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夜明けまで1マイル

村山由佳の小説。
NONNOの連載だったらしく、かなり軽いノリではあるけれど、
自分としては、かなりぐっとくる場面が多く。

人妻マリコさんと不倫真っ最中の大学生、涯(がい)。
オトナの女性の気の利いた扱い方なんか、わかるはずもなく、翻弄される毎日。
キャンパスでの生活。バンドでの悩み。
幼なじみのボーカリスト、うさぎとの微妙な関係。
「お前のベースなんか、いくらでも替えがきく」と言われ、落ち込む日々。

…ああ、なんだろう、このステレオタイプな青春。
でも、なんでこんなに「あるある」気分になってしまうんだろう。

自分に自信が持てなくて、
「取り替えのきく自分」に何の意味があるんだろう、なんて煮詰まって。
今ある恋も、いつなくなってしまうか、いつも不安で。
大切にしたいのに、やり方がわからなくて。
それなのに、やっぱり別れがやってきて。
ボロボロになって。
でも、救ってくれる人もいて。。。

「そうやって人はオトナになる」っていう類の小説なんだろうけど、
いろんな辛さや折々のハッピーやちょっとした幸せな気分なんかを、
たくさん思い出すことができました。

タイトルが「夜明けまで1マイル」なんだけど、マリコさんとふたりっきりで夜を過ごしたあと、
朝を迎える直前のシーンが何回かでてくる。

あんなにひとつになったと思っていた2つの体が、やっぱり離れ離れだと思ってしまう瞬間。
分かりあえていたと思っていた相手の心が、実は何も見えていなかった、と気づいてしまう瞬間。

…とてもひとごととは思えない。
身を切るような辛さだけど、そういう瞬間をもてたことを
人生の望外の幸せと、今は思っておこう。

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