天然水素と言うものがあるらしいので・・・
天然水素と言うものがあるらしいです。私は最近まで知りませんでした。
そこで、webを検索してみたところ、JOGMEC(エネルギー・金属資源鉱物機構)さんが「天然水素の動向」というレポートを出していました。まさにぴったりのレポートです!
JOGMECさんなら信用できるので、読んでみました。(マスコミ情報の場合、針小棒大だったり我田引水だったりして分かりにくいので・・・)
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009585/1009871.html
まずは現状の水素の概要について
水素の種類は「グレー」「ブルー」「グリーン」の3種類です
巷では、グレー水素、ブルー水素、グリーン水素の3種類と分けられているそうです。
グレーは従来の天然ガスや石油由来の水素です。コストは安く、1.0~2.5USD/kgだそうです。ただし、従来の水素の場合、生成時にCO2を排出するため地球温暖化防止への寄与度が低いです。
そのため、グレーと呼んでいるようです。(この考えで行くと今のEVは、グレーEVと呼ばなければならないでしょう。自宅の太陽光発電で充電しているEVだけがグリーンEV!)
ブルーは作り方はグレーと同じですが、生成時に発生するCO2を固定化するものです。工業的にはプラントで発生するガスは対応しやすいです。一般的に濃度は高いですし、連続して出てくるので、処理装置を設計しやすいです。これに比べて、自動車のような小さい規模で排出するガスの処理はやっかいです。濃度は不安定ですし、排出も非連続だったりします。
なのでブルー水素の場合、それほどコストを掛けずにCO2固定化が可能だと思われます。この資料では0.5USD/kg程度の上乗せで済んでいて、1.5~3.0USD/kgだそうです。
グリーンは再生エネルギーを使って電気分解で作った水素です。こちらは、再生エネルギーの単価が高く、さらに電解でのロスがあるために、割高になっています。4.0~9.0USD/kgもかかります。
実は、電気分解では分極ロスが不可避的に発生しますので、よっぽど元エネルギーの単価が安く無いとコスト的に厳しいです。一応、分極ロスを低減するためにアルカリ水電解や固体高分子+触媒等の技術開発がされていますが、ここの改善だけではグレー水素並みの低コスト化は厳しい気がします。
グリーン水素の場合、元エネルギーの安い立地との組み合わせが必須になると思います。その意味では、大消費地が隣接している日本だとコスト的に難しいでしょう。なぜなら、電気分解水素を作るより、直接電気を使った方がお得だからです。(電気は何にでも使える最も良質なエネルギーです)
たぶん、オーストラリアのような「太陽光発電に適していて」「太陽光パネルを設置しても住民訴訟が無く」「電気を作っても使う場所が無い(消費地が無い・・・)」ような場所でしか採算とれないと思います。
この意味では、中国の砂漠地帯なんかもポテンシャルが高いと思います。
天然水素は1.0USD/kg以下のコストと見積もられていて、グレーよりも安い可能性があるそうです!。さすが、天然資源です。地球さんありがとう。
世界の水素需要と天然水素推定生成量について
2021年の世界の水素需要は94,000,000t(94百万t)程度とのことです。
天然水素の推定生成量は数0,000t~数0,000,000t(最大 数0百万t)とかなり幅があります。残念ながら今の水素需要よりも小さい値です。
ただ、埋蔵調査等はこれからなので、増える可能性があるとのことです。
そういえば、私が小学生の頃に「石油はあと〇〇年しか無い」と言っていましたが、今だに「あと〇〇年」と〇〇年が変わっていなかったりします。
人間の欲は凄いもので、「欲しい」「儲けられる」と思ったものは、なんとしてでも探し出したり、採れるように技術開発(オイルシェールとか)しますので・・・。
天然水素は複数の種類があります
天然水素には、複数の種類があるそうです。
大きく「非生物起源」「生物起源」があり、「非生物起源」が主だそうです。私はてっきり「生物起源」で「天然ガス」とか「石油」に付随して水素も出ると思っていました。なので「どうせ、中東とか北極海とかサハリンとかの、他国が儲けるだけでしょ・・・」「また、紛争の種になるのか・・・」と、半分あきらめていました。ところが、全くメカニズムが違うようです。
「非生物起源」にも複数あり、「蛇紋岩化反応」「火山活動」「地球深部のコア・マントル」「放射線分解」「岩石のフラクチャリング」の6種が紹介されていました。
「蛇紋岩化反応」が興味深いです
この中で、一番興味深かったのが「蛇紋岩化反応」です。
「蛇紋岩化反応」とは、「かんらん石(二価の鉄が含まれる鉱石)と水が反応することで蛇紋岩(三価の鉄が含まれる鉱石)と水素が発生する反応」のことです。熱が必要だったり、水がアルカリ性or酸性が好ましかったりしますが、かなり普通の条件で起こる反応です。
さらに、かんらん石である必要も無く、二価の鉄が含まれていれば良いとのことです。
これって、かなり普通の石でも、熱と水さえあれば天然水素が出てくる可能性があると言うことです。まあ、化学をちょっとかじれば「金属Na(還元性物質)を水に入れると、Naが溶けて(酸化されて)水素が出てくる」のは知っていて、当たり前の現象です。ただ、こんな大規模に自然的に発生しているのは「目からうろこ」でした。
日本の場合、温泉が沢山あるので熱と水(アルカリ泉水、酸泉水)の組み合わせは普通にあります。そこに二価鉄を含む地質があれば、天然水素の可能性があることになります。実際、白馬八方温泉でも水素が検出されているそうです。うーん、夢がある・・・。
実際、天然水素は世界中で広く観測事例があり、結構普通の現象のようです。
ただし、天然水素を有効に利用できるかは、別問題のようです。高純度の水素が滞留していて、なおかつ限定した場所から取り出せる必要があります。
もし、実プラントが稼働したら、大騒ぎになりそうな気がします
当然、各国とも調査が進んでいます。パイロット設備がすでに稼働していたり、試錐(ボーリングして確認)して水素を確認していたりします。
もし、グレー水素と同程度のコストで天然水素が実プラントで採取することが出来たときは、大騒ぎになりそうな予感がします。
株をやるものとしては、関係企業を探しておかなければ・・・。
まとめと感想
天然水素について、JOGMECさんの「天然水素の動向」を読んでみました。
天然水素はグレー水素と同程度の低コストの可能性があり、なおかつ非生物起源なので天然ガス・石油とは異なる埋蔵分布であることがわかりました。
さらに、その発生メカニズムのひとつである「蛇紋岩化反応」の原料鉱物は比較的一般的な「かんらん石」であり、熱と水があれば水素が発生することがわかりました。
個人的な感想ですが、たぶん今までは「天然水素」があるのは知っていたけど使いにくいので放置や無視していたのでは無いかと思います。
実は水素は一番小さい分子なので、取り扱いが面倒です。
すぐ漏れるし(分子が小さいので当たり前)、
液化しにくいし(ボンベだと場所を食います)、
金属と反応(水素化)しやすし(部材が高価になりがち)、
あまり使いたく無いです。
ところが、地球温暖化でCO2が悪者にされてしまったので、水素の価値が急上昇したのだと思います。
技術者としては、水素そのままで使用するのではなく、アンモニア(NH3)やハイドロカーボン(CH4やC2H6、さらに高分子)にした方が使いやすい(輸送とかも液体で楽だし、使用の際も今の設備がほぼそのまま使える)と思っています。
ただそれだと、従来技術過ぎて「脱炭素化」「地球環境にやさしい」「SDGs」等のインパクトに乏しく、一般受けがしないので、「あえて水素」なのかなーと思っています。
それに株屋さんの感覚では、「アンモニアやハイドロカーボンだと儲けるネタが少なくなるし」でしょうか・・・。(私も株をやりますので、気持ちはわかります。無理とは思っていてもEV推ししてしまうのと同じです)