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里帰り、おおいなる

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一人の男がこの街に帰ってくる――。 そんな噂が一人歩きして事態は思わぬ展開へ!!
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#里帰り

『里帰り、おおいなる』第十話:乾杯

「香旬停」の松の間で、第二十回目の会合が開かれようとしていた。 梅雨が明け、これから夏が…

『里帰り、おおいなる』第九話:英雄

年度末と言われる三月がやってきた。 先月のSNSでの盛り上がりから一か月、千代田市は空前のブ…

『里帰り、おおいなる』第八話:論争

『記者にその電話があったのは、十二月五日、水曜日の夜ことだった。とある男性が、「ここだけ…

『里帰り、おおいなる』第七話:養生

一日中、自室にこもっている久能元にとって、世間のいうクリスマスなどというイベントは、特に…

『里帰り、おおいなる』第六話:流行

師匠も走るといわれる師走に入ったある日の午後、久能元は自宅のベッドで蓑虫のように布団にく…

『里帰り、おおいなる』第五話:漏洩

時計の針は、久能元がショッピングモールの駐車場で写真を撮られたあたりから、ちょうど一か月…

『里帰り、おおいなる』第二話:責任者

祭りの翌日は日曜であった。 空は快晴、昨日に引き続き、心地よい風が南から吹いている。 元の耳には、先ほどからカーテン越しに、小鳥のさえずりが聞こえていた。 しかしもって、頭が割れるように痛い。 少し目を開いてみたところ、カーテンの隙間から差し込む光が異様にまぶしくて、元は急いで再び目を閉じた。 ややあって、元は自分が見知らぬ部屋に寝かされていることに気づいた。 辺りを見回してみると、六畳一間の和室の中央に、自分が寝ているせんべい布団が一式置かれているだけである。 「どこだ、こ

『里帰り、おおいなる』第一話:凱旋

【あらすじ】  千代田市は、とある地方の一都市。  この街に、百年に一人の天才と噂される男…