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天使のハシゴを上っていく義兄

1000日修行11日目
知らせがないのは良い知らせ。今朝は姉からメッセージの返事が来なかった。
昨日は、数値が安定していると嬉しそうに話していたので、逆に何かあれば連絡が来るだろうと、午前中は一念発起して91歳になる母の家の台所の掃除を始めた。

これが手強いのなんの。父が亡くなった時、強制的に捨てた物もだいぶあるので、物は少なくなっているかと思いきや、この3年で前より増えている気がした。片っ端から捨てる。ポイントは、捨てる際に母に聞かない事。やっと先が見えて来た頃に、姉から「急に危険な状態になりました」とメッセージが入った。

慌てて電話をしたら、今朝も多少血圧が低いものの他の数値は安定していたので、10時半ごろ一旦家に着替えに戻ったらしい。そうしたら着くやいなや容体が急変したと病院から電話で、トンボ帰りしたとの事。私と1番上の姉の旦那とで急いで病院に向かった。

病室に飛び込むと、たった2日の間に、面変わりした義兄の姿があった。鼻からの酸素吸入で辛うじて生命を繋いでいる姿が痛々しい。
今回は、どんなに声をかけても、前回の様な微かな反応すら見て取れなかった。

お義兄さん、頑張ったものね。もう頑張らなくてもいいね。お父さんに、お義兄さんが行き先を迷わない様にガイドになって貰ってね。

胸の内でつぶやいて、あとは家族だけで過ごしてもらおうと私達は席を立った。
帰りの車窓から見えた空は、うっすらと雲がかかり、天使がゆっくり舞っているようにみえた。あくまでも澄んで穏やかな午後の風景だった。

夜、ひっそりと電話のベルが鳴った。
電話を取る前から、家中の誰もがそれは義兄が彼方に渡った知らせだと知っていた。。

目を瞑りながら知らせを聞いて、まぶたの裏には、今日の午後の景色が浮かぶ。天使が舞う様な空からするすると梯子が下ろされ、それを上っていく義兄の姿が見える。不自由な身体を脱ぎ捨てて、自由になって微笑んでさえいる静かなお顔。

お義兄さん、お疲れ様でした。
気をつけて彼方へお渡り下さい。
お父さん、宜しくお願いします。

合掌

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