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羽織について長さから寸法、羽織紐の色までいろいろ解説

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本日のお題:羽織について長さから寸法、羽織紐の色までいろいろ解説
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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■羽織について長さから寸法、羽織紐の色までいろいろ解説

今週のお題は「羽織について長さから寸法、羽織紐の色までいろいろ解説」です。

羽織はその名の通り、着物の上に羽織るものでして、すごく便利なアイテムなんですが最近とんと人気がありません。リサイクル品の世界ではよくご注文も頂いておりますが、私が新品呉服店に勤めていた頃は1年に1回仕立てたかどうか、といったところでしょうか。まあその当時の店と現在とはお客様が着物に求めているものが少し違うような気がするのであまり参考にならないとは思いますが…。

昔は着物用の3丈(約11.4m)ある反物(着尺)とはまた別に「羽尺(はじゃく)」という、着物の反物に比べてやや短い羽織、コート用の反物がたくさんあったのですが、最近は着物の市場が小さくなってきたことに加えて羽織やコートの需要が少なくなってきたためか、あまり見かけなくなってきました。

でも普通に考えると着物用として販売されている反物は長さが十分あるんですから羽尺にこだわらなくても着物用の着尺で羽織やコートを作っても全く問題ありません…というよりも先ほど書いたように最近は羽尺という生地自体があまり作られなくなっているので着尺で作るのが一般的になっているかもしれません。メーカーさんも着尺の反物と羽尺の反物を別々で作ると在庫コストなどもかかってくるため着尺を使ってくれ、ということなんでしょうね。

というわけで最近は着尺から作ることがほとんどになっているように思います。下手に生産数の少ない羽尺から選ぶよりも色も柄も豊富な着尺から作る方が面白いものができますしね。

着尺から羽織を作ると、羽織丈にもよりますが1-2m程度生地が余りますので共生地のショールを作ってもらうことも可能です。おそらくほとんどの呉服店はショールへの加工をする業者と取引があると思いますので、もし着尺から羽織やコートを作る機会があればそういった加工も検討してみてください。ただし和裁は将来的に袖丈や身丈を伸ばせるように中に縫込みを入れるのが基本ですので「余った生地でショールを作りたいから十分余らせてほしい」と事前に伝えておく必要があります。着尺から羽織やコートを作ると十分あまりすぎるのでその全てを縫込みに入れるということはないとは思いますが(中に入れるのが多すぎて重くてモコモコになってしまう)、念のために伝えておいた方がいいでしょう。

話を元に戻します。羽織って着付けの拙さを隠してくれるので、まだ着付けに慣れていない初心者にとってはとても便利なシロモノなんです。道行コートや道中着ですとあくまでも防寒コートですので屋内に入ると脱ぐ必要がありますので屋内では着付けの拙さが見えてしまいますが、羽織は洋服で例えるとカーディガンのような位置ですから屋内でも着たままでいることが出来るので、昔は口の悪い方は「ボロ隠し」と言ったという話も聞いています。昭和中期の中頃、まだ日本がそれほど豊かではなかった時代には確かに「ボロ隠し」として重宝されたかもしれませんね。

羽織の丈は時代とともに変化していて、最近は膝のあたりまでの長羽織が主流ですが、昔はおしりが隠れる程度の茶羽織が主流でしたので、リサイクル品などで見かけるものは羽織丈が80cm前後のものが多いと思います。羽織丈が95cm以上になるとかなり新しい部類の長羽織になりますのでリサイクル市場ではかなり高くなります。そういった長さも現代風でいいんですが、私個人的な感想から言わせていただくと最近の長羽織は長すぎるように思うのでそろそろまたゆっくりと時間をかけて短くなっていくのでは、と思っています。

袖丈は一般的に着物の袖丈よりも少し短くして1尺3寸(約49cm)の袖丈の着物ですとだいたい5分ほど控えて1尺2寸5分(約47cm)といったところでしょうか。「着物が49cmだと2cmも羽織の袖の中で着物が余るじゃん!」と思われると思いますが、帯で少し袖が上に上がるためか、ピッタリと収まるんですよ。そして長着との摩擦も多くなり、振りからはみ出ることを防ぎます。

もう一つ便利なアイテムと言われる理由があります。

羽織には一つ紋付きや絵羽モノ(広げると一枚の絵になっているもの・訪問着の羽織版)がありますが、これからのフォーマルな羽織を小紋の上に羽織るとフォーマルな装いとなります。フォーマルな着物は着る機会が少ないので持っておられない着物ファンも意外と多いのですが、そういう方も絵羽物の羽織を一枚持っておけばある程度フォーマルな場に行くことが出来ます。

この羽織の使い方で注意すべきところは訪問着や留袖などの絵羽物の上には着ないこと。これは昔からの着物の着方のルールからすると間違っているので、街を歩いていて着物警察に取り締まられたくない方は避けたほうがいいと思います。ただし服飾文化というのは時代とともに変化していくもので、最近はSNSでも訪問着に羽織を着ている方もよく見かけるようになっており、そろそろ訪問着に羽織もあながち「間違い」とはいえなくなってくるのかなぁ、なんて思っています。

現代の着物ファンはインターネットで情報収拾する方が多く、おばあちゃんやお母様から受け継ぐといったことがないため、昔からの風習がいつの間にか途絶えてしまうことがありますが、訪問着などフォーマル用の着物に羽織を合わせるのもそういう一つの例かもしれません。ただ、先ほど書いたように服飾文化は時代とともに変化していくものですから、他人が着物を楽しんでいるところにいちいち野暮な指摘をするのではなく、時代が変化している、と受け入れていきたいな、と思っております。

お客様が購入されるときに「訪問着に合わせる」とおっしゃったらお客様が知らずに外で指摘されて恥をかくようなことがないように「本来は合わせないもの」という指摘はしますよ。ただ、それを分かった上でそれでも訪問着に合わせるのであればそれはもう一つのファッションですから従来のルールから一歩踏み出して着物を楽しんでいただければ、と思っております。

時代とともに変化していくものといえば、黒の一つ紋付羽織の羽織紐は男女共慶事でも仏事でも白なんですが、最近は黒の羽織紐が付けられるようになっているようです。何年か前、有名歌舞伎役者がお亡くなりになりましたが、お葬式に列席した男性陣の画像を見てみると黒の羽織紐も市民権を得てきたようで白黒入り交じっているような状況のようです。こちらで少し調べてみましたところ、元々は白だったのですが、ある羽織紐メーカーが新しい商品の提案として黒の羽織紐を売りだしたところ、時代にマッチしたためか次第に市民権を得て今は過渡期のようです。西洋の葬儀=黒という文化が入ってきて日本の羽織紐にその文化が影響したためですから、おそらくこれから先、羽織紐は黒として定着していくでしょう。

最後に羽織の寸法ですが、いつも書いていることですが着物の上に着た時に袖口から着物が出てこないように着物よりも1cm程度長くして誂えます。例えば裄が68cm(約1尺8寸)でしたら羽織の裄は69cm程度が適切な裄となりますが、別誂えで仕立てる場合もかならず着物の裄を伝えてください。呉服店は長着の寸法を管理しており、羽織や長襦袢を誂えるときには長着から割り出すのが一般的ですので下手に手持ちの羽織を測って店に伝えると羽織寸法+1cm程度で上がってくる可能性もあります。ですので羽織の裄を測った場合には念のために「羽織の裄です」と明確に伝えることをお勧め致します。

またリサイクル着物を購入するときも着物の裄65cmの方が選ぶべき羽織の裄は65cmではなく66cmですので間違わないようにして下さい。65cmでも袖口から着物がずっと出ているというわけではありませんが、着物の裄よりも羽織は少し長いのがセオリーです。着物と羽織と同じ寸法のものを着ると思っておられる方も多く、一部の店では羽織の寸法が66cmと書かれていてもそれは羽織の実寸ではなく「66cmの着物に合わせて着る羽織ですよ」という意味で書かれている場合もあるらしいので(ややこしい・汗)、不安な方は店に尋ねてから購入することをお勧めいたします。

とっても便利な羽織、リサイクルの市場でもかなり安く取引されておりますのでぜひ一枚持って重ね着のおしゃれを楽しんでくださいね。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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