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【LAA】フレッチャーのアウトライトをまとめる

みなさんこんにちは!Kengelsです。
デイビッド・フレッチャーがオプションされましたが、アウトライトもされていたことが判明しましたね。
今回はそのフレッチャーのアウトライトについて、なるべく前提から詳しめにまとめてみたいと思います!
目次から気になっている項目だけ読む等でも大丈夫ですし、用語も並びますのでご質問等あればぜひ🙆‍♂️

1 アウトライトとは? / 今回のアウトライトの意味

あるチームにマイナー降格させたい選手がいたとします。球団が選手を好き勝手にマイナーで飼い殺しできてしまうのはまずいので、球団がマイナー降格させるためには制約を伴う仕組みになっています。
球団は、そのマイナー降格させたい選手が他のチームに獲得されてしまうリスクを取ったのちに、流出がなければ選手を40人枠から外してマイナー降格にすることができます。
このマイナー降格にする措置のことをアウトライト (Outright Assignment)と呼びます。

まず以下の流れ図をご覧ください!

《アウトライトまでの流れ》
球団がマイナー降格を狙う選手をアウトライト・ウェーバーにかける

②他の29球団はその選手をクレーム(指名)できる
(※ただし、⭐︎契約は獲得先の球団がそのまま引き継ぐ)

③他球団からクレームされなかった場合、球団は選手を40人枠から外し、マイナーに降格(=アウトライト)することができる
(※⭐︎サービスタイム3年以上の選手はマイナー降格を拒否し、FAになる権利を持つ(以前アウトライトされたことがある選手も同様)
(
⭐︎ただし、サービスタイム3年以上5年未満の場合は結んでいる契約を破棄しなければならない))

↑⭐︎の部分が後で重要になります

難しい用語も出てきたのでまずはそこから。
サービスタイムとは、噛み砕いて言えばその選手がメジャーに在籍していた期間です。メジャーの1シーズンの期間は180日前後ですが、172日メジャーに在籍すると1年と換算されます。
(省略していますので気になる方はこちらのリンクをご参照ください)

40人枠とは、MLBの各球団が直接支配下に置き、メジャー契約を結んでいる選手たちの枠です。
普段メジャーの試合に出場する26人枠の選手のほか、故障者リストに入っている選手やその他一部マイナーにいる選手も含まれます。
この40人枠は試合の出場者と出場候補を決める重要なものなので、40人枠から自由に選手を外すことはできません。そこで必要になるのが上に流れを示したアウトライト・ウェーバーで、球団は選手がチームから流出するリスクを負うことになります。

今40人枠が重要なものだと書きましたが、試合に出場する26枠の誰かを入れ替える場合、入れ替え相手は40人枠の選手のなかから選ばれ、40人枠の外から選ぶ場合は枠内の選手を外す必要があります。
そのため、40人枠から外して1枠を空ける意味は、「1枠の価値が大きく、枠に柔軟性があることがチーム運営のうえで重要な意味を持つから」です。
打撃不振でメジャーに再昇格しない可能性があるフレッチャーに1枠を割き続けるのは、40人枠の流動性や柔軟性を損なってしまうということです。
そしてフレッチャーをその「40人枠から外す」ことと、「エンゼルスのマイナーでキープ」することを両立しようとしたのが今回のアウトライトです。

とはいえ先ほども見たようにアウトライトには流出のリスクがあったはず。ここからは、生じうるこのような疑問に答えていく形式でご説明していこうと思います。


2 なぜチームから流出するリスクを取れた?

その流出リスクがほぼなかったからです。フレッチャーには2回エンゼルスから流出する可能性のある場面がありましたが、それぞれフレッチャーが結んだ契約と、サービスタイムが原因です。

まず一つ目は他球団に指名(クレーム)される場合(上の流れチャートの②)ですが、この可能性はほぼありませんでした。

フレッチャーが契約延長していた5年2600万ドルの契約では、今年を含めると残り3年で2000万ドルを支払うことになっています。これはレギュラークラスの選手を十分獲得できる金額です。
クレームした球団は契約の金額を引き継いで払わなければならないため、長らく打撃不振が続くフレッチャーをこの金額で獲得する球団はないというわけです。

そして二つ目が、フレッチャーが自らマイナー降格を拒否してFAになる場合(チャートの③)ですが、この可能性もほぼゼロでした。

サービスタイムが3年以上の選手はマイナー降格を拒否し、FAになることができます。しかしながらその場合、サービスタイムが3年以上5年未満の選手は、すでに結んでいる契約を放棄しなければなりません
そしてフレッチャーはあと2ヶ月足らずで5年になるところで、3年以上5年未満の場合に該当します。
つまりフレッチャーは、「契約の金額を全て保証されたうえでエンゼルス傘下に残る」か「契約を捨てFAになり、他球団との契約を模索する」かを選ぶ必要がありました。
2000万ドルを捨てる決断をする可能性はほぼなく、エンゼルスはリスクなくアウトライトに踏み切れたわけです。


3 もっと後ではだめだった?

フレッチャーを「40人枠から外したうえでマイナーでキープする」猶予はあと2ヶ月もありませんでした。

上でも記した通り、フレッチャーのサービスタイムはあと2ヶ月足らずで5年に達します
アウトライトがサービスタイム5年に達した後になされると、フレッチャーは契約の残り2000万ドルを保証されたままマイナー降格を拒否しFAになれます。つまり、5年に達する2ヶ月後以降だと、高い確率でチームから流出してしまうことになります。

また、サービスタイム5年以上になると、選手の同意なしにはマイナーリーグオプション(note下部の※参照)を行使できなくなるため、40人枠から外すことなくマイナーに降格させることさえ難しくなります。その場合、ずっと不振でもメジャーで使い続けるか、手放すかの二択を強いられることになります。

(なお、そのなかでもこのタイミングだったのは、攻守に精彩を欠くエンゼルスの内野を早く底上げしたいという目的意識が強まったからだと思います。)


4 オプションだけではだめだった?

マイナー降格にできるところは共通していますが、オプションだと選手が40人枠から外れません。(note下部の※参照)。
もしアウトライトせずにオプションのみだと、フレッチャーがマイナーにいる間もずっと40人枠にいることになり、新たに枠外から選手を入れにくくなってしまいます。これが冒頭でも触れたロースター枠の柔軟性の意味で、アウトライトまで必要になる理由です。リスクやデメリットがほぼ変わらないのにメリットが増えるため、アウトライトをすることは自然なことだったといえそうです。


5 今後フレッチャーはどうなる?

エンゼルスは彼の打撃が復調しない可能性とその場合のリスクを見据えて今回彼をアウトライトしたものの、今後また戦力になりうる存在として見ていると思います
フレッチャーは守備力が高く、打撃が2019-20年のレベルまで戻らなかったとしても戦力になり得ます。
エンゼルスの内野は盤石ではないですし、マイナーの代替候補ベラスケス、ソト、ステファニクなども抜きん出ているわけではありません。
今年でも来年でも、打撃がある程度復調すればメジャーに戻るチャンスは少なからずあると思います。

また、現状週に数回しか出場機会がなかったフレッチャーがその間に打撃を修正するのは困難なことでした。マイナーで毎日調整ができるのは打撃の復調のためにプラスだと思います。


所感

フレッチャーは、不振や怪我で活躍できなくなるリスクも踏まえて、5年2600万ドルの中期契約を結んだのだと思います。そこは球団にとってもリスクをかけたうえでの投資だったわけです。
そしてフレッチャーの長い不振を受け、球団はダメージを最小限に抑えられ、かつ将来的にフレッチャーを活用しやすくなる手段をとりました。

このタイミングでのアウトライトによって、現時点での流出という、可能性がゼロに近いリスクと引き換えに、フレッチャーをマイナーにキープし、高かった将来の流出可能性を下げ、またロースター枠の柔軟性を確保することができました。そのため、今回のアウトライトは自然で合理的な判断だったと思っています。

彼を応援している人にとってはきつい部分もあると思いますが、フレッチャーの未来はまだ閉ざされたわけではありません。復調を願って、また彼がエンゼルスのユニフォームを身に纏う日を楽しみにしたいと思います🔥

オプションアウトライトには、「40人枠から外さず、流出リスクなくマイナーに降格させる」か、「流出リスクを取ったのち、40人枠から外したうえでマイナー降格させる」かという大きな違いがあり、オプションはマイナーリーグオプションを持つ選手に対してしかできません。

※今回はDFAを経ていませんが、結論を変えるような違いはないと思います。DFAでは選手を40人枠からまず外しますが、ほとんどの場合後でどちらにせよアウトライト・ウェーバーにかけます。40人枠から外すのを急ぐ場合は通常DFAをまずとります。

※なお、40人枠から外したことによって、フレッチャーを再度昇格させる場合に他の誰かを40人枠から外さなければならなくなった分、アウトライトによって昇格のハードルはやや上がっていますが、メジャー昇格に値する成績を残せばそこまで大きくは変わらないと思います。

追記
アウトライトの語句説明について、一部不正確な部分があったので修正しました。

【出典等】
見出し画像はAngels公式Twitterより借用しています。下線が引かれている箇所には参考記事等のリンクが付されています。また、以下の無料記事も参考にしています。なお、内容の正確性には注意していますが、万が一間違いがありましたらお知らせいただけると助かります。

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