【LAA】エンゼルスのリリーフは本当に今年も弱いのか?
ご覧いただきありがとうございます。Kengelsです!
単刀直入ですが、エンゼルスのリリーフ陣(=中継ぎと抑え)について、今年のここまでの働きをどう思いますか?
いい働きをしてるねと答える方もおそらくいらっしゃる一方で、今年も弱いねと答える方も多くいらっしゃると思います。
実際、例えば4月までのエンゼルスのセーブ失敗(Blown Save)はメジャー最多タイの7個です。
ですが、エンゼルスのリリーフは本当に弱いのでしょうか?今回は、リリーフ陣のここまでの働きについて見ていきましょう。
1.リリーフ陣の成績を見てみる
ともかくまずリリーフの成績を見ていきましょう。
この表から見て分かるように、今年のエンゼルスのリリーフは実は良い成績を残しています。30チームあるなかで、ほとんどの指標の順位が一桁です。
だとしたら、なぜ悪いというイメージが消えないのでしょうか。
「去年までのリリーフへの悪評のイメージが残っている」「リリーフが抑えたときは話題にならず、打たれたときだけ話題になるためバイアスがある」「打ち込まれている投手がいる」などもありそうですが、それだけではなさそうです。
だとすると、今年のエンゼルスのリリーフには弱いと思わせる何かがあるのではないでしょうか?
ここから一緒に見ていきましょう。
2.僅差の場面での成績を見てみる
全体としてのリリーフが成績が良いなら、リリーフを弱いと思わせるのはやはり「リードをひっくり返されること」や、「僅差のビハインドでさらに失点すること」ではないでしょうか?
例えば、10点リードの場面で2点入れられてもさほど気に留めないと思います。一方で、1点リードから2点入れられたら試合が決まりかねないため、印象に強く影響しそうです。そして、僅差の場面で好投できるかはリリーフの強さを決める重要な要素ですよね。
そのため、今回はこのような僅差の場面にフォーカスしていきます。
上が1-2点のリードの場面、下が2点差以内の場面でのエンゼルスのリリーフ成績です。
全体成績より順位が落ちていますね。僅差の場面で支配的な投球はできていません。(この考えられる理由の一つについては4で触れます。)
これがリリーフが弱いとされる一因となっていそうです。とはいえ、概ねMLB平均からやや上くらいの成績ですし、全体の好成績を覆して弱いイメージがつくほど悪いかといわれるとそうは思えません。
何かそう思わせる理由が他にあるのでしょうか。
3.僅差の場面の数を見てみる
エンゼルスは3-4月の29試合中なんと19試合が2点差以内で決着しており、明らかに点差が小さい試合が多かったです。そのため、リリーフも僅差の場面での投球が増えているのではないかと思い、調べてみました。
下の表は、リリーフの全投球のうち、僅差の場面で投げられた球数の割合です。
1,2点のリード時に投球している割合は、エンゼルスのリリーフが30球団中1位でした。33%はMLB平均の17.3%の2倍近くです。また、僅差といえそうな色々な他の点差を取り上げてみても、すべてエンゼルスのリリーフが上位に来ることがわかります。
ここから「エンゼルスには僅差の展開が多く、リリーフが1,2点取られただけで失敗となってしまう場面が極めて多い」ということがいえます。これはリリーフが内容以上に弱く見えうる大きな理由ではないでしょうか。
というのも、悪くなくてもリリーフが1,2点入れられるときはあります。そのため、僅差で迎えた場面が多ければ多いほど、リードが消えたりする場面も単純に多くなり、印象は悪くなりやすくなるわけです。
例えば冒頭で触れたセーブ失敗に関していえば、今年のエンゼルスには、セーブ失敗になりやすいチュエーションが圧倒的に多いということです。実際に、チームのセーブ数は11回でメジャー2位タイで、セーブ失敗だけでなくセーブ数も多いです。また、チームホールド数の29個はメジャートップであることにも表れていそうです。
4.僅差の場面の成績は改善の可能性も?
また、「僅差の場面での成績は悪くはないものの、支配的ではない」と2で書きましたが、僅差の試合が減ることによってその成績が改善していく部分もありそうです。
僅差の試合が多いと、「点差がつかない試合が続くことでブルペン運用が逼迫し、わずかなリードでも勝ちパターン以外を出さざるをえない場面が増える」ためです。
拮抗する試合が続くと、僅差で序列が低めの投手を登板させる場面がどうしても出てきます。実際今年のエンゼルスでは、1点リードの場面での投球を経験しているリリーフが12人中10人もおり、これは他の多くのチームより高い割合です。
序列の低い投手や調子の悪い投手を他チームよりも多く含んだ成績だと、どうしても他のチームを上回るのは難しくなってきます。
例えば、ループが打たれて1-2で負けた日がありましたね。4/29のブリュワーズ初戦です。ループを回跨ぎさせた采配への批判も集まりましたが、これは典型的な場面だと思います。
勝ちパターンらの登板が嵩んだため起用できなかった上のような状況のもとで、同点の7回2アウトから起用できるのはループかワンツくらいでした。9回や延長の可能性も踏まえればワンツを早めに投入することはとてもできず、今序列の低いループを回跨ぎさせることになりました。
打順9番の選手に中軸の働きを求めるのが酷なのと同じで、僅差の場面で多くのリリーフが投げざるをえない状態は本来ではありません。
今後僅差の展開が減っていけば、そこでの成績も改善する可能性があります。
4.では、そもそもなぜ僅差の試合が多い?
ではそもそも、今年のエンゼルスに僅差の試合が多いのはなぜなのでしょうか。
それは「安定感を欠く先発と守備による失点が多い一方で、そのわりに打線が多く点を取れているため」だと思います。
・3-4月の先発投手は、防御率4.40 (MLB16位)、fWAR1.4 (20位)と安定していませんでした。
・また、今季エンゼルスの守備指標は良いのですが、好守が多い一方で失点に繋がるエラーも多く、投手の自責点にならない失点が20点ありました(MLBワースト)。
・一方、打線はwRC+108 (MLB9位)、得点とfWARもそれぞれ5位と奮起し、勝利のチャンスを繋ぎ止めてきました。
今後先発と守備が安定してくれば、拮抗した展開は減らしていけそうです。
おわりに
本noteの結論は、
①リリーフは今のところ全体的に良いが、僅差の場面では(そこまでは悪くないものの)改善の余地がある
②ただし、失敗が許されない僅差での登板が非常に多いことでリリーフが実際より弱く見えてしまっている部分も大きそうで、安定感を欠いている先発や守備の乱れの皺寄せを受けている
③拮抗した試合が多いことによる僅差の場面の成績への影響も考えられるため、今後試合展開が良くなっていけば改善の可能性もありそう
となりそうです。
ただし、これはあくまで4月までの成績を基にしたもので、5月以降もリリーフ陣が活躍する保証はもちろんありません。すでにキハーダはトミー・ジョン手術が決まり、ハーゲットは不調でマイナー調整中など万全とはいえませんし、今後怪我や不調になる選手もいるでしょう。
しかしながら、もしリリーフ陣と打線が今の調子を維持できれば、そして先発陣が安定感を取り戻していけば、試合運びの安定感も増して勝率は上がっていくのではないでしょうか。
ここからのリリーフの働きにも注目したいですね!ここまで読んでくださりありがとうございました!