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子供の先天性疾患について

私は、2017年1月に男児を出産しています。

以前、高齢出産に伴って出生前診断を受けた記事を書いています。↓↓

この診断を受けて、トリソミーではないということは判明したものの、実は息子は先天性疾患を持って生まれています。
 そのため産後すぐにNICUに入り、生後3日目には大きな手術をし今に至っています。病名は、「先天性横隔膜ヘルニア」でした。


私は息子がこの診断を受けるまで、この病気のことを全く知らなかったのですが、実は2,000~5,000人に一人の発生率とされていて、日本でも毎年200~300人が発症していると聞き、「結構いる」という印象を受けました。 

産後しばらく経ってから、正確な数字を知りたくて日本小児外科学会が行った新生児外科全国集計を調べたところ、2013年の先天性横隔膜ヘルニアの症例数は国内で166例であったという調査結果がでています。
 これに対し、2013年には約100万人の赤ちゃんが生まれているので、当時は約6,000人に一人の割合で横隔膜ヘルニアを発症していることが分かりました。


私は、自分の経験から、この病気のことをもっと広く知ってもらいたいと思いましたし、もし私と同じように悩まれている方がいらっしゃったら参考になればと思いましたので、少しセンシティブな内容かもしれませんが、書き留めておこうと思います。


先天性横隔膜ヘルニアとは

先天性横隔膜ヘルニアとは、生まれつき横隔膜に欠損孔があって、本来お腹にあるべき腹部の臓器の一部が胸部に脱出してしまう病気です。
(医学の専門家ではないため、言葉選びが少し異なっていたら申し訳ありません)

この欠損孔は、小さなこともあれば、横隔膜がほぼ残っていないほど大きなものもあり、それによって重症度が異なります。なぜなら、この大きさによって、腹部臓器(小腸、大腸、胃、十二指腸、肝臓、脾臓、膵臓、腎臓など)の脱出具合も異なってくるからです。

息子は、左側の横隔膜がすべて欠損しており、つまり右半分しかない状態でした。

比較的妊娠初期の段階で見つけてもらったのですが、既にほとんどの腹部臓器が胸部に移動していたため、”重症”診断を受けています。


原因について

先天性横隔膜ヘルニアは、原因は明確には分かっていないというのが現状のようです。

稀に事故などの影響で後天的に発症する場合もあるようですが、多くの場合には、息子と同じように先天性発症の胎児診断で発覚し、原因は不明のようです。そして、大多数の場合には遺伝というのは影響しないということです。

私も、医師から説明を受けたときにまずかけてもらったのは、

・遺伝は関係ない
・お母さんの妊娠中の過ごし方とかも関係ない

ということでした。

だから、絶対に自分を責めないでくださいね、と言われ、気持ちが少しだけ楽になったような気がしました。


病気の影響について

これを発症した場合にどうなるのか?ですが、腹部臓器が胸部に移っているということは、元々胸部にある心臓や肺を圧迫するということになります。
 そのため、多くの場合には肺や心臓の低形成が起こります。

簡単な手書きですが、図解すると以下のようなイメージです。
 我が子の場合には左側の横隔膜部分が欠損しているので、腹部臓器が赤い矢印の胸部に動きます。そのため、左肺部がどんどん圧迫されて、形成されなくなるのです。

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息子は、心臓には影響がなかったのですが、今も尚、左肺は充分な大きさには形成されていません。


出産時について

ここで、出産して赤ちゃんが”胎児”から”新生児”になると何が変わるでしょうか。

そう、肺呼吸になるんです。

胎児のうちは、肺は羊水で満たされているので呼吸はしていません。分娩直後から肺に空気が入り、自分で呼吸をし始めると言われています。
 しかし横隔膜ヘルニア発症の胎児は自ら肺呼吸ができないため、すぐにNICUに運ばれてしまいます。

私の場合にも、そうでした。
 ショックを受けないようにと、医師から事前に「赤ちゃんの泣き声は聞こえないかもしれません」と説明を受けました。前述の通り肺呼吸ができないからです。出産直後は私も興奮しており、生まれた瞬間に頭が真っ白になっていたので、周囲の音がすべて消えて静寂でした。そういった意味で何も聞こえませんでした。

ただ、夫からは、「一瞬だけ泣いたよ、すごく感動したよ」と後日談を聞かされて、改めて息子の生命力と生命欲を感じ、自然と涙が溢れました。


手術の内容について

息子が受けた手術について、理屈はとても分かりやすいものでした。

胸部に移動している腹部臓器を本来の場所に戻して、横隔膜の欠損孔を埋めるために人工布を縫い付けて閉鎖します。
 欠損孔が小さければ、横隔膜を直接縫って閉鎖することができ、その場合には成長するにつれて横隔膜も伸びてきて、自然とくっついていくようです。

息子の場合には欠損孔が大きかったため、人工布を使用しました。
 気になったのは、成長するにつれてどうなっていくのか、ということでした。

説明を頂いたのは、体全体が成長するにつれて、元々あった横隔膜も成長してくるので、人工布のサイズが合わなくなるということはないとのことでした。勿論、絶対に縫い付けた布が外れることはない、とは言い切れないようですが、ほとんどないという説明を受けました。

0%ではないということに不安を抱かなかったわけではありません。でも、夫が最初に聞いたという息子の一瞬の産声に、彼の力強さを感じていて、私たちはなぜか100%大丈夫と信じることができています。
 そして、何かあっても息子なら乗り越えるなという確信も持っています。


私たち夫婦がやったこと

結果的に、私たち夫婦は、特別なことは何もしませんでした。

私は普通の妊婦さんと同じように、栄養バランスなど気を付けながら、いつもの通りに過ごしましたし、仕事もしていました。
 マタニティヨガに通って、赤ちゃんの無事をひたすら祈りながら、体調に気を付けて過ごしただけです。

夫は、本来はリサーチ魔であらゆる情報を常にスマホでキャッチしているような人でした。彼は知識を得て安心したいタイプの人なのです。
 でも、彼の良さは、そんな自分がどうなるのか自覚しているところです。もしも、当時あらゆる情報を集めていたら、きっと彼は不安で押しつぶされそうになっていたでしょう。
 彼は、この時期だけは息子の病気のことは一切ネット情報を検索せずに過ごしたそうで、本当にありがたいと思っています。

このことは、夫婦で話し合ったわけではないのですが、私たちは医師から説明を受けたことだけを信じ、不明点があれば何でも聞くようにしていました。


まとめ

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息子は、現在4歳10か月で、元気に育っています。

まだ肺の成長が未発達で、その影響もあるからなのか、少し疲れやすいかなと感じることも多いです。手術跡も大きく残っているし、胸部に凹みがあります。
 でも、それ以外で他の子と違っていることは何もありません。電車が大好きで、よく食べるし、よくお話もする元気な男の子です。

勿論、この病気は症状の重さによってその後の経過も変わってくるようなので、一概にこうだとは言い切れませんが、息子の場合には現時点では特別に何か行動の制限があるわけではありません
 保育園に入園する際の面談では、念のため主任の先生と担任の先生にもお話をしましたが、あくまで事実を共有したという程度です。

今はまだ、彼はその事実を知りませんし、これまで聞かれたことがなかったので説明をしていません。
 でも、彼が理解できる年齢になった頃にはすべて話をして、そして私にとって彼は、生き抜いてきてくれた尊敬するヒーローだということも伝えていこうと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。










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