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M99サーペント

 ブラストランナーにおける拡張性は、企業が違えど接合できる多様性にこそある。頭部、胴部、腕部、脚部は、企業とマグメルの――おそらくはマグメルが全面的に中立進行しての――努力によって、共通規格は貫かれている。それのおかげで、どう考えても折れそうなシュライク脚にヘヴィガードパーツ、はてはロージーまでもが接合でき、パフォーマンスこそ極端に下がるものの、フィールド上で歩行とブーストができるようになっている。

 しかし、ことブラストランナーの武器は、限りなく人型に近いことから手持ち式に限られている。ブラストランナーの脚部はホバー脚部が用いられることもある。だが、腕部規格を人間の手から変えたことはない。

 ボーダーという評価傭兵をやっている以上、より取り回しのある武器や扱いには敏感なものだ。ある者は、斬るや突くの単純な近接武器ではなく、より破砕的な武器を提案することがある。それは一つとしてアームパイク系統やスタナー、メガロパイクであろう。ただ一般的にブラストランナーの武器とは、背部スロットに畳んだり、分解して格納でき、かつ耐久性に富むことにある。

 つまり着想時点が違うのだ。二足歩行作業用機械だったブラストウォーカーを武装化させるにあたり、取り回しのいい武器を開発せざるえなかったのだ。また戦闘用として発展する時、大型化して、より大出力・大火力を持たせることに至らなかったことが幸いして、規格外の武器を開発する空気にはならなかった。

 想像でしかないが、当時としては異端の技術の数々、その発展型がエイジェンの扱う見たこともない武器や装備の数々なのかもしれない。

 現在、ブラストランナーが扱う実弾武器の多くはレクトアームズという企業が開発している。新人からACEまで、ブラストランナー主兵装の花形として実弾武器は使用される。イクシードチップが登場する以前に、多様なニュード使用武器が登場し、ブラストランナーへの直接的な破壊力から、実力と評価が見合わないボーダーを多く生み出した。それでもマグメルの見直しにより、実弾武器はボーダーのお供として長いこと一緒にいると言える。

 その中でも注目したいのはやはり【M99サーペント】。サペという愛称で親しまれた、ブラストランナーの長老主武器について考えていきたい。


「だからさ、俺は言ってやったわけよ。何で今副武器に持ち替えた?って。そしたらそいつ、ワンチャンあるからって言ったんだぜ!? 最近のはバカじゃねぇか! マガジン交換中は無防備、持ち替え中は攻撃できねぇ。しかも接敵中に障害物に隠れないで、何がワンチャンだ!?」

 ツンツン頭の男は対面の男に怒鳴っている。閑静な喫茶店の中の怒号に眉をひそめる者はいない。彼ら以外に客はいない。

「指摘されないと分からんだろ。誰しも評価試験を受けていく内に、自分が何も知らないことには直面する。それでも知りようがない要素については、言われるまで気付かないことになる。」

「例えば?」

 ツンツン頭は視野狭窄的に聞いてくる。対面のロン毛の男は苦いだけの珈琲を飲みながら答える。

「お前も言っただろう。俺たちは戦闘で撃ったり撃たれたりを常に何もない平面上にやるわけじゃない。障害物や高さを利用する。正面から視認した奴を片っ端から撃つなら、模擬戦AIの方が強いだろ。」

「まぁな」

「つまり、当該ボーダーが正面からやり合うだけで勝てるようになると、隠れたり地形を利用したりができなくなる。この戦争も長くなって、今や宇宙、エイオースに帰還だ何だだ。新人なんて名乗っちゃいるが、結局のところ既存ボーダーの身内か何かばかりだ。本当の新人はロクな武器や装備もなく評価を上げてきちまう。」

「そうなんだよ、最近初期クーガー頭にも会ったぜ!」

「いや、そいつは新人か微妙だな。初期頭を使うことによりチップスロットを拡張できる。ともかく、今の中堅ボーダーは常に多様な武器選択をできるが、その実、使用率に頼る使い方をしている。それは新人にとって、多くはハイエンド装備って奴だ。本来、視覚的に信頼できるものはバランスの良い武器であるべきなんだが。」

「視覚的に信頼か。ウィーゼルか!」

「それもそうだが、大体のボーダーは強襲に始まり、なんやかんやで強襲に戻っていく。誰もが一つの到達点として目指した武器。サーペントだ。」

「サブマシ? そんな産廃、もう用はないぜ?」

 ツンツン頭の冗談めかした態度にロン毛は大きくため息をついた。

「すでに一線を退いているとはいえ、N-DEFシステムが台頭するまでは、サブマシも選択肢の一つだったんだ。SSG系統よりも軽いものであり、本来の意味での新人がサブマシと突撃銃のどちらかを選ぶのは想定された問題だったんだ。」

「お、おう」

「サペは豊富な装弾数から安定した火力を放つ。軽量腕パーツが持っても、射撃補正力のない頭でなくても、弾道がそれほどブレない。なによりフルオート射撃だから指切り負担はないに等しい。古代では、スコーピオ――蠍と覇を争ったとか。」

「栄枯盛衰って奴か。今じゃあ突撃銃に軍配が上がっている。」

「というより秒間火力とマガジン火力の両立のせいでだがな。武器使用率ランキングから落ちてるとはいえ、使いどころがないわけじゃない。時代が流れて、速射機銃なんてのも出てきて、晴れて初心者用になったと思っている。」

「あぁ、なるほど。サブマシは安価だし、フルオートで装弾数も多いからエイジェンともやりやすいってわけか。」

「そういうことだ。エイジェンとの戦闘は重火力偏重で、求められる戦法自体が違うが、新人相手にはそうも言ってられない。」

「まぁ俺はサテライトバンカーを使わなきゃスコア稼げられないバカと共闘する以外なら何でもいいけどな!!」

「ただ気になるのは、なんでブラストランナーの武器として、最初にサブマシンガンが選ばれたんだろうな?」

「そりゃあ使いやすい銃だから・・・・ってそれじゃあマーゲイやレヴェラーの立場がねぇか」

「突撃銃はそのまま、アサルトライフルだ。本来であれば、それだけで十分なはずだが、なぜかメイン武器なのにサブマシンガンを俺たちは使っていた。」

「つまりどういうことだってばよ!?」

「作業機械でも扱いやすく、軽量で、かつ取り回しのいい武器。それがサブマシンガンだったんだ。もしも古代の作業者が、それ自体でサーフィンできる銃剣一体の武器を戦闘使用していたら、それが主流になっていたハズだ!」

「くそ、そうだったのか!!」

「だがこの論理が行き着く先は、人間の両手で扱える武器が武器として採用できないことを意味する」

「あ・・・? あ・・・・?」

「ドリルは無理なんじゃないか」

「ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 テーブルを叩いて悲壮な声が響く。それは物悲しい、男のつまらないロマンであった。



参考資料:ボーダーブレイクヒストリカ

※妄想99%なので本気にしないで下さい


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