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お嫁入り道具

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本日のお題:お嫁入り道具
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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■お嫁入り道具

今週のお題は「お嫁入り道具」です。私にも来年大学卒業する予定の娘がおりまして現在就職活動真っ只中です。なんとか内定にこぎつけて、雇っていただける企業があったことにほっと胸をなで下ろしている状態です。そして次に考えられる人生の大きなイベントというと結婚ということになるのですが(いい縁があればの話なんですが)、今日はそんなお話です。

今でもお嫁入り道具ってあるんですかね?いや、無いことはないと思うのですが、あくまでも私の周り限定の話ではありますが、最近の若者はカジュアルな感じで結婚する人ばかりで昔のようにホテルで何百万もかけて結婚式、披露宴を執り行うのはどちらかといえば少数派のようにに思います。バブルの頃はゴンドラに乗って登場、なんて小っ恥ずか…いや、豪華な演出もあったんですけどね。結婚式って人生の一大イベントであることは確かなので多分私の周りだけだと思うのですが、以前から同棲していた、事実上の結婚生活がすでに始まっていてその流れで籍を入れるようなケースが多くなってきたような気がします。。

そういったケースが多くなると、今まで同棲していましたからすでに生活の基盤が整っているわけで改めて「お嫁入り道具」を揃えるといったこともかなり少なくなっているような気がします。

ちょっと昔話をいたしますと、私が小さかった頃は日曜日に両親と車に乗って遠出をすると、決まって1-2台は紅白の布で飾り付けされたトラックを見かけたものです。地方によってはアクリル板で中が見えるトラックが用意されていて、お披露目をしながら新郎新婦の新居に運び込むようなところもあったようです。

この新居に運び込むのを「荷出し」と言いまして、だいたいは結婚式前の大安吉日に設定されましたので、大安吉日と日曜日(当時は週休1日)が重なる日に車で出かけたりすると何台もの荷出しのトラックとすれ違ったものです。お嫁入り道具を積んでいるので、縁起を担いで決して後ろに下がることは許されません。狭い道で対向車が来てしまった時にも後ろに下がれないので、ご祝儀袋をいくつか用意しておき、対向車にそれを渡して後ろに下がってもらうというのがお約束でした。

呉服店はお嫁入りのお道具の着物を誂えるとき、あらかじめ荷出しの日を聞いておき、その日までに仕立てして納品したものです。だいたい持っていくものは訪問着、色無地、黒紋付(喪服)夏冬セット、嫁ぎ先にきょうだい、もしくは近々結婚しそうな親戚がいる場合は留袖、それらに合う袋帯を誂えるのが一般的でした。宝石も扱っている店でしたらパールのネックレスなどもお勧めしたことでしょう。

また、お相手から結納金などをいただく場合は男性用の大島紬のアンサンブルを送ることも多かったようです。色無地や訪問着、留袖全てに合わせて袋帯は1本、留袖と黒紋付の長襦袢は共用で使うなどできるだけ余分なものを買わないようにしてもデフォルトで200万、少し節約しても最低100万円程度はかかったはずです。

私も当時は営業をやっておりましたので、振袖を購入していただいたお客様の名簿は持っておりましたので、展示会の勧誘時にお嬢様がご結婚されるという話を聞くと「お、最低100万の売り上げはできた」なんて思ったものです。

私がこの仕事を始めた約30年前というと、もうすでに着物は日常着ではなく、フォーマルな節目の時に「着る人は着る」という程度の位置付けだったように思います。もちろん今よりもう少し「何かの時には着物」という方は多かったように思いますが、着物姿の方をあちこちで見かけるというほどのものではありません。でもそれだけの着物を持っていったのはなぜかと申しますと、昔は荷出しをして新居にお嫁入り道具を運び込む時に「お道具のお披露目」というのがあったんですね。

これ、今から考えると嫌がらせか罰ゲームか、というような風習なのですが、お嫁さんが持ってきた荷物を隣近所の方々が見にくるのです。現在70代ぐらいの方から聞いたところによると運び込む時に衣装類は全て広げられて中には下着までお披露目させられたと聞きます。おそらくその当時は娯楽も大したものがなく、小さい頃から知っている集落の男の子が結婚をして一人前になるというのはきっとその集落の一大イベントだったのでしょう。どんなお嫁さんが来るのか、どんな家柄の娘さんが集落の仲間入りをするのか、興味津々だったのです。

どんな家柄の娘さんが来るのか、それをなんとなくでも見極めるにはお嫁入り道具を見るとなんとなくわかります。かくしてご近所さんが集まってきてお嫁さんの品定め…といっては現代の感覚ではすごく失礼なんですが、そういったことが行われていたんですね。お嫁さんを出す側の親も、それをわかっているものだから「娘に恥をかかせられない」とばかりに「とにかく着物をたくさん持っていかなければ」とばかりに着物を購入して婚礼用の立派なタンスにいれて持っていったのです。「そんなにたくさん買えないから」とかさ上げのようにお母様の着物を娘さん用に仕立て直してタンスに入れる方も珍しくありませんでした。

というのが昭和中期から後期あたりの風習でした。

そして平成初期に時代が移りますがこういったある種「強迫観念に囚われた風習」は意外と根強く残り、実際には着なくても着物を誂えたのです。どうだろうなぁ、完全な私の肌感覚ですが平成10年ごろまでは結婚式に多くの着物を持っていかなくてはならないと思っていた方は多かったような…。そりゃそうですよね、お母様自身が多くの着物を持って(持たされて)結婚したんですから、持っていかないと恥ずかしいとばかりにその価値観で自分の娘にも同じようにしようとするはずです。

そして時は流れて令和になりました。お嫁入りの時に持ってきた着物は全く着られることがなくタンスの中に入ったまま「開かずのタンス」になっていましたが、着物買取のTVCMなどをみてそういった着物が市場に出回っているのが現在の状況です。

せっかく親が作ってくれた着物をそのまま捨てるというのはあまりにも忍びない、でも自分ではきっと着る機会がない、お金はどうでもいいから誰かに有効活用してもらいたい、という思いで買取業者に出すようです。

リサイクル着物を見ていて、どうしてしつけ糸つきの全くの未使用品の着物がこんなにたくさん流通しているのか、と思ったことはないでしょうか?洋服でしたら購入しても全く着用したことがないというものはないのに着物になるとこれだけ極端に多くなる。それは上で書いたような「とにかく着物を持っていかなくてはならない」といった風習からきたものではないか、と思っております。そういった経緯で市場に流出してくるものですので夏物は流通量としてはかなり少数でリサイクル市場としても状態のいいものはなかなか手に入りません。

昭和後期から平成、そして令和にかけて日本の生活様式がガラッと変わりました。この変化は呉服業界の市場の縮小と凋落に大きく影響を与えました。地方にもよると思いますが、現代はもう結婚する時にお嫁入り道具として着物を持っていくようなことはほとんどなくなってしまったのではないかと思います。

これからはこのメルマガを読んでくださっているような、普段着で着物を着るディープなファンに支えられる業界になっていくのでしょうか。着物ってすごく魅力的であり奥深い世界だと思うので、今一度この良さを見直して、多くの人に受け入れていただけるように頑張っていきたいと思っております。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/

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