見出し画像

色留袖の訪問着仕立とは

====================
本日のお題:色留袖の訪問着仕立とは
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

きくや着物チョイ話は着物好き方々のために参考になることを紹介させて頂く豆知識メルマガです。着物教則本などに載っているものではなく現在呉服業界で営業している呉服店発の生の情報を配信しております。

上記本店サイトに会員登録していただくと、毎週水曜日にご登録のメールアドレスに同じ内容のメルマガが配信されますのでぜひご登録ください(noteの更新はメルマガ配信より1-2日程度遅れます)。

ツイッターでも毎日着物豆知識をつぶやいています。
TwitterID:@gofukunokikuya

きくや着物チョイ話はメール全文そのままご使用時に限り、転載・無断使用可能です。

====================
いつもメルマガのご購読、ありがとうございます。こちら関西はついに梅雨入りしてしまいました。これから暑くなると着物の売れない季節で呉服屋としては我慢の日々が続きます…と思ったんですけど先日の仕入れで単衣と夏物を思いっきり入れてきました。できるだけ早く出品しますのでしばらくの間お待ちください。いま必死のパッチで検品と商品撮影してます!

====================
■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。本店サイトは楽天などのショッピングモール価格よりも5-10%程度お安く提供いたしております。

====================

■色留袖の訪問着仕立とは

今週のお題は「色留袖の訪問着仕立とは」です。私、常々思うんですけど訪問着の方が色留袖よりも柄が多くて豪華に見えるのに、格としては色留袖の方が上ってなんとなく違和感を感じませんか?この辺りは色留袖の成り立ちによるものなので豪華に見える云々は関係ないと言われれば「はいそうですか」と言わざるを得ないんですけどこの業界に入って以来、なんとなく違和感を感じてるてんちょなのです。

そんな話はさておき、今週のお題は「色留袖の訪問着仕立」です。色留袖と訪問着の違いはご存知の方がほとんどだと思いますが、まずは今一度おさらいをして両者の違いについてお話ししてみます。

【色留袖】
色留袖の定義をお話しする前にまずは黒留袖の定義をお話ししたほうがわかりやすいでしょうね。

黒留袖は黒地に裾にだけ絵羽柄(えばがら)が染められているもの。仕立て方は比翼仕立てで五つ紋がついています。絵羽柄とは、縫い目をまたいで柄がつながっており、着物を広げると一枚の絵になっているものを指します。比翼仕立てとは、もともと黒留袖の着方は長襦袢の上にもう一枚白い着物を着て、その上に留袖を着たのですが、長襦袢の上に着物を2枚も着ると、特に腰のあたりのおはしょり部分がモコモコになってしまいます。そのため2枚着るのではなく衿や袖口、振り部分、裾にまるでもう一枚着物を着ているかのように見える白い生地を縫い付けるのです。

家紋は背中に1つ、両胸に1つずつ(左右で2つ)、後ろ袖に1つずつ(左右で2つ)の合計5つついており、既婚女性の第一礼装として着用されます。一般的には新しい門出を祝う結婚式に着られることが一番多い…というよりも民謡などをやっていない方は第一礼装の留袖を着る機会はほぼ結婚式しかないので、事実上結婚式のユニフォームのようになっていますね。この留袖のうち、地色の黒いものを黒留袖、そして黒以外のものを色留袖といいます。

色留袖は比翼仕立て、五つ紋を入れた場合に限り、黒留袖と同格になります(注)。着用する場として一番よく言われるのは40代以上の未婚女性が親族の結婚式に出席する時でしょうか。黒留袖は既婚者の第一礼装なのでふさわしくないし、かといって振袖を着る年齢でもない、訪問着は親族としては少し格が低い、じゃあ色留袖かな、ということで選ぶ方が多いようです。

注:黒留袖と完全に同格になるという解釈が有力ですが、一部黒留袖よりもわずかに格が落ちるという見方もあります。

【訪問着】
訪問着も色留袖と同じ絵羽ものですので一見色留袖と似ており、着物に全く興味のない方が見ると違いがわからないかもしれませんね。訪問着と色留袖の違いは簡単。上半身の柄の有無で決まります。黒留袖が裾模様だけで上半身には柄が一切なく、それに準じた着物である色留袖も上半身には柄がありませんが、訪問着は上半身に柄があります。物によっては着物全体に柄を描いているものもありますが、訪問着の要件としては縫い目を超えて柄がつながって着物を広げた時に1枚の絵(絵羽柄)になっているかということになります。

両者の違いをおさらいしたところで本題に入っていきます。

色留袖は黒留袖に準じた着物ですので本来ですと五つ紋を入れて比翼をつけて仕立て、着用する時には袋帯と白の帯締め、帯揚げをあわせます。また、長襦袢も黒留袖を着る時と同じ真っ白のものを使います。そう、黒留袖と全く同じコーディネートとなるのです。

しかしちょっと考えてみてください。普通の庶民が黒留袖や黒留袖に準じた格の場所に出て行く機会って人生に何回ありますでしょうか。民謡などをやっておられないのであれば、せいぜい自分の子供、甥や姪の結婚式程度ではないでしょうか。しかもその時には黒留袖という立派なフォーマル用の着物があり、あえて色留袖を選ばなくてはならない、という機会はあまりないように思います。

今、これを書きながらどんなシチュエーションが五つ紋で比翼仕立ての色留袖にふさわしいかと考えているんですが、先ほど書いたように40代以上の未婚女性が親族の結婚式に出席する時ぐらいしか思いつかないんですよね。皇族に招かれて皇居に行くとかもあるでしょうけれど、ほとんどの方にとってはそれは無縁ですよね。そういうわけで五つ紋付で比翼仕立ての色留袖は着る場所がかなり限定される着物となってしまいます。

そんな時に出てくるのが「色留袖の訪問着仕立」なんですよ。

五つ紋付比翼仕立にしてしまうと格が上がりすぎて滅多に着る機会がなくなってしまう、だったらパッと見た目は訪問着と同じなんだから訪問着と同じように仕立てちゃえ!という、なんともいい加減な(?)解決法でして、黒留袖に準じた着物から少し格下げして訪問着みたいな着物に仕立てることによってもう少し気軽に着られるようにするのです。家紋の数は特に決まっておりませんが、私の30年の経験では一つ紋を入れる方が多く、たまに三つ紋を入れる方もおられました。比翼はつけずに一般的な訪問着と同じように胴裏と八掛のみ。これで色留袖の訪問着仕立ての出来上がりです。

色留袖を訪問着仕立てにすると合わせる小物も少し変わります。

先ほど書きましたように五つ紋で比翼仕立ての色留袖は黒留袖に準じた着物ですので、合わせる帯締め帯揚げも黒留袖と同様、白の帯締め、帯揚げとなりますが、訪問着仕立てにすると白に決められているわけではなく、どんな色でも構いません。一般的な訪問着と同じように帯と着物の色を考えていろんな色でコーディネートしていただくことができます。比翼仕立てにした場合は重衿はつけることができませんが、訪問着仕立ての場合はお好きな重衿をつけることもできます。帯や草履バッグについては訪問着も黒留袖も色留袖も同じものを共用することが多いので色留袖の比翼や五つ紋の有無でそれほど大きく変わることはありません。

色留袖の訪問着仕立てについてお分りいただけましたでしょうか。今回は比較的説明しやすかったですが、来週は禁断のあのお題「付下と訪問着の違い」を書いてみたいと思います。今頭の中で整理しているところですがちゃんと文章でまとめられるかかなり不安です汗。

====================

発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/

上記URLにて会員登録していただくと毎週水曜日にこのブログと同じ内容のメルマガがご登録のメールアドレスに送信されます。

====================

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?