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退去時に絶対に負担したくない借主 VS 絶対に負担したくない貸主

私の行なっている仕事は常に板挟みです。

かかってしまう費用をどちらに負担させるか。

想定しないことで急に10万払って下さい、とか言われたら誰だって嫌な気持ちになりますし、場合によっちゃ怒りも込み上げてきます。

退去時にかかる原状回復費用。

退去者はそんな費用を自分が払わなくちゃいけないなんて思ってる人は少ないんじゃないんでしょうか。

オーナーだって、いくら年数がある程度経った建物でもこんなに費用を自分が払わなくちゃいけないなんて思ってる人は少ないんだと思います。

どっちに転んでも誰かがお尻を拭かなきゃいけない、損を食うことになる。嫌な気持ちになる。そんな状況のはずなのに…

人は意外と自分に都合良く物事を捉えがちです。

無意識に楽な方向へ、楽な方向へと考えてしまいます。私もそうですが。

アパートを建てたら、ついつい目先の家賃収入に心が踊ってしまって肝心な費用面についていい加減になってしまう。

借りた人の物をちょっと傷付けたり汚してしまっても「これ位ならバレないだろ、まあいいや」と思ってしまう。

そんな心持ちの状態で、悪い意味での「予想外」が起きてしまったら、「こんなはずじゃなかったのに!」大きくストレスを感じてしまいます。

最近あった出来事では

「洗面台の亀裂」についてです。

築15年程度のアパートですが、借主の退去時にお部屋を確認すると洗面台に亀裂が入っていました。

借主は「思い当たる節はない。気が付いたら割れていた」と。

亀裂自体はそこまで酷いものではありませんでした。水漏れを引き起こすような程度でもない、うっすら亀裂が確認できるくらい。

ただ、そのままにした状態で次の入居者に貸し出すことも出来ません。

業者に修理を頼むと「洗面台自体の交換」となるので割高になってしまう。ピンポイントに亀裂部分の補修が綺麗に出来ればいいのですが…。

国土交通省の原状回復費用ガイドラインによると、「洗面台等の給排水の耐用年数は15年」との記載があります。

つまり15年過ぎれば残存価額は0円も同然。アパートは15年過ぎています。だけど洗面台を交換しなければならない。

案の定、オーナーはこの件に異議を唱えます。

こういった場合は、どちらが明確に「これだけ」負担しなければならない、という法律は基本ありません。

借主の立場から見ていくと
割ってしまった覚えがないのであれば
以下3つが考えられます。

1.「入居当時より割れていた」
2.「入居中気が付いたら割れていた」
3.「割ってしまったけど内緒にしていた」

1ならその洗面台が不良品なのでは?という話でメーカーに訴えるとしても年数が経っていれば今更取り合ってくれないでしょうし、入居同時に不動産屋が見落とし修理をしていなかったのなら、入居時にキチンと写真を撮って証拠保全し、管理会社に突き出すべきでしょう。

2なら、入居者は「善管注意義務違反」の可能性があります。要は「借り物だから注意して扱いましょう」ということ。不具合が起きたまま管理会社に報告を怠っていると、周りにカビが進行したりしてしまうので責任を問われやすくなります。

3は言わずもがな借主の責任です。

貸主の立場からすると
なるべく自らにかかるコストを避けるため
借主に負担させたい、ということですが

耐用年数が過ぎているからといって全額オーナー負担しなきゃいけないのか?についてが争点かと思います。

考え方として
耐用年数が過ぎており、残存価額が0円になったとしても、あくまでそれはモノ=洗面台自体の価値だけを指しており、交換する為には工賃=一定の人件費もかかります。人件費までは耐用年数は及ばないということです。ただ、人件費だけの借主請求なら1〜2割程度が限度ではないでしょうか。

当然残存価額が残っていれば、その分も含めて請求割合も増やせるでしょうし、

先程申し上げた、借主が「善管注意義務違反」をしているのであればそれも請求の根拠になりやすいと思います。

モノの耐用年数を加味していくと、実際の現場では貸主と借主との割合負担が多いのではと思います。

と、ここまでつらつらと書きましたが、
借主がどれだけ負担し、貸主がどれだけ負担しなければならないか、については、いくら国のガイドラインが示されているとしても、そこまで具体的に決まりはありません。

よって実際の所はトラブルになりやすい。
お互い協議が成立したのであれば、ガイドラインの基準よりいくら多めに負担してようがOKなのです。

要は負担交渉の話は先に言った者勝ちと言っても過言ではない。

ということです。

最近は知識のある入居者が増えてきたような感覚がありますので、オーナー側はオーナー側で家賃収入の椅子に踏ん反り返っているようであればいつか痛い目に遭いますし、入居者は入居者で良い人ばかりを演じているようでは痛い目に遭いやすい。

それが不動産業界の世界なのかな、とも思いますし、ついつい人々の本音やヤラシイ部分が垣間見えてしまう所でもあるとも思います。

今回のケースは結局洗面台交換について退去者が1割負担、残りはオーナー負担で終わりましたとさ。

ここまでお読み頂きありがとうございました😊


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