 梅雨が明け、これから夏が…

『里帰り、おおいなる』第九話:英雄

年度末と言われる三月がやってきた。 先月のSNSでの盛り上がりから一か月、千代田市は空前のブ…

『里帰り、おおいなる』第八話:論争

『記者にその電話があったのは、十二月五日、水曜日の夜ことだった。とある男性が、「ここだけ…

『里帰り、おおいなる』第七話:養生

一日中、自室にこもっている久能元にとって、世間のいうクリスマスなどというイベントは、特に…

『里帰り、おおいなる』第六話:流行

師匠も走るといわれる師走に入ったある日の午後、久能元は自宅のベッドで蓑虫のように布団にく…

『里帰り、おおいなる』第五話:漏洩

時計の針は、久能元がショッピングモールの駐車場で写真を撮られたあたりから、ちょうど一か月…

『里帰り、おおいなる』第四話:待ち受け

九月に入っても、うだるような暑さはおさまらない。 国枝恵は、差すような日差しの中、自転車の車輪止めを片足ではじくと、勢いよくこぎだした。家の前の坂道を下り、線路を超え、通っている千代田高校までは十五分の距離である。飛ぶように過ぎてゆく道の両側からは、夏はまだ終わらないとばかりに、蝉の大合唱が聞こえている。 恵の心ははずんでいた。 無理もない、今日から新学期である。 世の多くの学生がそうであるように、二か月にもわたる長い夏休みを終え、一回りも二回りも大きくなった同級生に会うのは

『里帰り、おおいなる』第三話:結託

祭りの日から一か月が経っていた。 その日はここ数日続いた雨模様が過ぎ去って、久々の晴れ間…

『里帰り、おおいなる』第二話:責任者

祭りの翌日は日曜であった。 空は快晴、昨日に引き続き、心地よい風が南から吹いている。 元の…

『里帰り、おおいなる』第一話:凱旋

【あらすじ】  千代田市は、とある地方の一都市。  この街に、百年に一人の天才と噂される男…