見出し画像

天から降ってきた石


毎年アリゾナ州ツーソンに長時間運転で遠征するのが恒例だった。世界中から多くの業者が宝石や珍しい鉱石や化石などを持ち込んで集結するのだ。でも、一週間以上の滞在は、最初のうちは興奮するが、暫くすると中だるみも出て来る。でも一人で各所をぶらついて覗きまわるのも楽しみの一つになっていた。 

ある年、通りすがりに目に入ったのが、薄い段ボール箱に無造作にいくつもの奇妙な形/色の岩石と見受けられる物を並べている人。

訊いてみると、彼女のおじいさんが毎朝の散歩で見付けては家に持ち帰った石だと話してくれた。
どれ一つとして同じ形をしたものは無く、成長した鉱石を割って収穫してきたのではない事にも惹かれた。値段を聞くとそれほど高価ではない。早速ダンボール箱を分けて貰い、3箱ぐらいの中からピックアップを始めた。大小20個近くセレクションした頃、手が空いたおばさんと話す機会ができた。

彼女のおじいさんが朝の散歩から帰ると、前日に雨が降った時は、何個か持って帰ることがあったと言っていた。

オレゴン州の片田舎から来ていることを告げられた。太古には湖沼地帯で、おじいさんの散歩コースには、地表の土が雨で削られてしまうと、時々この気妙な石ころが見つかるのだそうだ。
近くに存在した火山からドロドロの溶岩が天空に吹き上げられ、やがて空中で固形になり、長い距離を落下したが、地面が沼だった為に砕けることもなくめり込み、何千年も柔らかな土壌の中に眠っていたのだと説明してくれた。
何十年も掛けてグランパが拾い集めたコレクションなのだそうだ。

〜〜〜〜

例年の行事が終わり、買って帰った“お土産”を見直すと、益々自分が惹かれているのに気がついた。一個ずつ繰り返し見直しても飽きない・・・。これこそ天然の生んだ究極美だと主うのだが(LOL)

なんでもっと多く買って来なかったのか・・・強烈な後悔!!
少なくとも、あと一年待たなければ、あのおばさんに会えない。

〜〜〜〜〜〜

翌年早速、記憶をたどり同じ場所に出掛けた。
おばさんは、トラックを駆って長距離を運転して来ていた!!

小生の顔も覚えていた。あの石ころをもっと買いに来た旨を告げると、去年と同じ浅いダンボール箱を出してくれた。それだけでも重いのに、オレゴン州から途中宿泊でトラック運転をして来たのだろう。でも、他のものを商うのが主目的だったのだと思う。

ワクワクしながらセレクションを始めたが・・・何かが閃いた!!

これ全部買ったら幾らにしてくれる?

彼女は少し考えていた。

”じつは、おじいちゃんが去年亡くなってしまったので、これで全部なの・・・もう毎朝散歩する人いないから”

・・・結果

この奇妙な石を、世界で一番(?)所有しているのは私なのです!!

*鉱石学の本には名称がついています。でも自分は好きではない名前です。


ほんの一部お披露目?!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?