1億総表現者社会こころのインフラとして地域舞台化アートプロジェクトを

●効率性・生産性・協調性ファースト社会への反動が始まった
1億総活躍という表現に違和感や嫌悪感さえ抱いた人は少なくなかったようですね。それに対抗しようというわけではないですが、ちょっぴりアンチテーゼも込めまして、今世を「1億総表現者社会」と定義してみました。誰もが表現する楽しさに目覚め、表現活動を通じ新たなつながりを求める、そんな時代が加速しています。

ソーシャルメディアの普及や創作ソフト(ボカロや画像編集)やアプリなどテクノロジーが後押しした面も大きいですが、もう一つ大きな理由があると思います。過去から現在までの「反動」です。

これまで私たちは、教育や社会システムなど画一的であることを善しとする社会で育ち、効率性・生産性・協調性ファースト主義を刷り込まれ、飼い慣らされ、自らすすんで空気を読み、忖度する生き方をしてきました。皆が同じ人気TVや映画を見て、同じ教育を受け、同じ流行に乗り、マジョリティであることに安住してきた時代の価値観です。

表現者社会では、そうした価値観への反動として、非効率でもぜんぜんOK。モノやカネを基軸に、将来不安に備えて生産性を高めようなんてクソ喰らえ、今この時をしっかり楽しく消費しよう。協調という偽善の呪縛から抜け出し自分らしく自由に生きよう!

少しずつですが、そんな方向へとシフトしていると感じます。

個性や多様性が尊重され、マイノリティであることが賞賛される表現者社会は、他者とは違うカラーを出してもいい、どころか、出すことこそ豊かに生きる秘訣。マジョリティ安住派からマイノリティ派へと転向し創作・表現活動を通じて自己を表明する。その気持ち良さに目覚めた人が続出する表現者の時代がやって来ました。

それぞれ違うからこそ面白い、それが表現の本質です。その面白さが見直され拡大していく現代社会には、今までの物質的インフラとは次元の異なる精神的なこころのインフラが求められるはずです。

こころのインフラとは、表現者にスポットを当てる装置、表現の場となる舞台、共創する機会やコミュニティ。そういうものを創出しようと、ソーシャルアート系プロジェクトの一つ「地域舞台化プロジェクト」を進めて来ました。

それともう一つ、地域舞台化をスローガンに、表現の場をまちのインフラとして整備することは、地域社会を元気にするうえでも有効です。

なぜなら、減り続ける消費者や観光客を追い求めるよりも、増え続ける表現者を惹き付け、多様な個性と共創して新たなまちづくりを進める方が魅力的で持続的な地域をデザインしやすいからです。

地域舞台化プロジェクトは、表現者と地域社会が共に輝くタイアップの道を探る施策であり、表現者という異色と混じり、その多様性を原動力に地域をイノベーションする術でもあると信じています。

ソーシャルアートプロジェクトチームGoHoHo 主宰 Akira Takizawa 

略歴
◇アートプロジェクト企画・主宰・プロデュース5年
◇芸大アートマネジメント講師歴14年〜研究紀要「音楽効能が社会にもたらす有用性の考察」
◇価値デザイン研究・執筆・実践25年〜中部経済新聞連載コラムほか


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