福島第一原発汚染水に関するパブリックコメント

 福島第一原発は、大量の放射性物質を撒き散らし、日本国民ばかりか世界中に迷惑をかけている。汚染水の処理に関しても、これ以上漁業者、地域、日本国民、世界に迷惑をかけるべきでないのは当然の前提である。

 それにも関わらず、事故前の年間平均放出量が約2兆ベクレルだったトリチウムを1000兆ベクレルの規模で放出する案を提出するのは、暴挙である。これ以上、汚染を増やす権利があるはずがない。

 そこで本意見では、トリチウム水の処理方法として以下を提案する

・汚染水からトリチウムを可能な限り取り除く
・総量で2兆ベクレルまでの海洋放出を許容する
・放出は漁業者の同意、パブリックコメントの過半数の賛成を条件とする

 最大の被害者である漁業者の同意が得られない対策は絶対に取るべきではない。自分たちが迷惑をかけた相手に、さらに迷惑をかけ、世界中の汚染を増やすような方法を提案するのはどういう神経か。

 他に手段が無ければやむを得ないかもしれない。しかし手段は多数ある。タンクが増設出来ないと言うが、敷地内の話であり、敷地を拡大することも、他の土地にタンクを設置することもできる。そんな危険なものを受け入れる土地などないと言うことなら、そんな危険なものを海に流すことができるはずがない。大した危険でないなら、簡単に増設できるはずである。

 技術的な減容も実は簡単である。トリチウム水の分子量は、22であり、普通の水は18なので、遠心分離機を使えば、簡単に分離できる。トリチウム1つの水があっても、分子量は20なので、1割は質量が違う。遠心分離機で分離し、トリチウムを可能な限り減らした水を、総量の上限を2兆ベクレルにし、10年ないし20年に分けて放流させてほしい、というお願いなら、漁業者の理解も得られる可能性があるのではないか。

 費用がかかりすぎるという屁理屈があるようだが、恥を知るべきである。なぜなら、原発の運転に必要な核燃料は、遠心分離機で作っているからだ。核燃料を作るためには、ウラン238からウラン235を分離して濃縮する必要がある。原子量の差を見ればわかるように、1%程度しか質量が違わなくても、遠心分離機で濃縮できるわけである。トリチウム水は10%も20%も質量が違うのだから、遠心分離機ではるかに簡単に分離できる。「規制的、技術的、時間的な観点から選択肢」であり「技術的に実績があり現実的」な処理方法である。なぜ候補に入っていないのか。

 自分たちの金儲けのためなら、1000段もある多段カスケードされた遠心分離機で核燃料を作っておいて、自分たちがしでかした不始末の後片付けには、自分たちが知っている技術を使わないというのはどういうことか。しかもはるかに容易なのに。金儲けのためなら大金を払うが、儲からないことは簡単でもやりたくないという態度は許すことができない。

 「技術的に実績があり現実的」な方法である遠心分離機でトリチウムを可能な限り分離して取り除いた上で、総量を過去の1年分を上限として少しずつ放出することをお願いすれば、漁業者をはじめとする国民の理解が得られるのではないか、というのが本意見の提案である。

 なお「東京電力検討素案」の中に、トリチウムが世界的に大量に放出されていることを示唆する資料「国内外の原子力施設からのトリチウムの年間放出量」が含まれているので、何点か反論しておきたい。

 まず、トリチウム生成が多い炉形がある。これらの炉は、放出しても安全だからではなく、やむなく放出しているだけである。こういう汚染が大きい炉形は当然廃れていく。現在国内で主流の炉形以外が汚染を広げているからと言って、自分達も当然汚染して良いと主張するような態度は謹むべきである。もちろん国内の炉も、本来は放出すべきではない。

 2番目に、圧倒的に放出量が多く、汚染を広げているのは再処理施設である。英・セラフィールド再処理施設は既に操業を終了している。これは再処理自体の持続性がないことを意味しているのであり、参考にすることすらできない。再処理に前向きな国は世界でも日本ぐらいである。しかし国産再処理施設が、国費をつぎ込み続けているにも関わらず、完成が23年も遅れている上に完成の目処さえ立っていないことからも再処理の将来は無いと言える。

 しかも日本は、国内での再処理に失敗しているため、これらの再処理施設に使用済み核燃料を送って再処理してもらっている。つまりこれらの再処理施設の放出量は、日本の使用済み核燃料を処理した分だけ増えているのである。自分達で水増しした放出量を比較に提示するというのはいかがなものか。

 英国が再処理から撤退したことからもわかるように、再処理は技術的に困難で、汚染が多い上、経済性も失っている。こうした「失敗した施設」での大量放出と比較して、1000兆ベクレルを小さく見せようとするのは詐欺同然の行為である。

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