ショーンはどうすればよかったのか【アンデッドアンラック】

※本文章は、単行本最新刊の内容を含みます。

不可視のショーン

「え、ショーンって誰だっけ?」

そう思った方は何人いるでしょうか。
「ああ、あいつね!」と名前だけでピンと来る人の方が少ないかもしれません。

否定者「不可視(アンシーン)」

自対象強制発動型で、「両眼を閉じている間、他者からの視認を否定する(姿を消せる)」という否定能力。

青年「ショーン」はその否定者なのです。
どうですか、思い出しましたか。

そうです、もとは課題の捕獲対象となっていたのにいつのまにかアンダーに捕らわれ、リップに腹を裂かれていたあの人です。

久しぶりに登場したと思ったら、オータム戦のさなか、記憶の中の旅を終えてパワーアップしたアンディに胴体をぶった切られたあの人です。

登場するシーンのほとんどのコマで腹から血出してるじゃあないですか。
あんまりだ。

単行本6巻でようやくキャラクターのプロフィールが載ったと思ったら、「否定能力のデメリットを本人の解釈以外で無理矢理パスした者には総じてむなしい最期が待っている」などと書かれる始末。

公式で「むなしい最期」扱いですか、そうですか。


優遇される、ド派手な活躍のコマを見せるキャラクターがいる一方で、その影とも言うべきか、不遇なキャラクターが生まれるのもまた少年漫画の性ですが、それでもこのショーンさんの哀れっぷりは思わず涙を誘います。
一体彼が、何をしたというんでしょうか??

…………
…………


・アンダー加入前の所属:ブラジルのギャング

・『能力を悪用し強盗殺人を働いていた

・特技:スリ 暗殺(単行本6巻より)

・『あのガキを殺せばオレはアンタより席が上になる』

・『狙うは喉元…‼』

・『思いっきり吹き出しな‼


…………うん、めちゃくちゃやってたわ

神から授かった(正確には押し付けられた)能力を悪用して物を盗み、あるいは人を殺し、風子という女の子もためらわず殺しに行く(なんなら楽しんでる節すらある)外道っぷり。

だめじゃん。同情の余地ないじゃん。


しかし、そう思うのはまだ早い。
ショーン君もきっと、不可視の否定者となる前はきっとこんな子じゃなかったんです。純真で、虫も殺せない子だったに違いないんだ。

突如理不尽に与えられた否定の力に翻弄されて、何かを少しだけ間違えて、こうなってしまっただけなんですよ、きっと。悪いのはすべて神なんです。

否定者となった彼が「不可視」の力とちゃんと向き合っていれば、きっと結末は違ったはずです。こんな無残な最期を迎えることなんてなくて、きっと最後は改心して、ユニオンと協力し、元凶である神に立ち向かっていたでしょう。きっと。


……まあ現実逃避は置いておいて、確かに現実として、ショーンは死にました。

しかしそうすると、「不可視」の能力は他の誰かに移ったはずです。どこの誰とも知れませんが、突如として否定の能力に巻き込まれたその人を救うためにも、第2のショーンを生まないためにも、「不可視」の能力をきちんと考えることは重要だと思いませんか?

そう、これは一人の人間を救う行為なんです。


はい、というわけで、「不可視」の戦い方を考えてみようと思います。
茶番が長い。


能力を振り返る


まずは「不可視」の能力を整理してみましょう。
公式からすでに能力の正式な説明がされています。

対象:自対象
自対象タイプですね。
戦闘でストレートに強いのは、相手に不利な効果を与えられる「他対象」が多い印象です(不真実、不正義、不治など)。

自対象というのは、どちらかというと否定能力の負の側面、「理不尽に襲いかかる否定の力」に翻弄されることが多い気がします。もちろん、他対象も突然大切な人を傷つけたりしてるんですが、自分の身体にわかりやすく変化が起きるというのは、取り返しがつかない感じがあってなかなかきついです。

ただドライに考えると、「相手がいなくても能力を発動できる」のは強みですね。自分だけで完結しているというのは、不可視においてはメリットになりそうな気がします。


区分:強制
任意発動できず、条件を満たすとすぐさま能力が発動してしまう強制タイプ。
自/他対象がそれぞれメリット/デメリットがあり一長一短と言っていいのに対して、強制であることにはほぼデメリットしかないと個人的には思います。

否定能力は元来「便利な能力」ではない(たいていの場合、使いこなすには否定能力の解釈と応用が必要)ので、まあ強制であることがほとんど、任意であればラッキー程度の認識です。まあ強制だからと言って落ち込むところではないですね。

それどころか、不可視の能力においては、「睡眠時など無意識の時にも能力を発動できる」というメリットにもなり得ます。どんな人でも寝てるときは無防備ですからね。


効果:両瞼を閉じている間、自身が自分のものと認識しているものを、他者から視認できない状態に変化させる
肝心な部分ですね。
ここの解釈をどうするかで、能力は大きく変わっていきます。
つぎから細かく見ていきましょう。


①「両瞼を閉じている間」
両目を閉じていないと、能力が発動しません。
「自分が他人を見えない状態にすることで、自分も他人から見えなくする」という能力のバランス感が、アンデラ特有の面白いところですね。「不動」の条件も似たようなもので、強い能力には強いデメリットがあります。

しかしリップの口からは「ショーンは“両目を閉じる”がルールだと認識してた」との言がありました。つまりこれは、この「両瞼を閉じている間」というルールが本人の解釈次第で変わる可能性があることを示しています。


個人的には、ここでは「目を閉じる」「瞼を閉じる」ことが必要なのではなく、「自分も相手を見ないようにする」状態にすることが重要なのではないでしょうか。

目を閉じてしまうと周りが見えないデメリットが強く出てしまいますから、いかに「目を閉じずに相手を見ないようにするか」が、今回のキモだと考えています。


②「自身が自分のものと認識しているものを」
「自分が」というわけではなく、「自分のものと認識しているものを」不可視にします。自分の身体は無意識にでも自分のものと認識しているでしょうから、当然身体は不可視。服とかも不可視にできるということで、一般的な漫画や映画のイメージの透明人間、服を脱がないと完全に透明に離れないようなものとは少し異なります。

この「自分のものと認識」というところもミソで、ここ次第で不可視の適用範囲を大幅に広げることができるでしょう。
逆にここの認識が弱いと、不可視の効き目が弱ってしまいます。

現に最初リップに捕らわれたショーンは、裂かれた腹から出た血を不可視にできておらず、それを当のリップになじられていました。


③「他者から視認できない状態に変化させる」
「他者から視認できない状態」。なんだか持って回った言い方ですね。

普通に考えたら、作中でショーンがなっていたようないわゆる「透明」な状態を思い浮かべますが、能力はそうは言っていません。

透明なだけが不可視ではない、私はそう思います。


「最強のショーン」を考える

ショーンに与えられた能力の全ては振り返りました。
さて、それをどう活かしていくかをこれから考えます。アンダー最弱と言ってよかったショーンさんを、どうやったら最強にできるでしょうか?


ひみつ道具に頼ろう

人間の武器は何でしょう。
発達した大脳?動物の中で唯一使うことを覚えた火?

いいえ、今やその発達した文明こそが、人間の最大の武器なのです。

自分で何とかできないなら、文明の利器に頼りましょう。決して恥ずかしいことではないのです。現代の世は集団戦。人間全体の叡智でもって神に立ち向かわなければならないことを考えると、他人を頼ることは当然どころかマストと言えます。

何が言いたいかと言うと、サマー討伐戦でチカラ君が付けていたゴーグルのようなイメージですね。

装着したゴーグルが、対象としたいオブジェクトの輪郭を自動的に抽出し、それ以外を装着者であるチカラ本人には見えないようにするという優れもので、これにより「不動」のデメリットである「視界に入ったもの全てが強制的に対象になる」という点を解消しています。すごい。

もうこれはそのまんまショーンが使えばいいじゃんと言うくらい「不可視」の特性にマッチしています。

図1

私の解釈では、不可視の発動条件のキモは「両瞼を閉じる」ことではなく、「自分も相手を見ないようにする」ことができればよいのだと思います。
なので、任意の相手のみを自分の視界から外すことで、自分をその相手から不可視にすることができるはずです。

また、このゴーグルだけではなくて、例えば拾った音から相手の位置を知らせる道具を使えば、自分で見なくても相手の位置を知れますし、極端な話、目をつぶっていても脳内に周囲の様子流れ込んでくるセンサーとかを付けられれば、それだけで解決です。
勝ったッ!アンデッドアンラック、完!


……とはいえ、そんなうまい話な訳がなく。
デメリットは山積みです。

まず、本人が強くなったわけじゃないこと。
結局地力を高めないと、「むなしい最期」は避けられません。

次に、ユニオンにはニコおじさまがいるから技術面は何とかなっていますが、アンダーの技術力はユニオンには及んでいないこと。単行本7巻で、UMAに与えるキューブもアンダーは開発できていないことが語られています。

最後に、このやり方だとやっぱりショーンの慢心、増長は避けられない気がしますね。さすが慢心の権化。


透明武器職人になろう

自分が目を閉じた状態の正面戦闘に向かないなら、裏方に回ってしまいましょう。

「自分のものと認識しているものを」「両瞼を閉じている間」不可視にできるのですから、例えば仲間が戦っている間に、安全な場所、アンダーのアジトなんかでじっと目をつぶっているのはどうでしょう。

まあメチャクチャ地味ですが、その間、自分の武器を仲間に貸す(不可視にできるのは「自分のもの」と認識したものなので、あくまで「貸す」スタンスを取ることが大事)ことで、仲間の武器を「不可視」にできます。

図2

武器を使うアンダーのメンバーは多くいます。それらの武器が不可視になったらどうなるでしょう。

例えば友才の抜く剣が、クリードの放つミサイルが、ファンの振るう棍が、リップの投げるメスが、テラーの周囲のスピーカーが、ビリーの撃つ銃弾が、不可視だったとしたら。
彼ら達人の武器が見えないというのは、敵からしたらかなり大きな脅威だと思いませんか?

古代遺物という強力な武器群もありますから、素手の戦闘をする人はそもそもほとんどいません。最終的なボスが神ですからね(アンダーの目的は神殺しではないですが)。古代遺物はもちろん強力な性能なので、通常兵器以上に不可視にするメリットは大きいはずです。

ユニオンで言うところの「不壊」、一心と同じような立ち位置でしょうか。一心もヴィクトルに戦闘は素人だと指摘されていましたし、普段は表に出ないのでしょう。


割と楽に活躍できそうで、縁の下の力持ち感があって個人的にはお気に入りですが、デメリットは思いつく限り二つ。

一つは、やはり正面戦闘に弱いこと。
もし攻め込まれたときに、地力のなさは大きな弱点になります。
戦わず隠れて逃げに徹すれば、そうそう見つかることはないかもしれませんが。

二つ目は、本人の増長を招くこと。
この戦法では、ショーンは「組織の持つ武器を自分のものにして、それをメンバーに貸す」という建前を取ることになります。
能力発動のための建前とは言っても、本気でそうだと思い込まないと能力は発動しませんから、ショーンはきっと本気で「この組織の武器は全てオレのものだ」と思うようになるでしょう。

そうなったショーンがどうなるか、想像に難くありません。
もともと第3の目を移植されたショーンの敗因も「慢心」でしたから、もともとそういった、精神面の弱さを抱えているのでしょう。そんな彼が組織の武器全てを握ることになったらどうなるか。

増長して傲慢で横柄な態度をとるようになるか、それともアンダーに反旗を翻すか。制御できない不可視の能力は組織にとっての脅威とみなされ、いずれは粛清されてしまうでしょう。いくら不可視と言っても、アンダーの強力な否定者たちに敵うはずもありません。

この方法では結局、ショーンの運命を覆すことはできないのです。
時を経てショーンの人柄に大きな変化が見られれば、話は違うかもですが……


盲目の達人を目指そう

透明人間になった座○市ですね。

もう能力の解釈は「両瞼を閉じている間、自身が自分のものと認識しているものを透明にする」と言うところでとどめて、自分の技術を極限まで高めてしまおうという考えです。

目が見えないなら、目を閉じたまま戦えるようにすればいいじゃない。

あえて目を閉じることによって耳や肌や鼻の感覚を極限まで鋭くして、不可視の剣客、達人の道を目指しましょう。
達人になったショーンさんはきっと慢心などせず、仲間を思いやる強者になっているはず。精神面も矯正できる一挙両得のアイデアです。

フィクションの世界ではありますが、座頭○を筆頭として盲目の強キャラというのは枚挙にいとまがありません。最近私が見た漫画では、「ONE PIECE」の藤虎や「地獄楽」の士遠先生が印象的でした。盲目がハンデのはずなのに作中最強クラス、こういうの最高ですね。

アンダーには友才というハイパーつよつよサムライがいますから(本誌で友才と確定しましたね)、教えを請うことも不可能ではなかったでしょう。友才さんは5席と席次も高く、それなりにベテランなのだと思います。
まあショーンの人間性を認めてくれたかどうかは知らんけど。

目を閉じることのデメリットをなくせれば、強いやつがただただ透明になって襲ってくるだけなので、これはめちゃくちゃ強力です。


デメリットは、やはり圧倒的に時間がかかること。

能力を抜きにした戦闘技術面を考えると、作中最強クラスはジュイスやシェン、ファンといった圧倒的にヤバいメンツであり、これに肩を並べようとすると、とんでもない時間がかかりそう。リアルに座○市くらいの年齢まで頑張らないといけないかもしれません。


周りが見えない人になろう

ここまでの案は、結局「否定能力に向き合い、解釈した」とは言いづらいような気がします。少し見方を変えましょう。

これまでも何度か書きましたが、能力の発動条件である「相手が見えない」ということに、「両目を閉じる」ことは元来必要ないはずです。

「あの人しか見えない」という言葉がありますが、特定の人しか目に入らなくなったり、逆に本来いるはずの人が見えなかったりすることは誰にでもあることです。現代風に言えば、歩きスマホをしていたら前の人にぶつかってしまったとか、そういう経験、ありませんか?私はあります(ごめんなさい)。

誰も透明になったりしていないのに、不思議と見えていない、気づいていないというような場面ですね。

それを意図的に起こせるようになったらどうでしょう?

真っ先に浮かぶのは同じジャンプ作品の「黒子のバスケ」のミスディレクションですが、あれとは少し違います。黒子のミスディレクションが他人の注意を引かない「自分の影の薄さ」を強化するものだったのに対して、ショーンがやるべきは「自分が見る相手の影だけを濃くする」というイメージだと思います。

① 自分の相手を定める
② 視野を狭め、その相手以外が目に入らなくなるほどに集中する
③ この間、できるだけ思考は単純化する(相手に向かっていくだけ、等)
④ 定めた相手にだけ自分の姿が見え、他の相手からは自分が不可視の状態になる

こんな感じでどうでしょうか。

図3

②の集中が一つの技術であり、習得するのはそれなりに難しいでしょう。しかしこれが自在にできるようになれば、集団戦でも誰か一人に集中しておき、その死角を取り続けるようにしておけば、誰からも視られることなく動き続けられます。

マンガとかアニメでよくある「ふっと消えて別の場所に現れる」みたいな「え、瞬間移動した?」と思えるほどの移動が、不可視の対象をスイッチすることで可能になるわけです。カッコええやん。

図4


歩きスマホの例のように、モノに意識を移せば、完全に誰からも不可視になることも可能です。自分から相手へ、意図的に何かすることはできないでしょうが。

③の手順が必要なのは、「他の人にぶつかったらどうしよう」みたいな余計な思考が入ると、不可視の自分を視えるようになる相手が増えてしまう可能性があるからです。

演出的には、透明というより影が薄くなっているような状態、ドラえもんでいうなら透明マントではなく石ころぼうしを身に着けたときようなイメージだとなお良しです。

まあ、透明でも良いのですが。
個人的に、同じアンデラの安野曇が初登場したシーンの演出(近づいて風子のマンガを読んでいる安野にアンディも風子も気づいていない)が好きなだけです。逆にあれと差別化するのであれば、不可視は透明であるべきでしょうね。

この戦法は「チカラのゴーグルをつける」と似ていますが、「本人の感覚や経験、地力に頼る」という点が異なります。つまり、「自身の感覚を伸ばさないといけない」ということで、これは本人のポテンシャルを引き出す、つまり本人の成長に繋がるという大きなメリットになります。


弱点とすれば、1対1には強くても、アンディから食らった死閃(デッドライン)のような大規模攻撃には弱いというところでしょうか。まあ、あんなのを出されれば大抵の敵はひとたまりもないですが...

一応、視界の端にでも攻撃をとらえることができれば、反射的に不可視を解いて反応することくらいは訓練すれば可能かもしれません。
そのあたりも伸ばした本人の地力次第なので、努力すればするほど、不可視の精度と生存能力が上がっていくはずです。


まとめ

ショーンの能力を考えるうえで難しいのは、本人の人間性に問題があるのでそこも含めた改善策を提案しないといけないことです。若干無理やりですが、最後の案はお気に入りです。

本編で大きく失敗したキャラクターだからこそ、どうすればうまくいくかを考えるのは楽しいですね。
まあ無いとは思いますが、本編で新しい「不可視」が出てくれれば嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?