「不燃」の戦い方を考えてみる【アンデラ】
※本文章は、週刊少年ジャンプに掲載の最新内容のネタバレを含みます。
単行本派の方は、十分ご注意ください。
3度目の正直
初登場、そして復活
「燃焼」の否定者、「不燃(アンバーン)」。
その初登場は、「No.009 我々は否定する」に遡ります。ユニオンに加入したアンディと風子の前で、二人にとって初めての課題(クエスト)が黙示録によって発表され、その中の報酬のひとつとしてその名前を現したのです。
報酬の元となるクエストは「UMA イートの捕獲」。これはクエスト攻略の模様が描かれこそしませんでしたが、アンディたちのスポイル捕獲作戦の裏でジュイス・タチアナ・ビリー・フィル・トップの5人によって達成されました。その結果、「No.019 Result」にて、課題結果としてその所在が知らされることになったのです。
しかし、黙示録(神)の嫌がらせというべきか、この報酬が与えられるのは「UMA バーンの捕獲」がなされた後であり、バーン特攻ともいうべき不燃という能力の価値は下落し、もはや表舞台に立つことはないように見えました。
……しかし、「No.029 UNDER」で事件は起こりました。
リップから渡された古代遺物によって風子の頭に映し出されたのは、ユニオンが目指す「神」の姿。煌々と輝く太陽を背にした黒い影と、溶け落ちるビルの山、そしてその身の内から焼かれ悲鳴を上げる人々が、風子には見えたのです。
そう、「神」の審判における少なくともひとつのやり方は、「燃やす」というものでした。ここに至り、「不燃」が再び読者の脳裏に帰還します。
「燃えない能力なら、神の攻撃も効かないんじゃね??」
まさかの神特攻を持つかもしれない説が浮上した「不燃」。
しかしそれ以降は特に音沙汰もなく、神について理解を深めるのではなく、ビリーの裏切りとそれに応じたアンディと風子の修行パートに物語は入り、また誰もが不燃を忘れていきました。
……しかししかし、再度奇跡は起こったのです。
3度目の復活
週刊少年ジャンプ2021年30号に掲載された「No.069 確かめるんだ」。ここで再び読者を波乱が襲います。
ウィンターを討伐し世界を救うため、ユニオンを離れ、アンダーに単身加入した風子。そこにはリップ・ラトラといったお馴染みのメンツ以外にも、初めて出会う否定者たちが、かつてユニオンのものだった円卓に鎮座していました。
読者にとっても風子にとっても見たことのなかった否定者は3人。リボンを付けた若い女の子、笠をかぶった和装の人物(これはアンディの居合の師匠「友才」であるとみられています)、そして黒い帽子に学ランのような上着、足には下駄と、バンカラかヤンキーとでもいうべき風体の男。
ここでとりわけ読者の目を引いたのは、この男、「タバコを咥えているが火がついておらず、ライターを鳴らしているが着火する様子がない」という点です。
これを見て、読者は考えます。
「あれ、この人、「不燃」なんじゃね……?」
手にしたライターに火はつかず、タバコは燃えない。さらに言うなら髪の毛も頭の後ろに向けて跳ね上がっており、白黒ですがおそらく髪色は茶色か赤色のように見えます(たぶん)。まるで炎のようじゃないですか。
これは、あの「不燃」に違いない!
長い不遇期間を経て、ここに復活したのだ!
不燃の恐ろしい能力に震え、ひれ伏すがいい!
……だがしかし、ここで一つ疑問が出ます。
「不燃の能力って、なに?」
「強いの?」
「なんかしょぼそう」
そう思った人は、多いのではないでしょうか。
ぶっちゃけ私はそう思いました。
そこでこの記事では、「不燃は一体どう戦えばいいのか?」という問題を、少しだけ考えてみたいと思います。
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何も考えずに戦ってみる
不燃は、現象「燃焼」を否定する、すなわち「燃えない」という能力だと想像できます。基本はこの「燃えない」ところから考えていきましょう。
まずは何も考えずに、「自分が不燃の能力者だったら」という視点で考えてみます。
自分が「燃えない」能力者だとしたら、どうするでしょう。
……......
……......
「自爆」じゃないでしょうか。
ぶっちゃけ、不燃さん(名前が分からないのでこう呼びます)には大変申し訳ないとは思うのですが、最初に思いつくのはこれです。
自分は燃えないけど他は燃えてもいいのなら、自分ごと燃やせばいいじゃない。
何か発火装置のようなものを仕掛けてもいいし、「魔人探偵脳噛ネウロ」の葛西のように、放射器か何かを体に仕込んだりしてもいいかもしれません。
一番手っ取り早いのは、戦闘機か何かに上から空爆してもらって、自分ごと周りを更地にしてもらうことでしょう。
不燃さんが戦った後には、彼以外は何も残らないのです。
(不燃さんの華麗な戦い方のイメージ図)
注意すべきは、彼は「燃えない」だけで、爆弾による爆風や瓦礫では普通に死ぬだろうということです。そうなってしまうと間抜けすぎるので、ここは十分注意する必要があるでしょう。
しかし、この戦闘法にはデメリットがあります。
一つは、アンダーの組織の大きさ。
ユニオンは、アンディと風子がロシアへの逃避行の中で戦闘機に追われたことがあることからわかるように、一般兵器を持つ、ある程度の大きさの軍隊を組織しているようです。
しかし、アンダーはどうでしょうか。歴史も人員もあるユニオンに対して、大規模な空爆を仕掛けるほどの組織力があるとは考えづらいのではないでしょうか。
二つ目は、何よりカッコ悪いこと。
いくら自分の能力を活かしているとはいっても、組織に頼りまくり、自分は何もしないというのは不燃さん的にどうなのでしょうか。読者から見てもぶっちゃけダサくて卑怯感が拭えませんし、不燃さんも「勝てばよかろうなのだァァァァッ!!」タイプには見えませんから、このような戦闘方法を選ぶとは思えません(思いたくない)。
やはり、ちゃんとした戦闘方法を考えるには、「不燃」「燃えない」とはどういうことなのか、ちゃんと考えてみる必要がありそうです。
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「不燃」をもっと考えてみる
「燃える」とは何か
アンデラの否定能力は本人が心から信じること、解釈次第で進化していきますから、まずは「燃焼」という現象に向き合って、「それを否定するということはどういうことか?」をどのように解釈するかを考えていきましょう。そうすればきっと有効な戦闘方法が思いつくはずです。
それでは、そもそも「燃える」すなわち「燃焼」とは何でしょうか。
科学的な話になるので(私も深く理解しているわけでは無いので)細かいところは省きますが、ざっくりいうと、「燃焼」とはモノと酸素との化学反応である、ということのようです。
どういう反応なのか細かく言及することは避けますが、モノを燃やすには「燃焼の三要素」というものが必要であり、これが揃うと燃え始めるというわけです。
その三要素とは、
① 可燃物
② 酸素
③ 熱
の3つです。
例えば、誰もが小学校で一度は経験した、『紙に虫眼鏡で光を集めて火を起こす』という現象を考えてみます。この場合、
① の可燃物は「紙」
② の酸素は紙の周りにある「空気中の酸素」
③ の熱は虫眼鏡で集められた「太陽光による熱」
この3つが揃った結果、紙が燃え始めるわけですね。
そして、不燃さんがライターをカチカチやっても火が付かなかったことを考えると、燃焼を否定する、つまり『本来燃えるはずの3つの要素があるはずなのにモノが燃えない』という状態を、不燃さんは作り出すことができるということのようです。
ではこの状態を作り出す能力を、戦闘に向けてどう活かしていくか考えていきましょう。
① 可燃物を操作する
燃焼の三要素の一つ目、「可燃物」を操るとしたらどうでしょうか。
つまり、不燃さんがモノを「燃えるモノから燃えないモノに変える」能力だと解釈した場合です。
何が可燃物で何がそうでないかは細かく突き詰めません(あまりよく知らない)。
ただ、例えば燃えるもの:紙や炭 と、燃えないもの:プラスチックや缶
これらは、もう物質的に、もっといえば物質を作る原子や分子がもう全く違っているだろうということです。
つまり、不燃さんは自身の所有物だと認識したものの物質的な構造を原子レベルで作り変えてしまうということです。
場合によっては、新しい分子構造のモノを作り出してしまうかもしれません。
「自身の所有物だと認識する」というのはなかなかに難しい条件かもしれませんが(ショーンがリップに腹を裂かれて溢れた血を不可視にできなかったシーンを見てもわかります)、それを満たした場合、恐ろしい能力だと思います。
特に、自分で作り変える内容を指定できる場合、モノを原子レベルで操るということで、一気に強能力に躍り出そうな気がします。
戦闘に応用するとなると難しいですが……毒とか化学兵器とか、そちら方面になるのでしょうか。
② 酸素を操作する
続いて、燃焼の三要素の二つ目、「酸素」を操るとしたらどうでしょうか。
つまり、不燃さんが「モノの周囲の酸素を奪う」能力だと解釈した場合です。
周囲の酸素を丸ごと奪ってしまっては自分が呼吸できなくなってしまうので、例えばライターの周囲だけ酸素がない状態にするとか、そういう感じでしょうか。
これの戦闘への応用は非常にシンプルで、「相手の周囲の酸素を奪って窒息させる」。これです。
イメージとしては、ONE PIECEのシーザーが使っていた「カラクニ」みたいなイメージでしょうか。素の身体能力では大きく後れを取っているはずのルフィをも、初見では気絶させた強力な技です。
ハードルとしては、やはり「自身の所有物だと認識する」ことが難しい。
とはいえ、繰り返しになりますが否定能力の強さは「自分がどう信じるか」ですから、そこは不燃さんのメンタル面のポテンシャルが試される気がしますね。
しかし……
これらの能力は、燃焼という要素に向かい合って真剣に考えたものです。能力の応用としては、我ながら悪くはないと思います。
しかし、何かが足りない。
不燃さんがいつか能力を発動したとして、「UN BURN-不燃-」のクソデカフォントと共に決めゴマに登場したとして、その背景が、物質を作り変えていたり、周りの敵が酸欠で倒れていたりした場合、それは画としてどうなのでしょうか?
能力に貴賎なし、真剣に自身の否定能力と向き合った結果ならば良いという見方もあるでしょう。
しかし、不停止のトップが爆速で走り回ったり、不死のアンディが体を再生しながら戦ったりする画が漫画として美しく、様になっているように、やはり否定能力を使った戦いというのは、その否定のもとになった「理(ルール)」と直接的にかかわっていて欲しいものです。
そんなわがままを踏まえて、3つ目の戦い方を考えました。
③ 熱を操作する
残る燃焼の三要素の三つ目、「熱」を操るとしたらどうでしょうか。
つまり、不燃さんが「モノの持つ熱を奪う」能力だと解釈した場合です。
燃えるモノと酸素があっても、モノに熱が溜まらなければ燃焼は起きません。
その熱を奪い、吸収する。「燃」の文字を持った能力であっても、見た目には冷却系のような能力ということになるのでしょうか。
(モノから熱を奪う不燃さん)
「何だ結局『燃える』とか『火』とは関係ないじゃないか」
そう思われるかもしれません。しかし、この能力の真骨頂はこれからです。
「モノの持つ熱を奪う」、しかし、奪った熱は一体どこに行くのでしょうか?
それは奪った本人、不燃さんに蓄積されていると考えるのが自然です。モノを燃やさなければ燃やさないほど、熱を奪った不燃さん本人にたまった熱は大きくなっていくでしょう。
そうなれば、不燃さんはどうなるでしょう?
貯めに貯めた膨大な熱をもし放出すれば、熱を帯びた彼の体は、そばに近づくだけで熱気を感じるようになっているかもしれません。直接触れれば、当然火傷ではすまない、そんな状態になれてもおかしくないのではないでしょうか。
(吸熱ができるということは放熱もできる)
触れるものすべてを燃やし尽くすまさに炎の神。そんな状態でも不燃さん本体は何ともありません。
なぜかって?
それは彼が「UN BURN-不燃-」だからです。
はい。どうでしょう。モノを燃やさないことで蓄えた熱をもって戦うその姿は、元となった「理」、バーンにも通ずる姿には見えませんか?
一見、熱を奪うというと冷却系の能力に見えますが、ヒロアカの轟くんを見てもわかるように、科学的にも冷却と放熱、熱の吸収と放出は表裏一体だということですね。
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最後に
いかがでしたでしょうか。
足りない頭で考えた結果なのでガバはあるかもしれませんが、私は満足です。
否定能力を与えられ神の玩具とされた不燃さんが、その能力で一矢報いる日が来ることを、私は心から期待しています。
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