岬の兄妹
2018年の映画。
観るのは2回目だった。
自閉症の妹・真理子と二人暮らしをしている兄・良夫。良夫は足に障害があり、そのことを理由に働いていた会社にリストラを宣告される。放浪癖のある真理子を閉じ込めるように、良夫は南京錠でガッチリ施錠して家を出ていたが、ある日真理子はそれらをぶち壊し夜になっても帰ってこなかった。ある男から真理子を保護していると連絡があったが、迎えにいくと真理子は何故か1万円を手にしていた。男に体を許して金銭を受け取っていたことが発覚し、それ以来良夫はありとあらゆる男に妹を売る「仕事」をし、生計を立てていく〜という話です。
ここまでがあらすじ。
うーん、重い。
そう感じるのは私にこれといった身体的な障害がないからだろうか。
いや、そう感じた要因はおそらくそれだけではなく、私が普通に生活をしている今もきっとこういう生活を送り続けている人たちがいるんだろう、という想像が容易にできる描写が多かったからだろう。
あまりに重くて観終わってもズーーンと沈むものがあったが、ただどんよりしてるだけじゃなくて、ある意味吹っ切れてるというか、どこか爽やかな心地すらした。
それはおそらく、どう考えても犯罪である売春斡旋という行為を当の本人たちはあくまでピュア(?)に「仕事」として行なっているからだと思う。そんなに重大で悪いことだとおもっていないような。生活しなきゃいけないんだから、仕方ないじゃないかと思いつつも良夫には罪の意識が芽生えてそうだったけれど。
対照的に真理子は基本的に終始笑っていた。
大切にしていた貯金箱を落として割ってしまっときや、「仕事」をしていく上で恋心を抱いた男性との距離感がうまくいかずに泣きじゃくるシーンはあったが、それ以外は基本笑顔だった。
今まで縛りつけて自由の利かない生活をしていた真理子は、「仕事」のおかげで女性としての喜びに出会えたし、好意を寄せる相手にも出会えた。真理子は直接的にそのようなことは話さなかった(もしくは話せなかった)が、真理子の態度から良夫には伝わっていたと思う。
何はともあれ旧友に最低なやり方でお金をせびったり、見下した相手には大きな態度を取ったり、とんでもないクズっぷりの良夫だったが、真理子を思う気持ちに偽りはなく、家族の愛情に似たものが垣間見えたのでよかった。それがなかったらめちゃ腹立ってたわ多分。
ここから微ネタバレ。
映画終盤で寝ている真理子を殺そうと良夫がブロック塀を持ってくるシーンがあった。
結局良夫は泣き崩れ殺すことはできなかった。
そのシーンがなんとも言えなくて切ない。
憎しみを抱えている訳じゃないのに殺意が湧いてしまうのは、それほど暮らしが限界だったということだろう。
思いとどまってくれて良かったと思ったが、良かっただけでは済まない現実問題が2人には一生つきまとう。
あってはならないのだけど、実際に介護殺人事件は存在するんだよな。
そういう部分も含め、「もっとどうにかならんもんかね」と思ってしまうような、現実を突きつけられたなー。
ただ上辺だけを掬うと胸糞悪いと感じるかもしれないが、きちんと観ると家族の本質みたいなものに触れられると思う。是非観てみてね。
てな感じで昨日は「楽園」「手紙」「凶悪」「岬の兄弟」を観ましたとさ。
別にあんたが思っとるほどオイラ暇ちゃうよ。
おやす〜💤
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